"黙示録"を回避しよう!   作:rezi

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砂漠

13:57:アビドス砂漠/作戦エリア外縁・待機ポイント12

side: 第12班

 

作戦開始時刻直前。12班の生徒達は作戦開始を今か今かと待っていた。

 

────砂漠を前に揃った四人の影が、延々と続く砂丘に伸びている。

 

「…………」

 

誰も口を開かず、静かに立ち込める興奮、緊張、不安。

その全ては肯定されるべきものであり、しかしそれでも"未来のため"と、前を向き続ける選択をした者のみが、今この場に立っている。

 

「………………」

 

当然、浮かない表情を浮かべる者もいる。

白翼を背に持つその少女の肩にはトリニティの印章が着いており、その所属を明らかにしていた。

 

不安げな表情は案外目立つ者で、隣でバイクによりかかっていたゲヘナの生徒がそれに気付いたのか、ゆっくりと近付いて"ぽん"と優しく肩に手を乗せる。

 

「……そう不安そうにすんなって、アタシがついてる」

 

吹き付ける砂埃の中で、少女は口角を上げて爽やかな笑みを向けた。

 

「だからさっさと終わらせて、アイスでも食って帰ろうぜ。なっ!」

 

朗らかに伝えられた言葉に、トリニティの生徒は"はぁ"と安堵とも諦観とも取れる息を吐いた。

 

「……たしかに。今更怖がっても仕方ありませんね」

 

「おう!どうせ運転はアタシ達だからな。あんたはただ、私やあいつらを信じてくれればいい」

 

そう言ってゲヘナの生徒が顎で示す先には、微笑んで小さく手を振るミレニアムの通信手と、片手を挙げるもう一人のゲヘナの生徒。

 

「……その代わり、砲手はあんたに任せた!お互い様だ、せいぜい頑張ろうぜ」

 

彼女はそう言って、ゆっくりと拳を突き出した。

 

彼女達とは知り合って二週間と、決して長くはない時間なれど……過酷な訓練を共有した仲だ。

最初は嫌悪感もあったが……すぐに、それは薄れていった。

今は命を預けるにも値する存在として、確かな信頼すらある。

 

……それと同じく、私の照準にも彼女達の……キヴォトスの命運が懸かっているのだ。

ならば、こうしてうじうじしている訳にはいかないだろう。

 

"ふふ"と笑って、こつんと拳をぶつける。

 

「……ええ、この私にお任せください。まさか、貴方に励まされるとは思いませんでした」

 

「ははっ、どういう意味だ?」

 

「ふふっ、悪い意味ではありませんよ。ただ────」

 

"ビーーーーーッ!!!"

 

紡がれかけた言葉をアラートが切り裂き、時の訪れを告げた。

同時に、"ザザ"とスピーカーのノイズ音が響く。

 

[────14:00。現時刻を以って、ビナー討滅作戦の開始を宣言します。総員……行動開始!!]

 

指揮官。桐藤ナギサの声が作戦開始を告げ、全員が顔を見合わせた。

 

「っと……時間だな。さ、乗りな!」

 

「……ええ!」

 

手を引かれた少女は、バイクの後ろに飛び乗った。

 

「んじゃ行くぜ!! 12班、行動開始だ!!」

 

「「「了解ッ!!」」」

 

"ヴオォォォォォォォオン!!!!"

 

2両のオートバイがけたたましい唸り声を上げ、砂を蹴り出していく。

キヴォトスの未来を担うその背は、砂丘の向こうへと消えていった。

 

 


 

 

14:00 作戦エリア/廃墟

side:ルイ

 

「……始まったか」

 

双眼鏡を構え、廃墟の屋上より状況を俯瞰する。

視認できる範囲でも4つの班が扇状に散開し、砂漠を網羅するべく移動を開始している。

 

────兎にも角にも、先ずはビナーを補足しなければ話が始まらない。

作戦の第一フェーズは、ビナーを発見する所からだ。……そして、そのための策は用意してある。

 

 


 

 

14:05 : 作戦エリア/アビドス砂漠北東

side: 第8班

 

「────5分でーす!!いったん停止ー!!」

 

隊員の一人が大声で伝えると、二両のバイクはすぐに停車した。

 

降車したミレニアムの生徒がバイクのキャリアから手早く機材を下ろすと、そこに集まってきた残りの三名は各々スレッジハンマーを手に、巨大な鉄杭を地中深くに打ち込み始めた。

 

「よっ!」「はっ!」「よいしょぉ!」

 

