"黙示録"を回避しよう!   作:rezi

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残党

午前:ゲヘナ自治区/放棄された区画

 

 

ルイは足跡を追い、深部にある廃墟群へと踏み込む。

────しかし、途中より足跡は薄れ……見失ってしまった。

 

(……仕方ない、周辺の建物をしらみ潰しに捜すか……)

 

"────ズダァン!!!"

 

そう考えていた矢先、ルイの背後で破裂音にも似た大きな音が鳴った。

 

「……誰だ」

 

振り向き、即座に展開した盾を構える。

そこに立っていたのは────

 

「……久しぶりですね、ルイ」

 

彼女は変装などまるで意味が無いとばかりに、私の名を呼ぶ。

 

「……久しぶりだな」

 

────蒼森ミネ。

私の師であり、良き友であった彼女は……堂々と私の前に立った。

 

その姿は砂や埃に塗れており、長い期間捜索を続けていた事を示している。

報告の通り、彼女は私を捜して各地を飛び回っていたようだ。

 

そんな彼女がいつ仕掛けてくるかと構えていると、ミネはそっと盾を下ろした。

 

「……少し、話しませんか」

 

彼女の放った想定外の言葉に一瞬固まるが、なんとか動揺を表に出さず、言葉を返す。

 

「……構わないが、急ぎの用事がある。手短にしてくれ」

 

今まで見た事のないような沈痛な表情でそう提案した彼女の言葉を、断る気にはならなかった。

 

ミネは頷き、口を開く。

 

「……まずは……貴方を止められず、申し訳ありません」

 

「……何を言って────」

 

そう言って頭を下げたミネはゆっくりと顔を上げ、私の目には彼女の悲しげな顔が映った。

 

「……これは貴方に対しての謝罪であり、貴方の既知全ての者に対する謝罪でもあります」

 

「……私が貴方を止められていれば貴方は腕を失わず、またトリニティを退学になる事も無かった」

 

「……何より、退学を止められなかったのは私の落ち度です」

「私の勝手な行動の結果、トリニティを空け……貴方を止められなかったばかりか、退学に疑義を申し立てる事すらできませんでした」

 

「……私は、貴方の師でありながら……この体たらくです」

 

「…………」

 

私はつらつらと謝罪し続けるミネに言葉を返せずにいた。

 

(────あの団長がこんな事を言うほどに、追い詰められたのか。)

 

目の前の彼女は、私の知る団長より……酷く弱弱しく見えた。

 

「……ルイ、一つ……いえ、二つだけ聞かせてください。」

「これは"蒼森ミネと天城ルイ"、それ以上でもそれ以下でもない個人間の問答です」

 

「……他の誰にも言わず、伝えないと私の信条に誓います。ですので……どうか。」

 

普段の有無を言わせぬ言動は鳴りを潜め、ミネは真摯に、縋るように尋ねる。

 

「……いいだろう、答えられる範囲なら」

 

私の返答に頷き、ミネは続けた。

 

「今、トリニティで何が起こっているか知っていますか」

 

「……ナギサとミカの件なら知っている」

 

「……貴方はそれを、どう思っているんですか」

 

「………………」

 

回答に迷って数秒、ミネは得心したように目を伏せ……再びこちらを向いた。

 

「……その沈黙で結構です、短くない付き合いですから」

 

どこか納得したような表情で、ミネは優しく微笑む。

 

「……これで、質問は全てか?」

 

「……ええ」

 

重苦しい雰囲気の中、ミネは思考していた。

 

「…………ルイ、すみませんが、あと一つだけ聞かせてください」

 

ついに口を開いたかと思えば、追加の質問が飛んできた。

 

「……これで最後にしてくれ」

 

仕方ないと答えると、ミネは頷く。

 

「セイア様は元気ですか?」

 

一瞬回答に詰まる。が、ミネになら……言ってもいい。

 

いや、言うべきだろう。彼女にはそれを知る権利が、理由がある。

"エデン条約事件"、その渦中からセイアを守り抜いたのは彼女なのだから。

 

