モブ黄金の一族に転生しました。   作:蜥蜴の隠者

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第12話です
続けて第13話も投稿予定ですのでお読み忘れのないようご注意下さい
それではどうぞ!


第12話 心が折れそうだ、助けてくれ…!

 

「…そんなに怖がらなくてもいいじゃない♪わたし何もしないよ?」

 

腰を抜かしたまま茫然として固まる俺にトリーナは正面に向きなおり微笑んできた。

 

「…ぇ、い、ぃゃ、その…誰、ですか?」

 

俺はキョドりながら辛うじて応える。…やばい、確かに可愛い。こりゃティエリエ君が心を奪われるわけだ。だがそれ以上に怖い!正に蛇に睨まれたカエルのような心地で全身の毛や皮膚が逆立つような緊張感を感じる…!これが本物のデミゴット、いや、神に最も近いとされる神人の放つ覇気か…!

 

「私トリーナ!ちょっとこの辺に遊びに来たら、あなたが面白そうなことしてたから声をかけたの!ねぇ、何してたの?お人形さん遊び?」

 

トリーナは正に少女といった雰囲気の、屈託のない天真爛漫な笑顔で問いかけてくる。…此処は素直に答えておくか。やましいことはしてないし。

 

「…師匠から譲って貰った人形兵の修理をしてたんだよ…。経年劣化でヒビ割れてたり、所々欠けてたから」

 

「…ふーん、そうなんだ!所でお師匠さんって何のお師匠さんなの?」

 

「…えっ?…そ、それは、魔術の…」

 

「え!魔術使えるの?すごーい!トリーナ魔術使えないから凄いな〜!ねぇ!使って見せてよ!トリーナ、君が魔術使ってるところ見たいなぁ!」

 

トリーナは両手を合わせて目をキラキラと輝かせてお願いしてくる。

 

……くぅっ!ツラァい!めっちゃツラ過ぎる!前世の、前世のトラウマが蘇るっ!中学高校のカースト上位でそれほど仲が良くも会話したこともないギャルに根掘り葉掘り質問されて上手く答えられないコミュ障トラウマが蘇るぅ‼︎

 

やばい精神力が持ってかれる!いわばFPの毒沼だぁっ‼︎

 

「…ぃゃ、あの、まだ使えません…」

 

「…えー、そうなんだぁ、つまんなーい」

 

トリーナは態とらしく落胆の表情を浮かべる。…ぐぅ!コレが、コレが辛過ぎる。特に何もしてないのに、いや何も出来ないからこそ落胆されて傷つくガラスのマイハート!…あぁ、心が折れそうだ…。

 

「…ところでさぁ、君、なんでトリーナのこと知ってるの?」

 

予想外の質問に俺は焦燥と困惑を禁じ得なかった。

 

「いや、あの、なんのこと?」

 

「さっきの驚きようはさ、私がトリーナだって知ってるからでしょ?"こんな所"に何で、"わたしみたいな人"が居るんだ?ってね。…私ね、"トリーナ"の姿で出る時はいつもこんなふうに微睡の霧を出して人に見られないようにしてるんだぁ。それ以外は"ミケラ"の姿だから、他の人に見られることないんだよ。だから、君が私のこと"トリーナ"だって知らないとそんな反応しないと思うんだけど、どうかな?ねぇ、教えて、なんで"知ってるの"…?」

 

トリーナはいつの間にか幼子のような天真爛漫さは消え失せ、妖艶で蠱惑的な声色で俺に語りかけてきた。

心なしか瞳孔は紫色に光り輝き、髪の毛が風も無いのにユラユラと靡いている。それに、声が、耳元で囁かれてる様な、何だコレ?ASMR?…やばい、魅了の力、使われているぞ…このままだと、全部、話しちゃって…殺され…ダメだ…お…れ…

 

意識が薄れゆき、全てを話してしまいそうになったそのとき、突然何かを打ちつけるような大きな音が響いた。突然のことにトリーナも小さな悲鳴をあげて振りかえる。そこには残った右腕を出鱈目に振り回して暴れる壊れた人形兵の姿があった。

 

