疎遠になった幼馴染の距離感が最近になってとても近い気がする   作:ひざぎ

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 授業中にノートを書くことは少なくなったかもしれない。別に勉学能力が優れているというわけではないが、他の人間のように綺麗にノートをまとめることに対しては億劫になりがちだ。特にマーカーなどを引く作業については、真っすぐに線を書けないから嫌気がさしてくる。ただでさえ字を書くことに対しても苦手意識があるのだ。俺は適当に白紙のノートだけを開いて、手持ちのペンを指先で遊ばせた。

 

 未だに特等席から変わってはいない。もうすぐで席替えから一月ほど経つ。だから、もうそろそろでこの立ち位置ともお別れなんだろうが、それはあまりにも名残惜しい。

 

 世界はどこまでも晴れ渡っている。速やかに見える青空が目に優しくない。きっと、他の人から見れば、とても綺麗な空なんだろう。愛莉とかは特に喜びそうな色気がある。俺はそんな感慨を持てることができれば、もっと幸せに世界を感じることができたかもしれない。

 

 ……俺には何かが足りない。でも、何が足りなにのかはわからない。わかっているような気もするけれど、それに目を逸らし続けているよう感覚もする。どうせ、自分には手に入らないものだと、この前察してしまったからかもしれない。

 

 俺は、どうして今日行動を起こしたのだろう。

 

 別に、伊万里に対して特殊な感情を抱いているわけでもない。だが、俺は理由もないのに行動を選択した。そのことの不和が自分自身で拭えないような気がする。理由など後から作ってしまえばいいと、そう意気込んで行動したことの違和感がどこまでも自分を支配している。

 

 ……どこか、空腹だ。中途半端に残してしまった弁当が嫌に脳裏に投影される。あの時に行動をしなければ取れたはずの食事。

 

 どうでもいい。食事を一度取らなかっただけで人は死ぬわけでもない。俺は、放課後にどのような行動を選択するべきなのかを考えるべきなのだ。

 

 ……本当にそうだろうか。いつも通りに適当に過ごしていればいいじゃないか。

 

 でも、心の何かがわだかまって落ち着かない。何かしなければいけないような気がする。でも何をすればいいのだ。

 

 別に、伊万里の家にお見舞いに行く気にもならない。そもそも俺はアイツの家を知らない。教師に聞いたところで答えなんか返ってくるはずもない。

 

 適当に勧誘活動にいそしむでもいい。だが、放課後に残ろうとする連中についての大概が部活動に加入している。兼部はこの学校では聞いたことがない。そもそも人付き合いが少ないから聞くタイミングも存在しなかっただけだけれど。

 

 ……今日は帰るか。

 

 そんなことを思いながら、俺はノートを睨みつける。交互に黒板と見合わせながら。

 

 やはり、書く気は起きない。俺は自堕落な生徒なのだ。

 

 

 

 

 放課後のチャイムが鳴って、俺はなぜか物理室に向かってしまった。

 

 いつもの癖のようなものだった。行動した後に、どうしてそんなことをしているのかを疑問に思ったけれど、たどり着いてしまえば、まだ家に帰る必要性の無さを認識する。すべてがどうでもよかった。

 

 物理室には誰も来ない。もしかしたら、ルトが来る可能性もある。だが、今ここには俺一人しか存在しない。

 

 伊万里のように、物理室のおもちゃで遊ぶ気にもならない。

 

 アイツが携帯を持っていたのならば、連絡を取ることもできたのかもしれない。でも、それは叶わない。

 

 どうして、アイツは学校を休んだのだろう。

 

 風邪、という唯一の情報を俺はいまだに信じることができていなかった。

 

 何か、裏があるような気がする。でも、その裏を探ったとて俺に収穫があるわけでもない。理由がない。俺はすべてに対して理由を求めているのに、彼女に理由を見いだせないのだから、行動をしてはいけないような気がする。

 

 ……どこまでも変なことを考えすぎている。

 

 人と関わっていれば、そんな思考はあまり起きない。人と関わることができていれば、俺はその空気に紛れることができる。でも、関わる人間がいない。

 

 ……いいや、もう帰ってしまおう。

 

 俺は立ち上がって学生鞄を肩に提げる。立ち上がった際に鞄に入っている弁当の一部を思い出すけれど、ここまでくると食事する気にもならない。家に帰って、夕食と一緒に合わせるでいいだろう。

 

 物理室の戸へと歩き出す。こつこつと上靴が床を弾ませる音。それが呼吸と重なるタイミングを味わいながら。

 

「──あっ」

 

 そんな、声が耳に届いた。届いたからには俺の声ではない。女の声だった。

 

 床にしか視線を映していなかったから、俺はきちんと前に視線を向けた。声の主の方へと、視線を向けた。

 

 ……。

 

「え、えと、高原くん……ですか?」

 

 見知らぬ女子が、そこに立っていた。

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