"黙示録"を回避しよう!   作:rezi

73 / 172
侵攻

 

12:05:トリニティ南門/上空

 

 

"バシュッ!!" "バシュッ!!"

 

"ギュルルルル────バシュッ!!"

 

────トリニティ・スクエアへ向け、侵攻する。

 

眼下、避難せんと走る生徒たちは頭上を駆ける私に目もくれていない。

 

(これが強襲作戦なら、好都合なんだが……)

 

残念ながら、今回の目的は違う。

 

「……砲撃が裏目に出た。誰も私に気が付いていない」

 

「不服だが暫く地上を走行し、注目を誘う」

「危険があれば、再度ジップラインでの高速機動に戻る。」

 

「脅威に動きがあれば報告してくれ」

 

"了解した。気をつけてくれよ"

 

"……少し早いですが、情報を流しましょうか?"

 

報告し、群衆の隙間を狙ってジップラインを撃ち込む。

 

"……バシュッ!ギュウウウウ────!!"

 

「……この段階ではまだ早い。もう少し妨害を続けてく……れッ!」

 

"ギュルル──ダアンッ!!──ズザアアッッ!!"

 

滑り込むように着地し、衝撃を殺す。

 

"了解いたしました……くれぐれも、お気をつけて"

 

「ああ……」

 

小さく返事をして、周囲を見回す。

 

勢いよく着地した私に、周囲で混乱していた生徒たちが立ち止まり、一斉に目を向けていた。

 

(……今から私は"魔王"だ、振る舞いは考えなければ……)

 

すぅ、と息を吸い込み……意識を、振る舞いを正す。

 

「……ごきげんよう、学輩諸君……」

 

周囲で硬直する生徒たちに大仰なお辞儀をして、背負ったショットガンを構える。

 

「……恐怖しろ、愚か者共!」

 

"ダアンッ!" "ダアンッ!!" "ダアンッ!!"

 

装填されたゴム弾により逃げる背を撃たれ、一人また一人と倒れていく。

 

「ひ、い……っ!!」

「にっ、逃げなきゃ……っ」

 

私に目を向けていた生徒は一様にパニックに陥り、逃げ惑う。

 

「……こんなものか」

 

"カシャンッ────カラン"

 

ゴム弾の入ったマガジンを捨て、排莢する。

 

「……進行を再開する。」

 

"ダッ!!"

 

蜘蛛の子を散らすように逃げていく生徒たちを横目に、私は走り出した。

 

"銃声を聞いたマシロが図書館の屋上から移動を始めた、間もなく君を射程に収めるだろう"

 

「……予想通りだ。マシロの姿は確認できているな?」

 

"ああ"

 

「彼女が狙撃態勢に入ったら再度連絡してくれ。良い機会だ……ここで撃破する」

 

"わかった"

 

セイアの返事を聞いて、周囲の状況を確認する。

 

マシロやハスミ等、狙撃手に対抗する手段はいくつか用意したが……マシロ相手に爆撃は行いたくない。

あれは切り札だ、温存しておくべきだろう。

 

ならば、狙うは……。

再装填を完了したショットガンを背負いなおす。

 

"ダンッ!!────バシュッ!!"

 

地面を強く蹴って飛び上がり、目の前の建造物にジップラインを打ち込む。

 

「再び高速機動に入った。マシロの位置を報告し続けてくれ」

 

風を切り、飛行しつつ……通信の声に耳を傾ける。

 

"……了解。マシロは匍匐して銃を固定中。君は既に視認されているはずだ"

 

"位置は中央図書館屋上、南南東の外縁部だ。その高度なら見えるだろう"

 

南南東────いた。

 

「……こちらも視認した、引き続き報告を頼む」

 

"バシュッ!" "バシュッ!!"

 

マシロの位置を横目で確認しつつ……相手が狙いやすいよう、あえて視界の中心を飛ぶ。

 

(……マシロの銃は取り回しがすこぶる悪い、撃ってすぐに位置変更は出来ないはずだ)

 

私がマシロの位置を把握している事には気付いていないはず。

(反撃のチャンスは一度きりだ。集中を研がねば────)

 

"────来るぞ!"

「ッ!」

"ババシュッ!!" "ギュルルルッッ!!"

"────ズドォォン!!!!"

