"黙示録"を回避しよう!   作:rezi

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効果音や地の文中のセリフは " " 、通信の音声は [ ] で囲っています。


事前準備と日常回④

 

 

午後:トリニティ本校/寮区画

 

 

時刻は予定通り。

訓練会場近くに用意された部屋に入ると、そこには5人のメンバーが揃っていた。

 

正義実現委員会の制服を着た彼女達は、入室した私に気が付くと勢いよく立ち上がり、"おはようございます!!" と元気な挨拶をしてくる。

 

「おはよう。待たせてしまったかな?」

「訓練で何度か顔を合わせたこともあるだろうが……私が、今回の訓練で指揮官を務める天城ルイだ。よろしく」

 

私が軽い自己紹介をすると、集まった5人も "よろしくお願いします!" と揃って良い返事を返してくれた。

これは良い訓練になりそうだ、と期待を抱きながらそれに頷いて、話し始める。

 

「……さて。今回我々はテロリストチームという一見不名誉な部隊に振り分けられたが……それは気にせず、孤立状況下での防衛訓練だと思って真摯に当たってくれ」

 

正義実現委員会の中でも精鋭なのだろう。

私の言葉に対して、姿勢よく"はい!"と揃った返事をしてくれる。

 

「ハスミからある程度の説明は受けているだろうが……我々の目的と勝利条件は、一定時間の間人質を守り、持ちこたえることだ」

 

「そして、敗北条件は人質のロスト、あるいはチームの全滅。」

 

「相手の数は不明、かつこちらは少人数。故に、理論的かつ効率的な防衛をする必要がある」

 

「……とは言ったが、基本的には私が指揮を執る。現地ではそれに従ってくれればいい」

「理論立った話は、反省会の時にでもすればいいからな」

 

そう言って、持ってきたファイルから書類を取り出す。

 

「さて、前置きが長くなったが……作戦会議を始めようか」

 

可能な限り優和に挨拶と説明を進めた。

とりあえず、これで緊張は和らぐだろう。

 

「ではまず、君たちが普段使用している火器を教えて欲しい」

 

 

──私の質問に、隊員達はひとりずつ答えた。

 

 

「ふむ……アサルトライフルが3名、アサルトカービンが1名、スナイパーライフルが1名か……」

 

「アサルトライフルを使用している者で、ライトマシンガン……分隊支援火器の経験、あるいは訓練を受けたことのある者は?」

 

そう尋ねて、隊員たちを見遣る。

すると、おずおずと一人の隊員が手を上げた。

 

「はい……!講習は、受けてます!」

 

「……よし。使い慣れないかもしれないが、このライトマシンガンを使ってくれ。配置と運用は追って説明する」

 

「わかりました……!」

 

私が持ち込んだ制式のマシンガンを渡して、勇気付けるように肩をポンと叩く。

 

「知っているだろうが、室内での防衛戦ではマシンガンによる牽制が大いに効果的だ」

「よって、君には重要なポジションに着いて貰うことになるが……そう気負わず、私に従ってくれ」

 

「はい、頑張ります……!」

 

彼女は渡されたマシンガンを抱え、カチャカチャと動作確認を始めた。

 

「さて、これで編成はライトマシンガン1名。」

「アサルトライフル2名、アサルトカービン1名、スナイパーライフルが1名。」

 

「そして、私はショットガンとバリスティックシールドを使用する。頭に入れておいてくれ」

 

私の言葉に、"はいっ!"と元気のいい返事が隊員達から返ってくる。

それに頷いて、私はプロジェクターの電源を入れた。

 

「……では、次に作戦の概要を説明する。現場の見取り図を配るから、スクリーンと共に目を通してくれ」

 

寮の見取り図が行き渡ったことを確認して、壁にかかったスクリーンにその見取り図を投影する。

 

「さて……記載の通り、建物は2階建てだ」

「入り口は1階の正面玄関、キッチンの搬入口に、非常階段近くの非常口。二階の屋上階段の4つ」

 

「そして、1階と2階を繋ぐ階段は正面玄関前の大階段と非常階段の二つだ」

「窓を破られる可能性を考えるのなら、階段を守っていれば安全だとは限らないことに留意してくれ」

 

そう説明して、想定される侵入ルートをレーザーポインターで示す。

 

「そして、まずは人質を配置する部屋はここ。2階中央廊下奥の個室とする」

「相手からは予想しやすい場所だが……それよりも、守りやすさを重視するべきという判断だ」

 

隊員たちは私の説明に小さく頷きつつ、引き続き傾聴を示している。

 

「では続いて、現着後の行動を大まかに伝える」

 

そう言って、2階の見取り図をポインターで示す。

 

「見ての通り、2階の人質部屋正面の廊下には、寮生用の個室に繋がるドアが左右に6枚。」

「そして、その部屋の中には人が通れる大きさの窓が1枚存在する」

 

「当然、敵チームもここは侵入経路の一つだと認識するだろう」

「そこで、現地入りしてからの準備時間では、まずこの6枚のドアをバリケードで封鎖し、トラップを仕掛ける」

 

「……そして、ドアの封鎖が終わった後は屋上で陣を築き、そのままアサルトカービン、スナイパーライフル、アサルトライフルのスリーマンセルで屋上を防衛してもらう」

 

「屋上チームのスナイパー以外は、敵が確認できなくなる。あるいは屋上に構え続けるのが難しくなった時点で撤収し、私のチームと合流」

「共に防衛しつつ、私の指示に従って臨機応変に動いてもらう」

 

