"黙示録"を回避しよう!   作:rezi

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ルイちゃんの立ち絵を描いてみました。
トリニティ戦前のイメージです。
【挿絵表示】



遊撃

深夜:ミレニアム自治区/第6区画

side:ルイ

 

────月を背負った蒼翼が、私に向かって降ってくる。

強い衝撃と共に着弾したそれは、黄金の瞳をぎろりと向け────。

 

「……見つけましたよ」

 

低く、怒りを孕んだ声色とともに、彼女はずんずんと近付いてくる。

 

「……ミネ、なぜここに」

 

その問いに答えず、彼女は私を睨んだ。

 

「救護を必要としている場所があるのなら、どのような事情があろうと私はそこへ行きます」

「貴方に、それ以上の説明が必要ですか」

 

「……いいや」

 

その答えにミネは無言で頷いて……ふと空を見上げる。

そこには無数のドローンが飛んでおり、私たちを監視するように旋回していた。

 

「……言いたいことはいくらでもありますが、まずはここから離れましょう」

「安全な場所があるのなら、そこに案内してください」

 

そう言って、ミネは再び私に視線を向ける。

有無を言わせぬような語調だったが、しかし私は首を振った。

 

「貴方の考えは理解するが……私はここで戦い続けなければならない」

 

「敵戦力をここに引き付けることで、救援部隊を間接的に支援する」

「……そうすることで、多くの命が助かる可能性が────」

 

そこまで言ったところで、ミネが固く拳を握ったことに気付いた。

しかし、その拳は振るわれることなく……ミネはぱっとその拳を解く。

 

瞬間、ミネは振り返って──ショットガンの引き金を引いた。

銃声と共に、背後で様子をうかがっていたオートマタが倒れる。

 

ミネは無言でショットガンをくるりと回して、私へ再び視線を向ける。

 

「……なら、私が貴方の代わりに戦います。それなら問題はないでしょう」

「今はとにかく、ここから離れ、治療を受けてください」

 

強硬にそう告げたミネに、私は"いいや"と言葉を返した。

 

「……残念ながら、そういうわけにもいかん」

 

「本隊は物資も乏しく、既に怪我人でいっぱいだ。私を治療する余裕などないだろう」

「そのためにも、私はここで戦い続けなければならない」

 

そう伝えると、ミネは少し黙って……苦しげに"わかりました"と呟く。

 

「……それなら、私が傍に居ます。なにがあっても、貴方を護り抜くと誓いましょう」

「ですがその前に、応急手当ぐらいはしてください」

 

そう言いながら、ミネは腰に巻いたポーチを外して……私へと差し出した。

 

「処置は自分で出来ますね?」

 

「……ああ。感謝する」

 

差し出されたポーチを受け取ると、ミネは小さく頷く。

彼女はゆっくりと振り向いて、私を庇うようにして盾を構えた。

 

「……私が護ります。安心して、処置に専念してください」

 

そう語ったその背は、誰よりも頼もしく映った。

 


 

深夜:ミレニアム自治区/地下浄水場

side:サオリ

 

 

「……状況は把握したわ」

 

私の説明を聞き終えた空崎ヒナはそう言って、隣で話を聞いていたミカに視線を向ける。

 

「……ミカ。わかっているだろうけど」

「私は行くよ」

 

ヒナの言葉を遮って、ミカははっきりと告げた。

 

「……第6区画のショッピングモール。合ってるよね?」

 

そう言って、ミカは私と視線を交わす。

彼女の問いを"ああ"と肯定すると、ミカはそのまま背を向け……走り出したかと思えば、ぴたりと足を止めて振り返った。

 

「……サオリちゃん、お願いがあるんだけど」

 

続きを聞かずとも、彼女の願いはわかっていた。

 

「……わかった。同行しよう」

 

立ち上がり、銃の安全装置を外す。

傍で見ていたヒナは止めるでもなく、ただ小さく溜め息を吐いた。

 

周囲の者達も、ただ無言を貫いている。

それがなによりの、肯定だった。

 

「……サオリちゃん」

 

「ああ、行くぞ」

 

 


 

 

同時刻:ミレニアム自治区/地下浄水場

side:空崎ヒナ

 

走り去る二人の背を見送って、ヒナは周囲を一瞥する。

そこには、同じく無言で彼女達を見送った者達がいた。

 

「……意外ね。貴方達が止めると思っていたのだけど」

 

そう呟いたヒナの視線の先で、ハスミは僅かに瞑目する。

そこには複雑な感情が垣間見えて……ハスミは重苦しく、口を開いた。

 

「……彼女には、生きて罪を償っていただかなければなりませんので」

 

そこで言葉を区切って、ハスミは続けた。

 

「……今はそれよりも、"救援部隊とどう連携するか"。それを議論すべきでしょう」

「急ぎ、補給物資を護衛する部隊を編成し、外部との通信を確保。維持する方法を考える方が優先です」

 

「……その他のことは、後に話すとしましょう」

「こちらも、聞きたいことがありますので」

 

そう無理やりに話を終わらせて、ハスミは背を向けて歩き始めた。

 

