"黙示録"を回避しよう!   作:rezi

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お知らせ

次回から作中の通信会話を " " から [ ]に変更します。

(もちろん過去話の修正もするよ!)

理由としては先生の発言が原作準拠の " " である事と、通信会話内で " " を使った強調を行おうとするとそれはもうとんでもなく見てくれがややこしい事になるからです。

やる前に気付けよ!って感じの問題点を半年以上放置しといて何を今更って感じではありますが、許して!ごめん!!よろしくね!!








煩悶

 

深夜:トリニティ/サンクトゥス分派寮

 

 

「────それで、どうして私を連れだしたんだい?」

 

廊下を歩むミネに、セイアは小声で問う。

 

(……明日に定期健診など無い。しかし……ミネは"明日は定期健診だから"と私を古書館から連れ出した。)

 

それが意味する所は……想像に難くない。

恐らく、何かしら面倒事が起きたか……あるいは。

 

「…………部屋でお話しします」

 

思案するセイアの問いに小声でそう答え、ミネは歩みを進める。

 

(……万が一露見した可能性の事も、視野に入れるべきか……。)

 

そんな事を考えている内に、ミネはセイアを抱えたまま易々と階段を登り切って……気付けば、セイアの部屋の前へ着いていた。

 

「……失礼します」

 

ミネはそっとセイアを下ろし、扉を開ける。

 

部屋の電気は点いており……誰もいないはずの部屋には、予想外の訪問者が待っていた。

 

「こんばんは……夜分遅くに失礼します、セイアさん。」

 

セイアと目が合うと、ナギサは微笑んで小さく手を振る。

 

「……やあ、ナギサ。」

 

セイアの言葉にナギサは会釈を返し、ミネに向き直る。

 

「ミネ団長、お手を煩わせて申し訳ありませんでした。」

 

「いえ……すみません、ナギサ様がお話を……という事でしたので。」

 

ミネはそう言って、セイアに頭を下げる。

 

(……成程、ナギサが私を呼んだのか)

 

何故ミネが迎えに来たのか、と身構えたが……ミカがシャーレの当番で不在である以上、私の迎えを寄越すにあたり、最も信頼のおける人物がミネだった……と、そういう事なのだろう。

 

「いや……いいさ。それで……何かあったのかい?」

 

セイアが尋ねると、ナギサはこくりと頷く。

 

「……はい。ですが……今回、私はただの貴方の友人として訪問させて頂きました」

「今からする話は、それを念頭に置いたうえでお聞きください。」

 

「……わかった。」

 

ナギサの言葉を噛み砕いて言うのなら、要は"極秘かつ非公式の会談"……と言った所だろう。

 

ルイの協力者として私が警戒され、監視されている事を勘案したとしても、深夜遅く……わざわざ私の部屋で待機までしていた所を鑑みるに……変に警戒はしない方が帰って怪しまれにくいだろう。

 

「────では、"友人として"歓談といこうか……何かあったのかい?」

 

物柔らかな口調で尋ねると、ナギサはこくりと頷く。

 

「ええ。少しお耳に入れたい事がありまして。……夜分遅くに長引かせる理由もありませんし、始めましょうか。」

 

ナギサの言葉を聞いて、ミネは小さく礼をして……私達に背を向ける。

 

……すると、その様子を見たナギサが "お待ちを" とミネを制止した。

 

「ミネ団長も残って聞いてください、お聞きしたい事もありますので。」

 

「……よろしいのですか?」

 

「構いません。これはあくまで友人同士の会話でしかありませんから。」

 

「……承知しました」

 

ミネは向けた背を翻し、再び私達に向き直った。

 

「ではまず……先に、これは極秘であることをご理解ください。万一これが多くの者が知る事となれば、面倒事に発展しかねませんので。」

 

「わかったよ」

 

「……わかりました」

 

ナギサの言葉に二人が頷くと……ナギサも頷きを返し、口を開く。

 

「さて……今日の夕方、ルイがアビドス校の対策委員会に連絡を取った……と先生から報告がありました。」

 

「……アビドスに……?」

 

セイアの呟きに、ナギサは"はい"と答えた。

 

「……彼女が語った内容は "アビドスの借金を肩代わりする" という物だったそうです」

 

「要約すると……"カイザーがアビドスに居座っているのは困る。金は出すから借金を返してカイザーと対等になり、カイザーを牽制しろ"という物だったと。」

 

(……カイザーグループか……。確かに、危険視すべき勢力ではある)

 

……ヒマリとルイの事だ。

連絡は取れずとも、多少の意図は読み取れる。

 

デカグラマトンにかこつけて、アビドス校を助力する気か?……それにしても、随分大胆な手に出たようだ。

 

