モブ黄金の一族に転生しました。   作:蜥蜴の隠者

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大変長らくお待たせ致しました
第20話です。

それではどうぞ!


第20話 おそらく商機!そして、魔術継承の時間だ。

 

古竜の襲撃、古竜戦役から約3ヶ月ほど月日が流れた。未だ街中には襲撃の傷跡が残っているが、着々と復興の歩みを進めていた。

 

特に、王都は空前の古竜ブームが到来しており大古竜グランサクスの亡骸の前には連日多くの観光客で賑わっていた。古竜襲来の際に店側も客側も大いに失われた自由市場においても古竜の集客率は著しく、竜印のタリスマンの様な竜の姿を模ったアイテムが飛ぶ様に売れていった。

 

この商機を逃さぬよう、ベアハッグにより俺の腰を粉砕し連日申し訳なさそうにお見舞いに来る祖霊の民兄妹、即ち骨肉売りの旦那と野草売りの姐さんを捕まえて俺は古竜並びに飛竜のぬいぐるみ作成に着手した。

 

骨肉売りの旦那には適当な角や爪などのアイテムを見繕って貰い、先端を丸めて幼子でも危険がないように加工してもらった。あとはぬいぐるみの生地として柔軟で加工し易く薄い鞣し革の提供をお願いした。

 

野草売りの姐さんにはぬいぐるみの裁縫をお願いした。野草売りの姐さんは俺の見立て通り裁縫が得意で、本来なら難しいであろう鞣し革の裁縫を難なく行ってくれた。

 

ぬいぐるみはテディベアの要領で頭、胴体、両腕、両足のパーツを量産してもらい、そのパーツにふんわり綿を詰め込む手順で作成した。

 

そして俺は、ぬいぐるみに詰め込むふんわり綿の作成に頭を捻ることとなった。本来ふんわり綿の作成にはロアの実を使うのだが、ここ王都ローデイルもといアルター高原では黄金のロアの実しか採取出来ないので必然と黄金のロアの実で代用するしかなかった。

 

さらに通常のロアの実からふんわり綿を作成する方法にも難儀した。俺はふんわり綿を作成するのに必要な放浪戦士の製法書を持っていないので作り方すら分からなかったのだ。しかし、必要な材料とある程度の作成方法の予想は立てていた。

 

ふんわり綿作成にはロアの実が3つと燻り蝶が1つ必要だ。つまり、ロアの実を加熱することが作成の肝だ。要はポップコーンと同じ要領だと推測した。

 

試しにフライパンと化した雑兵の鉄帽子に黄金のロアの実を果肉が継いたまま火にかけてみると、残念ながらぐずぐずに煮崩れ焦げた黄金ロアの残骸が出来てしまった。気を取り直して、今度は果肉を取り除いた黄金のロアの実の種を炒ってみると今度は上手いこと弾けてふわふわの綿が飛び出して来た。香ばしく、また甘い香りの漂うふんわり綿に俺は心の中で勝利を確信した。コイツは絶対売れると。

 

野草売りの姐さんが縫い上げた鞣し革の袋に先ほどの香ばしいふんわり綿を詰め込み、試作ぬいぐるみ第1号が完成した。

 

起毛した鞣し革の滑らかな肌触りと甘く香ばしい香りを放つふんわり綿の組み合わせはまさに致命の一撃であった。骨肉売りの旦那と野草売りの姐さんの祖霊民兄妹もこの感触には魅了されることになった。ガチムチの大男がぬいぐるみを抱いてときめいている姿はなんともシュールな光景だった。

 

試作ぬいぐるみ第1号の開発成功の翌日から俺たち3人はぬいぐるみの量産を開始した。骨肉売りの旦那は鞣し革の在庫のうち起毛した革を全て提供し、装飾パーツである角の作成に注力した。野草売りの姐さんも片っ端から黄金のロアの実を採ってきてくれて、骨肉売りの旦那が提供した鞣し革をせっせと縫い上げてくれた。そして勿論、俺の役割は香ばしいふんわり綿の量産であった。

