疎遠になった幼馴染の距離感が最近になってとても近い気がする   作:ひざぎ

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3/Anxious in the Rainy noise
3-1


 

 どうでもいい毎日を送っている。私を愛してはくれないと知ったあの日から、あらゆるものがすべて死んでいると思うのは、私の情緒がおかしいからなのだろうか。

 

 彼から愛を享受することはない。きっと、それでも彼は愛を謳うのだろうけれど、そこに私の求めている本質的な愛は無いような気がした。

 

 彼は私のことをどう思っているのか、それを理解することは容易い。だから、行動を起こしてしまえば、その結末についてはすぐに見えてくる。

 

 彼の指先をなぞらせて、肌に滑らせたかった。私の素肌の柔らかさを弾くように、彼の爪で躙ってほしかった。抓ってもいい、もしくは刺すでもいい、嚙むでもいい。象徴的な愛がほしい。

 

 愛の本質とは、相手にどれだけ傷を与えることができるか。傷を与えられるかどうかで、愛を享受するに至るのだ。

 

 だから、私は彼に傷を与えたい。傷を与えて、傷つけてもらいたい。それが私の愛なのだ。世界から見ても愛なのだ。きっと、それが愛の指標となるものなのだ。

 

 でも、彼は私の指先を肯定してくれなかった。

 

 私が愛を振りまくなかで、それを肯定してくれなかった。そこに正しさはないというように、彼は私がなぞる彼の素肌を遠ざける。私は彼に拒絶されたのである。

 

 ──ああ、私は愛されないんだ。

 

 私は、彼には愛されないのだ。

 

 いつまでも、どこまでも。

 

 

 

 

 想像していた六月の気候は、思ったよりも爽快な夏の雰囲気を感じさせた。

 

 六月と言えば梅雨の印象がぬぐえない。梅雨から連想されるのは、どこまでも繰り返されるじめったい湿気と雨の匂いだが、今週の天気予報ではそれは存在しないと明示された。まあ、あくまで予報でしかない。もしかしたら外れるのかもしれないけれど、今のところはその気配を感じさせる要素は空にはなかった。

 

「最近、屋上に来ないな」

 

「……まあ、暑いので」

 

 俺の言葉を聞くと、ルトはつまらなそうに声を上げた。いや、単純に話題がなかったから適当な言葉を挙げたのだろうけれど、彼の反応はどうでもいい、という感情を孕んでいた。

 

 実際、夏の気配をぞくぞくと感じさせる機構の中で屋上に行くのはしんどさがある。素肌を曝け出すようになった衣替えでも、暑さを凌げるわけではない。

 

「部員勧誘は上手くいってるのか?」

 

「勧誘という行為については上手くいっていると思いますよ、実績は伴っていませんが」

 

「それは上手くいっていないということじゃないか」

 

 ルトは苦笑しながら呟いた。

 

 ……一応、皐の誕生日からいろいろな方法を伊万里と模索しながら勧誘を行っているが、勧誘の時期から逸れてしまった俺たちの行動は、周囲から鬱陶しさを抱く視線で見つめられている。

 

 唯一、好反応と言えたのは重松だけである。

 

『お前が熱心に勧誘している姿を見るとな、俺は心が洗われるようだぜ。四月ごろにはなんも感情を抱いてなさそうなのに、必死に校門前で勧誘している姿は心が動くよなぁ。もし、部員が集まるようなことがあったら、俺が顧問として頑張るからよぉ、その調子で頑張れよな』

 

 そんなことを放課後にいちいち呼び出して重松は話してきた。悪い気はしなかったし、顧問の確約も得られたので、少しばかりの安心感はあったが、それはそれ。結局、科学同好会についてはルト以外の新規は増えていないのだ。

 

「ルト先輩はどうして物理室に?」

 

「いや、単純に暇だったから。屋上に人はいないし、生徒会もしばらく動きがなくてな。適当に来てみた」

 

「生徒会って暇になることあるんですね」

 

「生徒総会が終わった後は結構暇だよ。どうだ、生徒会に入る気になったか」

 

「……ま、考えておきますよ」

 

 そんな体のいい断り文句だけを吐いて、俺は物理室で弁当を嗜む。ルトはつまらなそうだ。

 

 そこに付き合うように伊万里の姿がいれば、少しは楽しさをその場に演出することもできたのかもしれないが……。

 

「……そういえばというほどでもないけれど、部長がいないな」

 

「なにしてるんでしょうね。今日はアイツを見てないんですよ」

 

 結局その日、伊万里は部活に来なかった。

 

 

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