鉄杭が砂を割り、ずんずんと地中へと沈んでいく。

"カン!" "カン!" "カン!"と打ち下ろされるハンマーは息の合ったリズムを刻み、全長1.5メートルほどの鉄杭はすぐにその身の殆どを地面に沈めた。

 

「……こっちは準備できたぞ!!」

 

「了解!こちらも間もなく!」

 

そう答えたミレニアムの生徒は電源の入った機材を杭に接続し、つまみを握る。

 

「準備完了っ!いきますよ……!!」

 

"ぐい"、とつまみを端から端までひねると───計器のモニターに、いくつもの反応が浮かび上った。

 

「……さてさて、反応はありますが……これは……ああ、岩ですね」

「これはガス管の残骸?……うーん、これも違うなぁ……」

 

モニターを覗き込んでぶつぶつと呟いた少女は計器と十数秒ほどにらみ合った後、すくと立ち上がった。

 

「残念ながらハズレですね。さ、回収しましょう!」

 

「了解です。進み始めてすぐですし、そう簡単に発見できるとも思っていませんから、気を取り直していきましょう」

 

「ま、それもそうだな。よし、じゃあ回収始めんぞー!」

 

その号令に始まり、1分ほどで機材の回収は終わり────あとは、最後の工程のみが残った。

 

「定時14時10分。フレア行きます!」

宣言と共に、少女はフレアガンを掲げ、打ち上げる。

 

"パァァァァン!!"という破裂音と共に空に打ち上げられた光煙は……白。

揺らめく煙が陽炎に揺られ、砂漠にゆっくりと広がっていく。

 

ホワイトフレア。これはいわゆる"ハズレ"を意味しており────基本的に通信が使えない今作戦において、砂漠に散開した各班はそれを共通語としている。

 

そして、遠方からもいくつもの白煙が上がり始め……第一次の地中レーダー探査は失敗に終わった事を示していた。

 

「……アタリは無しか。よし、じゃあ再出発だ、行くぞ!!」

 

「はーい!」

 

第二次探査に向けて、第8班の生徒達は再び移動を開始したのだった。

 


 

14:46 作戦エリア/アビドス砂漠北西

side:第3班

 

打ち上がった白煙の群れを見遣って、角を持つ少女は大きくため息を吐いた。

 

「第4次もハズレか……日が落ちる前には終わらせなきゃいけないってのに、幸先が悪いね」

 

「……あまり考えたくはない話ですが、レーダー探査も20メートルが限界ですからね……」

「地質上は不可能だとは思いますが、ビナーがそれ以上の深さまで潜行できるのなら……そもそも、技術的に発見不可能という事もありえます」

 

なかなか成果の出ない捜索に不安になってきたのか、ミレニアムの生徒は弱々しく語った。

 

「チッ。デカグラマトンだかデカグラタンだか知らないが、オーバーテクノロジー?ってのは面倒だね」

「……まあいいさ。あたしたちは今やれる全力を尽くす。それだけ……ま、気楽に行こう」

 

ゲヘナの生徒はそう言ってアクセルを握り込み────少しして、時刻は15:00を回った。

 

 

「……もう1時間か、第5次、いくよ!!」

 

号令をかけ、バイクを停止する。

もはやこの作業には慣れきったもので、てきぱきと展開されていく機材と共に、地中に杭を打ち込んでいく。

 

「よーし、準備完了。行きますよ~」

 

気の抜けた号令と共にミレニアムの生徒が機材のつまみを回すと、モニターにいくつもの反応が浮かび上がった。

 

「……ええっ、と……!?」

 

「どうかした?」

「なんだ?」

 

驚愕を言葉に滲ませた彼女に、周りの三人がなんだなんだとモニターを覗き込むと……少女は僅かに声を震わせながら、モニターに指を向けた。

 

緑光の中、ひときわ長く伸びる反応がある。

デジタル表示の点滅は不規則で、まるで生き物の心音のように脈打っていた。

 

「……ここ、何かが地中を通過した痕があります」

「地熱によるノイズにしては局所的過ぎますし……"何かが通過した"、としか思えません」

 

「……ビナーか?」

 

「……はい、おそらく」

 

声色低くそう伝えられたゲヘナの生徒は、大きくため息を吐いた。

 

「……ついに当たりか……」

 

「ええ、ここからが本番ですね……!!」

 

そんな会話を交わす中、ミレニアムの生徒がコンパスを片手に、ゆっくりとフレアガンを掲げた。

 

「……進行方向は……ここから北東に324度……、よし、フレア、行きます!」

 

"パァァァァン!!"

