"黙示録"を回避しよう!   作:rezi

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銃声

04:08

side:FOX-1

 

"ドォォォォォォン……"

 

都市防衛システムの存在する施設へと向かう道中。

路地を進むFOX-1部隊の背後で、戦車の砲声が鳴った。

 

遠くの空が一瞬だけ赤く染まり、遅れて来た衝撃が路地の壁を震わせる。

 

「…………!」

 

響く砲声に、ユキノは振り返った。

同じ方向へと視線を向けた隊員が、おずおずと口を開く。

 

「方向と音から推察するに、最後方の戦車が交戦しているようです」

「……隊長、戻りますか?」

 

隊員の問いに、ユキノは僅かに思案し……首を振った。

 

「いや……ここからでは遠すぎる」

「我々は中間、後方部隊を信じ、都市防衛システムの破壊を目指すのが最善だ」

 

ユキノの判断に隊員たちは"了解"と頷いて、部隊は移動を再開する。

 

「……しかし交戦が始まった以上、慎重に動く余裕はない」

「迂回はやめだ。強行軍に切り替え、一気に目的地へ向かうぞ」

 

「では……これより先、お前達はコードネームで呼ぶ。ブリーフィングで通達した通りのな」

 

「確認だ、返事をしろ」

 

Vulpes(ヴルペス)」 「Vulpes(ヴルペス)、了解です!」

Corsac(コサック)」 「Corsac(コサック)、了解!!」

Velox(ヴェロックス)」 「Velox(ヴェロックス)、了解!」

Zerda(ゼルダ)」  「Zerda(ゼルダ)、了解」

 

コードネームの確認を終えて、こくりと頷きを返す。

 

「よし……それでは先に進むが、少し待て」

 

ユキノはそっと路地から顔を出し、通りを偵察する。

その眼の先には、何体かのオートマタやロボットが無秩序に徘徊していた。

 

「……目視で9は居るな。建物内も考慮するのなら、10倍は居るだろう」

「バウンディングで行くぞ。私があそこの車まで走る、お前達は後方から進行を援護してくれ」

 

そう言って道路の右車線に転がっている自動車を指差すと、隊員たちは頷きを返す。

 

「……では私がポイント到達の合図をしたら、CorsacとVeloxは対面の路地まで走れ」

「それをVulpesとZerda、私で援護し、ポイント到達後は相互にカバーしながら進む。いいな?」

 

説明を受け、皆が口々に了解を返したところで……ユキノはもう一度、路地から道路を確認する。

様子に異常はない。我々の存在はまだ察知されていないだろう。

 

「……では、3カウント後に行動開始だ」

 

ユキノはそう言って、ライフルを抱えた。

隊員たちも銃を構え、頷きを送る。

 

「……3、2、1……行くぞ」 "ダッ!!"

 

ユキノは姿勢低く飛び出し、道路上の車両へと駆ける。

アスファルトを蹴り出す音が、小さな音を立てた。

 

それに気付いたオートマタ達が、銃を構える前に──"ダダダッ!!ダダダダッ!!"

 

後方より放たれた銃弾が、一機また一機とオートマタ達を撃ち倒していく。

 

"ダダダダッ!! ダダダッ!!──ズザァッ!!"

 

重なる銃声に背を押されるように、ユキノは迅速にポイントへ滑り込んだ。

そのまま車を遮蔽に、周囲を警戒する。

 

「……ッ8時、3階!!」"ズダダダダッ!!!"

 

報告と同時に銃弾が降り注ぎ、窓際でユキノを狙っていたオートマタの頭部を貫いた。

ガラスを突き破り、落下したオートマタの残骸が砕け散る。

 

「…………」

 

ユキノは車のガラス越しに周囲を見渡す。

敵影は……無い。

 

「──クリア!!走れ!!」

 

「「了解ッ!!」」

 

路地から援護していたCorsacとVeloxが走り出し、対面の路地へと駆け込む。

 

「「────到着!!」」

 

「よし!このまま進むぞ!!」

 

隊員の報告を聞いて、ユキノは遮蔽から飛び出し、次なる遮蔽へと走り出した。

その歩みを阻止せんと現れたオートマタやドローンたちは、一機残らず撃破されていく。

 

「クリア!進め!!!」

 

ユキノの指揮に従い、FOX-1部隊は道路を進行する。

援護、前進、偵察、前進、援護。それを何十回と繰り返すことで、敵の軍勢の中を突き進む────。

 


 

04:12

side:RABBIT-2

 

"ズドドドドドドド……!!!"

