午前:トリニティ本校/ティーパーティーのテラス
side:セイア
"────バンッ!!"
「会議中申し訳ありません!!失礼します!」
昼にはまだ早いといった午前中。
私とナギサが会議をしていると、連絡員が物々しい雰囲気を纏ってテラスのドアを押し開いた。
「……何事ですか?」
ナギサはただならぬ雰囲気を察したのか、書類を閉じて連絡員に向き直る。
そんなナギサに、連絡案は慌ただしく口を開いた。
「ほ、本日早朝、聖園ミカさんが失踪……いえ、おそらく拉致された模様です!」
「────えっ?」
連絡員のその言葉に、ナギサは息を詰まらせ、硬直した。
「……なんだって?」
ナギサに続き、驚いたような反応を帰す。
(────ああ、ルイは勝利してしまったか)
願わくば、ミカがルイを止めてくれないか、と思っていたが……叶わなかったようだ。
「点呼に応じなかったのを不審に思った寮長が部屋に入って確認した所、室内に天城ルイからの物と見られる脅迫文が落ちていたそうで……その手紙が、こちらです」
連絡員はそう言って、1枚の便箋を差し出した。
「……嘘、でしょう?ミカさんが、そんな……ルイさんに……?」
動揺するナギサを横目に、ルイが送ったという手紙を受け取り、内容を確認する。
────ああ……なるほど。
「……ナギサ、この手紙に書いてあることが本当なら、ミカは3.4日ほどで帰ってくる」
「危害も加えないそうだ……"本当"ならね」
瞑目して小刻みに震えるナギサの背をさすって、手紙を差し出す。
「……ありがとう、ございます……」
すると、ナギサはわずかに落ち着いたようで、彼女はそっと手紙を受け取って目を通し始めた。
「……」
手紙の内容を確認するにつれ、ナギサはだんだんと眉間の皺を解いて……最後には、小さくため息を吐き出した。
「……決闘、ですか」
ナギサはそう呟いて、再度手紙に目を向ける。
「……手紙の内容を信じるなら、ミカさんは敗北してしまった。という事でしょうか」
「……ミカが今ここに居ない以上、そう思うしかないだろう」
「どんな手を用いたかは判然としないが、ルイは救護騎士団の臨時講師もやっている。少なくとも、命の危険は無いだろう」
「……それでも、セイアさんが受けたような暴行をミカさんに対して行う可能性もあるのでは……?」
そう言ったナギサは心配そうな、青ざめたままの顔で焦燥を隠せていない。
「……いや、私にしたような真似、ミカに対して行えないだろう」
「ミカに本気で抵抗されれば、相当に手を焼く事になる。そんなことはルイもわかっているはずさ」
「それよりも……私たちが警戒すべきは、こちらだろうね」
そう言って、手紙に記された一文を指し示す。
そこには、ミカを拘束する期間について書かれていた。
「これを見る限り、ミカを拘束している間にルイがなにかする気なのは間違いなさそうだ」
「ミカを封じてまでやることだ……相応の対処が必要だろう」
私の言葉に、ナギサは再び手紙を見返す。
数秒ほどして、彼女は"確かに"と口を開いた。
「……そのようですね」
「では、ミカさんが帰ってくるまでは自治区内の警戒レベルを引き上げ、可能ならば自警団の協力も得て正義実現委員会を本校の防衛、及び局地派遣に備えて待機させましょう」
「再びの襲撃は絶対に────」
(作戦が実行されるのは恐らく明日……わざわざミカの無事と拘束期間を私達に知らせる辺り、ナギサが暴走することを警戒したか)
「……セイアさん?」
「ああ、すまない……考え事をしていた」
「対応はそれで十分だろう。一応、ミカ捜索のための部隊も用意しておくべきかな」
心配そうに私を見つめていたナギサは、その返答を聞いてこくりと頷き……視線を連絡員に向けた。
「では……聞いての通りです」
「天城ルイによる聖園ミカ拉致および、トリニティ防衛の緊急会議を1時間後にここで開きます」
「正義実現委員会のツルギさんとハスミさん、救護騎士団のミネ団長、シスターフッドのサクラコさんにも通達してください」
「かしこまりました、ナギサ様」
そう返事をして、連絡員は駆け足でテラスを後にした。
「……ルイもミカも、大事ないといいがね」
そう小さく呟いた私の言葉は、誰の耳にも届かず消えていった。