"黙示録"を回避しよう!   作:rezi

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賭身

13:10:ゲヘナ自治区/作戦エリア

 

 

……現れたるは、ゲヘナ最強と名高い"風紀委員長"──空崎ヒナ。

その体躯ほどもある巨大なマシンガンを軽々と担ぎ、悠然と立つその姿は柄も知れぬ威圧感を放っている。

 

「……本当は、貴女も捕まえないといけないのだけれど……」

「シャーレ指名手配犯を捕まえるため、という事なら名目上問題は無いわ」

 

「……ここは一旦、協力しましょう」

 

ミネにシールドを差し出して、ヒナは"はあ"、気だるげにと息を吐いた。

 

「……感謝致します、風紀委員長殿」

ミネはヒナからシールドを受け取って、立ち上がる。

 

(……ミネとヒナの共闘、想定はしていたが……いや、もう出し惜しみを出来る状況ではない)

 

デバイスで監視ドローンの映像を呼び出し、画面に映ったヒナをターゲットとして登録する。

 

「────"発射"!」

 

"ポンッ!!" "ドオンッ!"

"ドンッ!!" "ドガンッ!"

 

   「ッ!?」

  「────!」

 

轟音と共に砲弾が降り注ぐ。

 

"────ヒュウ"

"ドオオオンッ!!!" "ズガアアアンッッッ!!"

 

一帯を吹き飛ばす程の破壊の雨が降り、もうもうと土煙が立ち上る。

 

(すこしでも削れていると良いが……!)

 

再度監視ドローンの映像を確認し、ターゲットの位置を探る。

炎と土煙の中に、人影は────

 

(居ない……!?)

 

  「……見つけましたよッ!!」

「 !? 」

    "ズガンッ!!"

 

空からミネが降ってくる。

反射的に突撃剣で衝撃を受け止め、受け身を取った。

 

(見つかったか……!)

 

「……チッ!!」

 

"ダダダダダァン!!"

 

ミネに向かってショットガンを連射しながら突進する。

 

(ヒナが合流した以上、接近戦以外の選択肢は取れない!!)

 

対するミネも、盾を構えて踏み込んだ。

 

 「────いい加減、諦めてはどうですか!?」

私を迎え撃つは、ミネ渾身のシールドバッシュ。

     "ヴオンッ!!!"

 

「……ッ!」 "ザッ!!"

 

咄嗟にサイドステップを踏み、回避した。

大きな風切り音を上げて、私の目の前を盾が過ぎていく。

 

そして──紫光の雨が降り始める。

 

「……捉えた」

    "ドルルルルルル!!!"

「しまったッ……!」

   "ズガガガガァン!!"

 

咄嗟に展開したシールドを弾丸の雨が襲い、"バリ"と音を立ててシールドが割れていく。

 

(……凄まじい威力だ───このままでは削り切られる)

      "バシュッ!"

ジップラインを使用し、もう一度ミネに突進する。

 

   「……射程内」

   "ドルルルルルル!!!!"

 

ルイを狙い、再度ヒナの制圧射撃が開始された。

高速で移動するルイを、弾雨が追跡する。

 

「───"コール"ターゲット・ワン""発射"!」

 

     "ドォン!!" "ボンッ!!"

音声認証。廃墟の屋上でマシンガンを乱射するヒナに爆撃を要請する。

 

  「……!」

 

砲撃音が聞こえると同時にヒナは飛びのき、爆撃から退避した。

   "ドガアァン!!" "ズガァァン!!"

砲弾が地を揺らし、爆風が吹き付ける。

 

(ヒナが戻ってくるまで、この数秒の隙を生かさなければ……!)

剣を構え、ミネに突撃する。

 

 「くだらない真似を……!!」

「……ここで負ける訳にはいかないのでな!!」

 

     "ガンッ!!"

 

突進の勢いを乗せ、突撃剣を横薙ぎに振るう。

ミネはそれをシールドで防御したが、ルイは止まらない。

 

「はああッッ!!」

"ガンッ!" "ガッ!!" "ガキンッ!!"

     「くッ……!」

力任せに、とにかく何度も剣を振るう。

ミネはそれを受け止めるのみで、動かない。

ヒナの援護を待っているようだ。

 

  「────」

(時間が無い、ここで決める……!)

 

「ふっ!!」

   "ガアンッ!!"

