アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第10話

 長く鋭い鋏を持つ尾がシロコへと振るわれる。

 

「ん」

 

 転がる様に回避、音を当てて通りすぎるそれに冷や汗一つ。鋏の鋭さ以上に圧倒的質量を持つ尾の薙ぎ払いは、当たれば重傷確定だ。

 

 即座に体勢を整え銃弾を放つ。が、やはり大半が分厚い甲殻に阻まれ弾かれる。どうしようかと考えながら駆けていると。

 

 

 ズガゴンッ! と、シロコに重い音が届く。

 

 

「ギィギィイガギィイイ!」

 

 悶えるゲネル・セルタスに纏わり付くように動きながら尋常ではない音と衝撃を撒き散らすホシノ。武器自体は一般的な狩猟用に改造された銃器でしかない筈なのだがと思いながら、同時にそこらの生徒なら一発で病院送りになる攻撃を受けて甲殻がひしゃげるだけに止まっているゲネル・セルタスの頑強さに少し呆れた。

 

 というかこんなゲネル・セルタスをここまで傷だらけにした密漁者はどれだけの火器を使用したのか気になってしょうがない。主に自然への影響的な意味で。

 

「シロコちゃん!」

「! ん! こっち!」

 

 以心伝心。多くの狩猟を共にしてきたホシノの声に答えるようにシロコは纏わり付くホシノを踏み潰そうと地団駄をするゲネル・セルタスへ存在を主張するに声を響かせながら顔面へ向かって銃弾を放つ。

 

 放った弾丸はゲネル・セルタスの強固な前足に弾かれ、しかし顔面を狙われた事を理解したのか酷く苛立ち注意をシロコへと向け、一呼吸入れるために足元から離れたホシノなぞ眼中にないと尻尾を勢い良く振り回しながら突撃する。

 

 集中。ゲネル・セルタスは巨体ゆえ一歩の大きさから見た目以上に速いが、見た目相応に鈍重である。だから落ち着いて横に跳べばそのままシロコの脇を通りすぎ、避けられた事に気が付いたゲネル・セルタスが足を止めるもごりごりと地面を削りながら進み止まりきれず壁に激突。地面を大きく揺るがし崩れた岩が降り注ぐ。

 

 地震が起きたかの様な揺れに足を取られるシロコ。そこに、ゲネル・セルタスが煩わしそうに尻尾で弾き跳ばした岩のうちの一つがシロコに向かって飛来する。

 

「よいしょ」

 

 高速で飛ぶ人の頭程の大きさの岩。それを避けられないとシロコが判断するよりも前に、ホシノが前に滑り込み背負っていた盾を取りだし岩を弾く。さっと大丈夫かと視線を走らせたホシノに頷いて返す。

 

 

 そして邪魔な岩をどかしただけでそれがシロコへの攻撃になっていたことなぞ知らぬゲネル・セルタスは怒りを露にする様に大きく尻尾を振り回しながら異臭を、フェロモンを撒き散らしながらさらに怒りを募らせる。

 

 それは眼前の二人に対してであり、それ以上に幾ら呼ぼうとも訪れぬ雄への、アルセルタスへの怒りであった。

 

 荒れ狂いながら尻尾を地面に突き刺すゲネル・セルタスは知らない。現在、アビドス自然公園で放たれたフェロモンが届く範囲にアルセルタスが存在しない事を。先程体力回復の為に喰らったアルセルタスが範囲内に居た最後の個体である事など知り得ないゲネル・セルタスはただ怒り暴れるのみ。

 

 だから、向かってくるそれに気が付かなかった。

 

 上から投げ込まれたそれはドラム缶だった。先程ゲネル・セルタスの上に落ちた岩よりも更に速く、ゲネル・セルタスに向かって飛ぶそれは、的確に顔面へと向かい叩きつけられた。

 

「おらぁどんなもんじゃい! アビドスの砂をたっぷり積めたドラム缶の味はぁ!」

「キヴォトスドラム缶投げ大会準優勝者の美技も特と味わいなさいな!」

「おー!…おー? え、なにその大会?」

 

 身を乗りだし叫ぶ新生態系観察部の生徒たち。自分達にも出来ることはと思っての行動、ドラム缶が直撃したゲネル・セルタスは。

 

 体勢を崩した。

 

 倒したわけではない、だた岩が直撃した衝撃が抜けきらぬ間に顔面に叩きつけられた中身たっぷりのドラム缶によって。

 

 

 

 ゲネル・セルタスは、めまいを引き起こしていた!

 

 

 

 立ち上がろうともがくもうまく力が入らず地面を掻くゲネル・セルタス。明確な隙、自分の持つ銃では有効打は狙えないと手榴弾を取り出すシロコの横で、ホシノは力強く盾を地面に突き立て裏に取り付けられた銃を取り出す。

 

 弾を込め、構え、集中、狙い良し、呼吸一つ、そして引き金を引く。

 

 

 銃口から閃光。

 

 

 真っ直ぐ突き進み倒れもがくゲネル・セルタスに直撃したその一撃は、間違いなく。

 

「び、ビームだぁあああああ!?」

「おー、すごーい」

「嘘だろう人ってビーム撃てるもんなのか!?」

 

「ふんぐぅ!」

 

 後輩たちの声を聞きながら反動によって数メートルほど後方へ吹き飛ぶ。ガリガリと地面を削りながらなんとか停止し、焼け付く様な匂いと音を響かせる銃を軽く振りながら視線をゲネル・セルタスへと向ける。

 

 目標は瀕死、しかしまだ動ける。ホシノの一撃によって体の一部が抉れながらも、めまいが治まると共に立ち上がろうとして。

 

「ん」

 

 遅れるようにシロコの投げた手榴弾がコンと甲殻にぶつかり、直後に炸裂。先程のホシノの一撃に比べれば小さな衝撃は、しかし確かな最後の一押しとなり。

 

 ゲネル・セルタスは崩れ落ちた。

 

 1秒、2秒と時間を起きもう立ち上がらないと確認してからふっと息を吐いて。

 

「ん!」

 

 シロコは力強くサムズアップしてみせた。

 

 

 ゲネル・セルタス…狩猟成功。




・小鳥遊式竜撃砲

 とある狩りを経て決め手を求めた小鳥遊ホシノが友人と共にとある資料を元に開発した特殊弾を用いた一撃。

 その威力は極めて高い。が、その威力相応の反動があり小鳥遊ホシノでさえ気を抜くと遥か後方へと吹き飛んでいってしまう程である。また発生する熱量もすさまじいの一言につき、一発放った銃は修理しなければ使用不可。二発目を撃とうものならば銃がそのまま爆弾と化す程である。そのため現状、ホシノはそれ専用の銃を用意している。なお、素材の管理をしている生徒からもう少し使用頻度を抑えてくれと懇願されているとか。

 制作者曰く、現在加工出来る素材ではどうあっても一撃が限界なので更なる技術の進歩が必要だ。とのこと。


 ちなみに放った際になんかビームっぽくなるのだが、理由は不明である。
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