 

黄金のロアの実を解して果肉と種に分ける。ロアの実というのは大きくしたさくらんぼや梅の実に似ていて真ん中にまん丸の種が一つ入っている。選り分けるのは容易であった。

 

選り分けた種を火にかける。余りに多く入れすぎると雑兵の鉄帽子の用量を超えるし、満遍なく種を加熱出来ないため種が焦げてしまう。俺は鉄帽子に少量の種を入れて炒り、弾けたら綿を回収し次の種を炒るという根気のいる作業を行った。

 

そんなことを数日続けたのち、ついにぬいぐるみの素体が完成したのである。その数実に40体。我ながら、もとい3人とも頑張ったものだ。

 

そしてこのうち20体ずつ飛竜タイプと古竜タイプに仕上げていく。まず共通するパーツとして頭部の一対の角と両眼を取り付ける。角は黒っぽい比較的丈夫で硬い黒革をそれっぽい形に切り出しぬいぐるみのこめかみに膠で貼って取り付ける。

 

それっぽい形というのは某デュエリストが活躍するカードゲームアニメの強靭!無敵!最強!と叫ぶ社長さんの切り札モンスターで嫁たる青い眼の白い竜の頭部の横についている恐らく耳であろうアレの形である。

 

そしてそのうち飛竜タイプには鼻先に骨肉売りの旦那がせっせと加工してくれた角を膠で貼り付けた。

 

最後に眼は丸くくり抜いた黒革を貼り付けて完成だ。これだけでもなんかのキャラクターグッズに見える見える。

 

次に飛竜タイプの仕上げだ。飛竜タイプになる予定のぬいぐるみの両腕に切り出した黒革の皮膜を縫い付けていく。流石にこの大きさの黒革は膠で貼り付けても直ぐに取れてしまうだろう。野草売りの姐さんがコツコツと縫い付けてくれる。

 

出来上がったぬいぐるみに感嘆の声を上げる。どっからどう見てもデフォルメされ直立した飛竜だった。因みに尻尾は胴体作成時にウサギの尻尾のようにぴょこっとお尻から突き出る様な小さなやつをつけている。

 

残るは古竜タイプである。古竜タイプには背中に蝶の羽のような大小一対ずつ計4枚の羽を縫い付ける。こちらも上手く仕上がった。

 

こうして、飛竜のぬいぐるみ20体、そして古竜のぬいぐるみ20体が完成したのである。価格設定は強気に1000ルーンとした。相場は知らんが、ぬいぐるみで獣肉の香草焼きが2個買えるだけの儲けが出るなら満足だ。一体1000ルーンが40体も売れれば総額40000ルーンだ。3人で割っても1人1万3千ルーンは堅い。

 

 

ぬいぐるみを仕上げた翌日、販売を委託した兄妹に売り上げをきくと即完売したという。流石に嘘だろうと思ったが、兄妹の手には4万ルーンもの大金が詰まった革袋が収まっていた。

 

何でも香ばしいふんわり綿の香りにお客が貧民市場に誘われ、ぬいぐるみを見た瞬間その造形に眼を奪われて買って行ったのだという。そのあともゾロゾロと買い物客が香りに誘われて兄妹の露天に訪れぬいぐるみを購入していったのだという。

 

こんなご都合主義なことが本当にあるのだなぁと思いつつ売り上げを山分けすることになった。最初は俺の見舞金も含めて俺の取り分を2万ルーンで良いと兄妹は言ってくれたが、流石に受け取りすぎに思い俺は取り分を1万ルーンにして兄妹に1万5千ルーンずつ受け取るようにお願いした。

 

何故なら今回の材料の提供は殆ど兄妹達によるものだったのだから、材料費分はもらって欲しいものであると思ったためである。

 

兄妹は俺に感謝しつつルーンを受け取り、これからも親睦を深めようと軽い抱擁を交わしてその日はお開きになった。

 

 