 

遠方から響く重低音に、サキは焦っていた。

どくどくと早鐘を打つ心臓をおさめるために、深呼吸を繰り返す。

 

(……戦車の砲声が聞こえなくなってから、しばらく経つ)

 

ミユとモエが窮地に立たされて、敵に追われていることは明らかだ。

できることなら、今すぐに救援に向かいたいところだが……装甲車の復旧が終わっていない。

 

……しかし、RABBIT1やFOXの皆が動いている様子もない。

今動けるのはもしかしたら……私たちだけという可能性もある。

 

「くそ……ッ!」

 

歯噛みする。

どうにかしたいが、装甲車の火力と機動力が無ければどうにもならない。

 

そんな折……ひとりの部隊員が先に声を掛けた。

 

「銃声はかなり近づいてきています……こちらも銃声で信号を送れば、移動中の部隊をこちらに誘導できるかもしれません」

「周辺の敵に気付かれるリスクはありますが……フレアを上げるよりは安全かと」

 

「それに、あの部隊と合流できれば……体当たりでこちらの車両を起こせるかもしれません」

 

「確かに、そうだな……」

 

彼女の提案は……"悪くはない"。直感でそう理解できるだけのもの。

しかし、装甲車の機銃無しではリスクが……

 

「……いや」

 

"リスク"だと?……私たちが守るべきは、自分の命じゃない。

真に守るべきは助けを待つ者達の命であり……そのための、物資だ。

 

深く呼吸をして、作業を進めている皆へ向き直る。

 

「……すまない、皆!作業は中止だ────賭けに出るぞ!!」

 

……仲間のため、正義のために殉じるのなら──本望だ!!

 

「総員、戦闘態勢!!」

 

サキはマシンガンを天高く掲げ────引き金を引いた。

 


 

04:14

side:RABBIT3 & 4

 

"───ダダダッ!!ダダダッ!!ダダダッ!!ダッ!!"

 

敵の群れの中を猛進する中、規則立った銃声が響く。

長く付き合ってきたからわかる。この銃声は……サキのマシンガンだ。

 

「──右に曲がって!!銃声の方向へ!!」

 

「了解!!」

 

モエがドライバーに向けて叫ぶと、輸送車は右の道路へとハンドルを切った。

ミユの乗った輸送車もモエの後ろに着いて、縦列で道路を飛ばす。

 

(なかなか、危険な賭けに出るじゃん……!!)

 

移動による強風をその身に受けながら、モエは機銃のグリップを強く握った。

 

銃声の意図に勘付いたのは私たちだけではないようで、

近くの建物から現れたロボットやドローンが、我々と同じ方向へと移動しているのが認識できる。

 

(……ターゲットが切り替わった。つまり、今狙われているのは──!!)

 

「みんな!掴まりながらでいいからドローンかロボットの足を撃ちまくって!」

「今の内に一機でも多く倒さないと、後がマズいよ!」

 

輸送車の側面に掴まっている隊員たちにそう伝える。

 

「ははっ!無茶言う!!──任せとけ!!」

 

彼女達は威勢よく笑い、片手で銃を構えた。

 

"ダラララララララッ!!!!!"

 

秩序ない乱射が、背を向けた敵に襲い掛かる。

 

つんのめるように倒れた配膳用ロボットが、恨めしそうに「前を塞がないでください」と定型文を発し、甲高い音を立てながら墜落したドローンがビルの外壁にぶち当たって、ガシャガシャと騒ぎ立てる。

 

「ハッ!ざまあないね!!」

「いいぞ!!そのまま撃ちまくれ!!」

 

ドローンやロボットの残骸を置き去りにして、2両の輸送車は暗い道路を進む。

 

"タタタンッ!ダダダダダ……!!"

 

その時、右手のビルの奥から、乾いた銃声が弾けた。

反響した音が、頭上の窓ガラスを震わせる。

 

「────近い!すぐそこだ!」

 

「急いで!!合流するよ!!」

 

再びハンドルを切って、音の方向へと直進する。

響く銃声は、だんだんと大きくなって────。

 


 

04:17

side:RABBIT-2

 

"ヴロロロロ……!!"

