昼:ミレニアム/特異現象捜査部
設備と資材をリストアップしている内に、気付けばあっという間に昼前になっていた。
そろそろか、と思っていた頃に丁度ヒマリからのチャット通知が鳴り、スマホを確認する。
"エンジニア部の方たちがいらっしゃいました"
"貴方の部屋で待機してもらっていますので、なるべく速く行ってあげてください"
……ウタハ達が到着したようだ。
"わかった、すぐに向かう"と返信して、私はエレベーターに乗り込んだ。
自分の部屋の扉前で、立ち止まる。
(……さて、どう切り出したものか……)
"ウィン"
少しの逡巡の間にヒマリが気を回したのか、ひとりでに扉が開いた。
「……ルイさんっ!?」
コトリの驚愕の声が響き、思考は打ち払われる。
……余計な考えはやめだ、素直に謝ろう。
「……久しぶりだな、皆」
「まず最初に……すまなかった」
頭を深く下げる。
「……君たちと共に作った装備を数々の悪事に使用した事、心より申し訳なく思っている」
「いかなる誹りも受け入れよう。だがその前に、少しだけでいい、話を聞いてはくれないだろうか」
頭を下げたまま、返答を待つ。
「……顔を上げて」
ウタハの声を聴いてゆっくりと私が顔を上げると、エンジニア部の皆の表情は怒りではなく、悲哀に満ちていた。
「その姿を見るに、私達が作るのは……君の義手なんだね」
沈痛な面持ちで私の腕を見つめ、ウタハは言った。
「……そうだ」
ウタハ以外の二人は絶句し、目を伏せる。
「……事情があるのなら、聞かせて欲しいな」
「わかった……しかしおこがましい話だが、一つだけ頼みがある」
「私の目的を知る者は殆ど居ない。そして、この情報は私の致命的な弱点になる。」
「それを君たちに話すのは……私からの、最上級の誠意と、信頼だと思ってほしい」
「……外部には決して、漏らさないでくれ」
そう告げると、ウタハ達はお互いの顔を見合わせ、頷く。
「……約束するよ、聞かせて欲しい」
「ありがとう。では、話そう────」
────私の計画、こうなった経緯は全て話した。
「…………なるほど、そういう事だったんだね」
「……壮絶だね」
「うう、考えはわかりましたが……」
エンジニア部の三人は納得したような、していないような複雑な表情で返事をした。
「うん……腕を失った経緯は、わかったよ」
「ルイ、君の義手ならば、喜んで協力する……と言ってあげたいんだけどね」
「……私たちが義手を作ったら、また君は無理をするんだろう?……正直、気が乗らないよ」
ウタハはそう言って、小さく首を振った。
「……すまない、だがこれ以上無理をしないために、義手が必要なんだ……頼む」
「……身勝手な願いなのはわかっている、それでも……私の友人のため、キヴォトスのために、協力してほしい」
再び頭を下げる。
「……ウタハ先輩、私は協力してあげたい」
ヒビキがそう呟いた。
「……私も、手伝ってあげたいです」
コトリが続く。
「……はあ、わかったよ」
「皆にこう言われては……仕方ないね」
「────ルイ、君の義手を作るよ」
ウタハはそう呟いて、私の右手を取った。
「マイスターとして、素晴らしい物を作ると約束しよう」
「……ありがとう」
握られた手に力を込め、固い握手を交わす。
「……忘れないでくれ、私達はキヴォトスのためなんて大層な理由じゃなく、友人として、助けを求めている君のために作ると決めたんだ」
「……だから……君を助けると、信じると決めた人たちを、裏切らないようにね」
ウタハは私の目をしっかりと見つめ、そう言った。
「ああ、わかっている」
そう返事をすると、彼女は深く頷き、手を離した。
「なら早速、始めようか」
「ありがとう……設備と資材はヒマリが用意してくれている」
「作業場のあるフロアに案内するから着いてきてくれ」
「わかった、じゃあ行こうか」
私たちは部屋を離れ、作業場のある4階へと向かった。