「おぬし、何か忘れとりゃせんかの?」

 

その日の夜、いつものように師匠こと爺ちゃんと夕飯を摂ろうとしたとき、爺ちゃんが尋ねてきた。その表情は張り付いたような笑顔だが目は笑っておらず背後には死のルーンのような黒いオーラが立ち込めていた。

 

「な、何だよ師匠、そんな怖い顔しちゃって」

 

「そう、師匠じゃ。わしはおぬしの。じゃが、わしは何の師匠だったかの?」

 

「な、なんのって、勿論魔術の…」

 

「最近、魔術の修行をやっておるのかおぬしは?ん?」

 

ズイィと師匠が俺の顔を覗き込む様に尋ねる。やばい!めっちゃ怒ってる!?

 

「最近は商いごとか趣味に耽り腐りおってからに、初心を忘れるとは関心せんぞ?」

 

「…す、すみませんでした。反省します。」

 

「…うむ。今回は特別に許してやるがの、例え血が繋がっておろうが、わしとおぬしの関係は魔術の師と弟子。その本分を忘れ遊び腐っておるようなら追い出すぞい。わしはおぬしの飯炊き係でも子守りでもない。第一、おぬしの母は未だ囚われの身。いつ命を落とすか分からぬのじゃ。はよう魔術を修め一端の戦力となり共に母を助けにゃならんのだぞおぬしは?己の人生を楽しむなとは言わぬが、己の本分、己の使命、己の役割を忘れ悦楽に興じることを是とするならば、その先に待つは堕落と破滅よ。おぬし1人で破滅するなら良い。だが、おぬしの肩には母の命がかかっているのじゃぞ?もう少し、おぬしは自身の生き方に真面目に向き合わねばならぬ。例え神の如き超常の力を授かっていたとしてもじゃ。己の生き方を見誤るな。…よいな?」

 

「…わ、分かりました。師匠」

 

「うむ。良い返事じゃ。その言葉が空返事にならぬことを祈るとしよう。…さて、食事の前におぬしに授ける物がある。そこに立ちなさい。」

 

師匠は神妙な面持ちで俺に支持する。授ける物ってまさか!?思わず顔に喜色の表情が浮かびそうになる

 

「…はぁ、お主は正直者じゃのう。もう少し感情を隠す訓練をした方が良いの。敵に考えを悟られるぞい?まぁ、本日のところは不問とするがの」

 

師匠は溜息をつくと、おもむろに本棚の上に置かれた筒を取り出し部屋の中央にある長机の上に置いた。そして、筒の中からそれを取り出した。

 

硬質な石を思わせる灰色の杖。鉤状に曲がり先端には煌々と輝く輝石の結晶が取り付けられていた。

 

「石掘り杖じゃ。…この杖はわしにとっては落伍の象徴。あまり良い思い出はない。…本来、輝石の探究の初歩を歩み始める者には、わしが持っているような輝石の杖を渡すのじゃが、この杖は一本しかなくての。この杖をおぬしに授け、代わりにこの石掘り杖をわしが扱うのにはどうにも耐えられん。じゃから、この石掘り杖をおぬしに授ける。性能は輝石の杖と大差ない。この杖をお主に授けよう。」

 

そういうと、師匠は石掘り杖を両手で取り出し俺に差し出した。俺は静かに石掘り杖を両手で受け取った。

 

「…師匠、不肖の弟子、確かにこの石掘り杖を授りましてございます。これからも一層精進し、魔術の探究を深めて参ります。…これからも宜しくお願いします、師匠」

 

俺がそう師匠に告げると、やっと師匠の表情が綻んだ。なんだかんだ言って嬉しいのだろうか?

