13:35:ゲヘナ自治区/作戦エリア
たった今気絶させた生徒たちの装備を漁る。
「……カービンか、片手で扱うのは無理があるな……」
彼女らの装備は、全員がアサルトカービン。
サイドアームも所持しておらず……片手で扱う武器としては心許ない。
とりあえずカービン1丁と弾薬を拝借して、一階に戻った。
「はぁ……」
相手が三人だったから何とかなったが、これ以上の数に来られると今度こそ終わりだ。
通信途絶には気付かれているだろう。
応援が来る前にここを離脱する必要がある。
(……車を奪って、移動するべきか)
そう判断し、彼女らの乗っていた車両に乗り込む。
ありがたいことに、エンジンは掛かったままだった。
"ブロロロロ……"
アクセルを踏み込み、ゲヘナ領外へと続く大通りへと向かう。
(……あの風紀委員が誘導に引っかかってくれて助かった)
彼女は"トリニティから来たスナイパー"という言葉に反応した。
私を狙撃したのは、トリニティ勢力のスナイパーで間違いないだろう。
……そして、スナイパーがマシロだったら私は行動不能になっていただろう。
よって、あのスナイパーはハスミと判断できる。
そして、"先生"の介入。
やはりと言うべきか、既に介入済みのようだ。
ゲヘナかトリニティ……あるいは双方の作戦指揮に関わっているのだろう。
そうなると、追撃はここからより苛烈になる。覚悟を決めなければ。
────ゲヘナ領から離脱するための道を急いでいると、車両備え付けの通信機が、"ザザ"と音を発した。
[……ガンマー4、応答してください]
(……風紀委員の通信か、無視するべきか?)
相手の音質は良くない、これなら虚偽の報告を送り込む事もできるかもしれない。
……いや、応援は既に先程の廃墟に到着している頃だ。
気絶した部隊員が発見されていて、車両だけが失われているという情報は入っているはず……当然、これは罠だ。
……いや、ゲヘナ側と話をするいい機会だ。
逆探知は上等……やるしかないか。
「────くだらん罠を仕掛けるのは止めろ、オペレーター」
私がそう通信を送ると、相手から反応が帰ってくる。
[あら、あらあら……天城ルイ……自称、"魔王"でしたっけ?──プッ……恥ずかしくないんですか?]
[くだらないのは貴方です、自分の状況がわかっていないようですね?]
(……小うるさい奴だ。しかし"魔王"の名は認識され始めている)
(それが揶揄にせよ畏怖にせよ、名は名だ。まあいいだろう)
「そうだな、散々痛い目を見させられた……」
「人の話を聞く前にマシンガンを撃つんじゃないと、風紀委員長に言っておけ」
[委員長の事を侮辱しましたね!?あんなにボコボコにされておいて、随分偉そうですね?]
[貴方が捕まったら、その顔を拝みに行ってあげると約束しましょう。感謝してくださいね?]
……やけに感情的だな。
話を引き延ばして逆探知したいならもう少し私に優しくしたらどうなんだ。
「はあ……誰だか知らんがお前はオペレーターに向いていないと忠言しよう、内容だけ伝える」
[はあ!?何を言うかと思えば……!!]
「トリニティを叩き潰す手立てを提供しに来た、協力しろ」
「……と、羽沼マコトに伝えてくれ、以上だ、ではな」
[はぁ!?なに────]
"バゴッ!ブチブチッ───ガシャン!!"
車載の通信機を引きちぎるように取り外し、窓の外に投げ捨てる。
通信機はガラガラとアスファルトの上を転がり、路傍へと消えていった。
……これで、最低限の目的は果たした。
あとはとにかく離脱するだけだ。
(さて、ここからだ……)
デバイスで地図を確認する。
この先の大通りはある程度開けているゆえ、先回りされることは容易に想像できる。
当然、私も無策ではない。
この先の撤退用ルートは榴弾砲の射程内だ。
ここまで温存してきた甲斐があった、榴弾砲があれば包囲を突破するのも容易だろう。
榴弾砲の設置ポイントはゲヘナから20kmは離れている。
破壊に向かうだけでも10分はかかるだろう。
それだけあれば、離脱には充分だ。
デバイスを手元に配置し、マップを呼び出す。
……もうすぐ大通りだ、覚悟を決めろ。
"ブォン!!"
「……行くぞ……!!」
アクセルを強く踏み込み、大通りに突入する────。