お待たせ致しました
第22話です。まだ日常回、人形兵作成回です。
それではどうぞ!
翌朝、日が上る前に目覚めた俺は先ずは衣装の調整から始めた。旅の服の胸部にある装飾糸と肩掛けを外し、昨日壺売りの御隠居から買った大きめの壺に木炭と膠を入れて煮込み墨汁を作り、そこに旅の服と旅のブーツを付け込んだ。
やはり病みかわ系・地雷系の衣装といえば黒い服だ。最初はそのままの服の色をと思い、改造するのも如何なものかと思ったのだが、ゲームの劇中でも着用しているメリナやミリセントも改造服でゲーム本編に出ているので、別に原作に忠実にしなくても良いんじゃないかと思い墨汁染めに挑戦しようと思い至った。
直射日光で乾かすとガビガビになるので煮込んで着色したのち濯いで余分な墨汁を落としたらこの地下室で干すつもりだ。色落ちして白い人形兵の肌に色がつかないように工夫しなければならない。溶かした根脂に漬け込めばコーティングできるだろうか?確実に火耐性はゼロどころかマイナスになりそうだが、火の気に基本近づかないだろうから多分大丈夫だろう。
地下室からでて朝日を浴びる。一応準備運動としてラジオ体操を踊ってみる。鼻歌で音楽を口ずさみ手を振りジャンプし、いっちにさんしと身体を動かす。
ある程度身体が解れたところで地下室に戻り、壺に押し込まれた人形兵を取り出してみる。最近まで腰をやっていたのだ。いきなり重たいモノを持ったらまた腰が逝きかねない。だからこそのラジオ体操である。
しかし酷い有様だ。まるで和式便所にぶち込まれた雛見沢の転生者のようだ。両脇を抱えて何とか壺の外に本体を引き摺り出す。残っている右腕と左脚が明後日の方向に向いていて非常に惨い。綺麗に白く染め上げた人形兵の肌も傷だらけでぼろぼろになっている。折角作った鬘も外れてしまっている。何とも惨い有様だ。
さっそく骨灰と木粉、膠を練り合わせて特性パテを作り人形兵に塗りつけていく。今回のパテはかなりもっちりと厚みがあり、人形兵に塗りつけると人肌のような質感がある。俺はうつ伏せに置いた人形兵の尻に特性パテを盛り付け乾くのを待った。
盛り付けパテの上にゴミが付かないように骨灰の打ち粉を振ってベタつかないようにする。そしてパテが乾くまで放置して、その間に墨汁につけた衣装を濯いで色味を整えていく。
黒く染まった水を捨てては新しく水を汲んできて衣服を濯ぐ。水場はここから少し離れた宿場町にある。いっそのことそこで濯ぎたいが一応生活用水だ。無駄遣いは近隣住民に咎められてしまう。
ある程度濯いだら昼ごろになっていた。師匠も珍しく遅く起きて遅めの朝食を摂り、俺は作業に戻った。
昼過ぎに貧民市場の少年と幼女が訪れたのでワンコ君を任せて作業に戻る。全身煤まみれの俺に兄妹は驚いていたが、何をしているのかは出来てからのお楽しみにということで誤魔化した。
ある程度濯いで水も濁らなくなったところで衣服の水分を絞って陰干しをする。人形兵の方は尻に盛ったパテが乾いたので預言者の服の生地を適当に板に貼り付けた布ヤスリを用いてお尻の形を整えていく。
全体的に華奢だった人形兵の身体は現実世界のムッチムチな可動フィギュアのようにヒップのラインが魅惑的な形になった。次に後ろ太ももにパテを盛り、乾くまで仮眠をする。今日は夜通しで作業するつもりだ。
俺は寝室で横になると瞬く間に睡魔に襲われて寝た。
ある程度時間が経ち夜になった頃、師匠が夕飯だぞ?と起こしに来てくれた。
