第11話です。
今回は初のヒロイン登場回
一体誰が出てくるのか?
それではどうぞ!
師匠のところに越して来てかれこれ三十と数日経った。曜日とか暦とかが分からないので適当にそこら辺に落ちている木片を集めダガーで線を刻み日数を数えている。
相変わらず貧乏な生活をしているが、何とか収入を得られる様にはなった。一つは露天商の集まる露店街で売り子や運搬のアルバイトを始めたこと。碌な賃金やルーンすら貰えない時もあるけど、肉売りなら肉の切れ端を、草売りなら鮮度の落ちた売れ残りの薬草や果実を報酬として貰っている。
他にも紐とかガラス片とか明らかにゴミだろって物ですら貰っている。流石に生ゴミは貰ってないけどね。だがゴミだとしても使い様によっちゃ大切な資源になる。…筈だと思う。たぶん、きっと…。
2つ目は大ネズミ退治だ。意外にもこの王都では大ネズミの被害が多発しており、使ってない倉庫や食糧庫などでネズミの目撃情報があり、それによる被害が結構あったのだ。大抵はその場所の管理人や所有者が独自に対処しているが、ひどい時では街の衛兵や調香師などが呼び出され毒による駆除が行われることもある。
そうすると当然駆除費用を支払わなければならず依頼者は損しかしない。何故ならネズミの肉だの骨だの皮だのは誰も使いたがらないからだ。不潔だし、もしそんなものを使うのなら安くて清潔な畜産の肉や素材を使うからだ。
そんなところに俺は目をつけた。
いかにネズミとてそれは一頭丸々の獣肉という資産。これがタダで手に入り、しかもネズミが宿しているルーンは独り占め出来る。討伐した際のルーンは二桁くらいのごく僅かなものかも知れないが、百匹倒せば四桁ルーン手に入るのだ。濡れ手に粟とは正にこのこと、死中に活を見い出すのだ。
そんな思惑を胸にアルバイト先の露天商の方々にネズミの死骸の処理も含めて無料でやるから紹介してくれと方々に頼み込んだ。最初は忌避の視線を送られたが、それでも数件の依頼を紹介してくれた。
一つの依頼につき大体2〜3匹、多い時には最大5匹くらいの大ネズミが現れた時もあった。
流石に1人で手に負えない時には師匠に頼み込み、師匠の魔術で駆除して貰ったときもあったが、無報酬と聞いて憤慨しキツめの説教を喰らって以来、ワンコ君に協力を仰いでいる。ワンコ君は日頃の鬱憤を晴らせるのと新鮮なご馳走にありつけるとの事で尻尾をブンブンに振って喜んで協力してくれる。
そして倒したネズミの死骸の処理であるが、先ずは頚動脈を裂いて血抜きをしたのち皮を削ぎ、内臓を抜き取って骨から肉を削ぎ落とす。削ぎ落とした肉は天日干しにして乾かし、骨と皮は別々の壺に入れて煮込む。…別にコレは食べる為ではないよ?
ネズミ肉は天日干ししてある程度乾かしたあと燻製にしてワンコ君の主食となるのだ。
骨を煮込んでいるのは膠を取るためだ。膠は人形兵を修復するために必要な素材の一つとして思案した。
それは人形兵をどうやって修復しようかと考えていた時だった。プラモ程度なら趣味としてある程度は加工出来るが、俺は今も昔も木工の技工とか技術とかはないので一から木材を削ってパーツを作るとかは出来ない。
最初はどこかで棍棒とかそれなりの長さの棒切れを手に入れて来て義足として欠損した足に取り付けようかとも思ったが、どうせなら綺麗に仕上げてやりたい。美少女プラモはあまり作ったことはないが、人形兵はいわば1/1スケールの超巨大美少女プラモ。どうせ作り直すなら完璧なものを作り上げたい!と前世のオタク魂が沸々と燃えあがっていた。それにどうせラニ様エンドとか美少女と添い遂げることなんてないし、前世で彼女出来なかったんだからこっちでも出来るはずないしね。なら人形でも良いから美女を侍らせたい。前世では理解できなかったが某バーチャル歌姫と結婚した外国人の気持ちが分かるというものだ。
それに人形兵本体も経年劣化でパーツのあちこちにヒビ割れや欠けが目立つし、特に両膝の摩耗と損傷が著しかった。何かパテのようなもので塗り固めた方が良いのではないか?と思ったのだが、あいにくパテの作り方などわからない。プラモならランナーを溶剤で溶かしてパテにするんだろうが、木材を溶かす物質なんてこの世界じゃ腐敗の毒沼しか知らん。てかそんな危険物質使えない!
