第13話です。
続けて投稿しましたので12話のお読み忘れのなきようお願いします
それではどうぞ!
次の日、師匠にトリーナに遭遇した話をした。師匠は当初信じられないと言った反応をしていたが、トリーナが現れた時間帯に寝落ちしていたことを指摘し、それがトリーナのデミゴットとしての能力だと伝えると何だか納得したように頷いていた。
なんでもそのとき、耐え難いほど甘美な微睡に誘われたと話し最後に見た光景は窓の外に満ちる薄紫色の霧だったそうだ。
師匠は洒落にならないほど怖い話を聞いた様にゾッとした表情をし背筋を強張らせていた。そりゃそうだ。自分ん家にデミゴットが現れたんだ。自宅前に羆が出た並に怖い。俺はトリーナと対峙して心底疲れたからバイトと修行は暫く休みたいと伝え、師匠も了承してくれた。
俺は昨日のまま放置していた壺煮込みネズミ肉を片付けるため裏庭の空き地に赴いた。
結果としてネズミ皮はダメになっていた。ぐずぐずに溶け切って毛だけが水面に浮いていた。非常に臭い。悪臭がする。触りたくない。放置したい。
…そんなこと言っても事態は解決しないので、ネズミの毛と脂、ゼラチン質を回収して煮汁と中身を近くの排水路に流した。多分地下に蠢く腐肉とかナメクジとかが片付けてくれるだろう。骨を煮込んでいた方は脂とゼラチン質を回収し、骨はよく焼いて中身の煮汁は同じく捨てた。そんで回収した骨灰と脂、ゼラチン質を持って地下室へと移動した。
今日は1日地下室に篭って人形兵の修復や昨日買った根脂や獣脂を使って石鹸を作ったり、ネズミの毛を使って鬘を作ったりをしようと思う。
先ずは人形兵の修復用に骨灰パテを作っていく。先ほど作った骨灰をすり鉢に入れてそこにゼラチンを加えて擦り漕ぎで練り上げていく。そしてネットリモッタリとしたペースト状になったら完成。今回は木屑を入れてないのでより滑らかな質感がある。これを人形兵に塗りたくる。
土で汚れてしまった部位を中心に新たに塗り上げていく。正面を塗り上げたら仕上げに骨灰をふりかけて暫く置いて乾かし、うつ伏せの状態にして裏面も塗りたくっていく。可動の阻害をしないように出来るだけ関節部分は塗らずにする。
しかし、経年劣化なのか昨日の戦闘?のせいなのか、右脚部の損耗が著しいな。特に足先のない右脚は膝小僧の擦り切れ具合が酷く、脛が折れたであろう断面はひどい有様だ。
これは木屑パテを作って塗り足すしかないな。今度つくろうか。…しかし、なんだか日焼けオイル塗ってるみたいで変な気分になりそうだ。
さて、両面塗り終えたのでもう一度座らせ今度は右手の修復に入る。人形兵の手を取りよく見ると…あちゃ〜、こりゃだめだ。薬指と中指の先っちょが吹き飛んでる。パーツがないと直せないなこれは。とりあえず傷薬の軟膏を塗る様に指先にパテを塗り込んだ。これで全身塗りたくり終わったな。また暫く放置して乾燥させようか。
さて、次は石鹸作りだ。エルデンリングのゲーム本編では地下のノクローンだかノクステラで取れる油の性質を持つ蕩けたキノコを使うが、ようは脂さえあれば石鹸は作れるはずだ。よって根脂を使って石鹸を作る。
とりあえず根脂を火にかける。鍋は雑兵の鉄帽子、火種は蝋燭の火だ。確か小学校の理科の実験で石鹸だか蝋燭だかを作るときはアルコールランプを使っていた気がする。
根脂がだいぶ溶けてきたので、骨灰と水を少しずつ入れ練っていく。ついでに香り付けもしたいので予め用意しておいた黄金のロアの実とアルタスの花の搾り汁も加える。これはバイト先でいつも貰う廃棄品だ。痛んでいたり虫喰いがあったりして降ろし先から選ばれなかった物を貰っている。
そして、ある程度練り上げたら火から下ろしてそのまま放置する。2日間くらい置いておけば多分出来るだろう。雑兵の鉄帽子は碌な戦闘がないのでフード部分を取り払って鍋として活用させてもらっている。今では使い勝手のよいフライパン扱いだ。
さて、最後にネズミ毛を使った鬘作りだ。正直鬘の作り方なんてわからん。だが何となく、布地に毛を取り付けて、ってことまではわかる。まずは毛の選別からやっていこう。
ネズミの毛は大小様々、癖毛や癖のないやつも様々だ。だが色合いは白、灰、黒と大体3色だそれらを先ず選別していく。…根気のいる作業だ。くしゃみして毛を全部吹き飛ばしてしまいそうで怖い。…暫く経って、毛の選別が終わった。
選別したのち、癖毛のない比較的真っ直ぐな毛を色別に分けて束ねていき大きな房にして纏める。残りの縮れ毛や癖毛は纏めてフェルト布、つまり不織布に加工するつもりだ。
分けた白、灰、黒、そして斑色の毛は黒が1番多く、次に斑色、灰色、最後に白色だ。灰色と白色は背中の鬣の部分の毛だな。これは黒をベースに作っていった方が良さそうだな。