「……ああ、元気にやっている。この言葉に嘘はない」

 

「相変わらず運動は苦手なようだが……最近は熱も出さず、体調を崩す事も少ない。」

 

「定期的に診察もしているが……異常はなく、むしろ以前に比べてより健康になっている。」

「良く休ませ、まともな食事を摂っているのが効いているようだ」

 

「……共に医の道を歩んだものとして、彼女を心配する気持ちは痛い程良くわかる」

「だからこそ、心配しなくていい。セイアには私が着いている」

 

私がそう言い切ると、ミネは安心したように笑った。

 

「……その言葉を信じます、ルイ」

 

「ですが、その言葉を聞く限り……セイアさんとミカさんが仰っていた、"貴方がセイアさんに手を上げ、情報を聞き出そうとした"というのはやはり嘘だったんですね」

 

ミネはそう言って、私の目を見る。

 

……ミネは約束を守る。答えてもいいが……今日はやめておこう。

彼女に信頼を見出すには、あまりにも立場が違い過ぎる。

 

「……それは4つ目の質問だ、答える気はない」

 

そう告げると、ミネは困ったように微笑む。

 

「それが、答えのようなものですよ」

 

「……さて」

 

ミネは一つ深呼吸をして、下ろした盾を構え直した。

 

「ルイ、話はここまでです」

 

「……貴方が何を考えているか、何を望んでいるかはわかりません」

「しかしそれは邪悪なものではなく、貴方が変わってしまった訳でもないと……私は改めて確認しました」

 

「私よりもずっと頭の回る貴方の事です……何か考えあっての事でしょう。」

「それを尊重したい、と言う気持ちもあります」

 

「……ですが、私は貴方を取り戻し……また共に師や友として過ごしたい。」

「……申し訳ありませんが、これは私の我儘です。」

 

「……この後、私は暫くトリニティに常駐し……私にできる事をするべきだと判断しました」

 

「……これが、最後かもしれません……ですから」

「────構えなさい、ルイ!」

 

叫ぶようにそう告げたミネに対し、私はゆっくりと盾を構え、ショットガンのグリップを握る。

 

「……いいだろう、ここならば以前のように邪魔が入る事はないはずだ」

 

「────決着を付けよう、ミネ」

 

「……ええ、全ては……貴方を"救護"するため」

 

最後の言葉を交わし、お互いに構える。

    ""────ザッ!!""

 


 

 

同時刻:ゲヘナ自治区/放棄された区画

 

"────ズダァン!!" "────ダァンッ!!"

 

「……ッ!」

 

これまて静寂が支配していた区画に唐突に響き渡った銃声に驚き、ミヤコは音のした方向へと顔を向けた。

 

(……近い。数百メートル、と言ったところでしょうか)

 

「……銃声です。RABBIT4、マップに座標を送ります、狙撃態勢に入ってください」

 

"はぁい……!"

 

「私も現地へ急行します、必要だと判断すれば撃って構いません、私もそうしますので」

 

通信機を胸のホルダーに仕舞い、ミヤコは銃声の方向へ駆けだした。

 

────その姿を、建物の影から見つめる者が一人。

 

「……ヴァルキューレ?いや……あの制服はSRTか、閉校になったと聞いたが……まあいい」

 

公的機関に追跡されている所を見るに、あの影は"当たり"のようだ。

 

(……連中が居るのなら、私は表立って動くべきではないか……しかし、出来る事はやらせてもらう)

 

逃走の妨害、罠の設置や奇襲。

ゲリラ戦は私の得意とするところだ。

 

そう判断したサオリは、再び建物の影へと消えたのだった。

 


 

「ふッ!!」 "ブォン!!!"

「はあッ!!」 "ガキンッ!!"

    "ダアンッ!!" "ズドンッ!!"