 

銃声と共に、エンジン音が近づいてくる。

 

「……来たか!!」

 

物陰より現れた輸送車に、サキは大きく手を振った。

 

「RABBIT3。RABBIT4!!よく無事で戻った!!!!」

 

「サキちゃぁぁん……!」 "──ヒュンッ!!"

 

涙ながらにサキの名を呼んだミユの隣を、銃弾が掠める。

遅れて、熱だけがじわりと残った。

 

「ひっ……!!」

 

「……まだ戦闘中だ!!気をつけろ!」

 

ミユを狙ったオートマタに反撃しつつ、続けて叫ぶ。

 

「RABBIT3!私たちの装甲車がそこで横転してる!体当たりで起こせないか!?」

 

「……おっけー!!」

 

モエの乗った輸送車は即座に位置を転換して、

横転した装甲車の側面めがけてバックで突っ込み────"ガシャアンッ!!"

 

金属同士がぶつかる音が響き……装甲車はその六輪を地に着けた。

 

「……よしッ!乗り込むぞ!援護してくれ!!」

 

「あいよっ!」

 

そう叫んだサキは勢いよく駆け出して、装甲車の機銃席へとよじ登る。

 

サキは機銃の状態確認を即座に済ませ、弾帯を交換、コッキングレバーを引いた。

 

「よし!RABBIT2、3!機銃の弾に余裕はあるか!?」

 

「あと400くらい!!ここを凌ぐだけなら余裕!」

 

「600はあります……!!」

 

「了解した!なら、一旦ここを凌ぐぞ!!」

 

サキは機銃を構え、迫る敵に備える。

その意図を理解したのか、モエとミユの乗った輸送車も戦闘配置についた。

 

 


 

04:23

side:FOX-1部隊

 

────出立からおよそ10分。

 

ついに、FOX-1部隊は目的地の高層ビル至近までたどり着いた。

ビルの上層が防衛施設となっているそこは、周辺の建物と比べても異質な雰囲気を纏う。

 

 

「……クリア。全隊停止」

「弾を使い過ぎた。一時休憩するぞ」

 

号令と共に部隊は進行を停止し、一度近くの建物の影へと隠れた。

ユキノは背負ったバックパックを降ろして、弾薬の詰まったケースを取り出す。

 

「……準備が終わり次第、施設に突入する。各自、水分補給と弾薬の再装填を進めろ」

 

そう言って、ユキノはマガジンへ弾薬を装填し始めた。

隊員たちも緊張の紐を緩め、その場に座り込む。

 

「んっ……ぷはぁ。ふぅ、久しぶりっすよ……こんなに走ったの……」

 

ヴァルキューレの制帽を被った少女……Veloxは、水筒を呷りながら小さくぼやいた。

 

「その割には平気そうに見えるな。日々の訓練は怠っていないようだ」

 

そんな彼女にユキノがそう伝えると、Veloxは "ははっ" とはにかんだ。

 

「……ま、今さら習慣をやめるってのもアレなんで!」

「走っただけでバテてちゃあ、元SRTなんて恥ずかしくて名乗れませんよ!」

 

憧れの先輩に褒められたのが嬉しいのか、上機嫌に笑うVeloxの肩をCorsacが"ばしん"と叩いた。

 

「よく言った!SRTが亡くとも我々に意志ある限り、掲げた正義は消えない!!」

「私も、SRTが廃校になると聞いた時は失望に打ちひしがれたものだが────」

 

「声が大きい。……それと、昔話をするのはいいが、今は準備を優先しろ」

 

「あっ……すいません」

 

しゅんと肩を落としたCorsacに、隊員たちは"ははは"と小さく笑う。

 

「…………」

 

ぴしゃりと言葉を遮ったユキノだが、その口角は僅かに上がっていた。

この場の誰も、彼女の微笑みには気付かなかったが。

 

(……"意志ある限り、掲げた正義は消えない")

 

内心で、その言葉を反芻する。

 

……ここにいる皆。違う道を見つけている。

 