"おぬしは一体何をやっているのだ?"と、うつ伏せで尻を丸出しにしている人形兵を見つめて怪訝そうに尋ねる師匠に、今日こそは人形兵の修復を完成させる。夜通しで作業をやるつもりだと答えると、師匠には呆れられた。
ワンコ君の受け取りは師匠がやってくれた。少年からは差し入れにと獣肉の香草焼きを貰ったようで有り難く夕食として頂いた。
夕飯も終わり地下室に戻る。太もものパテは乾いていたので、また布ヤスリで形を整える。人形とはいえ、乾いた布でゴシゴシと婦女子のケツを擦る様子は流石に俺でも引く。でも俺の心に燻る職人魂は妥協を許さなかった。やるからには一流のものを作れ!と俺の魂は叫んでいた。別に前世は職人でもなんでもなかったんだけどなぁ。製造業には勤めてたけど。
尻と太もものバランスを見ながら調整する。華奢だった人形兵の下半身は肉厚のムッチムチな安産型のケツへと生まれ変わった。まるでポリニアンのイアンナだ。前世では手に入れられなかったが、前世の無念を果たしたことになった。そこまで無念に思ってたのかなぁ俺?
残りのパテを使い細かい傷の修復に用いた。再び黒ずんでいた肌は白玉のような美しさを取り戻し、関節以外継ぎ目が見えないような人肌のような質感に生まれ変わった。
最後に残ったパテは頭部に盛り、とうとう最大の難関、顔の造形に挑戦することになった。人形兵を仰向けにして寝かしつけるとパテを盛り乾くまで精神統一を行なった。エセ太極拳をやって精神を落ち着かせ集中力を高める。
そして時刻は体感深夜2時3時になった頃だろうか。ついに顔造形を始めた。布ヤスリで顔面を擦り形を整える。ダガーである程度の顔のラインを切りつけて、版画で木を掘るようにダガーで削ってゆく。目元は義眼を埋め込んで透明感のある瞳にするつもりなので眼窩を掘り出してゆく。
造形のモデルは令和のバズり女王と呼ばれた病みかわ系、地雷系ファッションを着させたら右に出るモノはいないあのお方の姿だ。今でもハッキリと脳裏にあのお方のご尊顔が浮かび上がる。心の底から美しいと、そして怖ろしいと思ったご尊顔だ。透明感があり、そして狂気があった。生前醜男で自分自身に自信を持てなかった俺は、ただただツイートにアップされる彼女の姿を眺める事しかできなかった。本当だったら、財力と勇気があったら、その人の写真集やオリジナルグッズ、彼女のデザインしたブランド服、そして彼女を模した等身大ドールですら欲しがるとんでもない迷惑オタクになっていただろう。自分でもドン引きするほどに己の欲望に恐怖し、そうならなかった境遇に感謝するくらいだ。
恐らく顔を造形をしている時の自分は白目を剥いて涎を垂らしていただろう。神がかりというか神降ろし状態だったと思う。何故ならその時は夢心地で一心不乱に人形兵の顔を加工する俺の姿を客観的に見下ろしていたのだから。所謂、幽体離脱をしているようであった。
俺自身でも驚きが隠せなかった。俺の何処にそんな熱意があったのだろうか?前世での心残りか、それとも俺をエルデンリングの世界に転生させた何者かの意思か、或いは神がそうさせているのだろうか?何故わざわざエルデンリングの世界で?と疑問に思ったが。敬愛する彼女のご尊顔がこの手にあると考えるだけで昇天しそうな心地になっていた…。
地下室入り口の扉から朝日が漏れている。どうやら朝になっていたようだ。俺は自分の視界を確認した。…よし、ちゃんと自分視点の視界になっているな。幽体離脱状態は解除されたようだ。
俺は手元の人形兵の顔を見やる。そこには100均のデッサン人形のような簡易的な面長顔ではなく、人の死体かと見紛うばかりに美しく若い女性の顔が手の中にあった。
