アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第21話

 砂の海を船が進む。大小様々な幾つもの船が目標に向かって真っ直ぐ進んでいく。船団と呼ぶにふさわしいそれの中心は、アビドス高等学校の撃龍船。デザインも何もない、ただアビドスの危機に立ち向かうために幾度と無く修繕と改良の施されてきたその武骨な船は見る人によってはただの古くさいだけのおんぼろ、だがまた別の人からすれば歴戦の頼れる象徴だった。

 

「か、かっこいい…!」

 

 なにやらキラキラと瞳を輝かせている陸八魔アルは、どちらかと言えば後者の存在なのだろう。

 

「社長? はしゃぐの良いんだけどそこ居ると邪魔になるよ」

「は、はしゃいでなんかいないわよ!? あ、でも邪魔なのはそうよね、ごめんなさい…」

 

 しょんぼりと落ち込みながら船の端に居るカヨコと武器を抱えながら座っているムツキとハルカの3人の近くまで移動するアル。急がしそうに荷物を運んでいくアビドスの生徒を横目に、それにしてもとカヨコは見渡す。

 

「アビドスの初代砂上船…作られてそこまで経ってない筈なのにかなり年期が入ってるように見えるね」

「そうね! まさしく歴戦の猛者の相方のような、いぶし銀? 的な魅力に溢れているわね!」

「あと年期云々はこれのせいだと思うなー」

 

 言いながらよいしょと立ち上がったムツキはポンポンと船に備え付けられた武装、バリスタを軽く叩く。

 

「噂には聞いてたけど本当に使ってるんだねー。効き目あるのかな?」

「まぁ、使ってるからにはあるんだろうね」

「実際、下手な重火器よりよっぽど効果的だよ」

 

 疑問に答えるように箱を抱えたホシノが近づいてくる。よいしょと抱えていた箱を下ろすと、ムツキと同じようにバリスタに触れた。

 

「スッゴイ単純に質量のあるものを叩きつけるものだからね、これ。その気になれば壊れてもその場で直せるし…まぁあと単純によっぽど頑丈なものでないと砂嵐にやられて使えなくなっちゃうし」

「あぁ、なる程」

 

 納得と言った感じに頷くカヨコの横で、そう言えばとムツキがホシノの運んできた箱を見る。

 

「これなに?」

「あぁ、これは」

 

 見せた方が早いと箱を開けるホシノ。三人が覗き込むと、そこには緑色の液体が詰まった瓶が入っていた。一見すれば怪しさしかないそれは、しかし見知ったもので。

 

「これ『回復薬』じゃない! すごい量ね」

「うん、ハルカちゃんが沢山素材を分けてくれたお陰でしっかり数を揃えられたよ」

「えっと、お役にたてたのなら、嬉しい…です」 

 

 少し恥ずかしそうにしながらふにゃりと笑みを浮かべたハルカに同じく笑みを返すホシノ。

 

「それで、回復薬を渡しに来ただけ?」

「ううん、重要な事も知らせに来た」

 

 カヨコの言葉に、表情を引き締めて便利屋を見ながらホシノは言う。

 

「ミレニアムの子から連絡があった。計算結果、想定外の事態が発生しない限りは凡そ一時間後、砂嵐に突入する事になる」

「そう、分かったわ」

 

 一時間、思いの外長いと言うべきか短いと言うべきか。いや一時間後にはアビドスの行く末を決める戦いが始まるのだから短いと言うべきだろう。

 

「そう言えば、ミレニアムの船は?」

「ちょっと後ろの方に居るよ。そもそもが観測調査に特化してるから前には出れないけどね。まぁ、お陰で砂嵐の中でもちゃんと安定して通信出来るんだけど…その、あれはどうかと思うけど」

「あぁ、あれね」

 

 言いながらその場に居る全員の視線がミレニアム特製の通信機器を見る。その、なんだ、こう…凄く独特のデザインをしているそれを。

 

「なんか、押し付けられた感が凄いんだよねあれ」

「凄い勢いで設置して去っていったものね」

「清々しい表情浮かべてましたね」

 

 まぁ性能は良いからこの際デザインは気にしない事にする。

 

「さてと、改めて作戦を確認しておこうか」

「と言っても作戦と言えるほどのものじゃなかったよね?」

「そうなんだよね」

 

 困ったように苦笑するホシノ。

 

「でもさ、相手が相手だから攻撃しまくって進路を無理矢理変える。くらいしか出来ることがないんだよね」

「それ、要するに何時もと同じじゃ」

「うん、違いがあるとすれば通常の砂祭りはもしかしたらアビドスが壊滅するかもしれないに対して今回は失敗すれば確実にアビドスが崩壊する事だね」

「嫌な違いだね」

「本当にね、あぁあとそうだね。もう一つ違いがあった」

 

 言いながら人差し指を下に、撃龍船に向けた。

 

「これが出てる。って言うのは大きな違いかな。なにせ、撃龍船には船の名前の由来になった『撃龍槍』が搭載されてるから」

「それって、たしかジエン・モーランの牙を利用して作ったって言う例の?」

「そう、それ。それを高速で発射する兵器の事だね。まぁ利用と言うか、頑丈すぎて加工出来なかったからそうするしかなかったって言うのが正しいんだけどね」

 

 そう、困った様に答え。アルを見ながら言う。

 

「材料的にも、大きさ的にも搭載出来るのは一発だけだけど。もし今なら! って思ったなら遠慮なく撃っちゃって」

「良いの?」

「勿論、寧ろアルちゃんが撃つのが一番可能性があると思ってるから積極的に狙って言って欲しい位だよ」

「そう、ならその期待に応えて、しっかり撃ち抜いて見せるわ!」

 

 

【あのー、ちょっと良いかな?】

 

 と、唐突に通信機から声が響く。視線が向けられ、思わず視線を外してから問いかける。

 

「なにか問題が発生した?」

【あぁうん、間違いなく問題】

 

 

 

【進行方向に『ガレオス』の群れが見つかった】

「…まじ?」

【まじ、しかもこっちに向かってきてる】

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