「そして……人質部屋前、二階廊下の防衛は私とライトマシンガンのツーマンセルで行う」

「それで、残るアサルトライフル……君は監視システムを使用して敵の動向報告を担ってもらう。……これでいいな?」

 

"了解"と皆の返事を聞いて、"よし"と頷く。

 

「では最後に、作戦開始後の大まかな流れを説明しよう」

 

「作戦開始後、接近する敵部隊に対して屋上チームが攻撃を仕掛ける」

「これは撃破を目的とするものではなく、牽制と時間稼ぎ、屋上にいるという事実を刷り込み、行動を阻害するためだ」

 

「その間、1階から侵入してくる敵部隊は私のチームが対応し、可能な限り時間を稼ぐ。このフェーズで10分稼げれば完璧だ」

 

「……その後は現地の報告をもとに作戦を都度構築し、必要に応じて私が指示する。以上だ」

 

「さて……最後に、コールサインだが……わかりやすく武器の名前で呼び合うことにしよう」

 

「スナイパーライフルは"スナイパー"。」

「ライトマシンガンは"マシンガン"。」

「アサルトカービンは"カービン"。」

「アサルトライフルは"ライフル"。」

 

「……例外として、監視担当の君は"監視員"。私は"隊長"だ、いいな?」

 

"了解"という隊員たちの返事を聞いて、"よし"と頷く。

 

「では、開始までの時間も残り少ない、遅刻する前に現地に向かうぞ。」

 

ブリーフィングを終え、私のチームは現地の寮へと向かった。

 

 


 

午後:トリニティ自治区/寮区画

 

 

……現地に到着した私達は建物内の視察を終えて、現在待機中だ。

 

人質役の人形を部屋に配置し、部屋に揃った隊員達を見遣る。

 

「……さて、あと2分で陣地構築開始だ」

 

「各位、武器の最終確認、通信機器の点検を忘れずに行ってくれ」 

 

その言葉から1分ほどが過ぎ、隊員達は各々点検を終了させ……物々しい雰囲気が部屋に漂いはじめる。

 

各々緊張した面持ちで、その時を待つ。

 

────"ピピピピ!!"

 

そして、沈黙を切り裂くように演習開始のタイマーが鳴り響いた。

みな同時に顔を上げ、勢いよく立ち上がる。

 

「──開始だ。行くぞ!!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 

人質部屋を出てさっそく、隊員達は指示通りに廊下のドアの封鎖とトラップの設置へ向かう。

それらは隊員に任せて、私は屋上で防衛陣地の構築をしていた。

 

(────さて、何人くるか)

 

防壁となる障害物を組み重ねつつ、屋上から周辺を見渡す。

手入れされた森と、他の寮に囲まれたこの建物は護るには適しているが……内部に雪崩れ込まれた場合、即座に制圧されかねない。

 

さらに、敵チームの人数は不明。

しかし室内での対テロ作戦なら最低でも8人、多くて16人は来るはずだ。

 

思考を重ねつつ、手を動かしているうちに作業は片付いた。

時計を確認すると、開始まではあと5分。

 

……準備は順調だ。

2階への階段を小走りで降りながら、通信機を点ける。

 

「各員、進行度合いはどうだ?」

 

[ 二階の扉、問題なく封鎖完了しました! ]

[ 監視システムも問題なく……! ]

 

隊員たちは次々に作業の完了を報告する。

 

……素晴らしい。流石、ハスミが選んだメンバーだ。

と、手放しに褒めたいところだが……今は演習中だ。

 

ここはこらえて、終わってからの反省会で思いっきり褒めるべきか。

 

気持ちを抑え、努めて冷淡に言葉を続ける。

 

「了解。屋上チームは屋上に集まって開始を待つように。そして、監視員は限界までカメラの設置を続けてくれ」

 

[ 了解! ]

 

「よし。マシンガンは施錠の再確認、私は防壁を調達する」

 

[ りょうか……えっと、すいません、調達って言いました? ]

 

マシンガンはきょとんとしたような声色で聞き返した。

 

「そうだ。防火扉を見つけたから、外して障害物にする」

「そして、これを中央廊下の最終防衛ラインとして扱う。これなら並みの弾丸は通さないだろうからな」

 

[なるほど……でも、施設を壊しちゃっていいんですか?]

 

……真っ当な疑問だ。

しかし、それを正当化するだけの理由はある。

 

「私が許可する。壊すなとは言われていないからな」

「今回は実践形式だ。運営側の目線としても、施設をある程度破壊されることは織り込み済みのはずだし……まあ、怒られたら謝ればいい。責任は私が取るから心配するな」

 

[ 確かに……それもそうですね。失礼しました! ]

 

「では、何かあれば都度連絡してくれ。以上」

 

「……ふう」

 

通信を切り、廊下に備え付けられた防火扉に触れる。

接続部に机の天板を差し込み……深く息を吸った。

 

「……ふんっ!!」 "バギッッ!!!ガシャァンッ!!"

 

扉の外側を強く殴りつけると留め具が砕け散り、防火扉は壁から外れた。

 

「よし……」

 

取り外した防火扉を廊下横に寄せたところで、"ピピピ!!!"と残り1分を知らせるアラートが鳴る。

 

( 準備は予定通り。余裕もある……上々だな )

 

「……最終確認だ。各員持ち場に付いているな?」

 

[ 屋上チーム、問題ありません ]

 

[ 監視、問題ありません!]

