モブ黄金の一族に転生しました。   作:蜥蜴の隠者

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お待たせしました第19話です。
とりあえず古竜戦役完結編でございます。
次回は後日談になりますかな?

それではどうぞ!


第19話 陰湿なイジメとはな…しかし、反撃の時間だ。

 

トリーナ、ミケラ、マレニアの連合軍?って言っていいのか?に保護という形で強制連行されることになった俺は、取り敢えず治療を受ける事になった。

 

初めて受ける祈祷は温かく、そして優しかった。現代風に例えるなら…うーむ…何だろうか?上手い例えが思いつかない…。使い捨てカイロ?とか、アンメ…何だったか、名前が思い出せない、とにかく肩に塗るアレが効いてきた時のジワァって、感じか?あとは、一番風呂で長風呂して肩の凝りが取れるような感じ?的な、まぁそんな感じ。しかし、薬物的な依存性はない。これは良い効果だ。俺も祈祷を学びたくなった。

 

しかし、祈祷を施してくれた聖樹兵と思わしき兵士は俺に対し呪詛の言葉を唱えていた。曰く、トリーナが俺と遭遇して帰ってきてからというもの事あるごとに俺の話をするのだという。しかもトリーナやミケラを変態だの強◯魔だのおばさんだの罵って来ただの言い少なくとも今此処に集まっている人達は俺に良い感情なぞ持ってなく殺気を抱いているという。特にマレニアとレダは特に殺気立ち、トリサー名誉会員であるティエリエに至ってはトリーナが見せたことのないデレ方を見せているといい発狂し一度精神崩壊していたのだそうだ。

 

何でも治療してくれた聖樹兵曰く「僕にはちょっと歳上のお姉さんキャラムーブで接するのに俺の話になるとツンデレキャラムーブをする…。二言目には『べ、別にあんな奴どうでもいいんだからね!気になったりしないんだからね!』と頬をほのかに染めて言うんだ…。僕が先に好きだったのに!僕が先に好きだったのに!僕が(ry」

 

おいたわしやティエリエ君、とその聖樹兵は嘘泣きしていた。しかし、嘘泣きしている中の俺を見つめる視線に籠っていた殺気は本物だった。

 

…や、やべぇ。此処で死んでいた方がマシだったんじゃねぇの?周りを見渡すと俺とトリーナ以外の全ての人が殺気を送って来やがる…!流石にトリーナもこの異常事態に気付いていて「な、何かごめんね〜(汗)」と申し訳なさそうに謝罪し、その事で更に俺は殺気を集めることになった。目が口ほどにモノを伝えてくる…!『何トリーナ様に頭下げさせとるんじゃワレェ?』と…か、勘弁してくれぇ!?

 

その後もトリーナとマレニアの大名行列の如き練り歩きは続いた。倒れている者には聖樹兵の祈祷師が治療し、凶暴な飛竜には貴腐騎士がサイスから八つ裂き光輪をお見舞いし殲滅する。

 

俺は残りの兵士に腕を掴まれ包囲されて歩かされる。時に足を踏みつけられたり掴まれた二の腕を思いっきり常られたりメッチャ嫌がらせを受けていた。流石にトリーナも兵士たちに苦言を呈するが平謝りしたのち人員が入れ替わり、また同じことをされの繰り返し。…流石に俺も恐怖心より怒りが優った!

 

「あぁ、すみません。もういいんで、連れ歩いて貰わなくても大丈夫です。離して、貰って、いいですか?」

 

俺は振り払おうと腕を払おうと悶えるが微動だにしない。流石現役軍人。歯が立たないね。だけどそれがどうした?一回死を覚悟した人間はなぁ、高々オタクの殺気如きに負きゃあしないんだよ!

