"黙示録"を回避しよう!   作:rezi

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思案

 

ルイのセーフハウス/作戦準備室

 

 

「────さて……」

 

用意した武器を整備しながら、思案に耽る。

 

 

……セイアの確保には成功した。

"予知夢"が消失していたのは想定外だったが……まあ、いいだろう。

 

それに、セイアの護衛がミカだったのは僥倖だ。

彼女は特に、ティーパーティーのメンバーに対する思い入れが強い。

 

セイア確保を果たした今、次の目標は"ゲヘナに私への敵対心を植え付ける"こと。

 

……そして、それをトリニティによる攻撃だと捉えられないことが必須条件。

そのためには、ゲヘナ勢力の前でトリニティ勢力とやり合う必要がある。

 

……私がゲヘナに姿を現したとなれば、ミカは必ず来るだろう。

誰に止められようが、叱責されようが──必ずだ。

 

……そういう人間だと、私は知っている。

 

よって。ゲヘナにトリニティ勢力を呼び寄せる目論見はほぼ成功したと言ってもいい。

 

────つまり、これでゲヘナでの戦闘にミカが参戦することはほぼ確定した。

 

 

……そして、ゲヘナでの作戦で最も警戒すべきはゲヘナの風紀委員長……"空崎ヒナ"。

 

個人でゲヘナ最大の戦力を担い、さらには頭も切れる厄介極まりない存在だ。

委員長の名が示す通り、指揮能力も高いと聞く。

 

……私が知る限り、ヒナが参加している戦闘記録は、そのほぼ全てが"初手で放たれた制圧射撃"だけで終わってしまっている。

 

戦車の車列を薙ぎ倒し、数十人規模の機械化部隊を5分もかからず制圧した記録すらある。

 

その暴威が、私に向けられるのだ。対策は必須だろう。

この計画において、戦力的な最大脅威は彼女だ。

 

しかし……ナギサから聞き出したところによると、エデン条約の締結のため、ゲヘナ側で主体的に動いていたのは彼女だ。

 

しかも、調印式の襲撃の際には現場にいた正義実現委員会とも協力したと聞く。

 

彼女なら、融和の架け橋となれるかもしれない。

……彼女に対する振る舞いは、くれぐれも考えるべきだろう。

 

────そして、警戒するべきはミカとヒナの共闘。

 

もしそうなってしまえば、どんな状況であろうと私に勝ち目はない。

可能性は極端に低いが、想定しうる最悪のパターンだ。

 

……だが、ミカは極度のゲヘナ嫌いであるし……今の所は警戒しなくていいだろう。

 

 

─────そして、最大の懸念事項。

 

連邦捜査部・シャーレの……"先生"。

あれがどう動くか、全く想定できない。

 

基本的には生徒の要請を受けて行動するが、自発的に動くこともあるらしい。

 

……"先生"。

弱く、無謀で、甘い。

だが、それが誰よりも強く、誰よりも支持される理由でもある。

 

あれを敵に回せば、キヴォトス全てが敵に回ると言っても過言ではない。

私の敵は"トリニティとゲヘナ"であって、"キヴォトス"ではないのだ。

 

……しかし、彼は彼で対処すべき存在であることは間違いない。

我々と違い、彼はその脆弱すぎる身体でキヴォトス全ての希望と意思を背負っている。

 

……我々は、そこらで売っている一発十数円程度の弾丸で、彼を殺せてしまうのだ。

そんな存在に希望や、意思を担わせるなど……笑えない話だ。

 

……情けないことに、三大校を始めとする現状のキヴォトスは彼に依存しきっている。

 

その状況を打開するためには、穏当な手段で彼の役割を奪っていき……彼無しでも回るようなシステムを再構築する必要がある。

 

……そのためには────。

 

────いいや、思考が逸れた。

とにかく、彼は今回の作戦において一番のイレギュラーと言ってもいい。

 

彼がどのタイミングで参戦するか、トリニティ、ゲヘナのどちら側に付くか。全くわからない。

……状況次第では、双方を纏め上げて私を潰しに来る可能性もある。

 

それに、セイア拉致の時点で既に先生に対する報告は行っているだろう。

 

セイアのように"排除"しようにも、彼は多くの私兵を抱えているという噂があり、各校の治安当局との密接な繫がりもある……特に、ミレニアムは危険視するべきだ。

 

彼に安易なアクションを起こした結果、ミレニアムの機甲部隊が "先生防衛" の旗のもとに報復に参戦すれば、私にはどうしようもない。

 

……彼に手を出すことと、計画の破綻はほぼ同義だ。

不本意ながら、作戦中に彼が参戦した時点で作戦を立て直すしかないだろう。

 

 

────地図を片手間に眺めながら作戦をシミュレートする。

 

……まあいい。今は先生のことは置いておこう。

彼の動きは、どうせ予想しきれない。

 

とにかく今は、風紀委員の実働部隊に、応援にくる可能性の高い正義実現委員会。

空崎ヒナとミカ、双方を撃破、あるいは無力化する算段を立てなければ。

 

 

───何度もシミュレートしていくうちに時は過ぎ去り、気付けば全ての装備の整備が終わっていた。

 

(……これ以上は考えても無駄か)

 

たったいま整備を終えた銃を、ガンラックに掛ける。

 

結論として。勝利するためには更なる武器が、兵器が必要だ。

あらゆる事態に備え、さらなる用意をしなければ。

 

(……戦力の拡充は必須。なら、行くとしようか)

 

ゆっくりと立ち上がり、私は外出の用意を始めた。

 

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