乾いた破裂音と共に、黄色の光煙が痕跡の進行方向へと飛んでいく。

 

それと同時に……周囲の班からもイエローのフレアが上がり、往くべき道を示した。

 

「……周りの方たちも発見したようですね……!!」

 

「ですね、つまり……」

 

────この黄煙の先に、ビナーが居る。

言葉もなく全員がそう理解し、息を呑む。

 

「……足並みを乱しても仕方ないね、行こう」

 

ゲヘナの生徒が告げたその言葉に、全員が顔を上げる。

 

「……そうですね、追跡を始めましょう」

 

「了解」

 

そうして手早く機材を撤収し、4人は出発の準備を整えた。

 

"ヴォォォォン!!"

バイクは砂を巻き上げながら走り出し、黄煙の示す先へと進み始める────。

 

 


 

 

15:12 作戦エリア/アビドス砂漠北部

side:ルイ

 

「……尻尾を掴んだか」

 

遠方に上がったフレアの黄煙を見上げ、小さく呟く。

 

"地中反応有り"を意味するそれが複数上がったところを見るに、ノイズによる誤検知などではないだろう。

双眼鏡を用いて黄煙の行く先へと目を向けるも、未だかの白蛇は映らない。

 

……とはいえ、近く交戦に入るのは間違いない。

 

ここからが本番だ────大前提として、"誰も死なせない"。

この作戦で一人でも命を落とす事があれば……それは火種となり、全ては水泡と帰す。

 

肩に乗った責任は重くのしかかり、吐き出す息を濁らせる。

ざらざらと吹き付ける砂塵が、私の気分を逆撫でた。

 

「……まあいい、移動を開始しよう」

 

言葉を用いて精神を整え、私は走り去ったオートバイの後を追うように飛び立った。

 

 


 

 

15:13 : 作戦エリア外縁部/指揮所

side:ナギサ

 

指揮所のテント内で腕を組み、沈思に耽っていたナギサの耳に"ジリリリリ!!"と甲高く、耳障りな音が届いた。

 

……この回線は、ランドライン*1を引きながら実働部隊の最後方を走り、フレアにより各班から共有された現地の状況を伝える通信部隊と直通しているもの。

 

時刻から推察するに、おそらく第五次調査の結果が出たのだろうと応答キーを押下すると、焦りが強く滲んだ声がナギサの耳に届いた。

 

[……こちら第二通信隊!捜索隊がビナーの痕跡を掴みました!]

[フレアによる位置測定によると、ビナーの進行方向は指揮所より北西297度に向けて移動した物と思われ、痕跡から指揮所からの距離はおよそ39キロメートルほどです!!]

 

[以上!どうぞ!]

 

通信部隊の報告を聞いた周囲の連絡員たちは慌ただしくメモを取り始め、外へと飛び出していった。

 

「こちら桐藤ナギサ。北西297度、39キロメートル、了解しました」

「総員に通達を行いましたので、火力支援や救助が必要な場合は即応可能です。どうぞ」

 

[了解!通信終わります!]

 

それを最後に、通信は終了した。

ナギサはひとつ息を吐いて内線用のマイクを手に取り、指揮所内外に待機している者へと告げる。

 

「総員へ通達。実働部隊がビナーの痕跡を発見しました、間もなく戦闘に入る物と想定されます」

「待機中の砲手各位は連絡員から通達された方角への攻撃用意を整え、発射に備えてください」

 

「以上。通達を終わります」

 

ゆっくりとマイクを置いたナギサは、机の上に広げられた地図に目を下ろし……地図上の駒を動かし始めた。

 


 

15:22 作戦エリア/アビドス砂漠北部

 

side:第5班

 

 

「────えっ!?ちょっ!!ちょっと止めてください!!ストップ!!」

 

「うわっ!!どうした!?」

 

後部で唐突に騒ぎ始めたトリニティの生徒に驚いた運転手はバイクを急停止させる。

すると、トリニティの生徒は指をさしながら、双眼鏡を手渡した。

 

「あ、あれ…………!!」

 

「なんだ……ッ……!?」

 

指し示された先、崩れ落ちた市街の残骸……その隙間。

蠢く流砂の中心────そこに巨大な白い構造体が砂に半身を埋め、沈黙していた。

 

「見つけた……!!」

 

「……ふむ、あれがビナーですか……実物は予想以上に大きいですね……」

 

