"黙示録"を回避しよう!   作:rezi

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切断

昼:アビドス砂漠/ルイのセーフハウス

 

 

「……」

 

捜索の目を逃れるため迂回や荒れ地を無理やり走行したせいで、拠点に戻るまで随分時間がかかってしまった。

 

(幸い……ミカは大人しくしていてくれたようだ)

 

未だ変わらない様子の拠点地上部の廃墟を前に、安堵の息を吐く。

 

地上部のパネルを片手で操作して地下室への通路を開き、拠点内部に入る。

内部を見回しても特に異常はなく、懸念が一つ消えた。

 

(変わりない……ならとりあえずは、傷の処置からだな)

 

脚部装甲をなんとか外し、ガタンと音を立てて倒れた装甲に目もくれず医療設備のある部屋に直行する。

 

「ルイちゃーーーーん!?おかえり~~!!!」

 

(……流石に気付かれるか)

 

私の帰還に気付いたミカの私を呼ぶ声が聞こえてくる。

……今の姿を見られるのはマズい、確実に面倒なことになる。

 

「すまない!!今は忙しいから後にしてくれ!!」

 

無理して上げた大声が喉を震わせて、頭痛を引き起こす。

 

「わかった~!!」

 

返事を聞く限り、何とか誤魔化せたようだ。

 

「……はあ……っ」

 

服を脱いで診察ベッドに横になり、天井に備え付けられた鏡を使って自身の状態を確認する。

 

(────銃創が複数、打撲多数に……)

 

……悪くはない、全体的に打撲や傷、疲労や衝撃からくるむくみや腫れはあるものの……放っておけば治る、そこは大きな問題ではない。

 

(……次だ)

 

────ゆっくりと胸に巻いた包帯を外す。

 

突き刺さった弾頭は未だ残り、傷も大きいが……ここなら問題なく摘出、縫合等の適切な処置ができる、それほど深刻ではない。

 

(……次)

 

問題は左腕だ。

 

ゆっくりと簡易ギプスを外すと、腕は私の意思に反してだらりと自重で垂れ転がる。

 

(…………)

 

ぺりぺりと体液で染みた包帯をはがすと、私の左腕は最後に見た状態から更に悪化しており、二の腕半ばまでほぼ紫色をしていた。

 

ステープラーで無理やり止めた傷跡は乾いた血で真っ黒に染まり、触るとひやりと冷たくなっている。

 

(────覚悟はしていたが、やはりか。)

 

これ以上放置すれば壊死が進行し、全身がやられる。

往年の友であるこの左腕とも別れの時がやってきた────という事だろう。

 

「…………はぁ」

 

諦観が募り、ため息を一つ吐いた。

 

(……切り落とすしかない、急ぎ処置の準備をしなければ。)

 

止血帯を左腕上部にきつく巻き付け、べたべたと経皮麻酔剤を塗る。

 

────キヴォトス外の人間に対し、我々の体はかなり頑丈だ……その中でもとりわけ内部は頑強。

しかしそれ故に、こういった処理を行う必要がある場合は……メスやハサミのような刃物とは違った特殊な機材が必要になる。

 

むくりと起き上がって、ありったけの包帯とガーゼを部屋から持ち出した。

 

武器を整備するための部屋に置いてある油圧プレスのスライドを剪断用の物に取り換え、機材と周りの床にカバーを敷く。

 

「………………」

 

使い道としては間違っているが、こうでもしないと切断できない。

 

他の外傷の処置をしつつ、私は左腕の血が完全に止まるのを待つことにした。

 


 

……止血帯をしてからそろそろ30分が経つ。

もう、十分だろう。

 

保護ゴーグルをしてマウスピース代わりに布を嚙み締め、プレス機の台座に腕を乗せて制御盤を操作すると……駆動音とアラートと共に、スライドが降りてくる。

 

(………………!)

 

「ッ……ぐっ……!」

 

覚悟を決め、目を瞑って歯を食いしばる。

 

骨から伝わるミシミシという嫌な振動とは裏腹に、痛みは殆ど無い。

……麻酔は十分に効いているようだ。

 

数秒ほどして、ごとりという音と共に"プシュウ"と音を立ててプレス機が停止した。

 

そっと目を開くと、床に転がる私の腕と、部屋に飛び散った少量の血が目に入る。

 

(────終わったか)

 

そっと台座から腕を外し、ガーゼを断面に押し付け、包帯で巻き付ける。

血が垂れないように傷口を保護し、私は医療設備のある部屋に戻った。

 


 

────用意しておいた道具を使い、血管を閉じて代用皮膚を切断面に縫い付け、出血を抑える。

止血帯を少しだけ緩めると、当然ながら血が溢れ出てくるが……じきに止まる。

 

そのまま肩まで覆うように包帯を固く巻き付け、滲出液や血液を排出するための管を先端に差し込み、処置は終了した。

 

「…………少なくとも、しばらくは大人しくしておく必要がありそうだ」

 

痕が塞がったように見えても内部は変わらず傷付いている、しばらくは身動きが取れないだろう。

 

点滴スタンドを引っ張り出し、輸血パックを下げて輸血用の管を右手首に刺す。

 

(……ミカには悪いが、かなり疲れた……諸々の話は起きてからにしよう)

 

最後に抗生物質を胃に押し込んで、ベッドに横になって目を閉じると……即座に私の意識は闇に沈んでいった。

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