ヴァルキューレに行った者。ゲヘナに転入した者。

名前も聞かないような小さな学校で、治安維持の顧問をしている者もいる。

 

SRTの解体で、私たちは散り散りになった。

 

……それでも、魂に刻まれたSRTの正義は、消えていない。

こんな参加する義理もない戦いに馳せ参じ、共に前線に立ってくれていることが……なによりの証明だ。

 

過去に囚われ、足掻き続けているのは……自分だけ。

その事実が、ユキノの胸を僅かに蝕んだ。

 

「………………」

 

胸中に生まれた迷いを自覚したユキノは、音を消して深呼吸する。

 

(…………今は、作戦に集中しよう)

 

思案を振り切り、呼吸を整え。

ユキノは装填を終えたマガジンをポーチへと収納した。

 

「……各員、準備はいいか」

 

そう言って、準備を終えた様子の隊員たちを見遣る。

彼女達はみな用意を整えた様子で、静かに頷きを返した。

 

「……では、作戦通りに行くぞ」

 

その言葉と共に、FOX-1部隊は立ち上がった。

 


 

04:27 / 高層ビル

side:FOX-1部隊

 

 

「────突入!!」

 

"バリィィィン!!!!"

 

窓ガラスを破り、FOX-1部隊はエントランスホールへとなだれ込む。

それを待ち受けていたかのように、奥の廊下や2階の吹き抜けから現れたオートマタがこちらへ銃口を向けた。

 

「──上を優先しろ!!」

 

「了解ッ!!」

 

"ダダダダッ!!!ダダダッ!!!"

"ダラララララッ!!!"

 

瞬くマズルフラッシュが夜闇を払い、幾多の銃弾がエントランス内を飛び交う。

ガラスの割れる音。銃弾が壁を削る音。無数の音が空間を支配する。

 

「グレネーーード!!」

 

隊員の一人が叫び、2階へとグレネードを投げ入れる。

数瞬。爆発音と共にオートマタが吹き飛ばされ──1階の床へ叩き付けられた。

 

「──3時クリア!!Corsacと私で廊下とエレベーターホールを制圧しに行く!!」

 

「了解!!!」

 

その号令と同時に、ユキノと共に行動していたCorsacが廊下へと走り出す。

彼女はユキノの前に立ち、背負っていたバリスティック・シールドを構えた。

 

「肩越しに射撃する、身体を逸らすなよ!!」

「りょーかいッ!」

 

"ダダダダッ!!! ダダダッ!!"

"ガガッ……ガシャァンッ!!"

 

ユキノとCorsacは逃げ場のない廊下にツーマンセルで飛び出し、

一機、また一機と廊下に立ち塞がるオートマタ達を破壊していく。

 

幾度もの銃撃戦を超え、間もなくエレベーターホールといったその時。

 

「────ッRPG!!」

ユキノが叫ぶ。

ホールの隅。死角から現れたそれは、室内に見合わない兵器───ロケットランチャーを構えていた。

 

「防御姿勢ッ!!」

 

Corsacは即座に盾を前に、全体重を預けるような姿勢を取る。

ユキノはその後ろに隠れ、Corsacの背を支えた。

 

瞬間。閃光と衝撃が走り────。

 

"ドガァァァァァン!!!!"

 

「っぐ……!!」

 

炸裂した爆風の中で、二人は盾の後ろで持ち堪えていた。

"きいん" と揺れる意識を気合で起こし────「起きろ!!!」

 

目の前で膝を着いているCorsacの背を、全力で叩いた。

 

「……ッは!!」

 

背に感じた衝撃にCorsacは意識を取り戻し、再び立ち上がった。

その背に感じるユキノの手を信じて、彼女は盾を構え続ける。

 

「動くなよ!!」

 

「……ッはい!」

 

背に添えた手はそのままに、ユキノは射撃を再開する。

盾を隔てて、敵の射撃と味方の射撃が交差し、それが何度か繰り返されたのち────

 

「……攻勢が止んだ。ゆっくり前へ行け」

 

ユキノがそう伝えた。

その言葉通りにCorsacは一歩、また一歩と歩み始める。

 

「……よし……」

 

二人はオートマタの残骸が散らばる廊下を隅々まで警戒しながら進み……突き当り、エレベーターホールへと辿り着いた。

 