 

各員の報告を聴いていると、ちょうど人質部屋からマシンガンが出てきた。

 

「よし、廊下チーム、こちらも問題ない」

 

返事を聞いて、深呼吸をする。

 

「……残り10秒──5、4、3、2、1」

 

"────ピピピッ!!"

 

「作戦開始だ。屋上チーム、見つけ次第撃て」

 

短いアラーム音と共に、演習が始まった。

 

[……8時方向より敵影確認!! 射撃開始!! ]

 

さっそく、屋上チームが交戦したようだ。

報告の直後、外からは"ダァン!""ダァン!""ズダダダダダダ!!!"と、激しい銃声が鳴り響いている。

 

「敵のおおよその数は?」

 

[ 視認しただけで6名です。一名が気絶して、敵チームは一時撤退しました ]

 

「了解した。一度下がってなにかしらの対策を講じるつもりだろう、些細な変化も見逃すな」

 

[ 了解 ]

 

(……6名。少ないな )

 

斥候か。

偵察を兼ねて注意を引きつつ、本隊あるいは別動隊に状況を伝え……密かに侵入するつもりだろう。

 

「恐らく斥候だ。別動隊、あるいは本隊がいる」

「監視員は屋上から確認できないエリアを警戒してくれ」

 

[ はいっ! ]

 

 

────それから4分ほど、あまりに呆気なく時間が過ぎた。

膠着した状況に、チームには一周回った不安が漂う。

 

「……相手が何もしてこない、という時が一番恐ろしいものだ」

「警戒を怠らずに、屋上チームは何かあればすぐに報告。最悪、現場判断で撤退してくれ」

 

[了解しまし──]

"タァァァン!!"

言葉を裂き、甲高い一発の銃声が通信越しに聞こえる。

 

[ ……狙撃です! カービンがやられました……! ]

 

「……了解。狙撃手の位置は分かるか?」

 

[ およそ8時方向からですが、詳細な位置までは掴めていません ]

 

(……潮時か)

 

「……わかった。カービンは日陰で寝かせておけ」

「ライフルは撤退してこちらと合流。スナイパーは屋上に残り、無理に撃ち合わずに敵の動向を警戒、なにかあれば逐次報告してくれ」

 

[ 了解しました ]

 

それから十数秒ほどして、ばたばたと階段を降りてきたライフルが私のチームに合流した。

 

「隊長、すみません……」

 

「いや、おかげでかなり時間を稼げた」

「一時撤退する程の圧力を与えられたのなら大戦果だ。……何はともあれ、今は作戦に集中しろ」

 

申し訳なさそうにしているライフルの肩をぽんと叩き、非常階段の側に着くように指示する。

 

……すると、監視員から通信が入り……応答すると、少し慌てた様子で彼女は告げた。

 

[ 敵部隊の侵入を確認しました、搬入口より3名……それと、正面玄関前に4名接近しています! ]

 

「了解した。引き続き監視を続けてくれ」

 

(……ついに仕掛けてきたか)

 

どうやら複数の入り口から侵入することで、戦力を分散させるつもりのようだ。

 

……相手が複数に分かれる気なら、ここで構えておく理由も薄い。

一度打って出て牽制するべきか。

 

そう結論付けた私は、通信機を握りなおす。

 

「……よし、私は搬入口を制圧しにいく」

「その間、スナイパーは屋上から正面玄関側を牽制し、侵入タイミングをずらしてくれ」

 

[ 了解 ]

 

「監視員は搬入口以外の侵入経路を注視。動きがあれば逐次報告してくれ」

 

[ 了解しました ]

[ ちなみに、正面玄関の敵は現在トラップを警戒しているようですが……もう間もなく侵入してくるかと ]

 

「わかった。ではマシンガン、私が戻るまでの間、正面玄関を撃てるポイントに構え、侵入の兆候が見えたら制圧射撃を行って食い止めてくれ」

 

[ 了解、お気を付けて ]

 

「ああ……では、行ってくる」

 

隊員たちにそう告げて、飛び降りるようにして非常階段を下りる。

"ザッ、ザッ" と大きな足音を立てつつ進行すると、搬入口前の廊下に差し掛かったところで小さな話し声が聞こえた。

 

「……足音」

「交戦体勢に入る」

 

(……釣れたようだ)

 

胸元の通信機を取り出し、小声で報告する。

 

「……搬入口にて敵を確認。交戦開始」

 

[ 了解 ]

 

静かな廊下には、張り詰めた空気が漂い始めた。

敵部隊は迎撃の体勢に入ったようで、搬入口は続く廊下の端から動かない。

 

(報告によると、相手はスリーマンセル。位置と間取り的に、回り込んでの挟撃はできないはず)

 

急いだ甲斐もあって、敵のポジションは想定内。

盾を使えば問題なく制圧できるだろう。

 

とはいえ、私からの距離は10メートルほどある。

ある程度近付かなければ、予期せぬ反撃を受ける可能性もあるだろう。

 

(だが、時間を無駄にはできない。……膠着するくらいな、こちらから動くか)

 

全身を覆うように盾を構える。

そのままゆっくりと、警戒しながら廊下を進行する。

 

廊下を数メートルほど進んだと同時に……廊下の影から人影が飛び出した。

 

「────撃てえっ!!」

"ダダダダダッッ!!"

"ガガガガッ!!"