 

────戦闘が始まって1分ほど。

お互いに攻防一体。

どちらが優勢ともいえず、ミネとの撃ち合いは続いていた。

 

(……流石は団長、隙が無さすぎる)

"カシャンッ!!ガチャッ!"

 

弾の尽きた弾倉を手早く交換し、再び構える。

 

ミネは盾を構えたまま、こちらを睨んでいる。

 

(……膠着状態。このままでは私が負ける)

 

アビドスでの戦闘の後、補給もせずここへ来た。

残された弾薬は少なく、擲弾も数発しか残っていない。

 

(……となれば、やはり突撃剣で押し切るしかない)

 

思考の後、盾を解除し……剣として構える。

 

「……そう来ますか、いいでしょう」

 

その様子を見たミネは盾を深く構え、受けの体勢を取る。

 

────お互いに疲労が滲んでいる。

"膠着状態のままやりあい続けたとしても、長くは持たない"。ミネもそう判断したのだろう。

 

「ああ……ここで決着を付けよう」

 

深く腰を落とし……剣を腰に、構えを取る。

 

────居合。

 

防御を捨て、ただ一撃に全てを乗せる無謀な型。

鞘を持たないこの剣には不相応な型だが……義手の出力を一瞬で最大に上げ、超高速で振り抜く。

 

その一撃は、居合と呼んで然るべきだろう。

 

(……この一撃の為なら、全てのリスクを受け入れよう)

 

息を吐き、ミネが銃を抜く瞬間を狙う。

 

「……来なさい。貴方の覚悟を、この盾で受け切って見せましょう」

 

そう告げて、ミネは構え続ける。

 

「……いいだろう」

 

ミネはこの一撃を防ぎ……カウンターで決めるつもりのようだ。

 

────ならば……これは正真正銘、一撃勝負。

(……距離は最適、最大威力の剣先が盾に直撃する)

 

義手の出力、呼吸、鼓動。

その全てが噛み合った瞬間、決着の剣を振るおう。

 

「────────」

 

息を整え、全神経を握る拳に、剣先に注ぐ。

 

「────────はァッ!!!」

"────ギュンッ!!───……バキィィン!!"

 

超高速で振るわれた剣先が直撃し、ミネの盾は砕け散る。

遥か後方、古びた廃墟まで吹き飛ばされたミネは……壁に叩きつけられ、がくりと崩れ落ちた。

 

……息を吐き、突撃剣を下ろす。

 

「……団長、すまない」

 

せめて楽な姿勢にしてやろうと、ヘイローの消えたミネに向かって歩む。しかし────

 

「……SRTです、動かないでください!」

 

唐突に現れた一つの小さな影が、背後から私にそう叫んだ。

 

「……振り返っていいか?」

 

「良いわけがないでしょう、武装を解除し、両手を上げてください」

 

(…………私を私だと認識している?いや……)

 

「……SRT。閉校になったと聞いたが……残党か?」

 

「黙って武器を捨てなさい、撃ちますよ」

 

あくまで警告し続けるSRTを名乗る者に、思考を巡らせる。

 

(……私だと認識していれば問答無用で撃つはずだ。つまり……私が魔王だとまだ確証が取れていない)

 

「貴様らには既に公的権力は無い。未だその名に縋りついている内は、お前達も私と同じごろつきだ。」

「つまり……従う義理は無い」"ガシャッ!"

 

「……ッ!黙れ!」

   "ズダダダダダダ!!!"

"ガガガガガッ!!!"

盾を展開した瞬間、相手は握っていたサブマシンガンを連射した。

 

撃ち込まれた銃弾を盾で防ぎ、相手の姿を確認しようとするが……小さな影は物陰に滑り込み、消える。

 

(……正面からやる気はないと……当然か)

 

「……私は用事がある、逃げ隠れするのなら……ここで失礼する」

 

挑発し、盾を構えたまま後退すると……足元に小さな違和感と、金属が跳ねたような音。

  "キンッ" 「────ッ」

 

音の方向に咄嗟に盾を向けた瞬間────"ドオオオオンッ!!!"