「……そうね。まずは戻りましょう」

 

その背に続き、私たちはアコの居る指揮所へと向かった。

 

 


 

 

同時刻:アビドス砂漠/回収部隊の拠点

 

 

[────砲撃開始 ]

 

ナギサの声が、拠点中へと響いた。

 

瞬間、四方から無数の砲声が轟き────空を揺らす。

数秒。地鳴りのような音が何度も北西より鳴り響く。

 

[……第一次砲撃が完了しました。強襲部隊は突入を開始してください]

[事前説明の通り……抵抗の有無に関わらず、全ターゲットの撃破を]

 

 

 


 

 

side:カイザーPMCの兵士

 

 

なにが起こったのか、わからなかった。

天地が崩れ、視界は閃光に染まり────気付けば、宿舎の残骸に埋まっていた。

 

「……クソッ、なにが起きたんだ……!?」

 

ただ確かなのは、"攻撃を受けた"、ということ。

ならばとにかく、現状を把握し……応戦しなければ。

 

瓦礫と化した宿舎から這い出ると、

ほんの数分前まで基地だったはずの場所は、炎と瓦礫の山と化していた。

 

「ウソだろ……」

 

一旦は伏せたまま、様子を伺う。

炎と煙で視界は悪く、状況を把握しきれない。

 

そんな中で、乾いた銃声が何度も響いている。

乱れず、ただ淡々と鳴るそれらは、"銃撃戦"と呼ばれるような双方向のものではなく、一方的なもの。

 

「…………」

 

それだけで、絶望的な状況であることは理解できた。

下手をすれば基地単位で壊滅している。これはもう応戦などと言える状況ではない。

 

……優先すべきは、自分の────"ズドォン!!!"

 

 


 

side:ホシノ

 

 

「……恨むんなら、邪魔しようとした親玉を恨みなよ」

 

 

足元に転がるPMCから視線を外し、次のターゲットを探す。

 

……強襲部隊の突入から、3分が経った。

砲撃によってパニックに陥った前哨基地を陥落させるには、十分すぎる時間。

 

……しかし、今回は"徹底的に"やる必要がある。

引き上げまで、あと3分もない。

 

それまでに片付けられるか──視界の端、姿勢低く移動する背を、ホシノの瞳が捉えた。

 

「……見つけたよ」

 

たん、と軽いステップで距離を詰め、無防備な背中に向けて引き金を引く。

散弾の直撃を受けたPMCはうつ伏せに倒れ、動かなくなった。

 

「…………せめて抵抗してくれないと、後味が悪いな」

 

チューブにシェルを装填しながら、ぽつりと呟く。

 

この攻撃に正義はない。それでも、今はやるしかない。

ここでカイザーの妨害を許せば……最悪、大勢の生徒が命を落とす。

 

桐藤ナギサは作戦開始前の演説で言っていた。「これは生存競争だ」と。

 

……現状は、まさにその通りだ。

 

喰うか、喰われるか。

私たち生徒と、デカグラマトンと、その他勢力の生存を掛けた戦争。

 

だからこそ、私はここで引き金を引く。

それが、私たちが護るべき未来に繋がるのだと、そう信じて。

 

「────次。」

 


 

同時刻:ミレニアム自治区/メインロード

side:ミカ

 

幾度もの襲撃を潜り抜け、鳴り響く銃声の方向へ走り続けた私たちは、

ついに、混沌の中心へと到達した。

 

ビルに突き刺さったヘリ。ひっくり返った戦車。

地面を埋め尽くすようなドローンとオートマタの残骸。

 

そんな見渡す限りの残骸の中心に、二つの人影が立っていた。

黒煙の中にあっても、炎に照らされた双翼はその主を告げる。

 

「……ルイちゃーん!!!ミネだんちょーっ!!!」

 

大声で叫ぶと、二人は驚いたようにこちらへ視線を向けた。

 

「救援に来た!!撤退を支援する!!」

「助けにきたよーっ!!」

 

サオリちゃんの言葉に続いて、そう手を振ると、二人は顔を見合わせて……。

 

「……状況を説明する!!来い!!」

「お二人とも!!こちらへ!!!」

 

こちらに呼び寄せたつもりが、逆に呼び込まれてしまった。

しかし二人の鬼気迫るような言葉に、私たちはとにかく従うことにした。

 

彼女達の背を追って、私たちはビルの一角へと身を隠す。

二人はそこに腰掛けて、ルイちゃんが口を開いた。

 

「……結論から話そう。敵勢力の戦力を分散させるため、私たちはここで戦い続けるつもりだ」

「現状打破のためにはまず、物資供給と有線通信の確立が必要だからな」

 

「その成功率を僅かにでも上げるため、私たちはここに残るのが最善だと判断した」

「私とミネなら、兵器が相手でも問題なく戦えるからな」

 

そんなことを言いながら、ルイちゃんはミネ団長に包帯を巻いてもらっている。

平静に見えるが、こうして落ち着いて見ると……彼女の身体はボロボロだ。

 

右の翼は半分失われて、頬には抉られたような傷。

アーマーにはいくつもの鉄片が突き刺さっていて、受けた攻撃の激しさを物語っている。

 