 

降り注ぐ弾雨、容赦のない制圧射撃。

数十発もの弾丸がバリスティックシールドに激突し、砕け散っていく。

 

(……アサルトライフル。問題ない)

 

盾から伝わる衝撃を意にも介さず、私は進み続ける。

 

「……撃ち続けろ!盾持ち一人だっ!」

 

   "ダダダダダダダダッッ!!"

「次!!」"ダダダダッ!!!"

 

相手は弾切れギリギリまで連射し、リロードをカバーするように二人目が飛び出して連射してくる。……制圧射撃で抑え込む気のようだ。

 

硝煙で視界が曇り始めた頃、彼女達との距離は縮まり。目測およそ5m程度の距離に来た。

 

(……右に二人、左に一人。距離は十分詰めた。視界も悪い……これなら……)

 

"隊長、無事ですか?"

「……問題ない、すぐ終わらせる」

 

盾を構えたまま、安否通信を返し……ベルトから手榴弾を取り外す。

 

「────くらえっ!!」

 

大きな声を上げ、手榴弾を敵の足元へ転がすと……敵部隊は面食らった様子で、射撃を止めた。

 

「……手榴弾! 回避っ!!」

 

────相手が叫ぶと同時に、突進する。

 

(……貰った!)

 

床に転がる手榴弾を踏み越え、1秒もしないうちに相手の位置に辿り付く。

「……レプリカだ。残念だったな」

 

「えっ、しまっ────」

"ダァン!!" "ダァン!!" "ダァン!!"

 

炸裂する手榴弾より身を護るため、匍匐していた相手は抵抗の余地もなく射撃を受け……気絶した。

 

「搬入口、こちらは片付い────」

 

私の声を遮るように、監視員が通信を点けた。

 

[ こちら監視! 正面玄関に敵部隊が集結しています! 急ぎ帰還を! ]

 

(……時間をかけすぎたか。まあいい)

 

「了解した、すぐに戻る」

「マシンガンは正面玄関が破られ次第、目視で手榴弾を投擲、掃射で相手を牽制」

 

[ 了解! ]

 

非常階段を経由し、全力で走ってマシンガンの待つ持ち場に向かう。

その道中、"ドオン!!"と突如鳴り響いた爆音が床を揺るがし……ぱらぱらと天井から粉が落ちる。

 

[ 正面玄関、破られました!!……制圧射撃、開始します!! ]

 

脚に伝わる痺れが消えないうち、マシンガンから状況の報告が入った。

 

"ドォォォン!!" "バァン!!"

"ドドドドドドドドドドドッッッ!!!"

 

爆発音に混じり、唸りを上げる機関銃の銃声が建物中に響く。

 

そんな中、焦りに満ちた叫びがインカムから響いた。

 

[ こちら監視!! 非常口からも侵入が確認されました!! ]

 

[ こちらスナイパー!複数の敵が接近! ]

[ 鉤縄を使って屋上に登ろうとしています! 撃ち返そうにも、狙撃手の射程内で……! ]

 

激しい銃声と、隊員たちの報告が飛び交う。

 

(搬入口チームが撃破されたことを把握して、物量での制圧に切り替えたか)

 

一瞬の逡巡。のち、口を開く。

 

「……数で押し潰す気のようだ。私は屋上の支援に回る」

「ライフルは引き続き非常階段の防衛。マシンガンは正面玄関の戦線維持。そして、監視員はライフルの応援へ」

 

「ここを抑えれば私達の勝ちだ。全力で当たれ!!」

 

[……了解!! ]

 

通信を終え、即座に駆け出す。

 

"ダンッ!!" "ドガァン!!" "ドドドドド!!"

 

十数秒前とは打って変わって、全方位から盛大な銃声が鳴り響いている。

戦闘に巻き込まれないよう非常階段を駆け上がって、屋上へ到達し……扉を蹴り破る。

 

"ガァンッ!!" "────ダダダダダッッ!!" 「うう……っ!」

 

瞬間────目の前で、スナイパーが倒れた。

 

(間に合わなかったか……)

 

「敵の応援だ!」

私を視認した敵が叫び、射撃が始まる。

 

(目視で4人。開けている屋上で戦うには厳しい人数差だ……‼︎)

 

「撃てえっ!!!」

"ダダダダッッ!!" "ガガガガァン!!"

 

「……チッ!!」"バタンッ!!ガチャッ"

 

盾で射線を切りつつ後退し、屋上に繋がる扉と鍵を手早く閉める。

 

(まずいな……)

 

……屋上を完全に制圧されてしまえば、上下からの挟撃を受けて全滅は免れない。

 

ここが分水嶺だ。状況を把握し、最適な手を打たなければ。

 

「……こちら隊長。スナイパーがやられ、屋上は一時制圧された」

「現在は屋上扉を封鎖して時間を稼いでいる。そちらの状況は?」

 

[ マシンガン、無事ですが、長くは持ちません……! ]

[ 非常階段、交戦中です!! 優勢ですが、応援には行けません!! ]

 

(……状況は楽観視できない、リスクは冒さざるを得ないか)

 

指揮官がリスクを冒すことは褒められたことではないが……作戦成功を目指すのならば、最適な選択はこれで間違いない。

 

────思考の間にも、"バン、バン"と扉を破らんとする音が扉越しに聞こえてくる。

 

(……考えている時間はなさそうだ)

 

「わかった。屋上を片付けて正面の応援に行く。2分持たせろ」

「私が倒れた場合は人質部屋まで後退し、限界まで時間を稼ぐように」

 

[了解……!]

