アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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 猫耳、良いよね。

 と言う訳(?)で新しいお話。


盾蟹たちの大名行列
第13話


 無言で、麺を啜る。隅々まで味わう為にゆっくりと咀嚼し、飲み込む。

 

「…これも、駄目だなぁ」

 

 どうしたもんかと彼は、柴の大将は深夜の厨房で一人思い悩むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

『アビドス水没工業地帯』

 

 そこはアビドス砂漠の一角、嘗ては工業地帯であったそこはやがて砂に呑まれ、二年前に起こった巨龍の出現に呼応するように吹き出した水によって沈んでしまった場所。

 

 今や廃墟と共に砂漠とは思えぬ豊富な水と泥で満たされたそこでは、アビドス砂漠の中にあって更に特殊な生態系が成立していた。

 

「確かここら辺だった筈だけど」

 

 そこに少女が一人、セリカが廃工場の二階の窓からひょっこりと顔を出しながらそこそこ距離の離れた向かいの廃墟を、正確にはそこの壁を見つめていた。それをしているのは彼女が廃墟好きだから、なんて事ではなくある生物を待っているからだ。

 

「! 来たっ!」

 

 ドスドスバシャバシャと響く音を聞き取りすっと息を潜める。距離はあるがそれだけ、自然というものを甘く見てはいけないと集中していると徐々に音が近づいてきて、竜が姿を表す。

 

 それは『ボルボロス』と呼ばれている生物。

 

 身体中に泥を纏い、強固な頭部を持つ…セリカの友人がなんか焦げたエビフライとか表現していた。特徴的な頭部から空気の吹き出す音を鳴らしながら辺りを見渡すボルボロス。この個体こそセリカの今日の狩猟目標…というわけではない。そもそもセリカは今日ここになにかを狩りに来たわけではなく、とあるものを集めに来たのだ。

 

 そのとあるものというのは、ボルボロスが身に纏っている泥である。

 

 暫くの間辺りを見渡していたボルボロスはふいに大きく体を揺らし、壁に向かって力強く動く。すると体に纏っていた泥の一部が飛び廃墟の壁にべったりとへばり付いた。泥が壁から剥がれないかを確認するように暫く眺めてから、ボルボロスは小さく体を揺らしてから、何処かに去っていった。

 

 それから、暫くしてから。

 

「…よし! もう大丈夫かしらね!」

 

 ふんすと鼻を鳴らしながら勢い良く立ち上がり窓から飛び降りるセリカ。勢いそのままに地面に着地。

 

「よっと」

 

 というわけでなく、狩猟補助用ドローンに捕まり減速。ゆっくりと降りて、パシャッと小さく音を立てて着地した。武器を持ち直してから周囲を警戒しながら進んでいく。脛の中ほどまで水に沈んでいるから動けばどうしても音が鳴ってしまい。音が鳴ればそれだけ生物に見つかる可能性が増す。見える範囲に居ないからと油断は禁物なのだ。

 

 泥の付いた壁の間にたどり着いたセリカ。おもむろにドローンから剥ぎ取り用ナイフと袋を取り出して。

 

「ちょっと貰うわねー」

 

 言いながら壁から泥を削ぎ落とし袋に詰めていく。

 

「よいしょっと、これで良し!」

 

 暫くして一杯になった袋をドローンにぶら下げる。目標の量を採取出来たセリカ、あとは無事に帰るだけである。

 

 

 そして普通に何事もなく帰還するセリカなのであった。

 

 

 場所を移してアビドス農場。

 

 かいざー牧場と違って試験や実験などに使われている事が多い場所で、セリカはボルボロスの泥が詰まった袋を手渡すと『アビドス高校園芸部』の生徒は大袈裟なほど喜んで見せた。

 

「うぁーい! ありがとうーセリカちゃーん! お陰で助かったよー!」

「良いのよ別に、依頼をこなしただけだもの」

「だとしても助かるよー! 最近すっごい泥の需要が増えすぎたせいで肥料分が手に入らなくて困ってたところだもーん! 何時も頼んでる便利屋の人たちは都合が合わなかったしー!」

「あぁ、そういえば最近ボルボロスの泥に高い美容効果があるって分かったんだっけ?」

「そうなんだよー! ほんとに困るよもー! まぁ気持ちは分かるのだけどね?」

「相変わらず急に落ち着くわね!?」

「とにかくありがとー! 報酬はちゃんと振り込んでおくから確認しといてねー!」

「はいはい、また困ったらきちんと頼ってよね!」

 

 分かったー! と元気良く手を振られながらそれじゃあとセリカは農場を後にする。

 

 さてこれからどうしようかと街をぶらつきながら考える。何時もならこのままアルバイトにとなるが今日は柴関ラーメンは休みだ。割りと何時もアルバイトしているから休みの日になにするかと悩みがちなのが最近のセリカの悩みである。

 

 取り合えず、お腹空いたしなにか食べに化け鮫横丁に行こうかなと賑わう街を歩いていく。

 

「んー、どうしようかしら」

 

 暫くして目的地に着いたは良いがセリカはとても迷っていた。どこもかしこも美味しそうだ。香りだけでも腹が哭いて大暴れすると評判の化け鮫横丁。

 

 今日はどれを食べようかと見渡す。

 

 串カツ屋は、美味しいが昨日食べたばかりだ。パン屋は、とても良いので第一候補。焼肉屋は、懐が潤ったのでたまに贅沢するのも良いかもなんて。カレー屋は、あそこはちょっと自分には辛すぎるのよねと選択肢から外す。焼き菓子屋は、今はちょっと違うかなと無しの方向で。

 

 そうして考えながら猫耳を軽く揺らして、よしと決める。今日はパンにしようと、焼き菓子屋の前で色々とでっかい人が顔の怖い人に蹴り飛ばされている割りと良く見る光景を横目にパン屋に向かう。

 

 つもりだったが、見覚えのある人物を見つけてそちらに駆け寄る。

 

「あ、大将こんにちは…ってあれ?」

「ん? おぉ、セリカちゃんじゃないか! って首傾げてどうかしたのかい?」

「なにか珍しいものでも見た様ですわね」

「いえ、珍しいというか意外というか」

 

 と、セリカは不思議そうに首を傾げる柴の大将と同じように首を傾げる生徒、『黒舘ハルナ』を見ながら思うのだった。

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