浮気中のクズ彼氏と付き合い続けているクラスメイトから、「私を寝取ってよ」と誘われている。   作:水真似

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浮気中のクズ彼氏の相談を受けてたら犯されかける話。



第1話

 

 「私を、寝取ってよ」

 

 篠咲朱音《しのざきあかね》には彼氏がいる。中学から付き合っていると噂では聞いたことがあるが、実際どうなのかはわからない。

 

 ただ一つ確かなことがあるとしたら、篠咲の彼氏は浮気をしている。そして篠咲は、その報復のために俺に浮気をしないかと誘ってきている事だ。

 

「ちょっと待って、」

 ベッドに押し倒される形で、篠咲が俺の体に覆いかぶさろうとしている。まっすぐ落ちた黒髪が頬に触れたところで、反射的に彼女を押し返した。

 

 外は雨で、篠咲は傘を持っていない。

 

「——雨宿りするために家に来ただけで、そんなことするために上げたわけじゃない」

 

 水滴が窓を伝り落ちている。屋根に叩きつける雨音が、心音を隠してくれていた。

 

「でも、さっきなんでもするって言ったじゃん」

「限度ってものがあるだろ」

「私にはわからないな。約束は約束だよ」

 

 見た目に反して思ったより強引なようだった。

 

「そんなことしたら、あの伊吹と同じになるんだぞ」

「わかってるよ。でも、これが太一にできる唯一の復讐だから」

 

 篠咲は覚悟を決めているようだった。その表情は、およそ行為に及ぶ前の物とは思えない程こわばっている。

 

「知ってる? いじめっ子には、同じ方法でいじめてあげるのが一番いいの」

「だからって俺と浮気するって? 頼むから一回考え直してくれ」

「何回も考えた結果がこれだよ。すぐ終わるから、目瞑ってて」

 

 力は俺の方がある。本当ならすぐにでも力づくで押し除けて、冷静に話し合うべきなのはわかっている。

 

 しかし、彼女の相談に乗ったのは俺だ。親友の彼女からの相談事なんて受けないわけにいかないと思い、二人で喫茶店に行った。

 そこで聞かされた話は、伊吹がとんでもない浮気性で、常に自分以外の誰かと付き合っているという話だった。

 

 今回の一回だけなら、もしかしたら許せたかもしれないけれど、もうかれこれ何年間も同じようなことを繰り返しているといった。

 そんな篠咲があまりにも不憫だったから、「俺だったらなんでもするからいつでも相談してくれ」と励ました。

 

 その結果がこれだ。

 

 自分が始めてしまった話なだけに、強引なことはしたくなかった。

 

「待ってくれ、本当に」

「無理、もう決めたから」

 

 篠咲がゆっくりと近づいてくる。シーツを肩辺りまで被り、その体は雨のせいで暗い部屋ではよく見えない。

 けれど、体温を感じる距離に、篠咲がいることはわかる。

 

 彼女の手が俺の顔に触れる。俺は、決死の思いで叫んだ。

 

「——俺を伊吹に篠咲がいるって知りながら付き合っている浮気相手の女と同じ立場にしないでくれ!」

 

 すると篠咲は、先ほどまでの剣呑な雰囲気が嘘みたいに、動きをぴたりと止めて黙った。

 

「……なぁ、頼むからさ、一回考え直してくれないか。俺は、伊吹はクズだと思うけど、それでも友達なんだよ。アイツに後ろめたいことはしたくない」

「……桐島くんは、私じゃなくて太一を選ぶんだ。太一が私を選んでくれなかったみたいに、太一と同じ、」

「いや、そんなつもりじゃ」

 

 暗くてわからなかったが、彼女の胸元には小さな青痣があった。

 俺にこうしてしていることを、伊吹にしないわけがない。簡単な事だった。

 

「ううん、いいの。わかってたから。私は太一にとっても、桐島君にとっても二番目なんだ」

「……ちが」

 

 いや、違くない。俺の行動は確かに、篠咲を拒絶している。

 

「なにも違くない! 太一が桐島君を友達だって紹介してくれた時、桐島君ほど頼りになりそうな人はいないって思った。だから君に相談したのに、結局君も、私を拒絶するんだ」

 

 篠咲が俯く。表情はわからないが、声からして、泣いているのだろうか。

 

「違う。俺が拒絶したのは篠咲じゃない。伊吹だよ」

「……どういうこと?」

 

 俯いたままの篠咲がいう。

 

「俺が篠咲を拒絶したのは、伊吹と同じになりたくないからだ」

 

 伊吹は浮気をしている。篠咲の話が正しいのなら、その相手だって、伊吹に篠咲がいることを承知で付き合うことを決めている。

 

 俺は、そんな伊吹もその相手もクズだと思っている。

 だから、篠咲に伊吹がいる以上は、同じ行動をしたくない。

 

 篠咲が少し悩んでから言った。

 

「ならさ、私の復讐、手伝ってよ」

 

 顔を上げた篠咲は泣いていた。

 

「……ああ、もちろん」

 

 元はと言えば、俺が始めた話だ。

 俺が篠咲になんでもするといったからこうなったのは事実だし、何より、俺も伊吹には痛い目を見てほしい。

 

「よかった」

 

 篠咲が安堵したように、俺の上にへたりこむ。

 本当ならこれも拒絶するべきなのだろうが、ここまで来てもう何も言う気にならなかった。

 

「ねえ桐島君」

 

 そのままの姿勢で話し始める。彼女の体温はまるで子供のようで、カイロを抱いているみたいだった。

 

「ううん、なんでもない。好きだよ」

 

 唐突すぎる告白に、俺は何も言えなかった。

 

 

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