何度も何度も、右腕を大きく回転させ、狂った様に空き地の地面に掌を叩きつけ、土くれか、人形兵のパーツなのか分からないが破片を飛び散らせる。

 

突然の出来事にトリーナも俺も身を強張らせて身動きが取れなくなり、人形兵は腕を振り乱しながら膝立ちすると、ちょうど火の巨人の第二形態よろしく横転しながら移動しトリーナと俺の間に立ちはだかった。

 

人形兵は振り回していた右腕を後ろに回し、そっと俺の身体に触れた。そして脇の下に申し訳程度に生えてる両二の腕を命一杯広げてトリーナに威嚇した。この時俺は、この人形兵が俺を護っているのだと瞬間的に理解した。恐怖に縮こまっていた心に暖かな火が灯るような心地だった。魅了の力に微睡んでいた意識も吹き飛んだ。

 

魅了の力が失せ気力を取り戻した俺はキッと鋭い視線をトリーナに送る。俺には少なくともこの人形兵という仲間がいる。2体1なら怖くない!怖くないぞ俺!と自分の心を鼓舞する。

 

俺の変容に気づいたトリーナは気を取り直し、2体1になったこの状況を把握したが、余裕の笑みを浮かべていた。

 

「…ふ〜ん、中々度胸あるじゃん君。私相手にそんな目で見るなんて。褒めてあげるよ?人形越しなのがちょっと格好悪いけどw」

 

トリーナは嘲笑を浮かべた。…くぅムカつく!なんだあのメスガキフェイスは!分からせたくなる!

 

「…う、ぅううるさい!例えデミゴットだからって同じ体格のアンタ相手なら2体1の方が有利だ!それにアンタの身体の弱点も知ってる!」

 

苦し紛れの言い返しにトリーナが目を細める。表情が僅かに苛立っている。

 

「…弱点って何よ?アンタみたいな情けない男に何が出来るっての?」

 

「アンタの身体は雌雄同体!つまり金的と浣腸のダメージは普通の男児や女児よりも2倍以上ダメージを受ける!股間を集中的に攻撃すれば俺にも活路はある!」

 

「うっわ、アンタ最低、あり得ないんだけど。引くわ〜」

 

トリーナは下腹部を隠すように身を捩り、侮蔑するような視線を俺に向けて来た。…そうそう、その目だ。オタクを貶すギャルの視線。そっちの方がチー牛の俺には耐性はある!

 

「アンタこそ人ん家不法侵入した挙げ句、睡眠霧で強制的に眠らせていたいけな少年男児を洗脳強要して来ただろうが!それにアンタそのなりだけど絶対俺より年上だろ!そこら辺の若い女の子拐かす不埒者と変わりないじゃないだろそんなの!この変態年増ロリショタ!俺じゃなくてゴッドウィンとかラダーンにちょっかい掛けろよ!こんなとこ来んな!帰れ帰れ!」

 

俺が捲し立てるように言い放つとトリーナの顔は当然怒りに震え、すると髪の毛の生え際が薄紫色から金髪に変化し出した。マズイ!コレはまさか!?

 

「オイお前!僕が変態年増ロリショタってのはどういう意味だ!僕は関係ないだろ!?どうして初対面のお前にそんなことを言われなきゃいけないんだ!」

 

ぬわー!今度はミケラが出て来た!だがこの俺、こうなったからには引かぬ!媚びぬ!顧みぬ!転生厄介オタクに敗走はないのだっ!

 

「止めなかったアンタも同罪じゃこの色ボケ男色野郎!それにそっくり返すぜその言葉!どうして初対面の俺が強制睡眠洗脳されなきゃならんのだ!睡眠はトリーナとして魅了はアンタの能力だろミケラ!こんないたいけな少年である俺を2人がかりでいいようにしようだなんて、強姦魔の誹りを受けても仕方ないだろ!」

 

「いくら何でも言い過ぎだろ!?君の身体になんて興味ないよ!?大体なんで僕がラダーン兄様を好きなこと知ってるのさ!トリーナとマレニアにしか言ったことないのに!?」

 

ミケラの顔は羞恥と困惑で取り乱している。

 