 

俺が不審な動きをしたということで俺を取り押さえていた聖樹兵たちがこれはしたりと俺を地面に押さえつけた。周りの兵士達は己の得物に手を掛け、今にも斬りかかろうと構える。

 

「ちょっと待ってよ皆んな!何してるの!?そこの2人、彼を離しなさい!」

 

流石の事態にトリーナも声を荒げる。しかし、マレニアやティエリエに遮られる。

 

「お下がり下さいトリーナ様!やはり此奴、トリーナ様に近づき害を成そうとしております!ここは我らに任せて御身はお隠れ下さい!」

 

レダが剣に手を掛け叫ぶ。その言葉に、俺の堪忍袋の緒が切れた。

 

「害するだぁ!?ふざけんじゃねぇ!害して来たのはテメェらだろうが!人様の腕や足ぃネチネチネチネチ踏みつけやがって!陰湿にも程があるんだよテメェら!それでトリーナ様だのミケラ様だの親衛隊ってか?ハンッ!笑わせんじゃねぇよ!テメェらのその狂信が主を苦しませんだよ!クソがっ!…へっでもしょうがないよなぁ!えぇ?部下の失態は上司の教育が悪いんだからよぉ?お前らが人様のことネチネチネチネチ痛めつけんのも普段からの教育の賜物なんだよなぁトリーナ様よう?それともミケラ様かぁ?こんな陰湿な躾するなんて随分ご立派な情操教育をなさっていらっしゃいやがりますねぇ。…変態って評価は訂正して熨斗付けて謝罪してやるよ!テメェらは変態通り越して人間の屑どもだ!忌子やしろがねにも劣るクソ野郎どもだ!くたばりやがれこの阿婆擦れどもが!!」

 

俺の罵声に一瞬場が白けた。そして火山が噴火するように怒声が沸々と起き上がった。兵士たちは全て自身の得物を抜き去り今にも俺に刃を突き立てようとワナワナしてる。俺を地面に押し付ける力も強くなり、顔が砂地に埋まる。

 

辛うじて、見上げた景色にトリーナが涙を浮かべて憮然とした表情を浮かべていた。

 

「…き、貴様ぁ!一度ならず二度までも!ミケラ様とトリーナ様を侮辱したな!その無礼、万死に値する!その首掻き切ってやる!」

 

レダの激昂が迸る。周囲の声も肯定の声を荒げる。その怒声がピタリと止まる。マレニアが技術刀を掲げた。

 

「…貴公、命が惜しくないと見える。腐敗に冒された我が身に僅かばかりの癒しを齎したことには感謝するが、今し方の戯言、流石に聴き流すことは出来ない。せめてもの情けだ。我が手で斬り捨ててやろう。」

 

マレニアが片翼の構えでジリジリとにじり寄る。俺が逃げられないように聖樹兵の2人は俺を地面に押さえつける。…俺って馬鹿だなぁ。せっかく飛竜から助けて貰ったのに。もう少し生きながらえて、楽しい人生送りたかったなぁ。でも、俺は、俺は悟っちまったんだ。俺が何のために生まれて来たのか、何のために生きているのかを。『やりたいことをやる』ために、俺は生まれて来たんだ。だから、自由を奪われるくらいなら、死んだ方がマシだ。

 

「…クソ喰らえだ。こんな世界。」

 

「…それが、貴公の最後の言葉か?」

 

「…お前の腐敗は、一生治らない、トリーナが、ミケラが、聖樹だかなんだか知らないが新しい律を打ち立てようが、それは叶わない。ミケラは神になれない、ラダーンとも、ゴッドウィンとも結ばれない!お前ら兄妹姉妹は、最後はひとりぼっちで、疎まれて死ぬんだ。それがお前の、お前らの未来だ!」

 

「…減らず口を!」

 

マレニアが激昂し、技術刀を振り抜こうとしたその時、全身が恐怖で強張った。それは俺を取り押さえていた聖樹兵もそうらしく、マレニアも剣を振り抜く途中で止まり震えていた。

 

『…何をしているの?マレニア』

 

頭に直接響くような、甘美な音律の声。しかし、はっきりとその怒気が伝わる。

 

『…ねぇ、皆んなも。何勝手なことしているの?彼を離しなさいって、トリーナも言ってたのに。』

 

力が緩んだ。聖樹兵が怯んでいる。声の主の姿を追って視線を移すと、マレニアの股の間から黄金の長髪が見えた。すぐそこに声の主がいる。

 

