音が鳴り響く。巨大龍ダレン・モーランと並走する砂上船たちから砲撃が、銃撃が打ち込まれる音。生徒たちが自分達が持つ火力をこれでもかと叩き込んでいる音。砂が叩きつけられる音にも、船が軋む音にも負けること無く音が響く。だが。
「全く効いてない…っ!」
あんまりな現状に誰かが声を溢した。出発前は過剰火力とすら思っていた持ち込んだ数々の火器がダレン・モーランの赤褐色の甲殻の表面を削るばかりで、余りもスケールが違いすぎて文字通り豆鉄砲でも打ち込んでるのかと思えてしまう。
「これ本当にどうにかなるのよねぇ!?」
その叫びに同じことを思いながら皆、動き攻撃を続ける。弱音を溢しながらも諦めるつもりは皆無なのは見て分かる。
「というかゲヘナの船が見当たらないの不味いんじゃないの!?」
「不味いかもだけど探してる余裕なんて無いわよ!」
「知ってる! 効いてる感じがないから気を紛らわせたかっただけ!」
「そういっても他に比べればまだ効いてる感じあるけどね!」
「だから余計にだよ!」
叫びながらも設置されたバリスタで巨大なボルトを打ち込んでいく。半分は甲殻に弾かれ、半分は突き刺さっても浅く、すぐに抜けて落ちていく。だが、それでも言う通り他に比べればまだ効果を実感出来る。
バリスタ以外に効果を感じ取れるものと言えば、どっかの誰かが持ち込んだ対戦車用の装備。
それと…
「ホシノ先輩準備できました!」
「分かった! 皆下がって!」
小鳥遊ホシノの放つ竜撃砲という名のよく分からないビームの様なものだけだった。荒れ狂う砂を突き抜けダレン・モーランに直撃する。
ダレン・モーランの咆哮が轟き砂漠が震える。初めて見せた反応をしかしホシノは確認する余裕がない、なぜなら竜撃砲の反動によって船の外へと投げ出されたから。
「ふんぐぅ!?」
「先輩、すぐに引き上げます!」
ピンッと張りつめる命綱を懸命に引き、船の上に引き上げる。
「ぶ、はぁ!」
「大丈夫ですか!?」
「大丈夫! それより次用意して!」
「は、はい!」
身体中に纏わり付いている砂を気にする事無く手に持つ完全に焼け、余りの熱に砂が溶けへばり付いている武器を手渡し、代わりを求める。
その頭上に巨岩が飛来し、直後に狙撃され破壊される。
「ありがとう!」
「どういたしまして!」
短いやり取り。それ以上をする余裕がない。駆け寄って来た生徒から代わりの銃を受け取ったホシノを横目に、アルはゴーグル越しにダレン・モーランを睨み付ける。
「それにしても、どうしたものかしらね」
言いながら一撃。外し様の無いそれは、しかしダレン・モーランの甲殻に弾かれて砂の海へと落ちていった。
「やっぱり弾かれるわね。こんなことならもっと色々考えておくべきだったわ、ね!」
「もうちょっと近づいてくれれば爆弾でどっかーんって出来るんだけどなー!」
際限無く降ってくる巨岩を撃ち落としながら言うと、手すりを使って固定したマシンガンをこれでもかと撃ち続けるムツキが文句を口にする。彼女自身、火力不足を嘆きながら背負う鞄、そこに詰め込まれている爆弾を軽く揺らす。
と、まるでムツキの言葉に反応したようにダレン・モーランが大きく動く。ただ、近づくのではなく大きく離れるようにだが。
「ちょっとー! 離れたら爆弾所か弾が当たらないでしょー!?」
「いや、このまま離れて行ってくれればアビドスから外れるからそっちの方が良いと思うけど」
分かりやすく怒ってますと動きで表現するムツキにカヨコが冷静にそう言う。実際、このまま離れて行ってくれればそれで目的は達成される、のだが。ミシミシとなにか軋む様な、力む様な重い音がダレン・モーランから響いてくる。
なにをするつもりなのか真っ先に気がついたユメが叫ぶ。
「ま、ずい! 突っ込んでくる積もりだよ! みんな衝撃に備えてぇ!」
直後、何もかもがひっくり返った。
いいや、そう感じる程の衝撃が船を襲った。軋む、等と言う領域を越えて悲鳴の様な音が船から響く。多くの生徒たちが転げ回り、少なく無い数船から投げ出された。
「あ」
ムツキもその一人だった。衝撃に耐えきれず船から投げ出されたムツキは、ダレン・モーランに体を叩きつけられる。
「ムツキ!?」
「大、丈夫っ!」
バランスを崩し床に倒れながらもアルが叫び、言葉に詰まりながらもダレン・モーランにしがみつきながら答える。全身から痛みを感じてはいるが耐えられないほどではないと手を放そうとして。
「!? やっば!」
命綱が切れかけている事に気がつき慌てて掴みなおす。あのまま手を放していたら命綱が千切れて大変な事になっていた所だったと冷や汗を流す。
「本当に大丈夫なの!?」
「大丈夫大丈夫! アルちゃんってば心配しすぎ!」
言いながら中途半端に繋がっていると逆に危険だと命綱を引きちぎる。そして、そのままよいしょとそこかしこにある甲殻のでっぱりを足場にダレン・モーランの体をよじ登り始めた。
「ちょっとムツキ!?」
「くふふ、次いでだからちょっとねぇ♪」
せっかくだから爆弾をダレン・モーランの体の上で爆破してやろうとムツキはよいしょと登っていき。
「ついた…って、あれ?」
ダレン・モーランの体の一番上。ひょっこり顔を出したムツキはしかし、そこに広がる光景に思わず固まった。彼女が見たもの、それは。
「おらぁ! 風紀委員がこの程度でくたばるとでも思ったかぁ!」
「規則違反者が調子に乗るな!」
「いやそれはなんか違う気がするがどうでも良いかおらぁ!」
「このまま掘り進んでつるっぱげにしてやるー!」
「あ、ピッケル壊れた。どうしましょう先輩!?」
「殴れ!」
「まじぃ!?」
ピッケル片手に元気に暴れまわるゲヘナの生徒たちだった。