アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第14話

 本日休業と書かれた札の下がった柴関ラーメン。その店内にてラーメンを作っている柴の大将を見ながらハルナとセリカの二人は何気なく会話をしていた。

 

「えっと、つまり柴の大将に試作してるラーメンの材料の調達を依頼されて、その報酬とは別にその試作段階のラーメンの試食を頼んだってことで良いのよね?」

「えぇ。純粋な美食への探求心からの提案でしたが、快く引き受けて下さいましたわ。他の評価も欲していたそうで渡りに船だとか。あぁ勿論、依頼の方もより良き美食探求の名の元、快諾した次第ですわ」

「まぁ、でしょうね」

 

 良い意味でも悪い意味でも有名だしとハルナを見ながら思う。何せ彼女は悪名高い『美食研究会』の一人。味や接客態度、果ては店の雰囲気が気に入らないからと数多の食事処を爆破してきた彼女だが、料理の味に対しては美食研究を口にするだけあって誰よりも真摯であった。もっと美味しい料理を作りたいから協力してくれと言われたならば断りはしないだろうなと。

 

「出来た! 待たせて悪かったな、これが試作中のラーメンだ!」

 

 と、そんな会話をしていた二人の前に出されたラーメン。まさか自分の分もあると思ってなかったセリカは思わず柴の大将を見て。

 

「セリカちゃんにも食べてみてほしくてな、率直な意見を頼むよ!」

 

 そう言われた。であるなら遠慮無く、と箸を手に取りながらラーメンへと向き合う。

 

「まぁまぁ! 良い香りですわね。これは、魚介ですわね? 乗っているのは蟹…いえ『ヤオザミ』の身ですわね」

「あぁ、その通りだ。今回のは全部アビドス産のを使ってるんだ。かなりうまく出来てる…ん、だけどなぁ」

「?」

 

 どうにも、変な様子の柴の大将。少し疑問に思いながら実食。そして間を置いてセリカの猫耳が大きくはねた。

 

「ん、んー! これ美味しい!? すっごい美味しいですよ大将!」

「これは…成程確かに」

 

 目を輝かせながら柴の大将に視線を向けるセリカと深く味わうように頷きながら麺を啜るハルナ。

 

「まだ行けますわね」

「あぁ、やっぱりそう思うかい?」

「え、なにが!?」

 

 さも当然の様に頷き合う二人。行けるってなにが? どこにと混乱するセリカに、ハルナは説明を始めた。

 

「簡単な事ですわ。このラーメンにヤオザミの身は必要がない状態なのですわ」

「え、いやでも美味しかったわよ?」

「えぇ、それは認めますわ。ですがそれはラーメン単品でも成立している美味。ヤオザミの身は関係ない状態なのですわ」

「要するにこのラーメンにヤオザミの身は別にあってもなくても良いって状態なんだよ」

 

 唯乗ってるだけと柴の大将は苦笑しながら言う。セリカはその言葉にヤオザミの身を食べて麺を啜る。とても美味しい、が言われてみれば確かにいやどうだろう分からんと首を傾げるばかりである。

 

「色々試してみたんだがどうにもしっくり来なくてよ。どうしたもんかと考えて今日やっとこれだってやつを思い付いたんだが…材料がな」

「それで私にヤオザミの討伐と素材採取の依頼をしたわけですわね」

「あぁ」

 

 なるほどとハルナは頷きながら少し考えてから視線を向けて問いかける。

 

「このラーメンをこのまま店に並べようとは思いませんでしたの? こう言ってはなんですがヤオザミの身がなくとも十分な味だと思いますわよ?」

「あん? まぁ確かに胸張って旨いって言える出来ではあるけどよ、ヤオザミの身があった方が旨いだろう?」

「それは、そうですわね」

「んで、それを工夫すればもっと旨く出来るって思ったならしない訳にゃいかないだろうよ」

 

 にっかり、柴の大将は笑みを浮かべて。

 

 

「客には旨いもん食ってもらいてぇからな!」

 

 

 料理人はそういう生き物だと大きく笑う柴の大将。それを聞いたハルナは小さく微笑み、無言でラーメンを啜りながら聞いていたセリカはなんだか嬉しくなっていた。

 

「それは、えぇそうですわね。より良いものを、なんて分かりきっている答えでしたわね。少し自分が恥ずかしく感じる程ですわ」

「お、おう、そうかい。あぁその試作品のラーメンは」

「勿論残さず頂きますわ」

 

 そう、言ってからは早く。どんぶりが空になるまでそう時間はかからなかった。

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

 

 声が重なる。確かな満足感を感じながら、試作品でこのレベルなのにこれ以上になるのかとセリカは思いながらどんぶりを見つめる。

 

「ふぅ、完成品はどれ程の美食か。期待が高まるばかりですわね。その為にも素材調達の依頼、確実にこなして見せますわ」

「おう、頼んだぜ! こっちも期待以上のものにして見せるからよ!」

「それは、楽しみですわね」

 

 丁寧に口元を拭いたハルナはスッと立ち上がり。

 

 

 流れるように隣に座るセリカを簀巻きにした。

 

 

「…え?」

「え?」

「では参りましょう」

「え、あ、お、おう。気を付けてな」

 

 よいしょと簀巻きにしたセリカを担ぎ上げ、そういいながら柴関ラーメンを出るハルナ。担がれたセリカは唖然としながらただ運ばれていった。

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

「いやなんでよ!?」

 

 そう、混乱が抜けて声を響かせたのはアビドス水没工業地帯に到着して少ししてからの事だったとか。

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