 

発煙弾のピンを抜いて、足元に転がす。

"バシュウウウ!!" と噴出音と共に煙が立ち込め……3秒ほどで、扉の周囲は煙に包まれた。

 

(……こちらから扉を吹き飛ばし、一瞬で制圧する)

一対多の戦闘で最も有効なのは……相手の土俵を崩す、不意打ちだ。

 

煙を吸わないよう息を止めて、反対側から気付かれないよう……音を立てないように鍵を開ける。

 

"バン!!バン!!"

外部からの殴打を受けて、扉が軋み、今にも開かんとしている。

 

(行くか……!)

3、2、1────"バァン!!"

 

煙と共に扉を破り、視界に映らないよう、姿勢低く転がり出る。

 

「なっ……!!げほっ……発煙弾だ!!」

 

扉のすぐ外側にいた敵は、煙で前が見えていない。

 

(いいぞ。狙うは……)

 

扉を破る際には、必ず遠巻きに構える隊員がいる。

……それから排除する。

 

煙から飛び出し、開けた視界には予想通り、二人の敵がいた。

 

「うわっ……!飛び出────」

"ジャキッ! ダァン!!「う゛っ……!!」

 

彼女が手を掛けた銃は私に向けられることなく、取り落とされた。

 

(……次!)

 

その対角線上、煙の外に居たもう一人の敵を視認、銃口を向け────間に合わない!

 

「……くっ!」

"ダラララララララッ!!!"

"ガガガガッッ!!!"

 

ばら撒かれる弾丸を、咄嗟に盾で防ぐ。

(距離およそ7m。無理に撃ち合うより────殴った方が早い!)

 

「……行くぞッ!!」"ガガガガガッ!!"

乱射を盾で防ぎながら、動揺している敵に向けて突進する。

 

「……!?ちょっ、待っ────」

「────遅いッ!」

 

"ゴッ……ガアンッ!!"

「ぁがっ……!!」

 

突進の勢いを乗せ、下から上に打ち上げるようなシールドバッシュ。

直撃を受けた相手は勢いよく吹き飛ばされ……柵を超え、落下していった。

 

(次ッ!)

 

即座に振り返り、背後に盾を向ければ……煙の中に居た二人が、こちらに銃を向けている。

 

「……二人やられた!」

「盾持ちだ!囲いこめ!!」

 

二人は挟み討つように左右展開しながら距離を詰めてくる。

 

(……盾持ちには正しい戦術だが……)

 

……今日の私は、"教官"として参加している訳ではない。例外というものを教えてやろう。

 

「───相手が悪かったな!」

 

構えた状態から一瞬で盾を水平に構え、右に展開した者に投げ付ける。

 

"ビュウッ────ガアンッ!!"

「はっ!?────う゛っ……!」

 

大きな風切り音と共に飛んで行ったシールドは敵の胸に直撃。吹き飛ばした。

 

「……っ!!」

 

"ダダダダ────!!"

 

盾を無くした私に、もう一人からの弾雨が降り注ぐ────ことはない。

 

"────ゴンッ!!"「きゃあっ……!」

 

盾を投擲した回転のまま、横向きに投げつけていたショットガンが顔面に直撃し……彼女は銃口を逸らした。

 

その隙を逃さず踏み込み、駆け出す。

 

「……ふっ!」

 

滑り込むように足を払い、仰向けに倒れた彼女の銃を奪い、突き付ける。

 

「……降伏しろ」

 

「はい……」

 

その生徒は手を上げて降参を示し、気絶を意味する赤テープを自分の顔に貼った。

 

「……ふーっ……」

 

決着。

息を整え、急いで装備を拾いなおしつつ通信機に声をかける。

無意識に荒くなった語調を制することもなく、私は非常階段へと駆けていた。

 

「……屋上は制圧した! 各位無事か!?」

 

[ ライフル、無事です!監視員がやられましたが……非常階段の防衛には成功しました!]

 

[ マシンガン、何とか抑えていますがもう限界です……!!]

 

「了解!! 私はマシンガンの応援に向かう! ライフルはそのまま非常階段の防衛を続けろ!」

 

"了解!!"

 

……時計を確認する暇はないが、体感ではあと10分ほどだろう。

人員の損耗が激しい。残り3人で守り切れるか……。

 

そんな思考を振り切るように全力で走り、マシンガンの下に到着する。

 

彼女はボロボロになりながらも、正面玄関と撃ち合っていた。

 

「うあああああ!!」

"ズドドドドドドドドドドド!!!"

 

マシンガンを乱射する彼女の肩を叩き、銃声に消されないよう大きく声を掛ける。

 

「来たぞ!!」

 

「……隊長!!」

 

「もう大丈夫だ!! 良く持ち堪えた!!」

 

私の言葉に、彼女は深くと頷いた。

……相当に疲弊しているだろうに、彼女の顔は勇壮な覚悟に満ちている。

 

「リロードします‼︎……少しだけ、耐えてください!」

 

「……わかった、任せろ!」

 

 

"バァン!!" "ダァン!!" "ズダァン!!"

 

屋上で気絶していたカービンから借りたアサルトカービンを連射する。

 

"ダダダダッ!!" "バァン!!"

"ダァン!!" "ダダダッ!!"

