二度あることは三度ある、そんな言葉があるように立て続けに異常事態に襲われたRABBIT小隊。
幸いな事に、先程の謎の大破壊…ミユ曰く彗星みたいに飛んでいた見た事の無い生物と言うここ最近で一番意味不明な存在からばら蒔かれた何かによって発生したそれを、軽傷でやり過ごす事が出来た。
そんな彼女達が取った行動は…速やかなアビドスへの帰還だった。
目標であるドスゲネポスの討伐が完了しているのだから当然の選択だろう。勿論、目の前の異常に関してきちんと調査すべきではと思う気持ちもあったが、万全な状態でも危険だろう調査を今の自分達が行ってもどうなるかなんて考えるまでもないと判断したのだ。
その様な理由から、途中先程の大破壊が原因と思われるパニック状態に陥っていた草食動物の群れに呑まれそうになったりしながらも、なんとか無事にアビドスへと帰還し狩猟の成功と僅かではあるが得た異常事態に関する情報を報告する事が出来た。
そうして余りにも色々とあった狩りが終わってから数日後。ミヤコは現在、何時も通りなんやかんやと理由をつけてアビドスへとやってきた不知火カヤに報告を行っていた。
その内容は自分達が行った狩りについてと…その後アビドス生によって行われた調査についてだ。
「いやなんと言いますか。ドスゲネポスの異変から始まり通信障害に、彗星の様に飛翔する謎の生物と…一度の狩りでここまで立て続けに異常に見舞われるとは。中々に珍しい体験をしましたね」
「えぇ、そうですね。嬉しい類いの物ではありませんでしたが」
「それはそうでしょうね。結局何事も無く、と言うのが一番ですからね」
と、ゲストハウスの執務室で書類に目を通しながらカヤの呟いた言葉に頷いて見せるミヤコ。全くもってその通りだ。
「それにしても通信障害はたまにありますけど、他の二つは私も初耳ですね…アビドス側はなんと?」
「はい、まずドスゲネポスの件ですが。アビドス高校も知らなかったらしく、これから本格的な調査を行うそうです。ただ、少なくとも病気や飢えで元々衰弱していたと言う可能性は低いのではないか、との事です」
「それはまぁ、そうでしょうで」
頷くカヤ。ミヤコとしてもこれは間違ったものではないと思っている。なにせそもそも衰弱していたのだとすれば最初のドラム缶爆弾の直撃に耐えられるとは思えないからだ。分からないことが多いので断言は出来ないが。
「それで通信障害に関しては…やはりあれですか?」
「はい、例の謎のエネルギーが原因だそうです」
「やはりですか。どうにか対策出来ないものですかねぇ」
「現状、難しいかと」
以前から確認されていて、一部のミレニアム生が協力して調査研究を行っているにも関わらず未だに謎の、と呼ぶ他無い状態なのだから。
因みに、今回その謎のエネルギーのせいでミヤコのスマホは修理不可なレベルで壊れてしまっていたりする。サキのスマホは無事だったのにどうしてと嘆いたのは記憶に新しい。
なんて思い浮かんだが今は関係ないので頭の隅に追いやり、続ける。
「最後に、飛翔していた生物に関してですが。アビドス高校はその個体を『バルファルク』と命名、『古龍種』に位置付ける事が決定したそうです」
「古龍種に…ですか」
カヤの表情が防衛室長としての物に変わり、空気もまた重苦しい雰囲気を帯びる。
『古龍種』、それは謎多き存在の総称である。
現在、これに分類されているのは今回発見されたバルファルクを含めて『4体』。内の1体は砂祭りで有名なジエン・モーランがそうであり、同時に最も調査研究が進んでいる。が、しかしそれでも良くて二割判明しているかどうかであり、調べれば調べる程に謎が深まっていく様な状態だ。
確実に言える事と言えば、古龍種に分類される存在は皆極めて強大な力を保有していると言う点だ。ジエン・モーランがその巨体ゆえにそこにあるだけで砂嵐を生み出すように、今回のバルファルクの大破壊の様に。
調査を行っている生徒に『生物なのかすら怪しく思えてくる』とまで言わせた命を持った災害、それが古龍種と言う存在だ。
「彗星の様に飛翔すると聞いた時点でなんとなく予想はしていましたが、やはりそうなりましたか…さて、どうしましょうか」
そう呟きながらカヤは思考を巡らせる。が、正直考えるまでもなく答えは分かっていた。どうしようもない…と。
情報が少ないから、と言うのも当然理由としてはある。が分かっている範疇だけでもどうしようもないのだ。文字通り彗星の様に飛ぶことの出来る生物を止める術は、現在のキヴォトスには存在しないのである。いやまぁ、もしかしたらミレニアムにはあるかもしれないが…連邦生徒会には存在しないので結局結論は変わらない。
「とは言え、なにもせずと言う訳にはいきませんからね。ご苦労様でした月雪小隊長、私はこれから連邦生徒会へ戻り防衛室総出で対策…の前に情報の共有と会議でしょうかね。内容が内容ですからある程度情報規制も行わなければ」
自分達を殺せるかもしれない存在が頭上を通りすぎるかも知れない、なんて話を広げる訳にはいけませんからねぇ。なんて言いながら立ち上がり。
「あ、そうだ忘れていました」
ピタリと止まった。その様子にミヤコは小さく首を傾げた。
「どうかしましたか?」
「いえ、少しばかりサキさんに確認したい事があるのですよ」
サキに? と疑問に思っているとこれについてですよと言いながら机から書類の束を取り出して見せた。それには『SRT新校則』と書かれていた。
「かなりしっかりと考えられていますから、彼女が良ければ現在行われているSRTの校則改善案の所属生徒として意見として参考にする為に借り受けたいのですよ。本当なら直接話も聞きたかったのですが、そんな余裕が無くなってしまいましたから、また落ち着いてからですかね」
「成程、そう言うことですか」
確認してきますと言葉にしながらミヤコは考える。あれって真面目なサキだからこそしっかりとした物になっているが、結局は私の考えた最高の何々…と言う類いの物な様なと。まぁどう思うかは本人次第ですねと、そう結論付けて彼女はサキの元へと駆け足で向かっていくのだった。
尚、話を聞いたサキがどの様な反応をしたかと言えば…とても微妙な表情を浮かべていたとだけ。