アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第28話

 アビドス農場にて。二人の生徒が困惑していた。

 

 具体的に言えば眼前に鎮座する巨大なカボチャに対して困惑していた。

 

「な、なんでこんなことに?」

 

 小さな鉢植えを抱えながら言う伊草ハルカ。

 

「ほんとにねー! どうしてこうなったのかねー!?…いや真面目になんでだろう?」

 

 ハルカの言葉に、困惑しながら園芸部の生徒はぺちぺちとカボチャを叩く。

 

「なんかこーさ!? 変なことしたっけ!?」

「い、いいい、いいえしてません。その、すみませんすみません!!」

「だよねー! うん、分かってたことだからそんな死にそうな顔しなくて良いよー!」

「は、はい」

 

 深呼吸して落ち着くハルカ。それから考えるような仕草をしながら座りまぢかでカボチャを見る。

 

「でも、本当にどうして…以前植えたときはここまで大きくはならなかった筈ですが…」

「そうだねー! やっぱり肥料の問題なのかねー!? ここ以外の畑に植えたカボチャはごく普通の状態だし!」

「ならやっぱりボルボロスの泥を肥料にした影響でしょうか?」

「その可能性がたっかいねぇ! そもそもこのカボチャの種もボルボロスの泥に紛れてる状態で発見されたのが元だしねー!!」

「ということは何かがあったから大きくなったのではなく、今まで足りなくて大きくなれなかったなんて事もあり得そうですね…」

 

 真剣な表情を浮かべながら鉢植えを静かに置き、懐からノートを取り出しカボチャをよく見てなにかを書き込んでいく。

 

「えっと、大きさ以外の変化は…硬さでしょうか?」

「だね! カボチャは硬いものだけどこれはそう言うレベルじゃないよねー!」

「金属みたいな硬さしてますからね」

 

 コンコンとカボチャを叩く。はっきり言って植物の類いとは思えない程だ。

 

「…これ、硬いの皮部分だけなんでしょうか?」

「流石にそれは割ってみないとわっかんないねぇ! と、いう訳でもうちょっと詳しく調べたいから教室もっていきますかね!」

 

 言いながらよいしょと持ち上げ…ようとしたが、微動だにしない。

 

「…あ、駄目だこれ。ハルカちゃんちょっと手伝ってくれないかな!?」

「は、はい。今行きます!」

 

 言われたハルカはパタパタと近づいていくのだった。

 

 

 

 それから数十分後、場所は移ってアビドス高校、『狩猟装備開発部』の部室。

 

 文字通り狩猟用の装備の研究開発を行っている部活に所属している生徒の前にデンッと鎮座する巨大なカボチャ。視線がカボチャとそれを持ち込んだハルカたちとを幾度か行き来してから呟く。

 

「…なんでここに持ち込んだのよ?」

「す、すみません」

「いやほんとにごめーん! でもしょうがないんだよー! 園芸部の持ってる備品じゃどうやってもこれを割れなかったんだよー!…いや本当に、まさか傷一つ付かないとは思わないでしょ」

「えぇ…?」

 

 困惑した様子で再びカボチャを見る。凄まじい存在感を滲ませていた。

 

「…取り合えず、色々試してみるわね」

「お願いします」

「しゃーっす!」

「なんか軽いな?」

 

 

 

 こうして、長い戦いが始まったのだった。

 

 

 

 1、一般的な鉈。

 

「…まじで傷ひとつ付かないんだけど、なにこれ本当にカボチャなの?」

「えっと…さぁ?」

「正直自信なくなってきてるんだよね!」

「でしょうね」

 

 

 2、ミレニアム製ドリル。

 

「きれいに潰れちゃったわね…」

「まさかのミレニアム製品の敗北!?」

「いや、えぇ?」

「というかこれ高かったんだけど…どうしよう」

「あ、弁償するのでご安心を!」

「あ、うんありがとう」

 

 

 3、ゲヘナ生徒御用達の爆弾。

 

「うっそでしょこれも駄目なの?」

「流石に行けると思ってたんだけどなー!」

「すみません」

「いや謝らなくて良いから」

「しかしいよいよ植物かどうか怪しくなってきたねこれ!」

 

 

 4、偶々整備を頼みに来てたプリティプリンセスの拳。

 

「えいっ☆」

「…」

「…」

「…地面に、めり込みましたね」

「うーん、ちょっとショックだなぁ☆…で、これなに?」

「カボチャ…だと思います、多分」

「いや違うって絶対」

 

 

 5、なんか良い感じの形をしていたから鐫として利用されているジエン・モーランの鱗。

 

「…あ、行った。行ったー!」

「凄い、刺さりましたよ!」

「漸く、ね。流石ジエン・モーランの鱗…待って抜けない、抜けないんだけど!?」

「貸して、よいしょ☆」

「おぉ、あっさり。流石ね」

 

 

 勝者、ジエン・モーランの鱗。

 

 

 で、結局巨大カボチャはどんなものだったかと言えば。

 

「な、なんか、その…普通のカボチャですね」

「だねー! 異様に硬かっただけのカボチャだー!」

「いやいやここまで硬いとだけとは言えないと思うじゃんね☆」

「本当にね」

 

 調べた結果、一般的な物とそう変わり無いことが判明した巨大カボチャを調理したものをもそもそと食べながら四人は、煮ても焼いてもどうにもならなかった皮を眺める。味はそこまでよいものではないなと考えながら見ているとふと、思い付く。

 

「…これ、ここまで硬いならこのまま武器に出来そうよね」

「…え?」

 

 

 そして、幾度かの試行錯誤の果て。

 

 

「出来たのがこれよ」

「カボチャに棒が刺さってる…」

「武器…武器?」

「ちょっと武器と言うのは憚れるね☆」

 

「でも…すっごい納得いかないけど、今まで作ってきた武器のなかで一番性能良いのよねこれ。本当に納得いかないけど」

「「「えぇ…」」」




・アビドス高校園芸部。

 アビドス砂漠新生態系の中でも植物を中心に調査研究を行っている部活。割とよく爆発が起こっている、やってる事ただの農作業なのに。主に農場で砂漠で採取された様々な種類の植物を育てている、のだが割と危険物ばかりなので結構気を使っているとか。

 良く伊草ハルカが顔を出して部員と一緒に農作業をしたり調査観察をしているらしい。



・くそ雑カボチャハンマー(不本意)

 農場で収穫された巨大カボチャの中身をくり貫いた上で棒をくっつけただけの代物。見た目は雑の一言以外に表現しようが無いが、現状加工可能な素材のなかでもっとも強固であり、結果的に現在の狩猟用近接武装の中でもっとも強力である。なお、カボチャの味事態は微妙らしい。


 また、巨大カボチャはとある場所では『ワヲンパンプキン』と呼ばれる品であるとかなんとか。
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