"黙示録"を回避しよう!   作:rezi

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終幕

昼:ヴァルキューレ管轄区/荒野

 

ゲヘナ自治区から離脱し、私は帰路に着く……はずだった。

   「────動かないで」

 

「…………」

 

通告を無視して、振り返る。

 

(チッ、気付かれていたか)

 

内心の舌打ちと共に、次の一手を思考する。

 

「願わくば、もう会いたくなかったんだが」

 

「動かないで、と言ったはずだけれど」

 

ヒナはマシンガンを私に突き付ける。

 

「ああ、すまない。よく聞こえなかった……それで、こんな怪我人を捕まえて何の用だ?」

「問答無用で撃たない辺り、私に何か用があるのだろう?」

 

おどけて言うと、ヒナは目元の皺を深める。

 

「勘違いしないで、"撃つな"と言われているから撃たない。それだけの事よ」

 

(撃つな……?そんな事を言うのは……"先生"か)

 

私の怪我を見て情けをかけたつもりか。

……癪ではあるが、好都合だ。

 

「ハハ、温情に感謝する……確かに、今撃たれたら本当に死んでしまいそうだ……」

 

……不意を突ければ離脱出来るかもしれない。

今は隙を伺おう。

 

「その脚の機械、外しなさい」

 

私の言葉を無視し、ヒナは脚部装甲を指差す。

 

「……あいにく、これは簡単には外せない。ましてや片手では無理だ」

 

「……なら、何もせず、大人しく拘束されてちょうだい」

 

面倒そうに息を吐き、ヒナはマシンガンを構えたままじりじりと近付いてくる。

 

「……とりあえず、救急医学部を呼んであるわ」

「貴方の腕や胸の傷。今すぐ治療しないと間に合わないそうよ」

 

そう言いながらヒナは拘束具をポーチから取り出す。

 

「知っている、こう見えても医学を修めていてね」

 

「そう……」

 

ヒナは興味なさげに、ゆっくりと近付いてくる。

 

「まあ待て、私がここに来た理由は聞いたか?」

「その件について……お前とも話しておきたい」

 

静止するように尋ねる。

この話題には情報的な価値を感じるはずだ。

 

「"トリニティを潰す"、だったかしら?」

「マコトがどう言うかは知らないけど……私から話すことはない」

 

ぴしゃりと言い切ったヒナに、私は大きくため息を吐いて見せた。

 

「……お前ならそう言うと思ったから、直接議長と連絡を取りたかったんだがな」

 

「そもそも……トリニティを潰してどうするつもり?貴方の目的が見えない」

 

「一度潰した方が、キヴォトスが今よりマシになりそうだと思ってな」

「トリニティは後ろ暗いものを抱えすぎた……その当然の報いというわけだ」

 

「それに……お前達もいがみ合うのはいい加減飽きただろう?」

 

私の問いかけに、ヒナは大きくため息を吐く。

 

「はあ、なにも話す気は無さそうね。……無駄話は終わり、腕を出しなさい」

 

呆れた様子で、ヒナは再度拘束具を私に向ける。

 

「……そもそも、私はその件で万魔殿の議長と話をしに来ただけだ」

「道中で不良に絡まれたゆえ、軽く抵抗したらこの始末だ。ハハハ」

 

右手をひらひらと振りながら、大嘘と屁理屈を混ぜる。

それを聞いたヒナは呆れたように大きくため息を吐いた。

 

「よく言うわ。兵器の搬入、ゲヘナ自治区内への爆撃、建造物の破壊に治安部隊への襲撃……言い訳は然るべき場で聞くわ」

 

ヒナはつかつかと近付き、私の右手首を力強く掴んだ。

ギリギリとした痛みからは、彼女の怒りが伝わってくる。

 

「はあ……わかったよ」

 

力を抜き、右腕を差し出す。

 

「……大人しくしなさい」

 

ヒナは私の右手首に拘束具を掛けようと、一瞬、力を緩めた

(────今だ!)

 

 「────ッ!」

 

瞬間、ヒナの顎目掛けて渾身のアッパーカットを放つ。

 

"ヴンッ!!" 拳がヒナの顎の寸前を通り抜ける。

拳を躱したヒナは、私を拘束せんと掴みかかるが──

 

 (────届かない!)

飛びのく私に、ヒナの手は空を切る。

  "バシュッ!!"

 

後方へ撃ち込んだジップラインが張り、一歩下がった私の体を強引に引き戻す。

 

"……ギュルルル────ガシャン!"

 

腕に巻き付けていたソードオフ・ショットガンのロックが外れ、手首に装着されたトリガーが起き上がる。

正真正銘、最後の切り札。

 

「……これなら、どうだ!!」

     "ガアンッ!!──"

「う……っ!」

ヒナの顎に、回転を乗せたアッパーが直撃する。

  "ガチンッ!!"

打撃の衝撃でトリガーが引かれ──撃鉄が雷管を叩く

 

"──ドドガァン!!!"

 「う゛……ッ……!!」

 

散弾の直撃を受け────ヒナは仰け反るように打ち上げられた。

びりびりと腕が痺れ、燃焼ガスで腕が焼ける。

 

────この威力だ、流石のヒナも、耐えられないはずだ。

   "バシュッ!!"

  "ギュルルル────ダアンッ!!!!"

 

すかさず撃ち込まれたジップラインがヒナの体とマシンガンに絡みつき、地面へと叩き付ける。

 

 「うぁっ……!」

 

「悪いが、これは貰っておく……背を撃たれては、たまらないのでね……」

 

ヒナのマシンガンを奪い取り、ジップラインで距離を取る。

 

 「待ち、なさい……!」

 

呻くヒナは軽い脳震盪を起こしたようで、ふらふらと立ち上がる。

その姿を横目に、更に距離を取る。

 

……マシンガンさえ奪えば、こちらの物だ。

 

 

────……離脱する。

 

 

背後で小さくなっていくヒナは、流石に追撃できないと判断したのか……その場を動かなかった。

 


 

side:ヒナ

 

「…………」

 

ヒナは制服に付いた砂を払い、そっと胸の通信機を取り出した。

 

「……ごめんなさい、確保に失敗したわ。今から帰還する」

 

そう報告して、ゲヘナの方へと戻っていった。

 

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