「……ふむ。理由や対価はともかく……聞く限りは、悪くない取引だ」

「正直、アビドスを立て直すというのは私達としても願ってもない話ではある。……それで、ルイの求めた対価は?」

 

尋ねたセイアに、ナギサは訝しげな表情を浮かべる。

 

「……それが……"一切不要"という話なのです。」

 

「……不要、ですか。」

 

ミネは驚いたように言葉を漏らした。

 

「はい。"対価も恩も不要"と明言し、アビドス側に一切の要求をせず……ただ"借金問題を解決する"と……」

 

ナギサの補足を聞き、セイアは"ふむ"と声を漏らす。

 

(……概ね彼女の狙いは読めた。……ならば、少しだけ天秤を傾けるとしようか)

 

「……そこまでするとなると、何が何でもこの支援を呑ませたい理由がある、としか考えられないね。」

 

「そこまでしてルイがアビドスに干渉し……カイザーを牽制する理由……」

「どうやら、アビドスにカイザーが居るのはルイの……デカグラマトンの視点からしても、面倒なようだ。」

 

セイアの推論に、ナギサも同じ結論に至っているのか……"はい" と相槌を打つ。

 

「それで……アビドスはその取引を受けたのかい?我々に遠慮しているようなら、トリニティ側からも受け入れるように忠言するべきだと私は考えるが。」

 

「ええ……実は、私も同じことを考えました。しかし……アビドスの対策委員会は協議の結果、既にルイの提案を断ったそうです」

 

セイアはナギサの言葉を聞いて、困ったように耳を下げた。

 

「……ふむ……遅かったか。」

 

「はい……とはいえ、我々としてはルイ側の目論見を阻止できた、と考える事も出来ます」

 

「それもそうだね……遺憾ではあるが、そう考えるしかないか……」

 

セイアの言葉を最後に、ナギサの話は一旦の落着を迎えた……かに思えた。

しかし……ナギサがふと顔を上げ、口を開く。

 

「とはいえ、それらは既に終わった事です。……実は、ここからが本題なのです。」

 

そう言って、ナギサは真剣な雰囲気を纏う。

射貫くような目線。下げられた眉……その全てが、威圧感すら感じさせる程に険しい。

 

ナギサは鋭い眼で二人を一瞥し……問う。

 

「……お二人は、ルイが本当に裏切ったと考えているんですか?」

 

「……」

 

「…………」

 

ナギサの問いに、二人の表情が強張る。

硬直した二人の様子を横目に、ナギサは沈んだ声で続けた。

 

「……私には、今になって尚、信じがたいのです。」

 

「怒りで過ちを誤魔化し、悲しみに目を曇らせながら……今まで来ました。」

 

「……ですが、私にはどうにも、彼女が本当に、真の意味で"敵"に回ったようには思えません。」

 

「……歴史あるトリニティ校を代表する人間が、"魔王"なる悪徒を前に何を……と思われるかもしれません。」

 

「当然、彼女の犯した罪は裁かれるべきであり……決して、赦されるようなものではないと理解しています。」

 

「しかし……彼女の罪は拭えずとも、せめてその真意を、真実を知る事が……今、私の唯一の願いなのです。」

 

「……ミネ団長、セイアさん……貴方達なら、何か知っているのでしょう?」

 

悲哀に沈んだ声色で、ぽつぽつとナギサは語り……弱々しく、尋ねる。

 

「…………」

 

「…………」

 

────二人は答えず、セイアは黙し続け……ミネは沈痛に目を伏せる。

 

 

「……何も、言ってはくれないのですね」

 

 

黙した二人に、ナギサが寂しげに呟くと……セイアが重苦しく口を開いた。

 

「……ナギサ。正直に伝えるのなら……君の考える通り、私はルイ側に一定の理解がある。」

 

「……しかし、それを君に伝える事は叶わない。」

「以前、断片ながら君に伝えた通り……それは "知る事自体が危険な物" だからだ。」

 

「ただ、一つだけ言うのなら……我々にとって、ルイは倒さなくてはならない敵だ。」

 

「それは……それだけは嘘偽りない、確固たる事実だ。」

 

「……彼女を倒さなければ、真の意味で我々の間にある問題は解決できない。」

 

 

「…………」

 

 

セイアの言葉に、ナギサは煩悶する。

 

瞼に力を込め、沈思に耽るナギサに……セイアはゆっくりと語りかける。

 

 

「……寓話や伝説のように、誰もを救う"銀の弾丸"。そのように都合の良い物は存在しない」

 

「しかし……君が最も"善い"結末を願い、求むるのならば……彼女を倒し、直接問いただすと良い」

 

「……それが、私に出来る最大の助言だ。」

 

「…………」

 

セイアの言葉に、ナギサは俯き、沈黙する。

 

