アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第29話

 カン、カン、カンとアビドス自然公園の一角にて採掘音が響く。

 

「おいしょっとー、ほいしょっとー」

「えっと、これはただの石でこれも石、これは…お、鉄鉱石」

「石ころ持ってくよ?」

「あ、ちょい待ち。ちゃんと纏めるから」

 

 そこは薄暗い洞窟、中に居るのは四人のヘルメット団。彼女たちは自慢のヘルメットにライトを付けてピッケル片手に採掘や選別に勤しんでいた。

 

「ふぃー、ちょい休憩」

「おつかれ、はい飲み物」

「うぃありがと…ぶはぁ! 生き返るー」

「えーっと、にーしーろー…おっけおっけ必要分は揃ったね」

「ういうい、どうする? まだ掘るか? 確か多ければそれだけ報酬良くなるよな?」

「そうね。お金は幾らあっても良いからね」

「いやでもこれ以上掘ってもドローンに載せられなくない?」

「あぁ、そっか。なら抱えて…は、危ないかな?」

 

 四人がプカプカと浮かんでいる狩猟補助用ドローンのぶら下げている袋を見る。しっかりと鉄鉱石の詰め込まれたそれは、見た目相応の重量を誇っている。運ぶとなるとそこそこ苦労する事だろう。

 

「あー…まぁ最近またアルセルタスが見られるようになってきたらしいし、安全第一で行くかぁ」

「そうね。普段地中に居て見つけ辛いから危ないのよね、あの不幸虫」

「それじゃあ片付けて帰りますかねー」

「あいー」

 

 それぞれが休憩用の椅子やカップの片付け、焚き火の後始末、持ちきれない石の処理などを行い帰還するために動く。と、ふと疑問が溢れる。

 

「そう言えばさ。なんでさっきアルセルタスの事を不幸虫って呼んだの?」

「え? そんな変な呼び方だった?」

「いやそう言う訳じゃないけど、純粋になんで? って思って」

「それは、あー…なんというか。興味本意で生態を調べたときこう…なんか扱いが酷くて不幸だなと。勝手にあたしが思ってるだけなんだけどね?」

「あー…」

 

 否定は出来なかった。少なくとも、番が鬼嫁である事が確定している所とか。

 

 

 

 

 それは、ある時とある不良の言葉。何気なく呟かれたその一言は多くの不良たちが共感したという。それは『アビドス最高じゃね?』…である。

 

「あーい、お疲れー」

「お疲れさまー」

「おっつー」

「うえーい」

 

 ヘルメット団の借りているゲストハウスの一室で四人は軽く缶ジュースを掲げコンッとぶつける。

 

「はー、冷たいジュースが体に染みるー…いやしかし、改めて考えると信じられなくなるよな」

「え、なにが?」

「雨風気にせず冷房の効いた部屋でだらけてる今の状況」

「あぁー、確かに。半年前までその日暮しだったもんね」

「ぶっちゃけアビドス来てなかったら今も同じ状態だったのが容易に想像出来るわね」

「だなー。前までの生活が嫌だった訳じゃないけど…過ごしやすい部屋の魔力には勝てないわー」

 

 だらっと安物のソファーで溶けるように寝転がりだらける。

 

「誰が言ったのか覚えてないけど、やっぱアビドス最高だよな。こうして住む場所提供してくれるし金稼ぎもそう難しくないからなー」

「代わりに毎回命がけではあるけどね。今回だって帰り道でアルセルタスとすれ違ったし」

「いやいや、あたし達みたいな不良からすれば命がけなのは他自治区でもそう変わらないじゃん」

「そもそもの話、アビドス以外じゃ犯罪すれすれの行為以外でお金稼ぐ手段ほとんどないものね」

「だなー…ってお前それなに?」

「なにって、バケツアイスですけど?」

「いつのまにそんなの買ったんだよ」

 

 と言いつつ自分も食べると起き上がり、しょうがないと取り分けられたアイスを頬張りながら話を続ける。

 

「正直部屋もそうだけどこうして贅沢出来るのまじ嬉しいよな」

「ねー、ゲストハウスのランクを気にしなければ結構贅沢出来るもんねー」

「でも上のランクのハウスには憧れるわよね。個室に浴室まであるって話でしょ?」

「それは確かに。キッチンもあるって聞いたし。炊き立てのご飯でお茶漬け食べたい」

「いやそのくらいならドローンで出来るだろ」

「違う、土鍋で作りたいんだ!」

「お、おう。すげぇ熱意だなおい」

 

 そこまで?と呟けば、力強く頷かれてそっかと呟くしか出来なかった。なんか、眼前の友達が以前遠目に見たゲヘナでもやばいやつらと噂の美食研究会と似た様な空気を纏っている気がしたが、文字通り気のせいと言うことにした。多分、疲れるだけだから。まぁ取り敢えずだ。

 

「んー、ならどうする? もう少し上のランクのハウス借りてみるか? 確かもうちょい金払えば借りられたよな? 他のやつらも別に反対はしないだろうし」

「毎回コツコツ信頼信用稼いできたものね。ただお金が、ちょっと少ないというか…高級メロン買っちゃったから」

「でも諦めたくない、ほらこんな良い土鍋を用意してあるんだよ?最高級品だよ?」

「ならもうちょい頑張って金稼ぐー?自分も丁度この前新品のバイク買って金欠気味なんだよねー」

「お前ら余裕出来たからって贅沢しすぎじゃね?」

「大丈夫よ」

「なにが?」

 

 その言葉に、ふっと微笑み。

 

 

 

 

 

「みんな同じような状況だからよ!」

「おいちょっと団員全員呼んでこい、そんで正座しろこら」

 

 その後、ずらっと並んで正座するヘルメット団への説教が2時間程続いたとか。





・後日、かいざー牧場にて

「と言うわけでいろんな意味で鍛え直してほしくて」
「そ、そうか。いやまぁ仕事してくれる分には構わんが…良いのか本当に」
「うっす、存分にこき使ってください。ヘルメット団のリーダーとして自分も頑張りますのでお願いします理事長」
「うむ、分かった。それはそうと元を付けてくれ…あとどこから長が来たんだ本当に?」

「え、理事長じゃないんすか?」
「違うが?」
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