「動いて……ないよな。寝てんのか……?」

 

残りのメンバーもバイクを降りて、砂丘の上に立った5班のメンバーたちは視線の先で動かない白鯨を見下ろす。

 

「機械が眠るとは思えませんが……あえて例えるなら、充電?でしょうか」

 

レンジファインダーでターゲットとの距離を測りつつ、5班の生徒達は言葉を交わす。

 

「太陽光と地熱をエネルギーに変えたとしても、あの巨体が動くとは思えませんが……」

「……いえ、それは置いておきましょう。ターゲットが動かない今がチャンスです」

 

「作戦に則り、ミサイルの組み立てが完了次第、オレンジ(ターゲット目視)を打ち上げます」

「緊急時に備え、回避の準備もしておいてください。さ、始めましょう」

 

フレア弾を装填しつつ、的確な指示を出した通信手の言葉に三人は頷きを返して、攻撃開始の用意を始める。

 

「……三脚よし!」

ゲヘナの生徒がバイクから三脚を持ち出し、地面に固定。

「ランチャー、固定します!」

トリニティの生徒が砲塔を載せ、固定具を嵌める。

「バッテリー接続完了!」

もう一人のゲヘナの生徒がバイクのバッテリーからコードを引き込み、接続する。

CP(コントロールパネル)及び照準器、異常なし。発射可能!」

 

三人の流れるようなチームワークによって、1分にも満たない時間でミサイルは発射用意を完了させた。

 

「了解。オレンジフレア(ターゲット目視)、行きます!!」

 

"パシュッ……!"

特殊な弾頭と銃を用いる事で極限まで消音されたフレアは、しっかりとその役目を果たし……高空へと橙の煙が上がる。

 

────ビナーはそれに気付いていないのか、動き出す様子はない。

 

「……よし!気付いてないぞ……」

「ええ、このまま動かないで欲しいものですが……」

 

手に汗を握りながら状況を観察する三人を横目に、トリニティの生徒はビナーへと砲口を向ける。

 

「さあ、ここからは私の職分です……」

 

光の粒が舞うモニター越しの世界に、ビナーの姿がぼんやりと映る。

 

狙うは尾部……しかし、そこは地中に埋まり、視界に映るはずもない。

ならば……狙うは第二目標。

 

おそらく砂中潜行に寄与しているであろう腹板へと狙いを定める。

液晶に浮かぶ敵影に、照準の十字線が重なった。

 

「……照準、良し。いつでも撃てます」

 

「了解。作戦通りなら……攻撃時刻はフレアが上がってから10分後だ」

 

「最後の休憩になるだろうから、せいぜい息を整えよう」

「それと、水分補給を怠るなよ。……これ以降は休めないからな」

 

「……ええ、そうですね」

 

その言葉に呼応するようにして、5班の生徒達は腰のホルダーから水筒を取り、水を一口飲む。

乾いた喉に染み渡る水分は緊張をほぐし……束の間の安堵を与えた。

 


 

15:25 作戦エリア外縁部/指揮所

side:ナギサ

 

"ジリリ────"

鳴りだしたコールに対し即座に応答キーを押下して、ナギサは答える。

 

「こちら桐藤ナギサ。どうぞ」

 

[こちら第一通信隊。オレンジフレア(ターゲット目視)によりビナーを目視、現座標を特定しました]

[ターゲットはこちらを認識しておらず、作戦通り、総攻撃の用意を行っている状態です。どうぞ]

 

「了解しました。作戦に則り、総攻撃に合わせて砲撃を行います。座標どうぞ」

 

[了解。ターゲットの座標は49SCC 1093 1597。繰り返します。49SCC 1093 1597。復唱願います]

 

「49SCC 1093 1597了解。既に通達を開始しています。レッドフレア(交戦開始)の報告と同時に砲撃を開始します。どうぞ」

 

[了解しました、以上]

 

手短な通信は終わり、指揮所内は再び慌ただしさを増す。

 

「……聞きましたね?各位、情報の修正を迅速に行い、砲手へ座標を伝えて下さい」

 

「「はっ!!」」

 

何人もの連絡員がメモを手に指揮所を飛び出し、ナギサは再びテントの中に一人残った。

マイクを手に取り、全体へと呼びかける。

 

「総員へ通達。実働部隊がビナー本体を視認。それに伴い、攻撃座標を修正します」

「砲手各位は連絡員より伝えられた情報に従い、砲撃の用意を整えてください」

 

