早朝:ヴァルキューレ管轄区/ルイの拠点
「────っぐ……うっ!」
激痛で目が覚める。
「はあ……はぁ……ああ、そうか……」
起き上がる。
未だじくじくと痛む身体を動かし、拠点内にあった保存食……缶詰を取り出す。
「………………」
スチールに包まれた缶詰と向き合って数秒。
……これ、どうやって開けるんだ?
"────タァン!!"
「……不便だな」
銃弾に上部を吹き飛ばされた缶詰をゴミ箱に投げ入れ、薬を飲む。
「……はあ」
時計を見ると日付は変わって午前3時過ぎ。
日が出るまでに出発してしまいたい時刻だ。
(正直、鎮痛剤が効くまで動きたくないが……仕方ない)
行きと比べて随分軽くなった荷物を持って、バイクに跨る。
「……よいしょ、と」
肘でアクセルを捻り、クラッチレバーを握る。
"ヴオンッ!!
「……よし」
エンジンを始動させるだけでもかなり面倒だったが、動き出したバイクを片手で操作するのは更に面倒だった。
とはいえ、慣れてしまえば何とかなるものだ。
(……さて、これからどうしたものか)
ヘッドライトのみが夜闇を照らす荒野を走りながら、思考する。
目的は達成したが、被った損害を考えると間違っても手放しで喜べる成果ではない。
────更に、これから私に対する追跡はより厳しくなるだろう。
つまり、ブラックマーケットを利用するのも望ましくない。
(……武器は失った、兵器の在庫もそう多くはない)
ショットガンは予備があるからいいとして……問題は突撃剣だ。
一応、破壊された突撃剣の設計図は私が持っている。
故に作ろうと思えばもう一本作れるが……設備が無い上に、片腕では自分で作るにも限界がある。
(そもそも、左腕をどうするかだな……)
正直、もう使い物にならないと言って良いだろう。
ヒナの弾幕の盾となり、高所からの落下の際に下敷きになった。
……そして、時間も経ってしまった。
長年連れ添った腕だ、感覚で理解できる───これはもう無理だ。
万が一治癒するとしても、私の力では不可能だろう。
(義手でも用意できるのなら、さっさと切り落としてしまうんだが……)
壊死が始まる前に始末を付ける必要がある、決断は急ぐべきだ。
そう考えた所で、ふと思い当たる。
……エンジニア部、あそこを頼るのも悪くないかもしれない。
彼女達をこれ以上巻き込みたくはないが……状況が状況。
藁をも掴む、という事だ。
突撃剣、ジップラインランチャー、脚部装甲……私の装備は殆どがエンジニア部と共同で作った物だ。
彼女達と連絡が取れるのならば、事情を話してみるのも悪くないかもしれない。
……私には以前、ヒマリとの作戦で使った専用の回線がある。
連絡は問題なく取れるだろうし、ヒマリなら逆探知をかけて即座に私を窮地に叩き込むようなこともしないだろう。
彼女は事情を聴いてくれる、そういう優しい人間だ。
帰ったらまずはヒマリに連絡を取ろう。
彼女ならば、私の目的を理解してくれるだろう。
(……とはいえまずは、帰ってからだな)
セーフハウスに着くにはまだまだ時間がかかる。
太陽も顔を覗かせ始めた中、一人考えるのであった。