「あぁもぅ面倒くさい!いい加減帰れよアンタら!こんなところ2度と来んな!アンタらと俺は棲む世界も身分も違うの!俺をアンタらの世界に巻き込むな!迷惑だ!暇つぶしなら他でも出来んだろ!そんなことしてる暇あるんだったらマレニアの腐敗の宿痾治す方法探して来いよ!さぁ!出てってくれ!」

 

俺は敷地外に指を指してミケラに出てくようにと言い放つ。

 

ミケラは今度はキョトンとした顔で「どうしてマレニアのことも知ってるのさ…?」と俺に尋ねてくる。ああ、本当に面倒くさい。…でもマレニアの宿痾は可哀想だと俺も思うからなぁ。少しヒントをあげるか。

 

「腐敗を封じた剣士の伝承にこうある『停滞はやがて淀みとなり腐りゆく。常に流れ行き留まることなかれ。』実際に腐敗の女神が封印されている地下の腐れ湖の更に下にある暗黒の流星アステールのいる地下湖の水はとても澄んで透き通っていて腐敗の毒は一切見当たらないらしい。流水の力が腐敗を抑制するんだよ多分。だから毎日滝行でもしたらいいんじゃないか?そして腐敗の毒は凡ゆるものを腐食させるっていうんだから恐らく酸性なんだと思う。反対のアルカリ性の性質を持つ石鹸を使って毎日洗えば腐敗を洗い落としていって完治はしなくても症状は抑制できるんじゃないか?最後に火の祈祷で"火の癒し"ってのがあって、毒とか腐敗の状態異常を抑制する効果があるらしい。それ全部試してみたら?知らんけど。」

 

俺は一気にヒントとなる、というか俺の思いつく解決法をザッと述べた。ミケラは最初豆鉄砲を喰らったような表情をしていたが、だんだんと険しい顔つきとなり最終的には顎に手を当て考え込むようになった。

 

すると、生え際は薄紫色に染まってゆきミケラの人格は鳴りを潜め、トリーナの人格に戻っていた。

 

「…本当、なんなの君?」

 

トリーナは猜疑心に満ちた視線を俺に向けていた。さっきまでのふざけた雰囲気ではなく、殺気すらも感じる鋭い雰囲気が辺りに満ちる。だが吹っ切れて恐怖を感じなくなった俺には何のこともなく答えた。

 

「…知らね。俺にもわかんないよ。ただ生まれた時から知っていた。それだけだよ」

 

「…そういうことにしてあげる。今日は特別に帰ってあげるわ。ミケラもこうなったら直ぐに帰って確かめたいだろうしね。でも、もし君が適当なこと言ってたら、私は承知しないわよ。マレニアは私にとっても可愛い妹なんですから」

 

トリーナはそう言い残すと薄紫色の霧の中に消えた。…どうやら去っていったらしい。

 

俺は一気に緊張が抜けて再び腰を抜かした。…やってしまった。何て最悪なファーストコンタクトだ。まさかデミゴットで一、二を争うほど面倒くさい奴らと出くわすとは。

 

これから俺、どうなるんだろう?まさか黒き刃とかがやって来て俺を殺すのだろうか?

 

…考えても仕方がない。とりあえず今日は寝よう。どうせこの時間から夕飯だの魔術の修行は身に入らない。俺はもう疲れたよ。それよりも、俺の命の恩人にちゃんとお礼を言わなきゃな。

 

「…ありがとう、人形さん。あなたのおかげで助かりました。俺を護ってくれて、ありがとう。」

 

俺は人形兵に感謝の言葉を告げると、人形兵は一度だけカタカタと身体を震わせた。多分返事をしてくれたんだと思う。

 

それっきり人形兵はまた動かなくなり、俺は人形兵を背負って地下室へ戻っていった。

 

今日はいろいろありすぎた。

明日はどうか平和な1日でありますように。

 




というわけでトリーナ/ミケラ遭遇回でした。
私のイメージではトリーナは気の強いギャル、ミケラはトリーナに頭が上がらない僕っ娘って感じになっております
次回は趣味回になっております。お楽しみに!
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