 

全力の横薙ぎ、その回転を利用して一歩下がり、突撃剣を水平に構え……深く腰を落とす。

 

「これで、どうだッッ!!」

 

放つは、上体狙い、全力の突き────「甘いッッ!!」

 

    "ガキィィンッッ!!"

「なッ……!!」

 

ミネは突きに合わせ、盾を跳ね上げることで衝撃をそのままルイに跳ね返した。

ルイは完全にバランスを崩し、後ろ向きに倒れた。

 

    「……これで終わり」

 

ちょうど戻って、マシンガンをルイに向けたヒナを、ミネは片手を上げて静止する。

 

    「ヒナさん……私に任せてください」

 

(まずい、このままでは……!)

 

「ルイ、結果が正誤を決めると貴女は言いましたね」

 

ミネは倒れているルイに覆い被さる。

 

(……最終手段だ、せめて撤退の隙を稼ぐ……!)

「なら、貴女はここで倒れ……、罪を裁かれるのが"結果"です」

 

ミネはルイに向かってショットガンを突き付ける。

 

「───"コール" "ターゲット・ゼロ" "発射!"」 "ピピッ"

    「ッ下がって!!」

ヒナが叫ぶ。

     「……何を……ッ!?」

 

"ポンッ!!" "ドオンッ!" "ズドォン!!" "ボンッ!!"

"ドンッ!!" "ドガンッ!" "ドオンッ!!" "ドォン!!"

 

私の呼び声に応え、全方位から何度も破裂音が鳴り響く。

"ヒュウ"と鳴り響く風切り音に、空を見上げたミネを強く、強く抱き寄せる。

 

「──団長、捕まえたぞ」

「……ルイ……ッ!!」

 

"ドガアアアアアアアアン!!" "ドオオオンッ!!!" "ズガアアアアアンッッッ!!"

 

私目掛けて放たれた破壊の雨が降り注ぐ。

抱き締めたミネが私の盾となり、爆発から守る。

 

"ドオオオオンッ!!"

 

何度も何度も砲弾が降り注ぎ、ミネを傷付ける。

私に覆い被さるミネは、砲弾を受けながらも優しく私の手を握り────。

 

「ミネ……なぜ私を守る!?」

 

十数秒────砲弾の雨が収まり、問う。

ミネとそのライオットシールドは私の四肢を覆い隠すように、その体躯の下に納めていた。

───何故だ。

「……言ったはず……です、私は……貴女を……」

 

そこまで言って、ミネのヘイローが消える。

 

……言わずとも分かる、ミネ団長ならこう言うはずだ。

   "───貴女を救護しに来たから。"

 

「……団長」

 

気絶したミネを横に除け、寝かせる。

 

「すまない……」

 

呟き、砲火によってボロボロになった突撃剣を拾う。

(私の体では、あの砲火の雨は危険だと、知っていたから)

 

ミネ団長は、私を救護した。

 

「────くそっ」

 

呟き、周囲を一瞥する。

 

(今ここにヒナが居ないということは、周辺の迫撃砲を破壊しにいったのだろう。もう爆撃は頼りにはできない)

 

"ターゲット・ゼロ"───私自身の位置に残弾の80%を発射するコマンド。

 

拘束された時の切り札として用意したが──その後は即座に脱出する事が前提だ。

 

これ以上の作戦続行は不可能。ヒナが戻る前に……。

 

「……撤退するしかないか」

「───逃げられると思っているの?"魔王"さん?」

 

"ドスッ"という音と共に、ヒナが目の前に着地する。

立ち上る砂煙と炎が、彼女の瞳をより一層冷たく感じさせた。

 

「…………ずいぶん、早かったな」

「……貴方の持ち込んだ兵器は全て破壊したわ、これで終わりよ」

 

「……ッ」

 

"ガチャ"。

鋼の擦れる音と共に、マシンガンのマズルがこちらを覗く。

 

(……シールドは砕け、突撃剣も折れかけだ……ここをどうにかするには……)

    "───ドルルッッ!!!"

ヒナのマシンガンが火を噴く。

その寸前、ルイは強く踏み込んでいた。

      「……!!」

「っらあっ!!」

 

身体能力任せのスライディング。

それはたった数メートルしかないヒナとの距離を埋めるには十分だった。

 

"ガシッ!!"

(……掴んだッッ!)