「救護班は出動に備え、ゲート外に車両を移動するように────以上。通達を終わります」

 

マイクを置き、ナギサは地図を見つめる。

通信隊が知らせてくれた座標。……そこは廃墟となった市街があるエリア。

アビドス砂漠を北西に進み続けた先にある、かつて栄華を誇ったであろうその市街区は、訪れる者はおろか……今や、存在を知る者すらほぼいないだろう。

 

……勝手な推測ではあるが、そこがビナーが根城としている場所なのかもしれない。

 

さらさらと地図にメモを残す。

ビナーに限らず、あれらのエネルギー源は明星ヒマリや天城ルイをして"完全不明"と結論付けられている。

 

作戦終了後、この市街を調査すれば科の存在についてなにかわかるかもしれない────と、逸れかけた思考を振り切って、ナギサは深く深呼吸をした。

 

あと数分もしない内に交戦が始まる。

 

「すぅ……はぁ」

 

何度か息を整えて、ナギサは通信部隊からの連絡を待った。

 

 


 

 

15:27 作戦エリア/アビドス砂漠北西部

side:ルイ

 

オレンジフレア(ターゲット目視)を視認した私は、ビナーを射程に収められる場所まで急行した。

視界の果てに映る白蛇は、まるで露出した古代生物の骨格のように砂に半身を埋め、眠りについているかの如く動かない。

 

……好都合だ。

総攻撃が成功すれば、初手で相手の潜行能力を奪える可能性が大きく上がる。

潜行するビナーを追跡、追撃し続けるのは、時間的にも物量的にも限界がある。

 

……できれば、初手で奴の能力を奪ってしまいたいところだ。

 

────双眼鏡を片手に周囲を確認する。

フレアの打ち上げから8分ほどが経過した。

発見した第5班を始めに、3.4.6.7.8班が到着し、攻撃準備を終えている。

 

攻撃開始時刻まではあと2分を切った。

散開している以上、残りの班は初撃には間に合わないだろうが……すぐに到着するだろう。

 

(……さあ、ここからだ)

 

ガスマスクを装着してバイザーを下ろし、攻撃の開始を待つ。

 

攻撃開始まで、残り1分を切った。

音もなく、ただ心臓の鼓動だけが耳を打つ。

 

他者の命を預かるというのは、かくも恐ろしいものか。

 

「…………」

 

深呼吸と共にスーパーノヴァの電源を入れ、固定する。

スーパーノヴァと連動したバイザーのHUDが起動し、全ての用意は整った。

 

「……さあ、始めよう」

 

世界(キヴォトス)の敵を討つため、私はトリガーに指をかけた。

 

*1
通信方法のひとつ。その名の通り地面に直接電話線を引いて通信するため通信妨害の影響を受けず、断線しない限りは安定した通信を行える。







あとがきとお知らせ [番外編のアンケートを設置しました]

こんにちは。気付けば7月も一瞬で終わりましたね。
さて、今更も今更ですが気付いたら第一話から1年経ってたという事で、記念という訳ではないですが番外編をやろうと考えています。
本編がひと段落したあたりでやるつもりなので次回から番外編!!って訳にはならないので安心してください。

以下は番外編の詳細な解説です。アンケートだと20文字しか入らなかったので!

1:天城ルイがあの時本当に死んでた場合どうなっていたのか?的な曇らせ特化BADENDルート。

2:ミカ戦前にセイアがルイを止めるのが実際正解だったのか?的なIFルート ルイちゃんが知り合い全員に病人扱いされてお労しくなります。 曇らせと晴らしの両刀。

3:全力全開(最新の装備含む)の天城ルイが俺より強い奴に会いに行く編 トンチキ。

4:ルイちゃんやたらミレニアムの人に人望あるけど何やってたの?という疑問にお答えする過去編。
ゲーム開発部とゲームしたりエンジニア部と部室棟を吹き飛ばしたりなんか色々やったり。本編では殆どやってなかったミレニアム時代の短編集的な物を考えています。ギャグ寄り。

(正直な話ですが、どれもプロットはできてるのでアンケートの結果は更新の優先度くらいになります)
とはいえアンケートがやる気に変換されるという噂もあるので、気軽に投票してください。

番外編アンケート

  • ラビット小隊戦でルイが本当に死亡したIF
  • セイアの告発で計画が根本から破綻したIF
  • 目指せキヴォトス最強!かちぬきボスバトル
  • ミレニアム外交官時代の短編集
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