 

目の前で手榴弾が炸裂し、爆風で体勢が崩れる。

 

「……!」"ズダダダダッッ!!!"

 

体勢を崩した私に対し、廃墟の隙間からSRTの残党はサブマシンガンを連射する。

 

"バスッ!!" "ドスッ!!" "ガガガッ!!"

 

二発の被弾、残りは盾に弾かれた。

 

「ぐッ……!!……賢しい真似を!」 "ダダアンッ!!"

 

撃ち返すと、撃ち込んできたSRTはすぐに身を隠し、再び静寂が訪れる。

 

「…………」

 

(……相手は少なくとも二人。前衛を行うあのサブマシンガン持ちと、罠を張り、奇襲を狙っている者。)

 

あれが本当にSRTの残党なら、更に多くの人員を抱えている可能性がある。

疲労し、弾薬も少ない現状では交戦は避けたい。

 

────忘れるべきではないのは、私の目的。

 

これだけの銃声を上げて、何も動きが無いという事は……ミカはここには居ない。

ならば、逃げるのも選択肢の一つだろう。

 

しかし気がかりなのは……ミネを放置したとして、あの残党共がミネを助け、トリニティに帰すかどうか。

 

SRTを名乗れど所詮はごろつき。

気絶しているトリニティの重役に対し、どのような行為を行うかは想像に難くない。

 

ナギサが倒れた今、トリニティにミネを帰還させなければ……事態はまずい事になる。

 

……ならばリスクは承知。ミネを抱えて離脱する。

 

「……気が変わった、相手になろう。」

 

ショットガンを構え、周辺を警戒する。

建造物内に隠れているのなら、地上に居るのは愚策だろう。

 

"バシュッ!!────ギュルルル!!!"

 

頑丈そうな建物の壁に鉄鉤を撃ち込み、屋上に上がった。

盾を遮蔽に、対面の廃墟を見張る。

 

あのSRTが叫ぶように警告していたのは、私の気を引き……罠を設置する隙を作るため。

しかしあそこに罠を仕掛けられたのなら、隠れ場所は大方予測できる。

 

ならば、地形的な有利状況を確保し……状況把握を優先する。

 

そう判断し、廃墟の屋上から周囲を警戒する。

 

    瞬間。

"────ギュン" "ゴスッ!!"

「────が……ッ!?」

 

後頭部に何かが直撃し、意識が乱れる。

衝撃を逃がせず、前のめりに屋上から滑り落ちる。

くらりと歪む意識のなか、落下の風を受けながら……私は地面に叩きつけられた。

 


 

「────流石ですね、RABBIT4」

 

"うぅ……ミヤコちゃんが気を引いてくれてたから……"

 

「……目標は気絶しました、拘束します。……近くまで車両を回してください」

 

頭から墜落し、周辺を警戒しつつヘイローの消えた彼女に近付く。

 

(……ワイヤートラップ、あんなものは仕掛けていません)

 

都合よく設置されていたワイヤートラップのおかげで、隙を突く事ができ……意識が私に向いた。

 

……それを設置した者が居る、そこで気絶しているトリニティの制服を着た生徒がやったのかもしれないが……それにしては、位置がおかしい。

 

「……トラップを設置した方、出てきてください、こちらに戦闘の意志はありません!」

 

対話を試みると、後方の廃墟から叫ぶような声が聞こえた。

 

「……こちらにも戦闘の意志は無い!しかし、私は姿を見せる訳にはいかない!」

「その者を確保し、ヴァルキューレに引き渡してくれ、それで十分だ!」

 

「アルバイトを抜けてきたんだ、私は戻る。後は頼んだ!」

 

「……わかりました、後はSRTにお任せください!」

 

声の主はそれを聞いて満足したのか、足音と共に去っていった。

 

(……彼女が魔王だとすれば、善意の援軍が来ることも当然ですか)

 

そう考え、目の前で倒れている魔王を見る。

 