     「はあ…」

ヒナのマシンガン、そのハンドガードを握り、銃口を強引に逸らす。

それを全力で引き込み、ヒナの小さな体を掴まんと手を伸ばすが……結果、引き込まれたのはルイの方だった。

 

「なッ……!?」

   「……力でなら勝てると思った?」

      "ガンッ!!"

「ぐッッ!!」

 

引き込まれたルイに対し、突き刺すような蹴りが直撃する。

 

"ドシャ"という音を立て、ルイは砲火で耕された泥の中に転がった。

 

   「────今度こそ、おしまい」

 

ヒナは倒れているルイに銃口を向ける。

 

(距離を取られた……まずい……!)

 

ルイは思考する、この状況を打破するために。

 

(下がれば蜂の巣、防御は不可能)

 

(────無理だ、ここからどうにかできる手段は私の手には無い)

 

(いいや、どうせここで倒れるなら……!!)

 

"バシュッ!!" "ドルルルルルルルルルル!!!"

 

ヒナに向かってジップラインを撃ち込み、突撃剣の刀身を盾に突進する。

無数の弾丸が降り注ぐ。

 

"ガキン!!" "ガガガンッ!!" "ギィン!!" 

 

突撃剣は中心から折れ、持ち手とシールドの固定具が残るのみとなった。

私を護る壁は、もうない。

 

"バスッ" "ドスッ" "ドッ" "ドンッ""

 

左腕を顔前に出し、壁として何とか頭部への被弾を避ける。

雨のように撃ち込まれる高威力弾が、鈍い衝撃と共に突き刺さった。

 

「ぐ……あ゛ああッッ!!!」

 

痛みすら感じなくなる程の被弾を受けながら──ルイは遂に、ヒナの目の前に到達した。

 

「……らぁっ!!」

 

右手に握りしめていた突撃剣の残骸をヒナに投げ付ける。

ヒナは最小限の動きでそれを回避する。

 

────ルイはその隙を突き、マシンガンのハンドガードを握った。

 

   「……無駄な足掻き」

「……同感だ」

 

ルイが言葉を返すと、ヒナは表情を変えずに答えた。

 「──そう、気が合うわね」

(同じ轍は踏めない、これが最後のチャンスだ…!)

"ぐいっ"

「ッ!」     「───!」

 

ヒナはマシンガンを捻るように引き込み、ルイの体勢を崩さんとした。

ルイは咄嗟に手を放し、ヒナは後ろに少し後退する。

      「ふッ……!」

      "ブォン!!"

それを予期していたのか、ヒナは即座に一歩踏み込み、マシンガンで殴打を試みる。

ヒナが踏み込んだ瞬間、ルイは姿勢を低くして打撃を躱し、ヒナの首を狙って右手を伸ばす。

 

「どうだ…ッ!」 「遅い」"ガシッ"

 

伸ばした腕を掴み、ヒナはルイを投げ飛ばさんと強く引き込む。

瞬間、ルイの口元が歪んだ。

 

「かかったな……ッ!!」

"バシュッ!"

    「!?」

ルイはヒナの腕を掴み返して後方の壁へとジップラインを撃ち込み、背後のビルへと突っ込む。

     "ギャルルルルルッッ!!"

「────喰らえッ!!」   「離しッ……!」

     "───ドガァァァァン!!"

 

ヒナを盾に、叩き付けるようにして壁に激突する。

     「う……ッ!」

 

(腕が離れた……!撤退するなら、今だ!!)

 

        "バシュッ!!"

 

ジップラインを廃墟の屋上に撃ち込み、飛び上がる。

即座に近くの構造物に次の鉤を撃ち込み、高速でその場を離脱する。

 

「……はあっ、はあっ!」

 

(ここまで来ればヒナと言えど追い付けない、このまま振り切───)

 

──瞬間、キラリと視界の端で何かが光った。

 

「なっ───」

 

"ドスッ"────"ズガァン!"

 

大きな衝撃、それから一瞬置いて発射音が聞こえた。

 

(狙撃────)

 

文字通り胸を貫かれ、私は墜落する。

 

 


 

13:20:ゲヘナ自治区/郊外ビル屋上

 

 

「天城ルイ、撃墜しました」

 

スコープ越しにルイが墜落したのを確認し、"先生"に連絡する。

 

"わかった、墜落ポイントに人を送るように手配するね"

 

「お願いします────先生」

 

 

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