 

隙を見ては侵入しようと飛び出し、こちらを射撃してくる相手をなんとか牽制するが……敵の人数が多すぎる。

 

……これを一人で抑え込んでいたのか。彼女(マシンガン)はとびきり腕がいいようだ……!!

 

歓驚しつつも、モグラたたきのような銃撃戦を続けていると、背後から"ガチャリ"とコッキングレバーを引く音が聞こえた。

 

「────リロード、終わりました!!」

 

「わかった!!」

 

その報告を聞いた瞬間。

私はベルトから手榴弾を複数取り出して、手当たり次第に正面玄関に投げつけた。

 

"ドガアンッ!! "ダアアンッ!!" "バシュウウウウ!!"

 

爆音に交じり、発煙弾が煙を吹きだしたことを確認して、構えていたカービンを床に置く。

 

「……よし、牽制は十分だ! 付いてこい!!」

 

「はいっ!」

 

共に走って後退しつつ、通信機を点ける。

 

「ライフル、応答しろ!」

 

[ こちらライフル! ]

 

「正面の戦線を下げる!……倒した人数を考えるに、正面玄関に居るのが最後のはずだ!!」

「私とマシンガンは人質部屋前の廊下をキルゾーンとして防御を固める!」

 

「君には念のため、非常階段下の廊下と屋上を確認して来て欲しい。危険だが……頼む!」

 

[ ……了解っ! ]

 

指示を出しながら廊下に並んだ机を動かし、30秒ほどで簡易なバリケードが組み上がる。

最後に、廊下の一番奥に立てかけていた巨大な防火扉を立てて、最終防衛ラインは完成した。

 

……それから数秒。廊下の奥からどたどたと足音が聞こえる。

前線を下げたことに気付かれたのだろう。複数人が駆け上がってくる音だ。

 

……ここが、最後の戦場になるだろう。

ショットガンを握って、後方で構えるマシンガンへと声をかける。

 

「……マシンガン。私が前に出て、敵を引き付ける」

「私が"撃て"と言うまで、人質部屋の中で待機していろ」

 

「合図をしたら、飛び出して制圧射撃を行ってくれ」

 

「……了解しました……!」

 

マシンガンは指示通りに後退し、人質部屋に入った。

私も息を整えて、盾を携える。

 

────敵が視界に入った。

 

「……交戦開始!!」

  「交戦開始!」

 

同時に叫び、銃撃戦が始まった。

 

"ダダダダダダダダダダ!!!"

 

複数人による集中砲火が、私に向かって放たれる。

盾で防ぐにも限界があると踏んだのか、敵はじりじりと距離を詰めながら射撃し……私の防御が崩れる瞬間を待っている。

 

(……敵は5人。撃ち返すには被弾リスクが高すぎる、ギリギリまで時間を稼ぐしかないか)

 

"ダダダッ!!" "ダダッ!!"

"ダダダダダダダッ!!!"

 

相手は隙のない連携で制圧射撃を行いながら、長い廊下を一歩また一歩と進行してくる。

 

────それに合わせて、私も一歩ずつ下がる。

 

銃声。薬莢が床に落ちる音。

盾がひしゃげ、迫る靴の音。

 

ダン、ダンと銃声が鳴るたびに、確実に戦線は後退していく。

立ち込める硝煙が廊下をぼやけさせ、火薬の匂いが鼻腔を焼く。

 

"ダダッ!!" "ダダダダッッ!!"

"ガガガガッッ!!"

 

(このまま勘付かれないように、相手が退避できない位置まで下がる。……それまで、この盾が持つか……!)

 

"バゴッ!!" "ゴゴゴッ!!"

 

鈍い音を何度も響かせ、バリスティックシールドは銃弾を受け止め続ける。

訓練開始前の綺麗な姿の面影はどこにもなく……へこみ傷付き、"もう持たない"と悲鳴を上げる。

 

(防火扉までおよそ10m……ここから走ったとして、背を晒すのはおよそ1秒)

 

防弾装備は着けている。

頭を下げ、背で受けるように走れば頭部の被弾リスクはほぼゼロだ。

その選択を恐れる理由など、どこにもない。

 

「……防火扉まで後退する。到着したら射撃開始だ、合図を待て」

 

[ 了解 ]

 

「すぅ……!!」"ダッ!!"

小声で報告し終わると同時に、深く息を吸い込み────駆け出す。

 

「後退した!!撃て!!」

"ズダダダダダダダダダ!!!"

 

先程の規律だった射撃ではなく、文字通りの掃射が私の背を追う。

"バスッ!!"”ドスッ!!”

「っぐ……!!」

 

"ダッ!……ダンッ!!ズザアッ!!"

 

数発の被弾を受けつつも、障害物を飛び越え……防火扉の後ろに転がり込んだ。

 

(よし……!!)

 

背後からは、こちらに駆けてくる複数人の足音。

「───撃て!」

 

  "バァン!!"

同時に、目の前にあった人質部屋の扉が蹴り開けられる。

 

"ズドドドドドドドドドッッッ!!!!"

 

作戦通り、マシンガンの掃射が始まった。

 

「なっ……!」

「……伏せろ!!」

 

"ドドドドドッッッッ!!!!!"

 

逃げ場のない廊下での制圧射撃。

こうなれば……相手は伏せてやり過ごすしかない。

 

「マシンガン、聞こえるか?」

 

[ はいッ!!]

 

「そちらの弾切れと同時に仕掛ける。その間に再び部屋へと隠れ、リロードを済ませてくれ」

 

[ はいッ!!!]