ホールには残骸が残るのみで、動く者はない。

ユキノは武器を構えたまま、来た廊下を振り返る。……敵影はない。

 

「廊下を警戒していてくれ」

 

「了解」

 

Corsacの答えを聞いて、ユキノはエレベーターのボタンを何度か押す。

当然反応はなく、ユキノは小さくため息を吐いて、エレベーターの扉へ何発か発砲する。

 

銃撃によって生じた隙間へとユキノは指を差し込み────強引に扉を開いた。

 

「…………」

 

開かれたそこにエレベーターのかごはなく、上下に続く暗黒のみが鎮座する。

フラッシュライトで内部を照らすと、暗闇の奥で点検用の梯子がキラリと反射した。

 

……その下方には、エレベーターの動作を制御する重りが釣り下がっている。

 

「かごを落とす、扉に近付くなよ」

「了解」

 

"ダダダッ!!──ブツンッ!!"

 

重りを下げるロープを破断させると、空間がヒュルヒュルとしなるような音を立て……エレベーターのかごが、底部へと墜落した。

 

続けて隣のエレベーター、反対側のエレベーター。

計4基を全て破壊したユキノは、マガジンを交換しつつ振り返る。

 

「破壊完了。点検用の梯子も確認できたが、まずは戻るぞ」

 

「了解」

 

二人は踵を返し、エントランスへの道を駆けた。

 

……まだ戦いは終わっていない。

背後では、未だ銃声や爆発音が鳴り響いている。

 

「戻ったぞ!!エレベーターは破壊した!!」

 

報告と共に、ユキノはCorsacと共に目の前の受付カウンターへと滑り込む。

眼前には瓦礫のように積み重なったオートマタやドローンの残骸が転がっており、戦闘の激しさを物語っている。

 

そして……入り口付近で制圧射撃を続けていたZerdaが答えた。

 

「1階は制圧完了!現在、2階の制圧を待機中です!」

 

「了解した!」

 

ユキノは即座に視線を吹き抜けへ向け、状況を確認する。

こちらを狙っている姿は見えず、聞こえた銃声を考慮すれば、状況は小康に思える。

 

「……よし。一気に上がるぞ!こちらに集まれ!」

 

ユキノの言葉に素早く集合した隊員たちは了解を示し、正面階段前へと素早く移動する。

 

「……いいか、Corsacを前に、私とVeloxで突入する。ZerdaとVulpesは援護を」

 

隊員たちがハンドサインで了解を返すと、ユキノはそっと左手を上げ……振り下ろした。

 

「……!!」

 

Corsacを先頭に、FOX-1部隊はバタバタと階段を駆け上がる。

続くユキノとVeloxが左右を警戒し────

 

「(3時、クリア)」「……(9時、クリア)」

 

そのサインと同時に、背後で構えていたZerdaとVulpesが廊下の左右へと着いて、合図を送った。

ユキノはそれに了解を返し、廊下の奥へと銃を構える。

 

「……(行け)」

 

ユキノのサインに従い、前衛部隊は進行する。

道沿いの扉を押し開け、部屋の隅々を制圧し、再び進む。

 

「(突入。左へ)」「(了解。右へ)」

「(クリア)」「(了解)」

 

オフィスからトイレ、清掃用具入れまで。

2階の全ての部屋を制圧し……ついに、FOX-1部隊はビルのエントランスを完全に制圧した。

 

「……よし」

 

制圧が完了したホールの片隅で、ユキノは隊員たちに待機を命令する。

 

「……確認した限り、上階へのルートはふたつ。エレベーター内の梯子と、この非常階段だ」

 

「この後、これ(非常階段)で一気に屋上まで上がり、防衛施設を制圧」

「その後、爆薬を仕掛け、エレベーターの梯子を用いて速やかに降下、起爆し、施設を破壊する。いいな?」

 

ユキノの説明に、隊員たちは口々に"了解"と答える。

 

「よし……では、これより非常階段で登るが……道が狭い。足元は勿論、挟撃にも注意しろ」

 

「Corsacと私で上を警戒し、Velox、Zerda、Vulpesで下を警戒する。……行くぞ!」

 

その号令と共に、FOX-1部隊は非常階段を上り始めた。

 

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