「……ナギサ様、私からもお願いします。」

 

「腕を失い、命を落としかけて尚、争いを重ねるルイを……私達は止めなければなりません。」

 

ミネがセイアに続いて告げると……ナギサはゆっくりと顔を上げ、答えた。

 

「……誤魔化さないで下さい」

 

「私達は話し合いの……相互理解の大切さを、痛い程に学んだはずです。」

 

低く鈍く、殴りつけるようなナギサの言葉に……二人は苦い沈黙を返す事しか出来なかった。

 

「"知る事が危険"などと……一体どのような危険があるのというのですか!?」

 

「私は、例えこの身が危険に晒されようと構いません!……私はただ、納得できる真実が知りたいのです……!!」

 

余りに痛々しいナギサの叫び。

苦し気にミネが横目に向けた視線が、セイアの視線と交差する。

 

……セイアは"ふう"と諦観交じりの息を吐き出した。

 

「……ナギサ。君がその真実を知れば、ルイは君を狙わなければならなくなる。」

 

「先に言ったように、私は……君が求めるような"真実"を一面的ながら、知っている。」

 

「私が予知夢を失っている事がルイに知れて尚、何故彼女が私を捕らえる為に動いたか……その理由は、そこにあるんだ。」

 

ぽつぽつと語られるセイアの言葉に、ナギサは黙って耳を傾ける。

 

「それゆえに……私はそれを"語るべきではない"という結論に辿り着いた。」

 

「"理解してくれ" などと傲慢な事は言うまいさ。しかし……それこそが、現状の最善策であることは間違いない。」

 

「……ルイにとっても、私達にとってもね。」

 

そう締めくくったセイアに、ナギサはわなわなと肩を揺らす。

 

「……セイアさんは、一体どちらの味方なんですか」

 

震え、微かな声で告げられた言葉には……確かな悲憤が籠っている。

 

セイアはやるせなく声色を下げ、ぽつりと呟きを返した。

 

「……どちらもだ。」

 

セイアの言葉に、ナギサは目を見開く。

 

「ッ…………!!」

 

そんなナギサの様子にセイアは小さく首を振って、続ける。

 

「先ほど言ったように、私は"真実"を知っている」

「それ故に……近く、ルイは私を取り戻しに来るだろう。────私は、それを受け入れるつもりだ。」

 

「……何を───」

 

セイアの言葉に、ナギサが何かを言おうとして……遮られる。

 

「────聞いてくれ。……私は、君達も、ルイの事も諦めたくはないんだ」

 

「償いは必ず果たす。全てが終われば……ルイに代わってでも、全ての真相を話すと約束する。」

 

「だからこそ……今は、今だけは私の事を信じて欲しい。」

 

はっきりと、真摯にそう告げたセイアに、ナギサは何か言いたげに息を吐き出して……俯き、沈黙する。

 

 

────長い、長い沈思熟慮の後……ナギサは大きく息を吐いた。

 

 

「────わかりました。」

 

ナギサは小さく答える。

 

「……全てが終わった後で構いませんので……いつか、真相を教えてください。」

 

「……私はどうしても、この悲憤に理由が欲しいのです。」

 

「……この名に誓い、約束しよう。」

 

セイアの回答を聴いて、ナギサはそっと立ち上がる。

 

「……求める回答は得られませんでしたが、それでも……まだ、立ち続けるだけの理由は得ました。」

 

そう言って、ナギサは二人を見遣る。

 

「……私はお二人を信じていますよ、セイアさん、ミネ団長。」

 

「……夜分遅く申し訳ありませんでした。それでは……私は失礼します。」

 

そう言って、ナギサはゆっくりとした足取りでセイアの部屋を出る。

 

「……セイアさん、ナギサ様を寮まで送り届けますので……私もここで失礼します。」

 

その様子を目で追うミネは立ち上がり、セイアに小さく頭を下げた。

 

「わかった。……ナギサを頼んだよ。おやすみ」

 

「ええ……おやすみなさい、セイアさん。」

 

別れの言葉を交わすと、すぐにミネは部屋を出て行った。

 

「…………はあ」

 

セイアは幾つもの感情の混ざった重苦しい息を吐き出す。

 

(思えば……私も、ルイにはしばらく会えていない)

 

ルイが倒れ、トリニティへ戻ってからというもの……忙殺されていた感情が、今になって蘇る。

 

「……折角、伴になれたというのに……寂しいものだ。」

 

寂寥を吐き出すように呟きつつ……床に就く用意を終えて、セイアはゆっくりとベッドに体を横たえる。

 

(願わくば……夢の中で逢える事を────)

 

微睡の中に自らを抱く彼女へ寂寥の慰めを求め……セイアはゆっくりと目を閉じた。

 

 

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