意識があることが不思議なほどの怪我が、いくつも。

 

「私が代わりに残ろう。その傷で戦うのは危険だ」

 

紡ぎかけた言葉は、サオリちゃんに遮られて……でも、言いたいことはまったく同じ。

 

「……私も残るよ。だから、ルイちゃんは戻って」

 

私たちの言葉に、ルイちゃんはすこし考えるように目を閉じて……。

 

「……感謝する。だが、ここには私たちだけ──うぐッ!?」

 

拒否の言葉を紡ごうとしたルイちゃんを、ミネ団長がぐいと抑え込んだ。

 

「感謝いたします。では、お二人は私と共に────」

 

「……っぐ待て!ミカは大型兵器への切り札として本隊と共に居るべきだ!」

「サオリは私たちのように戦車やヘリに対応しきれない!」

 

抑え込もうとするミネ団長の力に抗い、ルイちゃんは理由を話す。

私たちがそれに抗弁する前に、ミネ団長はルイちゃんを再び抑え込んだ。

 

「……だとしても、貴方をこれ以上戦わせるのは許容できません!!」

「そもそも、その傷でどうして平気そうなんですか!!」

 

「平気だからだ!!」

 

ルイちゃんにしては珍しく、ぎゃあぎゃあと口論していた。

二人にしてみれば、これは理と力を使った本気の議論なのだろうが……。

 

「……ふふっ」

 

私にはどうにも、それがおかしく思えてしまった。

 

「……ねえ、じゃあさ」

 

私の言葉に、みんなの視線が集まる。

 

「あのタコ、私たちで倒しに行かない?」

「あれさえ倒しちゃえば、全部解決だと思うんだけど……」

 

数秒、沈黙が流れる。

ルイちゃんはぴたりと動きを止め、ミネ団長は"ふむ"と唸る。

サオリちゃんは肯定も否定もせず、ただ無言で回答を待っていた。

 

そして、ルイちゃんが口を開く。

 

「……無鉄砲だな。しかし……そうだな……」

「先に聞くが、救援部隊が来ることと、到着時間、場所はきちんと伝わったんだな?」

 

「ああ、伝えた。結果どうするかまではわからないが」

 

サオリちゃんの言葉に、ルイちゃんは"そうか"と答えて、私へ視線を向けた。

 

「……ミカ、お前達は敵の出現経路を探りに行っていたらしいが、どうだった?」

 

投げかけられた問いに、さっきの記憶を思い出す。

 

「えっ?ああ、うーん……"わかったけど、わからなかった"、って感じかも」

「白いオートマタが地下から出てきてるのはわかったけど……根元がどこかまではわかんなかった」

 

「でも、体感的に北に行けば行くほど白いオートマタが出てくる比率が上がってたから、ネルちゃんは"やっぱり禁足地から来てる"、って言ってたよ」

 

「あ!あと、ケテルだっけ?あの四本足の!あれも出てきたから、みんなで倒したんだけど……」

「そこでヒナちゃんの弾が無くなっちゃったから、一旦帰ったんだ」

 

そこまで言ったところで、ルイちゃんは"ふむ"と考えるような仕草をした。

 

「……なるほどな。おおむね予想通りと言ったところか」

「話を聞く限り、ケテルと交戦したのは北端だな?」

 

「えっ?うん」

 

私が肯定すると、ルイちゃんは少し思案して……口を開いた。

 

「……やはり、デカグラマトンの本体、あるいは急所は禁足地内にあると見るべきか」

「機動力に優れるケテルを遊撃でなく、禁足地付近に配置していたあたり、その可能性は高い」

 

「ミカ。ケテルを倒した決め手はなんだ?ヒナの弾幕か?隕石か?それともツルギかネルか?」

 

「えっと、ヒナちゃんが脚の機動装置を壊して、動きが遅くなったところに隕石を当てて……」

「そのまま、みんなで袋叩き……って感じかな?」

 

「……ふむ……」

 

それからルイちゃんはたっぷり10秒ほど考えて……"わかった"と口を開いた。

 

「一度本隊と合流し、ツルギかネルに協力を仰ぐ」

「その後、ミレニアム禁足地へ向けて強行軍を行う。これが最も効果的だろう」

 

そう断言して、ルイちゃんは"すく"と立ち上がった。

しかし、その肩をミネ団長が掴む。

 

「……待ちなさい。論点をすり替えた上、当然のように自分も行くおつもりのようですが……」

「これは元々、貴方を休ませよう、という話ですよ」

 

丸め込まれそうになった私たちは、ミネ団長の言葉で本意を思い出した。

 

「……それはいま議論するべきではない、一旦移動するぞ。本隊との合流に文句はないだろう」

 

そう強引に言葉を終えて、ルイちゃんは外へと歩き出した。

 

 




1日にして3年分くらいデカグラマトン編の供給が雪崩れ込んできて5回ぐらい椅子から転げ落ちました。
来月までにあと20回ぐらいは椅子から落ちると思います。頭をやられないように気を強く持たなければ。
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