彼女の行ったことは殺人未遂。それも"先生"を狙ったもの。

今や、全キヴォトスが彼女に怒りを向けている。

 

大口径ライフル弾の直撃を受けた頭部からはだくだくと血が流れ、右腕は痛々しく折れ曲がっている。

見る限りは完全な無力化に成功しており、これ以上警戒の必要は無いだろう。

 

「……装備を見る限りは、魔王ですが……」

 

うつ伏せに倒れている彼女を足蹴に、仰向けに転がす。

血に濡れたフードをめくりあげ、顔を確認する。

 

(……似ている、となるとこれは変装ですか)

 

垂れた黒髪を強く引っ張ると、バチンと言う音と共にウィッグが外れ……薄緑色の頭髪が露になった。

 

その姿は記録にある魔王に相違ない。

 

「やはり魔王……拘束します」

ポケットから拘束具を取り出し、拘束しようと手を触れた瞬間。

 

"バチイッ!!! 「きゃあっ!!!」

 

全身が焼かれるような熱を感じ、咄嗟に飛びのく。

反動でがくりと尻もちをつき、顔を上げると……目の前で倒れていた魔王の身体がびくりと震えた。

 


 

 

"バチイッ!!" "バチイッ" "バチイッ!!"

 

「────……ッッ!!」

 

焼かれるような熱と共に、意識が戻る。

 

考えるよりも先に地面を殴りつけて反動で立ち上がり、周囲を確認する。

 

(────私は……ああ、運がいい。)

 

目の前で尻もちを付いているSRTの残党は驚いたようにこちらに銃を向ける。

 

「……動かないでください、これ以上の戦闘ではヘイローの保証はできませんよ!」

 

叫び、威嚇するその顔は恐怖に塗れている。

────私の勝ちだ。

 

「……黙れ、残党」

 

だらりと垂れ、指示を聞かない右腕を放り……段々と体の感覚が取り戻されていく。

 

「……本当に撃ちますよ!」

 

(トリニティの為にも、私はここで倒れる訳にはいかない)

 

"ダンッ!!"

 

踏み込み、目の前の残党に殴りかかる。

 

「ッ!!」"ズダダダダダダダッッッ!!!"

 

反射で乱射された銃弾が私の胴体に突き刺さる。

 

……アーマーは貫通され、腹部はズタズタになっているだろう。

しかし痛みは既に全身へ満ちており、撃たれた痛みは私を止めるには足りなかった。

 

"ゴンッ!!"

 

横薙ぎに振るった拳が目の前のSRTを吹き飛ばす。

 

地に転がった彼女は、慌てた様子でガチャガチャとリロードを進めるが、手元がおぼついていない。

 

「……遅い」 "ダアンッ!!"

 

握られたサブマシンガンごと彼女を踏みつけ、見下ろす。

 

「……私に残された時間は少ない。」

 

「一度だけ言う。武装を解除しその手錠を自分の手に嵌めろ」

「さもなくば……お前が先に言った通り、ヘイローの保証はしない」

 

腹部から流れ落ちる血が、ぼたぼたと眼下の彼女に落ちていく。

……脚を通して彼女の震えが伝わってくる。

 

「……ごほっ」

 

……喉からこみ上げる血が私の喉を詰まらせた。

吐き出した血と共に、私の脳はくらりと揺れる。

 

(……駄目だ、このままだと出血性ショックで死ぬ)

 

「……時間、切れだ」

 

"ゴンッッ!!"

 

眼下に伏せた彼女の頭を力強く踏みつけると、頭上のヘイローが消えた。

 

(……狙撃手、罠師……交戦は……不可能)

 

朦朧とする意識の中、思考する。

腹部から流れ出る血は、私に残された時間が少ない事を如実に示していた。

重く、冷えていく体を引きずって廃墟内の壁に背を付け……崩れるように座り込む。

 

(……止血、しなければ)

 

医療バッグをなんとか開き、ステープラーを握ったところで……私の意識は途絶えた。

 

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