イメージとしては前世で見かけた時から虜になってる病みかわ系ファッションな髪型だ。学生時代は多いにトラウマを受けた汚ギャルとかガングロギャル達だったが、社会人になりふと街中を見た時に出会った病みかわ系ギャルの何と美しいことかと感動を覚えたものだ。
中身は同じギャルの筈なのに、そのフリフリとした袖を纏った見た目は清潔感や清楚さがあり、ゴスロリほど派手ではないにしろ目に映える輝きがあった。特にパンキッシュないしロックな意匠を取り込んだ、な、なんだっけか、ゴスパン?な衣装を着込んだ彼女達の鋭い視線が映えるファッションにコミュ障チー牛野郎だった俺の心は撃ち抜かれたものだった。そんなわけで、俺は前世で果たせなかった病みかわ系ファッションを愛でるため人形兵に病みかわ系ファッションを施すと心に固く決めていた。
目標としては某新世紀な世界で汎用人型決戦兵器を駆る白いパイロットスーツを着ているほうの少女の髪型だ。いや、某路上格闘6の韓国人テコンドーファイターの髪型も悪くない。髪色は白と黒の縞柄というかマーブル柄が特徴的な古美術品に詳しい某Vtuberをイメージとする。俺が転生する寸前、現世で1番流行っていたであろう髪色だった。と思う。多分。
仕分けした毛の大房を小さな房に分けていく。小さな房にしたら裁縫道具で紐に縫いつけて暖簾のような形状にしていく。何度か人形兵な頭に巻き付けて毛色の位置を確認修正しながら調整していく。
そうして取り付けた毛房付きの紐を雑兵の鉄帽子の取り外したフード部分に螺旋状に縫いつけていく。最後に頭頂部のつむじ部分に穴を開け残りの毛房を縫いつけて手作り鬘を完成させた。
髪型は…当初の目標の中間で微妙な感じになった。まぁ、前髪はあとで整えるとして、白と黒のグラデーションはまぁまぁ良い感じになったからよしとするか。
出来上がった鬘を人形兵に被せる。
…まぁまぁ、まぁまぁ良いが、やっぱり後頭部の形状が不自然だなぁ。人形兵の頭部形状はゲーム状だと兜をかぶっているので分かりづらいが、兜の中身は百均のデッサン人形みたいな形状をしている。なので頭部は面長で後頭部の膨らみが圧倒的に足りない。顔は正に平たい顔族である。…後頭部は…残りの縮れ毛や癖毛を纏めて詰め物にするとして…詰め物だけだと歪な形になるか…?
などと色々考えていたらもう夜になっていた。…今日はこのくらいにするか。と思い地下室を出て一階に向かった。
師匠とワンコ君と一緒に夕飯を摂る。今日はそぎ肉の香草煮込み。師匠が露店街の屋台で獣肉の香草焼きの肉だけ買って来て自宅の料理用の鉄釜で水を入れて煮込んだものだ。
当然香草焼きよりは味は薄いが、疲れた身体にじんわりと染み込むような優しい味がする。
師匠からは明日は仕事に行くように言われた。どうやら露店街の商人さんが俺が仕事に来ないことを心配しているようで、脂売りさんは少し言い過ぎたと落ち込んでいるそうだ。
顔を見せて安心させておやりと師匠から優しい言葉をかけられる。ゲームの世界とはいえ、必要とされるのは嬉しいもんだ。そして、帰ったら魔術の修行をするように言い渡された。
そろそろ本格的な魔術の修行に入るそうで魔術の杖と魔術に必要なある物を渡してくれるようだ。多分メモリストーンかな?あれないと魔術使えないしね。
夕飯を終えて就寝時間になる。俺は地下室に戻り手前の広間の奥にある小部屋、かつて師匠と師匠の奥さん、つまり祖母が寝室として使っていた部屋で就寝する。
部屋の内装はあまりいじらない様にしている。最初は余りに埃が充満しており、またネズミの糞尿もあったので全部外に出して干して叩いて綺麗に掃除したが、師匠と奥さんの思い出の場所であるので崩したくなかったのだ。
部屋の左右には天蓋付きのベットが置かれておりサイズはダブルサイズくらい。かつては此処で祖父母と実母が寝ていたのだろうと思うと、しんみりとした気分になる。部屋の中央には光源として巨大な輝石の結晶が置かれ、静かな淡い光を放っている。部屋の最奥には宝箱があり、師匠の思い出の品々が詰め込まれている。
俺は市民の靴を脱いでベッドに寝転んだ。因みに今の俺の服装は木枷を外した市民の上服(軽装)だ。頭冠は外してる。
…明日は仕事かぁ、前世では嫌だったけど、今世では楽しかったなぁ。
明日も…平和な1日に…なりますように…。
そう願いつつ、俺は眠りについた。
いかがでしたでしょうか?
気持ち悪いオタク全開で書いてますので気分を害した方がいれば申し訳ない。
時間は露天商人多数登場、そして主人公、遂に魔法を使う!
次回もお楽しみに!