久しぶり過ぎてウマ娘の事大分忘れてしまっていますが。なので今回はトレセンや原作ウマ娘は登場しません
唐突だが俺は普通の高校に進学した。トレセン学園のストーカー行為の一件で多額の賠償金をもらっているが人生で必要な額には全く足りない。であれば最低でも高卒にならないと就職は厳しいだろう。
さて、ウマ娘が普通の職種に就けるかという話だが意外と普通に就ける。何しろトレセン学園に入れなかった者、そして引退した者の多くは一般企業に就職する事が多い。というか基本的にそうなる。成功した者なら広告塔として就職する者もいるらしいが他は普通の人間と変わらない。精々がその身体的特徴を評価される傾向にあるというくらいだ。
酷い企業だと見目麗しいウマ娘を会社に入れてセクハラをする輩もいるらしいし職探しには気を付けないといけない。
個人的には前世と同じ職種に就けるのが好ましいと思っている。経験している以上それなりの戦力にはなると自負しているからだ。残念ながら前世で働いていた企業はこの世界にはなかったが似た企業なら複数見つけている。そこへの就職を目標に今はゲームをしながら勉学に励んでいる。
「フブキちゃん、皆でカラオケに行かない?」
「カラオケ? ……うん、行こうかな」
そんな俺だが青春もきちんと満喫している。青春は若い間の数年間しか体験できない特別なものだからだ。流石に恋愛をする気はないが友達を作って楽しい日々を送っているのだがある日俺は友人たちからカラオケに誘われた。
誘われた事で分かった事だが俺はこの体になってから一度もカラオケに行った事がない。太古のリズムゲームなら何度もやったし電子の歌姫の美しい歌声を聞きながら何度も画面をタッチした事はあるが自分が歌う事は今までなかった。
嫌いというわけではない。前世では友人と「赤点とるまで帰れませんゲーム」、「アンパンマンマーチ耐久3時間」、「食べ放題のポテトを食べて店の在庫を空にしようぜ」とかよく馬鹿をやっていた記憶がある。
この体になってからはそう言った事をする機会もない上に馬鹿やれるような友達は作れなかった。まぁ、女子と男子では生態系が違うのだ。男子は馬鹿やルのが好きだがそこに女子が入ればそれも台無しだ。余程の変人でもない限り女子を意識して上手く場が回らなくなるからな。
尤も、真のインドア派である俺にとってはカラオケ店に行く事さえ面倒だと感じてしまうのだ。友達と一緒に行く機会でもない限り前世でもカラオケにはいかなかったしな。
「今日はフブキちゃんも来てくれるの!? やったー! 楽しみ!」
「おいおい! ずるいぞ女子ばっかり! 男子も混ぜろー!」
「駄目に決まっているでしょ! 女子会に男子が入ろうとしないでよ!」
うちのクラス、なぜか俺以外にウマ娘がいない為に女子にも男子にも人気だ。前世ではよく見かけたカースト制度も陰湿な女子グループもない、皆優しい子達だ。ぶっちゃけ、そう言った娘達じゃなければ今頃俺はいじめの標的にされていたはずだ。ゲームばかりの内気な女子っていう俺の評判がそれを物語っているからな。
「ブッキー、今日は何のゲームしてんの?」
「アプリ版やってる」
カラオケに行く道中で声をかけてきたのはクラス一のギャルである髙梨真美さんだ。男子が思い描く最高の女子と言えるオタクに優しいギャルと言える人で人気は高い。今も俺の回答に「あー、あれ楽しいよね」と相槌を打ってくれている。まぁ、俺が薦めた結果ドハマりした結果そうなっただけなのだが。
「フブキちゃんは何歌うの?」
「んー。どうしようかな」
「アニソンでも良いよ?」
「ならば決まった」
次に声をかけてきたのは菊池裕子さんだ。お淑やかで誰にでも物腰柔らかな清楚系美少女だ。彼女と喋っているだけで邪な感情は祓われていく気がする。実際、男子の幾人かが浄化されている。
「あたしもアニソン歌おうかなぁ。エルフェンリートのOP」
「え!? あれ歌えるの!?」
何やら凄い発言をしたのは川口ありささんだ。世界中の言語に関わる仕事に就きたいと考えている人で色んな外国語を勉強しているらしい。
他にも何人もクラスメイトがいて大体8人くらいだろうか? それなりの数になった。カラオケ店でも一番広い部屋に通されたしな。
「それじゃ乾杯!」
「「「「「かんぱーい!!」」」」」
それぞれ好きなジュースを注いだコップで乾杯をして女子会が始まったが男子とは違うテンションに最初はついていけなかった。こう見えても前世男子な上にこういった場には不慣れなので。
「次は私の番か」
「フブキちゃん! がんばってー!」
合いの手を入れていたらついに自分の番となった。さて、何を歌うか……。この世界、馬がいないだけで前世と変わらないアニメやゲームで溢れているからな。ウマ娘の世界なせいで壁をぶっ壊す巨人関連の作品がないのが残念だがな。
……よし、ここはあれで行こう。
「何歌うの?」
「ETERNAL BLAZE」
アニメも素晴らしいからな。
さて、この体で歌うのは初めてだがウマ娘は皆歌上手いし大丈夫だろう。マイクを持って俺は深呼吸をして
「~~~~~~~~~~~~~っ!!!!!」
「「「「「ふ、フブキちゃん! ストップうううううぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!」」」」」
悲報。俺はどうやら音痴だったらしい。どうもこの体は音程を取るのが壊滅的に駄目なようで後でやってみたがダンスも壊滅的だった。真美と裕子に見てもらったら「外国の少数民族の祈祷の舞?」、「とても硬くて味が薄いビーフジャーキーみたいでだんだん見ていると魅力的に見えるよ」との事だ。
トレセンに通っていれば地獄を見たのは確実だな。本当に通わなくてよかったと思う。俺は公開処刑を受け入れる気はないからな。レースだけ出てライブはサボっていたはずだ。
因みに、この日のカラオケは皆には「不意打ちのジャイアンリサイタル」と言われる程に酷かったらしい。以来クラスメイトがカラオケに誘ってくれることは無くなった。男子でさえその話を聞いて引きつった笑みを浮かべていた程だからな。
ウマ娘でも音痴はいるのだという事を身を以て理解させられる事になるとは思ってもいなかったが歌えなかったからと言って人生が変わるわけではないのだ。悲観的にならずに切り替えていくべきだな。
それにどうしても歌い時は一人でくればいいだけの話だ。カラオケ店が出禁にしない事が前提だけどな。