 

「…そしてコレが、魔術の道を修めんとする者たちにとって最も大切なものじゃ。コレはメモリ・ストーンという。魔術を記憶し、所持する者に記憶した魔術を行使できるようにするものじゃ。本来魔術師は一つの魔術を一生かけて習得するものじゃ。だがそれでは魔術の探究に滞りが生ずる。故にメモリ・ストーンに魔術を記憶させ、複数の魔術を行使できるようにするのじゃ。複数の魔術を行使してでしか知見できない魔術もあるからの」

 

師匠はそう説明すると、俺の首に黒曜石のような黒く四角い宝石がついたペンダント、メモリ・ストーンを掛けた。すると頭の奥から思考が冴え渡るような感覚を感じた。コレが記憶スロットが増えた感覚なのか?

 

「では初の魔術の行使をするとしようかの。弟子よ、裏庭に出るのじゃ。」

 

そう師匠に促されて俺は裏庭に出た。夜空を見上げると相変わらず黄金樹の光に照らされ星々の光は弱々しい輝きを放っている。

 

「では、まずは星灯りじゃ。お主の知見、星と太陽は同義。その言葉の真意をわしに見せてくれ」

 

師匠の言葉に従い、俺は精神を集中させた。瞳を閉じ、脳裏に魔術を、星灯りのイメージを浮かべる。

 

煌々と燃え盛る太陽。前世のテレビで見た太陽の映像をイメージする。

 

赫赫と燃え上がる太陽。紅炎とも称えられるプロミネンスが太陽の表面にのたうち回るような激しいエネルギーの奔流を脳裏に浮かべる。

 

「…星灯り」

 

そして魔術の名前を唱えて行使する。瞬間、頭の奥の何かがズルりと吸い込まれるような感覚と共に目の前に強烈な光が現れる。恐る恐る目を開けると、そこには青い太陽があった。

 

「…なんと!これは…!?」

 

師匠は驚愕の声を上げる。俺の目の前に煌々と輝く青い太陽のレプリカがそこにあった。大きさは頭2つ分くらい。ゲーム中の星灯りと比べると3倍以上の大きさと輝きがある。

 

「おぉ、コレが、お主の記憶にある太陽の真の姿ということかの?なんと力強く、目を焼くような光じゃ!」

 

師匠は眩い光を放つ太陽の輝くに手を翳しながら感嘆の声を上げた。

 

対する俺は先ほどズルりと抜けていった何かによってかなりの疲労感を感じていた。呼吸が荒くなり、激しい眩暈と眠気に襲われていた。

 

余りの疲労感に膝をついたところで青い太陽のような星灯りはかき消されるように消えた。

 

項垂れている俺を何とか起こした師匠は家のなかへ俺を連れてきて椅子に座らせてくれた。

 

「…いやはや、なんとも予想外な事態になったの。初めて放つ魔術を行使する者には加減が分からず精神を大きく擦り減らす者もおる。今後は適切な精神力の消費を訓練してゆくことじゃな。ほれ、先ずは飯を食え。明日から再び修行をするぞ?」

 

「…は、はい。分かり、ました。」

 

俺は力無く返事をすると、ちびちびと獣肉の香草煮込みを食べ始めた。

 

精神力どころか体力もかなり消耗していたのか、俺が食べ終わるのに1時間くらいかかってしまった。

 

クタクタになった俺は何とか地下室の寝室に辿り着き泥のように眠るのであった。





如何でしたでしょうか?
古竜や飛竜のぬいぐるみ、現実で販売してくれたら嬉しいんですがね。
というかSHモンスターアーツで古竜とか飛竜の可動フィギュアが欲しいものです。
ナルガクルガ作ってるしいけると思うんだけどなぁ。

因みに今回ロアの実の独自の描写を書いてみました。
私はロアの実のモデルは葉や実の形からリンゴンベリーことコケモモじゃないかと思っておりますが、リンゴンベリーの種は小さいので種からコットンのような綿は作れないだろうと思い勝手に梅の実とかさくらんぼのような形状の実としました。

そして初めて主人公が星灯りを使用しました。
やっと本編が少し進んだ気がしますね。

早く魔術を習得して破砕戦争開始時点では一端に戦えるようになって欲しいですね
それでは次回も楽しみに!
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