「し、しかし、兄様…!」

 

『いけない子だね、マレニア。僕は辞めなさいって言ってるんだよ?…それとも、"私"の言うことが聞けないのか?"お前たち"?』

 

ゾゾッ‼︎‼︎

 

不可視の圧が一気に強まった。地面にヒビが入ったような錯覚と押し潰されそうな威圧感を感じる。

 

バサリ、と聖樹兵たちが倒れた。拘束がなくなり自由の身となった俺は辺りを見渡すとほとんどの兵士が腰を抜かして倒れ込んでいた。中には失禁している者もいるようで、涙と共に股ぐらに水溜りを生ずる者もいた。マレニアでさえ、ワナワナと震えて尻餅をついてしまった程にその者の覇気は強大であった。

 

『…へぇ、君、本当に凄いね。僕の怒気をマトモに受けているのに気絶してないなんて。トリーナも言ってたけど、君の正体、僕も気になるよ』

 

目の前に、怒気の源がいる。

神人。ミケラ。その威容に、言葉を失った。瞳は黄金色に怪しく煌めき、風もないのに、いや、ミケラを中心に風が巻き起こり、髪は後光のように広がり、長い袖は棚びく。その中性的な美貌にはやや困った表情が浮かんでいた。これが、最強の一角、腐敗のマレニアにして最恐のデミゴッドと称された神人の真の姿なのだろうか?

 

『改めて自己紹介させてくれないかな?僕の名はミケラ。エルデの王たるラダゴンの息子。そして、この身に宿るのはトリーナ。僕の姉妹。エルデの王たるラダゴンの娘。僕の分け身。よろしくね。それで君の名前は?』

 

佇んでいたミケラは膝を折り、俺に目線を合わせて尋ねてきた。…吸い込まれそうな、美しい瞳だ。…何もかも、委ねてしまいたくなりそうな、愛おしさすら感じさせる。

 

だが、それはダメだ。それは、"俺のやりたいこと"ではない。

 

「…俺に名前はない。生憎と親に育てられたことはないんでね。名乗る名前は鼻っからないんだこちとら」

 

『…凄いね、君。僕の"魅了"にすら耐えるなんて。君本当に何者なのさ?』

 

「…知らねぇよ。俺だって。でも、一つだけ分かることがある。俺は俺が"やりたいこと"する為に生まれて来た。それだけさ」

 

『…羨ましいな。君が。僕にはやりたいことをやれないんだ。妹の宿痾も治してやれない。それに、この心の内に秘めた想いも遂げられそうにない。君がさっき言った通りね。』

 

ミケラは寂しそうに見つめてくる。

…どうやら、腹を割って話している様だな。ならば俺も、腹を割って話さないと。アンフェアは、"やりたいこと"じゃねぇんだ。

 

「…だったら、その身体を捨て去って仕舞えばいい。アンタらの父ラダゴンは前妻のレアルカリアの女王レナラを捨てる際、あるデミゴッドの魂が宿った琥珀を送った。それは生まれ変わりの秘術に用いる呪具だ。その身体が嫌なら新しく生まれ変わればいい。或いは源流魔術の秘技に源輝石というものがある。魂を輝石に変換して別の肉体に埋め込み身体を入れ替える秘術だ。身体なんて幾らでもあるだろ、アンタの周りの親衛隊が」

 

『…君は本当に、何でも知っているんだね。まるで賢者みたいだ。これからは君のことを"賢者"くんって呼ぶことにするよ』

 

ミケラは呆れたように微笑んだ。

すると立ち上がり、辺りを見渡した。

 

『…謝罪はまた改めて、後日、させてくれないか?今日は時間がない。もうすぐ父様があの巨大な古竜を打ち倒しそうだ。他の古竜もゴッドウィン兄様が倒してくれるだろう。…今度は彼らを連れて行かない。1人で、いや2人で尋ねに行くさ。…君の元にやって来たのは、トリーナの我儘さ。…トリーナは君のことを友達だと思ってる。勿論僕も、君と友達になりたいと思ってる。どうかな?』

 

