"黙示録"を回避しよう!   作:rezi

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出立

夕方:アビドス近郊/ルイのセーフハウス

 

 

作戦準備室へと戻った私は、ミカとの会話を振り返りながら整備の続きをしていた。

 

(……すこし喋り過ぎたか)

 

予定ではもう少し厳しく接して、敵対心を煽る予定だったが……ミカが相手だと、流石に難しかった。

 

……対してミカ側も、私に対して想定よりも甘かった。

というより、まだトリニティに戻って欲しいという思いがあったのも意外だった。

 

(セイアといいミカといい、裏切り者である私に対してこれとは……お人好しが過ぎる)

 

……とはいえ、そのお人好しに救われたのも事実だ。

 

地下でミカが隕石を呼び出したらどうなるのか、という疑問を自分で検証するのはごめんだ。

天井を粉砕され、この拠点ごと二人揃って生き埋め、という可能性が脳裏をよぎる。

 

……そうならなくてよかった。

ふう、と安堵の息を吐き出す。

 

 

……それにしても、セイアは上手くやったようだ。

正直、あのタイミングでのセイア帰還は怪しまれて当然。

 

ナギサの暴走を抑止するためとはいえ、リスクの大きな選択だったが……セイアはそれを完璧に覆い隠した。

 

おかげで、今のトリニティで語られる私は、悪逆非道の"魔王"。

そんな象徴的な仇名が手に入ったのなら、リスクを取っただけのリターンは得られただろう。

 

肩書上は未だトリニティ生である以上、ゲヘナ側に妙な誤解をされては困る。

この"魔王"の悪名は、"共通の敵"を作り出す助けになるだろう。

 

(……いっそ、本当にそう名乗ってやろうか)

 

そんな事を考えているうちに、整備は終わった。

 

椅子に体を預け、僅かばかりの休憩を取る。

 

……ゲヘナでの作戦決行は明日の正午予定。

休憩を終えたら、装備を確認して早めに出発するとしよう。

 

冷えてしまった紅茶をぐいと呷って、椅子から立ち上がる。

 

「銃火器類良し、ジップラインランチャー及び脚部装甲……問題なし」

 

チェックを終えた装備を、ケースに収納していく。

 

「携帯デバイス、充電OK……応急医療バッグ、内容良し」

 

デバイスを服の下のアーマーに収納し、医療バッグを首から掛けた。

 

「……ソードオフ、セーフティ良し」

 

「突撃剣……」

 

ケースに仕舞うため、突撃剣を持ち上げる。

記憶の中よりも軽いそれは、私の胸に僅かな不安と、喪失感を与えた。

 

「…………」

 

……随分と軽くなってしまったが、盾として必要最低限の防弾性能はある。

無い物ねだりをしても仕方ない。これでやるしかないだろう。

 

溜め息を吐いて、突撃剣をケースに収納した。

そのまま防弾コートを羽織って、用意した荷物を装甲車に載せていく。

 

車両後部に満載されたそれらを見遣って、ぱちりと瞬く。

 

……これが、私に出せる全力だ。

長い準備の結実。しかしこれは始まりに過ぎない。

 

……敗北は許されない。

 

 

全ての荷物を載せて、装甲車のバックドアを閉める。

 

────現在時刻は夕暮れ、日も落ち始めた頃。

 

今から出て、ゲヘナの拠点に着く頃には深夜になる。

 

(なるべく早く着いて、休息を取るとしようか)

 

運転席へ乗り込み、エンジンを始動させる。

アクセルと共に車が発進し、ゲヘナに向けて走り出した。

 

……もう、後戻りは出来ない。

 

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