アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第111話

「うぅー、相変わらず寒いわねここ」

 

 砂漠の夜とはまた違う寒さに身を震わせながらセリカは壁にぶつからないように、そして載せている弁当がひっくり返ってしまわない様に気を付けながらボートを動かし地下を流れる川を進む。

 

 そう、態々大穴の底まで降り横穴を流れる川を進んでいる彼女であるが目的自体は先程と変わらず頑張って壁を作っている人たちの元まで昼食を届ける事だ。違いと言えば作っている壁の目的が事故防止用の物か、大型生物と言う脅威の侵入を防ぐための物かという点だろう。

 

「えーっと、そろそろの筈だけど…あ、見えてきたわね」

 

 ボートを進ませる事十数分。視界に映るのは電気の明かりに照らされたそれなりの広さの地面と急拵えの船着き場と、そこでどうやら運んできた荷物の整理をしているのだろう幾人かのアビドス生の姿だ。

 

「おーいっ!」

「んー?…あぁ、セリカちゃんか」

 

 と、セリカの声掛けに反応し振り返ったその少女は軽く手を振って見せた。

 

「セリカちゃんが来たってことは…あ、やっぱりお昼だ」

「その言い方的にまた時間も気にせず作業してたわね…よいしょっと」

「まぁ場所が場所だから、そこら辺どうしてもね。一応サイレンは取り付けたんだけどどうにも上手く動いてくれなくてね。あぁ、手伝うよ」

「ありがとう。はいじゃあこれ、落とさないように気を付けて」

 

 ボートを停め、載せていた弁当を下ろしたセリカは彼女のお言葉に甘えて手を借りて弁当を運んでいく。

 

「んー…良い匂い、今日のは何?」

「のり弁と味噌汁よ。あとミカンね」

「おぉー良いね、特に味噌汁が良いよ。暖かい汁最高」

「まぁ寒いものねここ」

 

 と、会話をしながら暫く歩いていくと目的地で壁、その建築現場へと辿り着く。

 

 そこは広い空洞だった。自然ではまずあり得ない程綺麗に整えられ異様に安定しており崩落の兆しもないこの空間には幾つかのテントと多くの資材。そして、地下川を塞ぐように聳える二つの作りかけの壁が存在していた。

 

「…相変わらず、変な感じよねここ」

 

 軽く地面を足で擦る。引っ掛かりの無い、人工的に整えられた地面だ。

 

「ほんとに、なんなのかしらねこの空間?」

「ね。ミレニアムの子達が言うにはあのビナーとか言う機械の蛇か、それに列なる何かが作ったものらしいけど…まぁ正直砂漠の野生生物の事なら兎も角、あぁ言う機械の事はよく分からないから詳しいことは調査結果待ちだね」

「まぁ、そうね」

 

 何も問題がなければ良いのだが、なんて考えながら歩き並ぶテントの内の一つの内へ弁当を運び込む。と、そこには偶然にも先程話題に出た一人のミレニアムの生徒がタブレットを弄りながらそこにいた。

 

「むーん…っと、もしかしてあたしに用あり?」

「ある意味でね。セリカちゃんがお昼のお弁当を持ってきてくれたよ」

「おぉう、もうそんな時間? ではあたしもこの特製ゼリー飲料とエナドリを」

「いや普通にお弁当食べなさいよ」

 

 セリカは若干呆れながらスッと懐からゼリー飲料とエナドリを取り出したのは彼女の目の前にのり弁を置く。暫く視線を手にしている物と目の前の弁当とを往復させて…手に持っていた物を懐に仕舞い箸を手にした。

 

「くー、駄目だ。なんだかアビドスに来てからちゃんとした食事生活を送っている気がする…っ!」

「良いことじゃない」

 

 寧ろ何が駄目なのかと疑問に思いながら味噌汁を装い、置く。と直ぐに手に取り啜る…とても美味しそうである。それを見て良しと呟いてから同じく食事を始めようとしているここまで運搬の手伝いをしてくれた少女に声を掛ける。

 

「手伝ってくれてありがとうね。それじゃあ私は他の人たち呼んでくるから」

「ほいほい気を付けてね」

「むぐ、もぐもぐもぐ…ごくん。はふぅ、ちょっと待って呼びに行く必要はないよ」

「え、何でよ?」

 

 呼び止められ振り返りながら問い掛けると彼女はタブレットを手に取りながら答えた。

 

「さっきサイレンの調整が終わってね。ちゃんと使えるようになってる筈だから呼びに行く必要は無いよ」

「そうなの? じゃあお願いしても良い?」

「駄目なら提案しないよ、というわけでポチっとな」

 

 そう軽い掛け声と共にタブレットをタップする。

 

 

 直後、爆音。

 

 

「うるっさ!?」

「おぎゃー耳がぁ!?」

「おぼぼぼっ!?」

「ギュアァアアアッ!?」

 

 思わずと言った様子で叫ぶ三人。慌てて止められた為、長くは続かなかったが結構耳鳴りが酷い。なんか変な叫び声みたいなのまで聞こえたし。

 

「うぐぐ、なんだ今の爆音!?」

「んむー、ここが地下と言う閉鎖空間だったのがいけなかったのかな?…いやでもそれを加味して調整した筈なんだけどなぁ」

「これ、他の人たち驚いて事故起きてないでしょうね?」

 

 確認の為、テントの外に出て周囲を見渡すセリカ。驚き耳を塞ぎながら身構えている生徒達の姿は見えるが取り敢えず事故や怪我は無さそうだ。

 

「セリカちゃん、どんな感じ」

 

 そう言いながらセリカに続くようにテントから出てきた二人。

 

「取り敢えずは問題はないみたい」

 

 と振り返りながら伝え、ドンッ…と作りかけの壁が揺れた。

 

 

 まるで何かがぶつかった様に。

 

 

「ッ!」

 

 反射的に、背負っていた武器を抜き構える。

 

 それとほぼ同時の事。壁から水が勢いよく吹き出したかと思えば…直後に壁が破られ姿を表したのは魚を思わせる体に翼や足の様なヒレを持つ巨体。それの名は―――…

 

 

「嘘でしょ。『ガノトトス』!?」

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