疎遠になった幼馴染の距離感が最近になってとても近い気がする   作:ひざぎ

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 決意は定まった。

 

 愛莉と言葉を交わしたことで、そうして俺の心は固まった。

 

 これ以上に考えることはない。考えてはいけない。考えれば理由を求めてしまうから考えない。意識的に制御しなければいけない。

 

 だから、俺はもう理由を求めない。

 

 俺がしたいから、俺はそうするだけ。

 

 正しさを求めず、理由を作り出すことはなく、俺がやりたいことを、俺が為したい結果のために行動をするだけ。

 

 ……それが理由となって、矛盾のウロボロスに食われる感覚はあるけれど、そんな感覚は捨て置いてしまえ。億劫さを持つひまがあったら何かをしなければいけない。何かを為さなければいけない。

 

 それなら、俺は何を為すのか。

 

 単純だ。

 

 行動。 

 

 行動。

 

 行動。

 

 行動するだけだ。

 

 ただ、それだけなのだ。

 

 

 

 

「本当に、大丈夫なんですか?」

 

 皐は俺の顔をしっかりと見つめながら、そう言った。

 

 訝し気な雰囲気が、視線が俺を突き刺してくるような気がする。でも、彼女が俺を疑っているのとは異なって、俺の体調についてはだいぶマシだ。

 

 愛莉が帰った後、心情がすっきりしたからか、ただひたすらに睡眠に励むことができた。睡眠に意識を浸せば、自然と体調についても軽くなってきた。俺の中に存在していた鉛のような重さは消えている。

 

 それでもたまにせき込むことはあるけれど、それ以上に体調の悪さを感じる要素は俺の中にはない。それだけで、どれだけ世界が綺麗に見えることだろうか。

 

「大丈夫だよ、ほら」

 

 そう言いながら、俺は大げさに体を動かしてみる。シャドーボクシングのような動きをして、口からシュッシュと音を出してみたり、走りこむような体勢をとって、その場で腿上げをしたり。

 

 ……恥ずかしさがわだかまる。少しだけ徒労な感じがする。ちょっとした運動だけで息苦しい感覚。でも、昨日よりも、それ以前よりも身体が気持ちよく動く感覚がする。きっとここでこの感覚に従わなければ、俺は波に乗りきることはできないかもしれない。

 

 俺の大げさな動きを見て、更に俺を掘り下げるように視線を強く突き刺してくる。睨んでくる空気。

 

「本当に大丈夫なんだ」

 

 心配はしなくていい、俺はそう付け足して彼女に笑顔を向けた。意識せずに行動している。その違和感を覚えて、どこか楽しい感情。

 

 作り笑顔を彼女に向けていない。作り笑顔ではないから、心の底から心地のいい感覚がする。

 

 素直さが俺の心の中に留まっている。これが素直さなのかはわからないけれど、それでも心が軽やかだ。重みがない。心臓が動いている、取り込むすべてに酸素がある。爽快さがある。視界の何もかもが綺麗に見えるような気がする。

 

「そ、そうですか……」

 

 ……心なしか引いているような彼女の声。でも、今はそれでいい。俺は前を向くのだから、いつもと違う雰囲気になるのは仕方がない。

 

 これからは、これで生きるから、いい。

 

 だから、これでいい。

 

「そうだ」

 

 俺は彼女に言葉を吐きだした。

 

 玄関を開ける直前、思い出したように俺は彼女に振り返る。

 

 いつもだったらしない行動。

 

 でも、ここでなければ行動をしない。

 

 なら、ここで止めることはしない。

 

 皐は呆けた表情をしている。俺が彼女に声をかけることなどありえない、そう捉えていたような、そんな表情。意外性を覚えた顔だった。

 

「夜、話したいことがあるんだ」

 

 行動の前置き、約束をすることで逃げる理由を失わせる一つの縛り。彼女に対しても、俺に対しても、両者にとっての束縛のようなもの。

 

 俺は逃げない、彼女も逃がさない。

 

 彼女は俺の言葉をとらえて、呆けた表情から、俺の目をしっかりと見据えた芯のある表情に切り替わる。

 

 俺たちは、今夜で決めなければいけない。今夜の会話を設けることで、関係性を改善しなければいけない。

 

 ……いけない? そうじゃない。俺がそうしたいのだ。

 

 彼女の敬語も、敬語から感じる距離感も、そのすべてを変えたいのだ。

 

 俺は、皐の兄に戻りたいのだ。

 

「──わかりました」

 

 彼女は深く息を吸い込んで、その空気を肥えに孕ませて言葉を吐く。

 

 重く重く、躊躇うような言葉。

 

 でも、それでいい。

 

 ここから俺たちは始めなければいけない。

 

 俺はそんな彼女の表情を心に留めながら、そうして玄関のドアを開けた。

 

 

 

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