疎遠になった幼馴染の距離感が最近になってとても近い気がする   作:ひざぎ

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Fi-4

 

『着いた』という三文字に気づいたのは、屋上の踊り場に望遠鏡を運び終わった後のことだった。

 

 携帯の上部に表示されている時刻は四時頃になっている。体感ではそこまで時間を費やしたわけではないと思うのだが、各々と会話をした時間は相応に過ごしていたらしい。

 

 俺は届いた通知をタップして『今行く、どこいる?』と返す。すぐに既読はついて『校門』と帰ってくる。

 

 俺はメッセージを閉じると、そこそこに急ぎ足で校門の方まで向かった。

 

 

 

 

「煙草臭いです」

 

「……ういっす」

 

 言い訳を考えることはできるけれど、愛莉に対しては特に言い訳は思いつかない。どうせ、何かしらの嘘をついたところでバレてしまうだろうし、何かしらの隠し事をすることも億劫になっている。

 

 愛莉が煙草臭いと俺を表現した後、傍らにいた皐も近づいて、すんすん、と音を立てて俺の匂いを嗅ぐ。確かに臭い、そう言葉を残した。俺は何も言うことはできなかった。

 

「というわけで、来ちゃった!」

 

「……まあ、来てくれって言ったのは俺だしな」

 

 俺がシンプルにそう返すと、彼女は不満げに「反応がつまらぬです」と皐に耳打ちをする。やけにおじさん臭い口調だと思う。皐は俺に対して呆れる仕草をする。俺はどんな反応をすればよかったのだろうか。

 

「いやあ、ここはなんかいろいろあるじゃん。いろいろね」

 

「……例えば?」

 

「……あ、今日は空がきれいだね翔也!」

 

「露骨に話を逸らすのかいな」

 

 俺は苦笑した。

 

「……ていうか、なんで──」

 

 俺は疑問を発しようとした。その疑問は彼女らの服装についてである。

 

 皐に関してはともかくとして、愛莉に関してはおかしい。中学時代の制服を着ているのだから、どこか違和感を覚えるのは仕方がないというものだろう。……いや、どちらかと言えば懐かしさが漂っているような気もするけれど、それは単純に表現の問題だとも思う。

 

 俺が言葉の続きを話そうとすると、愛莉が俺の口を人差し指で塞ぐ。その先は野暮だ、と言わんばかりに。

 

「だって、他校の制服着ていたら怪しくない?」

 

 それはそうかもしれない、とは思ったけれど、それで中学の制服、というのもどうだろうか。

 

「今日は翔也の妹になります」

 

「わたしはいつも通り妹です」

 

「……なるほど?」

 

 俺はツッコむことをやめた。もう、そういうことならそれで話を押し通せばいいかもしれない。もう伊万里やルト、重松には伝えているけれど、花村から何か聞かれることがあったら、そう言うことにしておこう。

 

「でも、本当に入っていいの? 何かしらの校則に違反とかしない?」

 

「まあ、バレなければいいんだよ。バレなければ」

 

「あくどい顔をしていますね」と愛莉。隣で皐はうんうん、と頷いている。

 

 最近の彼女らは相性がいいらしく、俺を揶揄うことを目的とした行動についてはとても綺麗なコンビネーションを見せてくる。それほどまでに仲がいいということだと思う。きっと、それはいいことだった。

 

 昔馴染みの空気がここにはある。だから、呼吸をするのが億劫にならない。真空のような気まずさは、そこには介在しない。

 

 俺と彼女と彼女の間に何があったのかは、思い出すのも野暮かもしれない。俺は適当に息を吐いて、校舎の方へと指をさす。

 

「とりあえず、さっさと行こうか。……暑いし」

 

 おっけー、と間延びした声を愛莉は返し、皐は静かにうなずいた。彼女らを先導するために、俺が最初に歩き出す。

 

 夕焼けはまだ遠い。日射がまだ昼のように近かった。

 

 

 

 

「おっ、いいところに来たじゃねーか」

 

 科学部の面々以外に見つからないことを祈りながら、そうしてなんとか物理室にたどり着くと、何やらプロジェクターなどを準備している重松がそこにいた。

 

「た、高原くん。しげちーを止めてくださいな」

 

 なんで? とだけ返すと、伊万里は声を震わせながら「今からホラー映画を見るらしいんです……」と、本当に嫌そうな声で呟く。

 

 ……後ろについてきていた愛莉と皐は、静かに方向転換して逃げようとする気配がする。

 

「おい、逃げるなよ」

 

 俺は彼女らの肩をつかむ。彼女らの肩が掴まれたと同時にビクンと跳ねた。なんか面白い。

 

「……い、いやいや翔也さんや。ホラー映画とは聞いていませんけども」

 

「わ、私も……」

 

「俺も知らなかったよ」

 

 正直に伝える。実際、知らなかったんだからどうしようもない。

 

 かといって、知ってたら伝えるのか、と聞かれれば微妙なところだっただろうけど。そっちの方が面白いし。

 

「おっ、後ろにいるのは高原の彼女か?」と重松がプロジェクターを調整しながら、首だけ向けて話しかけてくる。

 

 彼女、という言葉が愛莉に届いた瞬間に、またびくりと弾むように動く。ソロソロ、と音を立てないように俺の方まで移動すると「えっ、知ってるんすか?」と一言。俺は大きくうなずいた。

 

 途端、愛莉は赤面する。

 

 ……なんか面白い。

 

 

 




明日で最終回まで載せます。
最後までお付き合いしていただければ幸いです。
また、この作品が終わり次第、主人公が別ルートを辿った話をあげていきます。

改めてよろしくお願いします。
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