???:???/???
「……?」
「────ルイさん、起きてください」
聞き覚えのある声がする。
目を開けると、そこにはナギサが心配そうに私を覗き込んでいた。
「ふふ……居眠りなんて、珍しいですね」
「……ナギサか、久しぶりだな」
何か、忘れている気がするが……何故だろう、思い出せない。
そんな私の内心を知ってか知らずか、ナギサは微笑む。
「久しぶりだなんて……昨日会ったばかりではありませんか」
「……そう、だったかな」
「はい、たまには相談室でお茶会でもどうでしょう、と昨日話したじゃないですか」
「……そうだった」
そう返事をすると、ナギサは"ふふ"と笑って、歩き始めた。
私もベッドから起き上がって、ナギサに付いていくと、すぐに相談室の前に着いた。
「……懐かしいな」
何故か口を衝いて出たその言葉の意味を理解できないまま、部屋の中に入る。
小さな執務スペースに、"相談"を受けるため外界とシャットアウトされた個室。
どこか懐かしいその部屋に導かれるまま、ナギサと個室の中に入る。
そこにはミカやセイアも居り、既に用意されたティーセットやデザートがテーブルの上に置かれ、ナギサは対面の椅子に座った。
「……ルイさんもどうぞ、座ってください」
「ああ、ありがとう」
私も椅子に座ると、ナギサは微笑む。
(……ああ、紅茶を淹れなければ)
それぞれのカップを用意してティーポットを持ち、傾けると、ポットの蓋がからんと音を立てて床に落ちた。
"ドガァァァァアアン!!!"
────それと同時に、大きな爆発が起こる。
「きゃあっ……!!」
「うわあっ!!」
私たちの居た部屋は吹き飛ばされ、爆風の運んできた炎と瓦礫によって、私達は押し潰された。
「ルイさん……!助け……っ!」
「ルイ……助けてくれ……!!」
瓦礫に押し潰されたナギサとセイアが、私に助けを求める。
瓦礫を退けようと手を伸ばすが、伸ばした腕から先には何もついておらず、ただ白い布が巻き付いていた。
「……ルイさん……!熱い……!」
「苦しい……助けて……っ!!」
片腕ではとても動かせないような巨大な瓦礫によって、二人は潰されていく。
「見捨て……な────」
「死にた────」
火の手は迫り、二人を焼いていく。
──────いや。これは悪夢だ────見破った。
しかし、覚める気配は一向にない。
「ねえ☆ルイちゃん……」
背後から声がする。
「……これが夢だって、わかってるんでしょ☆……それでも、覚めないのは……どうしてだろうね?」
ミカが私の肩に手を置いて話しかけてくる。
「本当は…これが現実だったりして……☆」
「……これは、典型的な術後譫妄に過ぎない」
私がそう反論すると、ミカは口を三日月のように曲げて笑う。
「ふふ、じゃあ夢の中じゃ痛みを感じないって言うけど……今、その腕……痛いでしょ☆」
ミカが私の腕にゆっくりと手を伸ばし────握り潰す。
────激痛。
「が、っ……あああああ……!!」
飛び上がるような痛みと共に────────
「が、っ……あああああ!!」
がばりと飛び起きる。
視界を焼く寒色ライトに、真っ白な部屋。
……やはり、夢だったようだ。
動悸が収まらない。
鎮痛効果や麻酔が切れたのか、左腕から激痛を感じる。
「はぁ……はっ…ふう……!!」
息を整える。
「ふう……はあ……」
何とか、落ち着いた。
輸血用に刺さっていた針を抜いて、消毒してパッチを貼る。
時計を見ると、あれから5時間ほど経過して、時刻は真夜中。
(……薬を飲もう、この痛みでは寝られる気がしない)
経皮鎮痛剤を左肩に塗り込み、キッチンへ向かう。
高カロリーのエナジーバーを無理やり口に含み、栄養補助飲料で胃に流し込む。
更に、抗菌薬をはじめとする数種類の薬と睡眠薬を服用した。
「……はあ……」
大きく息を吐きだす。
まだ効き始めるには早すぎるが、だいぶ楽になった気がする。
とぼとぼとベッドに戻り、横になって包帯周りを軽くマッサージする。
「ぐっ……うう……」
当然痛むが……必要な処置だ。
それを終えて、左腕を高い位置に固定し、再度横になる。
(……もう悪夢は見たくないな……)
自分の中では割り切ったつもりだったが、どうやら思ったよりメンタルが弱っているらしい。
(………………)
友人たちの事を思い浮かべてみるが、先程の夢のせいかあまりいい気分はしない。
(やめだ、今は考えても苦しいだけだ……)
目を瞑り、可能な限り何も考えないように毛布を被る。
────睡眠薬が効いたのか、今度は夢を見る事も無く眠る事が出来た。