アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第102話

 それは龍墓調査拠点での事。

 

「よい…しょと」

 

 拠点に設けられた倉庫の一角で荷物の整理をしているのはトリニティの制服を身に纏う少女。狩猟愛好会に所属し、なんかもう色々とあって図らずもこの調査拠点に辿り着いた彼女は現在、調査隊のお手伝い中である。以前、百鬼夜行出身の生徒が言っていた一宿一飯の恩を返すと言う奴だ。

 

「ふぅ、取り敢えずこんな物ですわね」

「お疲れ様ー」

「あら?」

 

 時計を確認しそろそろ休憩をと思った所で少女に声。視線を声のした倉庫の入り口の方へと向ければ友人が2本のラムネ片手にミレニアム生らしい白衣を軽く揺らしながらゆるく手を振っていた。

 

「貰ったんだけど飲む?」

「えぇ、頂きますわ」

 

 言いながら差し出されたラムネを受け取り、流石に倉庫内で飲む訳にはいかないと外に出る。

 

「むぅ、このどう頑張っても溢れてしまうのはどうにか出来ませんの?」

「出来ないねー。まぁこれも醍醐味の一つってことで楽しんだら?」

 

 と、白衣が濡れていてもお構いなしに笑いながらラムネを飲む姿を横目にそう言うものかと一口。甘くてシュワシュワする。感想としてはそんなもので余りに飲み成れている類いではないが…まぁ、嫌いではない。

 

「あぁそうそう。さっき聞いたことなんだけどさ。何事もなければ明後日辺りにはアビドスに向けて砂上船が出せそうだってよ」

「あら、それは良かったですわ」

 

 そう呟きながら何気無く視線を調査拠点の外へと向ける。そうして見えるのは荒れ狂う嵐。そう、現在龍墓近辺はジエン・モーランに依って引き起こされる砂嵐に覆われているのだ。一応、拠点に突っ込んでくる様な事は無いが距離が近いのか嵐がかなり激しく安全に砂上船を出せそうにない状況なのだ。因みにこの龍墓近辺の砂原はジエン・モーラン達の回游ルートなのかそれなりの頻度で砂嵐と共にやって来ては辺りを砂に呑み込んで去っていく、それが砂漠奥地である龍墓と言う環境だ。

 

 そんな場所で龍墓調査隊は大体気合いと好奇心に身を任せて調査を進めていた。少女としてはもう凄いとしか良い様が無かった…そう、色んな意味で。

 

「しかし、行き来が安定しないと言うのは大変ですわね」

「大変なんてレベルじゃないけど、まぁそうだね。あ、でも私達やホシノさんをアビドスまで送ったように地下を利用する案が出てるらしいから、それが上手く行けば物資は兎も角人の行き来はかなり安定して出きる様になるんじゃない?」

「地下をって…流石に無理では? あれが居ますのよ?」

「あれ…あぁ、あの魚みたいな奴か。そう言えばあれ便利屋が討伐したんだってよ」

「あら、そうでしたか…あれを!?」

 

 その言葉に心底驚く少女が思い出すのは便利屋と共に地下水脈をさ迷っていた際に幾度も襲ってきた例の魚の事。

 

 暗かった上に逃げるのに必死だった為に詳細には見れてはないが、パッと見ただけでもその身体は直前に襲ってきていたディアブロスにも負けぬ巨体であり、その上で敏捷性は驚く程の物。更には口から、友人曰く液体を圧縮して放っている所謂ウォーターカッターの様な物まで放ってくるとか言う、とんでもない怪物。

 

 それを討伐してしまうとは、流石はアビドス最良の狩猟チームである便利屋だと感嘆する。

 

「なんと言いましょうか…流石ですわね」

「だねぇ。いやほんと、どうやって討伐したんだろ」

 

 なんて、ラムネの瓶を揺らしながらブツブツと呟きながら考え込む友人を横目に少女もまた考える。もしも自分たち狩猟愛好会のメンバーだけだったならばと。そう考えてみたが、どうあがいても今の自分たちでは万全な対応だったとしても逃げるのも命懸けだっただろうという結論に至り…ちょっと落ち込んだ。

 

「はぁ…なんと言いましょうか。自身の力不足が嫌になりますわね」

「んぁ? どしたの急に」

「言葉の通りですわよ。もっと自分が強ければと思っただけですわ」

「なら新しい武器でも作って貰う? あと不知火さんみたいに鎧着込むとか」

「…それもありかもしれませんわね」

 

 地道に鍛えていくのは当然として色んな事を試すべきかと思う。まぁ新しい武器も鎧を着てみるのも一苦労所では済まなさそうだが、それ相応の価値があるだろう。と、そこまで考えた所で下手すれば死んでいたのにそこまでして狩りを続けようとしている自分に、少しばかり苦笑を浮かべた。

 

「まぁ、試すにしてもアビドスに帰還してからの事ですわね」

「だねぇ。まぁ帰ってからも色々とあるだろうから直ぐにとは行かないだろうけど。確かにそろそろテストあるんでしょ? 少なくともそれ終わってからだね」

「えぇ、ですわね」

 

 言って、何気無くラムネを一口。カランとビー玉の転がる音が響き。そして思い切り頭を抱えた。

 

「うわ、ビックリした。どうしたの急に」

「テスト、そうテストですわ。完全に忘れていましたわ。どうしましょう全然勉強出来ていませんわよ!?」

「あぁそう言う。確かに結構休んじゃったからね」

「くっ!…こうなればアビドスに帰還し次第、ゲストハウスでひたすら勉強する他ありませんわね」

「いやそこは普通にトリニティに帰ってやりなよ」

「それでは駄目なのですわ」

「何故?」

 

 

「トリニティの自室で勉強しても何故か部屋が綺麗に成るだけだからですわ」

「あ、そういうタイプ?」

 

 

 なお、言った通りアビドスに帰還するや否やゲストハウスで猛勉強に励んだ少女は友人の助けもあり、なんとか赤点を回避することが出来た事をここに記す。

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