 

叫ぶようなセイアの報告と同時に、即座に反対方向に鉄鉤を打ち込み姿勢を反転、急停止する。

 

"ギュン────!!"

 

大質量の弾頭が、風切音を上げて私の目の前を飛んでいく──。

 

(────今だ)

背負ったケースのグリップを握り、展開する。

 

"ガチャガチャッ、カチャンッ!!"

即座に長方形のケースからバレルとストックが展開され、ボルトアクションライフルへと変形した。

 

────構える。

 

「……風向風速、距離!」

"南南西から北東、2.7、320!"

 

私の叫ぶような指示に、セイアは即座に求める答えを返す。

 

「……!」

"ドドシュッ!! ガチィン!!"

ジップラインと翼を使って逆方向に制動し、ほんの一瞬だけ、空中での静止時間を生み出す。

 

「──すぅ……」

 

息を止め、スコープの先で目を見開いているマシロを狙う。

その頭へ照準を合わせ……引き金を────引く。

 

"────ズダアンッ!!"

 

"バシュッ!!ギュルルルルル……ズザアアッ!!"

 

射撃の隙を突かれないよう、反動と落下の勢いを乗せて射線外へ滑り込んだ。

 

「はぁ……はぁ……マシロはどうなった?」

 

息を整えつつ、命中したか尋ねる。

 

"……上空からだと確認しづらいが……いや、気絶している"

 

「……そうか……ふぅ」

 

セイアの報告を受けて、大きく安堵の息を吐く。

 

  "カシャン! キィン……"

 

排莢し、狙撃銃を畳んで再び背負いなおす。

 

神経をとがらせすぎたせいで過呼吸気味だ……少し、息を整えるべきか。

 

「……各種装備の再装填が完了次第、再びスクエアへと侵攻する」

 

そう伝え、私は壁に肩を着け……弾倉を交換の交換を進める。

 

"了解した、今のうちに報告しておこう"

 

"イチカはその場から動かず、避難誘導を行っている。"

 

"ミカは変わらず、テラスに居るね"

"サクラコはシスターフッドの……恐らく会議場に居る、まだ動く様子はない。"

 

"君がいま警戒するべきは……イチカ率いる部隊だ。このまま進めば衝突する事になる。"

 

セイアの報告はおおよそ想定通り、問題ないだろう。

 

「了解した、ヒマリ、情報はどうだ?」

 

情報封鎖の状況を尋ねると、ヒマリは明瞭に答える。

 

"……ツルギさん達のように、外部に居る生徒には伝わっていないはずです、トリニティ内の通信網は全て掌握していますから……"

 

"しかし、盗聴している機械が拾った音声によると、校内には"魔王"が現れた事が伝わり始めています。口に戸は立てられませんから、知れ渡るのも時間の問題でしょう"

 

「だろうな……とはいえ、この後すぐにイチカ達と戦う事になるだろう。それが済んだら情報封鎖を解いてくれ」

 

「……その後は予定通り校内放送を乗っ取る……タイミングは私が指示する。待機しておいてくれ」

 

"わかりました、それに加えて引き続き、校内のシステム監視を続けます……"

 

「ああ、頼んだ……」

 

"……少しいいか、割り込んですまない"

 

ヒマリとの会話中、唐突にセイアの通信がオンラインになった。

 

"……気のせいかもしれないが、ハスミとツルギが本校に戻ってくるような動きを始めた。……急いだほうがいいかもしれない"

 

セイアは焦ったような様子で報告する。

 

「……わかった、ちょうど再装填が終わったところだ。これより進行を再開する」

 

"了解した、気を付けてくれよ"

 

「ああ」

 

(対多数戦か……気は乗らないが、遠距離から削る時間はなさそうだ)

 

スクエア南門はすぐそこだ。

数百メートル先には、避難誘導を行っているイチカ部隊が見える。

 

……腰のポーチから擲弾ケースを取り出し、上着を捲ってカタパルトに装填する。

 

狙うは、避難誘導中のイチカ率いる部隊。

 

「……これより、イチカ部隊への攻撃を開始する」

 

指先を照星に狙いをつけ────放つ。

 

"ガチッ────ギュンッッ!!"

 

擲弾ケースが放たれ、目標へと飛んでいく。

 

"バシュッ!!" "バシュッ!!"

 

飛んでいく擲弾を追いかけるように、飛び出した。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。