 

上擦る声から、彼女が興奮しているのが伝わってくる。

 

その間にも、彼女は休まず撃ち続ける。

もうすぐ弾切れだろう、相手もそこを狙ってくるはずだ。

 

"ドドドドドドドドドドッッ────!!"

 

────静寂。

 

"バッ!"

即座に障害物を乗り越え、ショットガンを構えて敵の前に飛び出す。

 

"ダァン!!"   「う゛あっ!」

"ダァン!!"   「きゃ……!」

 

目の前で立ち上がらんとする二人を即座に撃ち倒し、ボロボロの盾を構え……残りの敵と対峙する。

 

(……残りは3人。ここまで来れば────!)

 

"勝った"────そう思った、瞬間。

 

   "バギャァンッ!!!!!"

   "ガラガラガラ……ッ!!"

 

封鎖していたはずの扉が、その枠ごと勢いよく吹き飛び……対面の壁にぶち当たった。

 

「……なっ!?」   「ええっ!?」

 

私と相手の驚愕の声が重なる。

 

"ドオォンッ!!"

それから一拍を空け、仕掛けられたトラップが作動し、爆煙と共に黒影がその姿を現した。

 

「ぎゃぁぁぁはははははは!!!!」

 

恐ろしい笑い声と共に、黒い影……ツルギはコキコキと体をくねらせながら、こちらを一瞥する。

 

「ツルギ……!?」

「委員長……!?」

 

飛び出してきた意外な人物に、お互い動きが止まる。

 

(……相手の動揺を見るに、ツルギの参戦は予定されていない……これも訓練の内か?)

 

「ツルギ委員長……その、今は演習中なんだが……」

 

「えっと、演習内容に何か変更でも……?」

 

お互いに状況を飲み込めず、困惑しつつ尋ねる。

 

「ぉ……わぃ……たぁぁ……」

 

しかしツルギは答えず、ただ呻く。

 

「……?」

「委員長?」

 

聞き返す。

 

「────終ォォォわり゛……ダァァぁぁぁl!!!」

 

問いには答えず、ツルギは体を大きく逸らせ、地の底から鳴り響くような悍ましい声で吼えた。

 

「ッ!!」

「ええっ!?」

 

(……やはりか……!!)

 

その咆哮を聞いた瞬間、私は後方に飛び下がり……再び防火扉に身を隠す。

 

────冷静に考えれば、既に20分以上やり合っている。

それだけの時間があれば……主戦力級の生徒の参戦も当然だ。

 

(ならば、こちらはツルギに勝利することではなく……人質を連れ、離脱するのが勝利条件!!)

 

「マシンガン!! 今すぐ人質を連れて非常口から退避しろ!」

 

[……了解しました! ]

 

「ライフル、お前もだ!」

 

[────]

 

応答がない。……やられたか!!

「ライフルはやられたようだ!警戒しながら行け!!」

 

[……了解……!]

 

"バンッ!!────ダッ!!"

 

マシンガンは扉を蹴り開け、人質人形を抱えて非常階段の方向に向かって駆け出す。

 

「……終わりダぁぁァァァ!!」

 

それを見たツルギは、奇声を上げながら突進してくる。

 

「……させるかッ!!」

 

"ダダダダダダダァァン!!"

 

ショットガンを連射し、ツルギの動きを牽制する。

 

「アァ゛……!?終、ワリァァァぁぁぁぁ!!!」

 

ツルギは叫び、ぐるりと反転し……壁と天井を蹴る。

 

「……飛ん……ッ!?」

 

異常な曲線を描き、ツルギは私へ飛び掛かる。

それを認識した時には……遅すぎた。

 

"ドドォン!!"

 

ツルギは空中でショットガンを二連射。

そのまま反動で垂直に回転し────"バガァァン!!"

  "ガシャァンッッッ!!"

 

「ぐっ……!!」

 

ツルギの踵落としが直撃した盾は歪み──地面へと叩き付けられた。

ひしゃげ、砕けた盾はもはやその本分を為すことは叶わない。

 

……そして、その隙を逃す者は、居ない。

 

「……撃てぇっ!!」

"ダダダダダダダダッッッ!!"

 

ツルギの後方に居た敵部隊からの射撃が始まる。

 

 "バスッ!!" "ドスッッ!"

「……ぐ……っ!!」

 

正面から複数の被弾を受けつつも、防火扉の裏に隠れる。

 

"ジャキンッ!!"

「クゥ……オオオオオォォオォ!!」

 

ツルギは勢い止まらず、両手に携えたショットガンをくるりと一回転させ再び突進してくる。

 

────この状況では、私に勝ち目はない。

しかし……"勝利条件"はこの戦いではない。

 

(……最後の最後まで取っておくつもりだったが……今がその時か……!)

 

"ガシャッ……!!"

障害物として横たえていた防火扉を持ち上げ、盾として構える。

 

「あれを、持ち上げた……!?」

「クゥゥゥウウゥ……戦い……だァァァァ!!!」

 

防火扉を構えた私に、狂気の中に喜色が滲む、混沌とした声色でツルギが叫ぶ。

 

「望むのならば、応えよう……!!」

「……行くぞォッ!!」

 

"────ズンッ!!"

 

ツルギに呼応するように叫び……重く踏み込んで、突進する。

 

(……この通路の狭さでこの突進を回避するのは不可能!! このまま突き当たりで押し潰す!!)