遠くの方を見遣ると大古竜グランサクスが断末魔の雄叫びを上げるところだった。どうやら世紀の対戦を見逃したらしい。王都に見慣れたオブジェが立ちそうだ。

 

俺は遠くを見つめるミケラに対して戯けたように首を竦めて答えた。

 

「やなこった。まっぴらごめんだ。もう2度と逢いたくない。アンタはアンタの道を行けばいい。けど俺の道はアンタとは交わらない。俺は俺の道をゆく。俺はいつか狭間の地を出て、1人でひっそり、のんびり暮らすんだ。美味いもん食って、寝て、遊んで、楽しく暮らすんだ。誰かのために自分を犠牲にして世界を救おうだなんて真似、俺には出来ない。だから、アンタとは交わらない」

 

ミケラは振り返り、寂しそうに、そして少し恨めしそうに呟いた。

 

『…寂しいな。それに、やっぱり君が羨ましいよ。ズルいなぁ君。僕も、自由が欲しいよ』

 

そう呟くと、ミケラは歩き出した。

 

それに続いて聖樹兵も貴腐騎士も歩き出す。その殆どは肩を落とし、おそらく主君の怒りを勝った事に後悔の念を抱いてのことだろう。…約3名ほど、俺に恨みの籠った視線を返して来た準レギュラー組が居たが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

暫くしてようやっと脅威が去った。

前門に虎、後門に狼なんて諺があるが、今回は運良く急死に一生を得た方だろう。

 

自由市場は壊滅的被害を被ったが、幸い俺の知り合いに死傷者は居なかった。精々獣肉の香草焼き屋のロバが片足を折って荷物が詰めなくなったことぐらい。暫くは店主自ら材料を運ぶそうだ。

 

貧民市場の皆んなも無事だったが、再会して早々、祖霊の民兄妹の骨肉売りの旦那と野草売りの姐さんの強烈なベア・ハッグを喰らい意識と腰を失った。

 

次に目覚めた時は師匠の自宅で師匠とワンコ君、そして自宅も無事だった。気絶した俺を締めた犯人である祖霊民兄妹が運んで来てくれたそうだ。

 

師匠曰く、俺を助けに行きたかったがそれよりも地下室で暴れ回る人形兵を止めるのに精一杯だったとか。どうやら人形兵は俺を助けに行くために地下室の扉を開けたかったが、シャッター式の扉であったため開け方がわからず体当たりを繰り返し、人形兵は戦闘もしてないのに大破状態になっていたと。四肢はあらぬ方向に足指は曲がりに曲がり、結局膠作成用の大壺に人形兵の尻を詰めて身動きを封じたそうだ。そのとき壺を一つ駄目にしたらしい。

 

人形兵の修復に壺の再購入。軽微といっちゃ軽微だけど、痛い出費に頭を抱え、腰痛に呻きながら、俺は今日、王都の歴史に残る大事件の一つ・古竜戦役を終える事になったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

《黄金の一族・ゴドリック邸の地下牢》

 

暗い地下牢の広間、息絶えて間もない飛竜の骸を愛でる老獪の影があった。

 

「…おぉ、共に末裔たる竜よ。お主の力、きっと我を高めようぞ…!…偉大なる父祖よ、我が祖先、ゴッドフレイよ…いつかその玉座に見えん!黄金の君主たる我が、エルデの王に!」

 

老獪は声高らかに己の野望を謳う。

その瞳に爛々と黄金の祝福を激らせながら。

 

地下室にはいつまでも老獪の高らかな笑い声が響いていた。





如何でしたでしょうか第19話
ミケラに救われ一命を取り留めたと言ったところでしょうか。

そして、継ぎの能力以外の主人公の能力の片鱗が現れ始めましたね。

ゲーム劇中ではデミゴッド以外にもエルデンリングのルーンを持つキャラクターが居ました。金仮面卿や糞喰いでしたね。彼らの共通点は強い意志があること。

主人公の"やりたいことをやる"という強い意志がルーンとして現れ始めたのでしょうか?

次回は久々日常回を予定しております。

お楽しみに!
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