紅を差せば今にも動き出すんではないだろうか?と思わせるほどリアルな唇。シワの一本一本まで丁寧に彫られていて本当に自分がコレをやったのかと目を疑ってしまうほどのクオリティーだ。小さな鼻筋に細い眼窩は狐を連想させる小顔になっている。
眼窩には後で義眼を嵌め込むつもりなので瞼も付いておらず空洞になっているが、それを差し引いてもその顔は前世で大ファンだったあのお方のご尊顔そのものだった。
良い知れぬ興奮と徹夜明けテンションで俺は某フロムの方の狩ゲーに登場する檻を被った変態紳士の様に雄叫びを上げていた。…だが、流石に疲れた。もう一度仮眠しよう。
「おぬしは何ちゅうもんを作っとるんじゃ。死体かと思って腰を抜かしそうになったわい。魔術よりも職人の才能があるんじゃないかの?」
程なくして師匠が朝食にと起こしに来てくれた。あまり仮眠出来なかったが、折角作ってくれたのだから無碍には出来ない。食べたらまた寝ようか。そんなことを考えながら朝食の麦粥を食べる。食べ慣れてないので不味い。今度すいとん汁の作り方を師匠に教えてあげようか?いや駄目だ。喉に餅を詰まらせて死ぬ。
もそもそと寝ぼけ眼で麦粥を食べ切った俺は彷徨う亡者のごとき様子で呻き声を上げながら地下室に戻った。
地下室に戻ると人形兵が起き上がって座っていた。忘れていたが、この人形兵は勝手に動き出すんだった。折角綺麗に作ったのに壊されてはたまったものではない。
「…頼むから暴れて壊さないでくれよ〜その顔。折角美人に作ったんだから。もう2度と作り直しは出来ないからな〜。」
人形兵はカタカタと音を立てながらコチラに振り返り、コクリと頷いた。あれ?この人形兵意思表示機能付いてたんだっけか?
「…うーむ、なんか新機能に目覚めたのか…?よし、今度から俺の言うことを理解して肯定したら首を一回縦に振る。理解出来なかったら首を横に傾ける。否定の意思表示は首を横に振るだ。分かったか?」
"コクリ"
人形兵が首を縦に一回振る。
「よし。では質問だ。暗殺集団黒の刃がゴッドウィンの暗殺を行う陰謀の夜はいつ起こる?」
"コテン"
人形兵は首を横に傾ける。
「よし。最後に否定の意思表示はどうするかやってみ?」
"フリフリ"
人形兵は首を横に振った。
「よし!上出来だ!今度からこんな感じで意思疎通をとっていくからな。宜しく頼むぞ!」
"コクリ"
「よし、…じゃあ疲れたから俺寝るわ。くれぐれもその身体壊さないでくれよ。この前みたいに壁だの扉だのに身体ぶつけてあんな姿になったら今度こそ捨てるからな!いいな!」
"コクリ、フリフリ、コクリ、フリフリ、フリフリ、フリフリ、コクリ、コクリ、フリフリ、フリフリ、フリフリ、フリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリフリ…"
うわぁ!?なんか人形兵バグりだした!?怖っ!?
「…ちょ、分かった!分かったから!捨てないから!その首振りやめてくれ!めちゃくちゃ怖いから!やめてそれ!」
"…コクリ"
人形兵は首振りをやめた。あぁ、怖かった。やっぱり人形ホラーは苦手だ。
「とにかく、捨てないから自分の身体は大切にしろよ。…はぁ、疲れた。寝よ」
俺は人形兵に声をかけると寝室のベッドに倒れ込むようにして寝た。
如何でしたでしょうか?
エルデンリングの2次創作なのかオタクの趣味エッセイなのか分からねぇなもう
しかし、いつの世もキャラクリには時間がかかるもの。
次回は服着せ回。お楽しみに