アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第106話

 大型生物の狩猟。

 

 それはアビドス高校にその実力が認められた者だけが行う事を許されている狩り。危険度は今まで彼女たち、RABBIT小隊が経験してきた小型生物や鉱石に植物といった素材の採集依頼とは比べる間でもなく高い。更に言えば今回の狩猟目標は厄介の一言に尽きる。

 

 その大型生物の名は『ドスゲネポス』。

 

 以前のディアブロスの一件時に、アビドス市街に入り込んできて彼女たちと相対した『ゲネポス』達の親玉とも言うべき個体。人の身の丈を越える巨体もそうだが、それ以上に強力な麻痺毒をその牙に有しており…何よりも群れで行動している。暴力の化身の様なディアブロスとはまた違った脅威だ。

 

 そんな生物を狩猟目標とした彼女たちは今、自然公園のベースキャンプにて。

 

「んむ…ん、旨いなこれ」

「ですね」

「もぐもぐもぐ…」

 

 食事中であった。

 

 現在時刻が丁度お昼時なのでおかしな事ではない。因みに本日の昼食はかいざー牧場産アプケロスの塩漬け肉を焼いてパンに挟んだ物と乾燥野菜のスープである。とても美味しい。

 

 まぁそれはそれとして。

 

「んぐ…はふぅ、さて」

 

 と、一息吐きながらミヤコはテーブルに置いてあるタブレットを弄り映し出すのは自然公園の地図と、情報だった。

 

 アビドス高校から受け取っていた現状確認されている大型生物の情報に大雑把な縄張りの分布予測。そしてそれらに変化、あるいはズレと言えるものが存在しないか。そして致命的な何かが紛れ込んでいないかを彼女達が1日掛けて観察し収集した情報がしっかりとタブレット上の地図に書き込まれていた。

 

 それを眺めながらスープを飲み一言。さてどうしましょうか。

 

「取り敢えず、狩りを行う場所を選ばないとですかね」

「あぁそうだな。下手な場所だとあれが無駄になるからな」

 

 そのサキの言葉に頷きながらチラリと視線を動かし見たのは綺麗に整理され何時でも利用出来る状態にある狩猟用具、とそれらから少し離れた位置に置かれている四つのドラム缶。

 

 そう…それは一部生徒が何故か異様に好んでいるアビドス産の火薬がたっぷり詰まったドラム缶爆弾である。

 

 パッと見は割りとよく見られる唯のドラム缶であるが、これが炸裂すれば人の命を容易く奪えると言う…酷く、恐ろしい代物だ。残念それが直撃しても酷く負傷でもしていない限りは耐えてしまうらしいのがアビドス砂漠の大型生物と言う存在。色々とおかしいが本当に生き物なのだろうか?

 

 とは言え、全く効かない訳ではなく確かな効力が確認されているのだ。なので、彼女たちが考えるべきなのはこれを如何に確実に且つ、出来れば安全に直撃させるにはどうするのか、だ。

 

「確実に、と言うことなら巣の中に仕掛けられれば間違いないが…流石にな」

「そう、ですね。巣へ侵入する危険度もそうですが、そこまであのドラム缶爆弾を運搬するのも容易ではありませんからね」

「凄い簡単に爆発するからな、あれ」

 

 常識的に考えると異常と言う他無いその火力の代償なのだろうか。どうにも刺激に弱すぎるそれをどうしたものかと彼女たちは頭を悩ませる。

 

 因みにだが、以前狩りの先輩方に助言を貰いに行った際に聞いた事だが。

 

 なんでも『不知火カヤ』防衛室長と一緒に狩りに出ると彼女がドヤ顔を浮かべながら勝手に突っ込んで行って暫くするとギャーギャー騒ぎながら目標を自分達の所まで引き連れながら逃げ帰ってくるので不意打ちやら爆弾等のトラップを当てるのが非常に楽なのだとか。

 

 あの時はなんともらしいなとしか思っていなかったが、ちょっと便利すぎるのでは? と、今更思い始めた。

 

 とは言えだ。今彼女がすべきは始まってもいない狩りの助けを乞う事ではなく、今の自分達は何が出来るかを考える事だろう。そう改めて思い直しふっと息を吐いて。

 

「え、っと、ミヤコちゃん。ちょっと良い?」

「ミユ? 何か問題が?」

 

 その時、控えめにミヤコに話しかけてきたミユ。その言葉に首を傾げながら続きを促すと、彼女はてってことタブレットを覗き込みに来て、幾つかの場所を指差した。

 

「え、えっと。こことここと、あとここは射線が通ってないから…少なくともさっき言ってた巣に持ち込んでって成るとかなりの距離私が援護出来なくなっちゃうから、危ないかな…って」

「む、成程」

「って事は巣に持ち込んでって言うのは無理だな。流石にこの距離を私とミヤコの二人だけでドラム缶爆弾を守りながらってなると流石に無茶だ」

「えぇ、ですね…しかし、となると何処で使用すべきか」

 

 ミヤコは考える。爆弾を直撃させる為に、いや違う。狩りを成功させる為に必要な物は何か。地図と情報を見ながら考えてふと、再び先程思い出した狩りの先輩の話を思い出し…閃く。

 

 彼女は地図に視線を走らせて必要な物を探し、見つけた。そこからなぞる様に指を動かし、ある場所を指差した。

 

「…サキ、この地点に爆弾を設置しましょう」

「ん、何処だ?…確かにここならある程度は安全に運び込めそうだが、位置的にここにはドスゲネポスが訪れない可能性が高くないか?」

「えぇ、ですのでドスゲネポスをここまで誘導します」

「どうやって?」

「勿論」

 

 彼女は書かれた幾つもの情報、その中の生物分布の部分に目を向けながら答えた。

 

 

「獲物を用意するんですよ」

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