11:00:トリニティ自治区/ルイのセーフハウス
「────ん……」
目覚める。
策や、私は迫撃砲やドローンを始めとする様々な兵器を各地に配置し……トリニティ校内への攻撃体制を整えた。
睡眠不足を影響させる訳にはいかないため、早朝に戻ってきてすぐ仮眠を取ったのだ。
────時計を見ると、時刻は起床予定ちょうど。
すぐに装備を整え、正午前に現着、正午よりの作戦開始を予定している。
「……ん……あぁ……!」
軽く伸びをしてから着衣を整え、諸々の確認を始めた。
「……おはよう、セイア」
「ああ、起きたんだね……おはよう」
モニターの前に座り、ヘッドセットを着けてヒマリと何やら会議をしていた様子のセイアに軽く手を振り、挨拶する。
ここからトリニティ本校までは10分もかからない。
用意に多少時間をかけても問題ないだろう。
「……通信テストだ、聞こえるか?」
装備の点検をしつつ、セイアとヒマリに通信を送る。
"聞こえるよ"
"おはようございます、聞こえていますよ"
「おはよう、ヒマリ……よし、問題なさそうだ。念のため、現地付近に到着したら再度テストする」
"ええ、わかりました"
「……それで、トリニティの現状はどうなっている?」
セイアが再び行方不明になったのだ、騒ぎになっている事は想像に難くない。
"百合園セイアが行方不明になったと……当然ながら、かなりの騒ぎになっています"
"校内フォーラムや通信内容によると、殆どの生徒が貴方の仕業を疑っています。"
「そうか、好都合だ……」
"捜索のため、剣先ツルギと羽川ハスミ、その他複数、正義実現委員会の捜索部隊が編成され、郊外エリアまで出張っています"
"おかげで、校内の守りは比較的手薄と言えるでしょう。正義実現委員会の主力生徒の不在を突けるのであれば、それに越した事はありません"
「そうだな……ミカは校内に居るのか?」
"ええ、本校内の……セイアさん"
セイアに説明して貰った方が理解しやすいと思ったのか、ヒマリはセイアに話を振った。
"ああ、ここはティーパーティのテラスがある場所だ、推察するに……ナギサと話しているのだろう。つまり、ナギサもそこに居る、という事になるね……"
"……この状況だ、ナギサもいよいよ限界だろう"
"……私が言うのはおかしい話だが……早く解放してやってくれ"
「……ああ」
"なんにせよ、状況は想定よりも良い。なるべく早く終わらせるべきだね……"
"同感ですね、今回は戦闘が目的ではありませんから"
「そうだな……ちょうど点検も終わった事だ、用意が完了次第すぐに発つ」
そう結論付け、私達は準備を急ぐのであった。
11:45:トリニティ本校/外縁
ヘッドセットを操作し、通信を点ける。
「……外縁部に到着した、応答してくれ」
"……聞こえている、問題ないよ。"
"こちらも、問題ありません。"
二人は明瞭に返事を返す。
通信に問題はないようだ。
「よし、15分後、正午の鐘と共に突入する。何か異常があったら報告してくれ」
"わかった。それと、君の移動中に報告しておきたい事が一つ増えた。"
"スクエア前、南ゲートにデモ隊が集まっている。目測でざっと5,60は居る"
"それを制御するためだろう、仲正イチカ率いる正義実現委員会の部隊がそこに向かったようだ。ここは君の進行路と被る……警戒してくれ"
大方、自派閥を拡張したい連中が"魔王に裁きを" "魔王を庇うティーパーティーを許すな"……とでも叫んでいるのだろう。
"衆目を引く"、のが第一フェーズの目標である以上、上手く利用すれば作戦の一助になるかもしれない。
「ふむ……デモ隊か。了解した」
私の返答を聞いて、セイアは続ける。
"そして……マシロが中央図書館の屋上からデモ隊を監視している可能性が高い。座標は図書館だが……そこから暫く動いていない"
「そうか……面倒なことになったな」
溜め息を吐く。
マシロの監視下を行動するのはリスクが高い。
対策を考えなければならないだろう。
"……全くだね。"
"とりあえず、現状はこんなところか……ミカはまだテラスから動いていないし、ハスミとツルギが戻る様子もない……ミネは……今はレッドウィンターに居るようだ。恐らく、君が居ないか探しに行っているんだろう"
「本校の襲撃は完全に想定外のようだな……好都合だ。」
運がいい、想定以上の好機だ。
「ああそうだ……ヒマリ、迫撃砲の着弾予測地点に問題はないか?」
"ええ、ミサイルも含め、問題ありませんよ。風速風向は想定内ですし……この私が管制しますので"
ヒマリはなんとも頼もしい返事をくれた。
「わかった、感謝する」
我々は一般の生徒に怪我を負わせるのは本意ではない。
いくつかの基準を設け、重傷者が出ないよう着弾地点は建造物の比較的頑強な部分であったり、路地を狙っている。
噴水を吹き飛ばすために用意をしたミサイルも、局所的な被害を齎すように調整したものだ。
対戦車ミサイルの仕組みを応用したもので、加害範囲は通常の物より大幅に縮小してある。
……それに、ヒマリが付いて管制し、危険だと判断したら発射を止めてくれる。
想定外の事態は、起こらない。
"……そろそろ正午だ、準備はいいかい"
「ああ、問題ない……ヒマリも、作戦通りに頼む」
"ええ、頼りにしてくださいね?"
「勿論だ。」
"ゴォォォォォォォォン……"
正午の鐘が鳴り響く。
"……号令を。"
ヒマリが告げる。
────時は来た。
「……"起動" "発射"。」
"ズドドドドドォン!!!"
私が小さく呟くと同時に、背後で無数の砲声が鳴り響く。
"ヴゥゥゥゥゥゥゥゥゥン……!!"
事前に設置した数十機のドローンが飛び立ち、対地監視網を構成し始める。
"ヒュウ────"
そして────無数の黒影が現れる。
恐怖を誘う笛の音と共に、破壊の雨が降り注いだ。
"ドガァン!!" "ズドォン" "バゴォン!!"
"ズゥゥゥゥン!!!!"
"きゃああああああッッッ!!" "くっ崩れッ……!!"
地鳴りと爆風、叫び声と悲鳴がトリニティを包み込んでいく。
"対地監視網は完成した。進行してくれ"
"全迫撃砲の発射及び着弾が確認できました。これよりバックドアの監視及びトリニティ側の通信傍受を開始します"
"何かあれば連絡いたしますので、安心して進んでください"
────────突入態勢は整った。
「了解した。では……行くぞ!」
"ダンッ!!────バシュッ!!バシュッ!!"
私は外縁部より飛び立ち、トリニティ本校へと侵攻を始めた。