The Room   作:犬屋小鳥本部

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また誰かいなくなったようだ。












今日、あなたのポストに招待状が届いた。
封筒は白。絵も柄も文字さえない無垢な白。ただし宛先にはあなたの名前がしっかりと記されている。差出人は空の白だ。

あなたは慎重に開くだろうか。それとも、一息に破り捨ててしまうのだろうか。
あなたはきっとその封筒の中を見るだろう。だって毎日つまらないではないか。何かトクベツでシゲキテキなことをあなたは求めているはずである。

あなたはその招待状を見た。タイプライターで打たれた文字は必要なことだけを示している。

「×月×日××時×××の××、地下×階でパーティーを開催いたします」

日付は明日である。あなたは行くか、行かないか。招待状はそれを訊ねてはいない。
あなたは来る。招待状はそう断言しているのだ。



さあ、用意はよろしいだろうか。
其処ではきっとあなたの望むトクベツなパーティーが行われる。そう、トクベツなパーティーだ。今すべきことは明日の予定のキャンセルだろう。


The room~My dool①

ようこそ来られた。パーティーの主催者である誰かは声にすることなく笑った。

 

 

 

ある日、彼らのもとへと招待状が贈られた。差出人不明のそれはタイプライターで書かれた時代遅れの物である。

招かれたパーティーがどんなものか。何のパーティーなのか。

ゲストである彼らの中でそれを知る人はいなかった。

たった一枚の紙切れである。そんな誘い、無視すればいいだろう。集まった彼らは互いにそう言った。そう言いながらも来ているではないか。彼らは笑った。

ゲストたちは繋がりが一切ない若者だった。大学生くらいであろうか。接点はない。出身は。専攻科目は。

彼らは初めて会った赤の他人であった。

 

招待状に記載されていた場所と時間に現れたのは数十人のゲストとなる若者たちである。男性もいる。女性もいる。中にはどちらとも言えない性もいる。

彼らに繋がりはない。共通点は手の中にある得体の知れない招待状である。そこからは主催が誰なのか判断することができない。ペンで書かれたのではなく、タイプライターで文字が打たれたそれは酷く無機質であった。

 

記された日付は彼らがそれを受け取った次の日である。中には予定をキャンセルして出向いた者もいるだろう。それほどの価値がこのパーティーにはあるのだろうか。

彼らは皆、ただの興味で足を向けただけなのかもしれない。それとも日常に飽きたことからのふとした好奇心がそうさせたのだろうか。

 

彼らが集まったのは一枚の扉の前であった。看板が出ていれば、質素なバーかスナックの入り口にも見えたかもしれない。

大きなショッピングセンターの中にある賑やかな店。行列すらできる人気のそれを通り過ぎた。その先にある明かりの消えた空き店舗になど誰も気にしない。彼らは招待状に記載されていたからこそ、その横の小さな通路を見つけることができた。

ライトがなく、狭い路には占い師がまじないをしていてもおかしくない雰囲気が漂っている。

そんな通路の行き止まりにその扉はあった。

 

 

 

何かに選ばれた彼らは、その扉を潜った時に「ゲスト」となったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼らの中の誰かがアラームを設定していたのだろうか。招待状に記されたパーティーの始まる時間になると、場に合わない音楽が鳴り出した。

そして、一枚の扉から鍵が解錠される音がしたのである。

 

パーティー会場となるだろうその部屋は、やけに小綺麗な、別の言い方で異様に清潔な部屋だった。

壁や照明に凝っているわけではない。簡素なのか質素なのかわからない、シンプルな部屋である。

出入り口は一ヶ所、ゲストたちが入室したあの扉だけである。窓はない。換気扇や空気穴はあるのだろうか。どこか息苦しい気がする。

そんなはずはないだろう。だって其所は「パーティー」の会場なのだから。

 

用意されていたのはいくつかのテーブルとゲストが全員座れる数のイス。テーブルの上には山ほどのお菓子とパン、おにぎり、ペットボトルの飲み物が用意されていた。それこそパーティーができそうな品揃えではあったが、全て近場のコンビニで手に入れることのできる物ばかりだった。

そして、一番奥にはまるで王様が座るかのように豪華な装飾がされたイスが鎮座している。その上では一人の人形が座っているではないか。

それを見たゲストは、あの人形は特別だと感じた。感じたが、人形はただの人形であった。

 

彼らは次々とゲストになっていった。扉を潜り、正式にパーティーの参加者として席についた。

そして、最後の一人が入室した瞬間にそれは起こった。扉に鍵がかけられたのである。

やけに大きな施錠音が部屋全体に響き渡った。それこそが「パーティー」の開始の合図であるかのように。

 

 

 

「ありえねえ」「うそでしょ」「マジかよ」

ゲストたちは驚きの声をあげて、自分達が潜った扉へ近づいた。

扉は引いても押しても全く動かない。ゲストの顔には焦りと憤りが見え始めた。

「ゲームとかじゃないのかよ」「ふざけてる」

ゲストの動きはだんだんと荒くなっていく。扉を叩き、蹴り、イスを投げつける者まで出てきた時だった。

「何か、出る方法があるんじゃないか」「これって脱出ゲームみたいだ」「こんなに食べ物だってあるんだ。もっと時間をかけて考えよう」

「落ち着け」「冷静に」「きっと出られる」

開かない扉の前でゲストたちは希望を見失わなかった。それは彼らが選ばれた「ゲスト」であったからなのか。それとも単純に部屋に閉じ込められた人が複数だったからなのか。

 

 

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