接着剤、接着剤、と考えていたらふと、前世の記憶で雛人形職人の高校男子に恋をするオタクに優しいギャルの話を思い出した。そう言えば雛人形とかの和人形の塗料って何使ってたかなと考えて居たところ、天啓のように思い出した。そうだ、膠だ!動物性ゼラチンだ!と。
ということで、人形兵修復に必要な素材として膠を集めるため、駆除したネズミの死骸を煮詰めゼラチンもとい膠を抽出しているのだ。残る皮は同じ膠を抽出するのもそうだが、毛皮や羊皮紙の代替が作れないかと思って試している。確か植物に含まれているタンニンが皮を柔らかくするとかしないとか。
とりあえず適当に草木や売れ残りの薬草とかをぶち込んで壺でぐつぐつ煮込んでいる。因みに壺は露天商の商人さんから頂いたごく普通の壺だ。よく褪せんちゅがローリングで壊してるやつ。耐衝撃性が紙なのかな?
始めた初日はルンルンにやる気があったけど、あまりにもひどい匂いですぐにやる気が削がれた。うんざりだ、コイツの匂いは、臭すぎる。師匠からも怒られた。そりゃそうだ。
だから今では両方の壺に大量の薬草やら何やらをぶち込んで少しでも匂いが減るよう工夫している。因みにやってる場所は師匠ん家の裏手である庭とも言えないくらいの微妙な広さの空き地だ。手摺りが付いてて眼下には王都の街並みが垣間見える。家ってそこまで高さのある家じゃないのね。
そうして、ネズミ退治と死骸処理で集めた膠と煮込んだ骨を焼いて細かく潰した骨の灰、露天商アルバイトとネズミ退治で偶然にも集めた木屑を用意して準備は完了した。これより人形兵修理用のパテの作成に入る!
先ずは木屑をツール鞄に入っていたすり鉢とすりこぎを使ってよくすり潰しながらこねる。
そして木屑の粒が小さくなり、おが屑よりも細かく擦り胡麻くらいになったら溶かした膠を少しずつ入れ練ってゆく。根気と力のいる作業だ。もう手が痺れて来た。飽きそう。
そうして生地?がモッタリして来たら骨灰を入れて色と硬さを調整していき…出来た!(ご〜ま〜だ〜れ〜!)
今回作ったパテは人形兵のヒビ割れを修復するように少し弛めに作った。丼一杯分の量だがおそらく足りるだろう。
俺は地下室から人形兵を抱えて持って来た。そのまま人形兵を空き地に座らせ、ヒビ割れている所を中心にパテを満遍なく塗り込んだ。
意外と均等に塗るのが難しい…!
どうしても指の後が付いてしまう。塗膜が厚すぎるのか?
俺は指で塗るのを諦めて掌全体で塗料を染み込ませるように擦り付けた…。
「ふぃ〜、こんなもんかな。」
ようやく塗装作業が終わった。塗料も何とか足りて人形兵は全身真っ白に染まった。最後の仕上げに残った骨灰を人形兵の全身に振りかける。辺り一面真っ白になってしまったが、これで人形兵の体表に僅かに付いてしまった指紋の跡も消えるだろう。
………。
……。
…!
いっけねぇっ!?今日は脂売りさんの仕事の手伝いする日だった!
俺は慌てて露店街に走り出した。
ーーその後ろ姿を見つめる小さな人影に気付かぬまま。
脂売りさんからは大層叱られた。
仕事の時間に遅れたのもそうだし、商品の脂に塗料付きの手で触ったため商品が汚れたりして売上が全くなかったのだ。せめてもの詫びにと根脂を大量に買って、今日の収入はなし。今後は脂売りさんは雇ってくれないだろう。とほほ、仕方ない、この根脂で石鹸でも拵えるか。
そんな感じで師匠の家までトボトボ歩いていると、周囲の異変に気付く。周辺に全く人影がなく何処か薄紫色をした霧が辺りに立ち込めていたのである。
…これはやばい。直感的に悟った俺は師匠ん家の裏の空き地に駆け出した。とりあえず人形兵だけでも片付けなければ!
そんな考えが命取りだった。
空き地に入ると、人形兵の前にしゃがみ込む1人の少女の姿があった。
地面に付く程の長い髪は薄紫色に染まり、その顔は横顔からも分かるほどの絶世の美少女だった。
「…ねぇ、この人形ってあなたの?」
俺は余りの事態に腰を抜かしてしまった。開いた口が塞がらない。
なんで、なんで、
なんでトリーナが居るんだよぉぉ!!!!
薄紫髪の少女は天真爛漫な笑みを浮かべて俺に微笑みかけていた。
如何でしたでしょうか?
野生のデミゴット、トリーナちゃんの登場です!
トリーナ/ミケラは永遠に幼い宿痾を秘めている設定なので年齢を気にしないで出せるし、本編テキストフレーバーでも色んな所に出没しているキャラだそうなので、本編ヒロインキャラで1番出しやすいキャラかなと思い登場させました。
主人公ライバルはティエリエ君になるのかも?
では、次回もお楽しみに!