???/車内
side:ミカ
「んぅ……?」
ガタガタと小うるさい振動で、目が覚める。
「……ッ!!」
急いで跳ね起きようと身体を動かしたが、"ガチッ!"と拘束具が擦れるだけだった。
声を出そうとして、はじめて口が塞がれていることに気付いた。
(……そっか、私────負けたんだ)
脱力し、思案する。
うーん、どこに連れていかれるんだろ……。
ルイちゃんの言葉に嘘がないのなら、私は今からしばらく監禁されるのだろう。
───セイアちゃんと同じように。
セイアちゃんは、監禁中の話になると決まって怯えていた。
「もう戻りたくない」と、震えた声で。
ルイちゃんの手紙曰く、"害は与えないし、寝床も食事も用意する、しばらく大人しくしてもらうだけ"。
────うーん、考えてもわかんないや。
どうせもうすぐわかる事だし、諦めるしかないかぁ……。
(隕石、呼んでみようかなぁ……)
そんなことを考えていると、ガクンと車が大きく揺れて……停止した。
(……止まった?)
"バタン"と外からドアの開閉音がして、砂を踏む音が近付いてきた。
"がちゃり"、とバックドアが開かれ……薄暗い車内へ光が差し込む。
「……もう目覚めたのか。頑丈で羨ましい限りだ」
太陽光の眩しさに目が眩むが、次第に目が慣れていき……ルイちゃんの姿を認識する。
……その額には、砕けた隕石の破片が突き刺さっていた。
「───!!」
(ルイちゃん……大怪我してる……!)
その傷口からは未だ血液が流れ出ており……ぽた、ぽたと顎を伝って、地面に垂れ落ちている。
「……暴れないでくれ。約束通り、危害は加えない」
ルイちゃんは優しい声色でそう伝えると、こともなさげに車内に入ってきた。
私を固定していたベルトを外し、ごろりと車内を転がった私を、ルイちゃんは担ぎ上げた。
「……よ、っと」
ルイちゃんは私を担いだまま車を降り、片手で何かしらの装置を操作すると……近くの床がスライドして、地下への階段が現れた。
そのままカツカツと階段を降りて、そこに現れた扉の向こうには……。
(……あれ……?)
想像よりも、かなり綺麗な部屋が広がっていた。
困惑する私をゆっくり床に下ろして、ルイちゃんは見下ろしながら言った。
「……ミカ。今から口のテープを剥がすが……あまり騒ぐなよ、どうせ外に声は聞こえない」
その言葉に頷きを返すと、ルイちゃんは"よし"と言って、私の口元に貼られたテープを剥がした。
「ぷはっ……! はぁ……ルイちゃん、頭のっ、怪我っ……!」
大声を上げた私に、ルイちゃんはぴくりと眉を顰めた。
「……声が大きい。……これは持ち合わせで処置できなかったゆえ、一旦そのままにしているだけだ。心配せずとも、今から治療する」
「そう、なんだ……」
淡々と告げたルイちゃんは……私の知るルイちゃんのままだった。目は冷たいけど。
「……その……ごめんね……?」
「私は目的があって、望んでお前と戦ったんだ。この怪我はお前が気負うことではない」
私の謝罪に淡々と返して、ルイちゃんは私の足に着けられた拘束具を緩め……立ち上がるように促してくる。
背中を支えられて立ち上がると、肩を軽く押されて頑丈な扉の前に連れてこられた。
(……ここの先が、監禁部屋かぁ)
「今から二日、長くて四日……、お前にはここで生活してもらう」
「基本的な設備は部屋の中にあるし、食事もレトルトで悪いが、たくさんある」
「口に合わないかもしれないが、食事はきちんと摂るように」
説教臭い言葉と共に、扉が開かれる。
内装はとても綺麗で、想像していたものとは大きく乖離していた。
少なくとも、あの屋根裏よりはずっとマシ。
暮らすぶんには、不自由しなさそうだ。
「えっと……思ったより、豪華だね……」
「豪華かは知らないが、元は私が使うための部屋だ」
「……ふぅん、そうなんだ……」
(セイアちゃんの話と違って、思ったよりちゃんとした環境……?)
そんなことを考えているうちに、ルイちゃんは設備の説明を終えていた。
「……説明は以上だ」
ルイちゃんはそう言って、私の拘束具を掴んで、力強く突き飛ばした。
「きゃぁっ!」
驚いて変な声を出してしまったが、"ぼふ"と柔らかいベッドに着地する。
「……しばらく休んでいろ。私は今から、傷の治療をしなければならない」
「暴れないでくれよ。処置が終わったら腕の拘束を解く、その時に質問は受け付けよう」
そう言ってルイちゃんは扉に手を掛けた。
「待っ……!」 "バタン"
静止の声は届かなかった────けど、治療に入ると言っていた。
「……暴れてもいいけど……大人しく、待ってあげようかな」
流石に、あの傷の治療ぐらいはさせてあげよう。
ずっと血まみれだとかわいそうだし。
「……はあ」
こうして落ち着いてみると、このベッドは屋根裏のベッドより柔らかく、温かい。
(拘束されちゃってるし、あんまり歩き回ってもしょうがないか……言われた通り、寝ちゃおうかな)
そのまま毛布をかぶって枕を抱くと、
戦いの疲労が来たのか……なにかを考える前に、意識は沈んでいった。