 

「うわああああっっ!!!」

 

ツルギ以外の生徒は叫び声をあげ、無秩序に弾を撃ち込んでくる。

 

……無数の銃弾が防火扉に当たり、衝撃を伝えてくる。

なんとも頼りになる盾だ。より強く踏み込み、加速する。

 

"────ガアンッ!!"「うわっ!!」

"ゴォンッ!" 「うぐっ!!」

 

敵チームの生徒を轢きながら、突き当りの壁へと突き進む。

 

"────バガァァンッ!!!"

「ア゛アァ……!!!?お゛お゛……っっ゛!!」

 

最後に、より強い衝撃と、唸り声が伝わる──ツルギに衝突したのだろう。

 

(……このまま突っ切る!)

ツルギの力か、凄まじい抵抗を感じるが──勢いと重量では、こちらが勝っている!!!

 

"ズガガガガガッッッ!!!" "ギャリギャリギャリギャリ!!"

 

バリケードを巻き込み、破壊音と共に突き進む。

 

「……っらぁぁああああ!!!」

 

"ゴンッッ!!" "ガアンッッ!!"

終局。全てを巻き込み、壁に激突する──その瞬間。

 

"ガギッ!!────ガァァァン!!"

 

「……なぁ……っ!?」

 

凄まじい力で防火扉が跳ね上げられ、その力に屈した私は……仰向けに転倒する。

 

(……壁を支えにして、蹴り返したのか……!?)

 

"ガシャアアアアン!!"

跳ね飛ばされた防火扉は、大きな音を立てて平に伏せた。

 

(まずい……ッ!!)

 

……倒れた敵チームの生徒たちの中から、悍ましい笑い声を上げてツルギが立ち上がる。

 

「ひゃ゛ぁァァはは゛は゛!!……ソォれでェ……終ォわりかァァ……!??!?」

 

ツルギは首を異常な角度に曲げ、ゆっくりとぎこちない動作でこちらに恐ろしい笑みを向ける。

 

(……盾も銃も無い……だが、やるしかないか……!!)

 

銃が無いからなんだ。盾が無いからどうした。

 

……その為に、我々は普段から修練を積んでいるのだ。

諦めるという選択肢は、存在しない。

 

「……まだだッ!」

 

こちらにショットガンを向けるツルギへ突進する。

 

  "────ドォン!!"

 

銃口を頼りに、初弾を回避し────

 

  "────ドォン!!"

 

それを牽制するように向けられた二発目を姿勢低く、滑り込んで回避する。

 

(────いいぞッ!!)

 

ツルギの銃はレバーアクション式だ、二発撃てば必ず隙が生まれる。

仕掛けるには────今しかない!!

 

"ダンッ!!"

 

即座に地面を突き飛ばすようにして起き上がり……ツルギの両手首を掴んで、動きを封じた。

 

「……掴まえたぞ……!」

「……あ゛ァ!?」

 

"ギッ……ギギ……!!"

 

……ぎちぎちと音を立てて、お互いの膂力がぶつかり合う。

全力で抑え込み、至近距離で睨みあう、が……!!

 

「……!!」

「グお゛ォ゛……!!」

 

(……力負けしている……!!)

 

最強の名は伊達ではなく……刻一刻と、限界に向かって押しやられている。

 

(……このままでは組み伏せられて終わりだ。どこかで有利な体勢を取らなければ……!)

 

そう考えて一瞬。深く息を吸い込む。

 

「────ふッ!!」

 

「オ゛オ゛ッ!?」

 

膝の力を抜き、私を抑え込もうとするツルギを引き寄せる。

 

(……貰ったッ!!)

 

"────ガアンッ!!"

全脚力を使って頭を跳ね上げ、顎を打ち抜くような渾身の頭突きを放つ。

 

────が、ツルギは微動だにしなかった。

 

「な────ッ!?」

 

「ヒ゛ャァァァァオ゛ゥ!!!」

   "ゴガァンッ!!"

 

「ぐぁ……っ……!!」

 

私を上から押さえつけ、逆に有利な姿勢となったツルギは、意趣返しとばかりに私に頭突きを見舞う。

 

自分がやるのとは数段違った威力に脳が揺れ、力が緩む。

────その隙を逃すツルギでは、なかった。

 

"ザアッ!!"

 

ツルギはその一瞬を突いて拘束を抜け、足払う。

そうして体勢を崩した私の翼の根元を掴み、頭より高く持ち上げ────。

 

「……しま……ッ」

「キ゛ェェァァ゛ッッ!!!」

 

   "バガァァァァンッッ!!"

 

────地面に叩き付けた。

 

「ぉ゛ご……ッ!!」

 

背中から伝わる破滅的な衝撃に身体が麻痺し……呼吸が止まる。

そして、ツルギは私の翼を掴んだままぐるりぐるりと回転し……その遠心力のままわ壁に投げ付けた。

 

   "ダアンッッ!!"

 

「う゛……っ……」

 

頭からコンクリートに叩き付けられ、身体が割れるような衝撃を浴び……私は床に転がった。

 

(ぐ────動けない……!)

 

辛うじて開いた左目から、ツルギがゆっくりとこちらに歩いてくるのが見える。

私を見下ろすように立ったツルギは、ゆっくりとしゃがんで……"ぺち"と優しく私の額に赤いシールを張った。

 

(…………っ)

 

────私の負けだ。

 

マシンガンの向かった方向へ歩いていくツルギを最後に、私の意識は闇に消えた。

 

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