アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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・何処かでの会話

「今回は少し行き違いがあって迷惑かけてしまったけど、次はきちんとその上でより素晴らしいジャギ音頭を披露するためにより練度を高めよう! へぇーい!」
『アッアッオーウ!』
「うへぇー、そんな簡単に次が来ると思ってるの?」
「ぬわぁ!? 小鳥遊ホシノ!?」
「次、誰かに迷惑かけたら許さないって言っておいたよね?」
「いや待て、待ってくれ! 今回は本当に純粋なすれ違いがだな!」
「でも迷惑かけたよね?」
「…っすー、すね」
「じゃあ駄目」

「ちょ慈悲をもとめぐわー!?」
『キャイン!?』


第3話

 アビドスを案内する前に紹介したい子が居るとシロコに連れられて来たのはアビドス高等学校の横に存在する農場だった。『アビドス農場』と分かりやすく呼ばれているそこで先生が出会ったのは巨大な鳥の様な竜だった。

 

「クエー!」

「ん!」

「クエックエー!」

「ん! ん!」

「クエーー!」

「ん!」

 

 シロコと共に元気に跳ね回るそれは『クルルヤック』。とある偶然の出来事がきっかけとなってシロコが親代わりとなって育てている『鳥竜』と呼ばれる種のうちの一体であり、ヤッくんと呼び愛情をもって接するシロコにとても懐いているという。

 

 そして、先生にプレゼントされた鳥マスクのデザイン元である。

 

「先生」

 

 すごい完成度だったのだなと感心していると、シロコがクルルヤックと共に近づいてくる。

 

「この子がヤッくん。ヤッくん、この人が先生だよ」

「クエー?」

 

 紹介され首を傾げるヤッくんによろしくと先生は軽く手を振ると何を思ったのかさらに近づき、手のひらに頭を押し付けた。撫でてくれると思ったのかそれともそうしてくれと要求しているのか、分からないが取り合えず撫でると気持ち良さそうにクエーと鳴いた。

 

「ん!」

 

 そしてシロコは顔をヤッくんの体に押し付けて深呼吸をしてから満足げにサムズアップしていた。曰く、ヤッくん吸いは健康に良いのだとかなんとか。

 

 

 

 ヤッくん吸いを堪能した後、餌やりを終えたシロコと連れられ、それじゃあ案内を始めると気合いを入れるシロコに連れられて訪れたのは『アビドス商店街』だ。曰く、アビドスで取れるものならば余程貴重な品でもない限り大抵のものが揃うという。

 

 そうなんだと何気なく覗いた魚屋を見て驚く、見たこともない魚類が並んでいたからだ。

 

「ん、想像通りの反応」

「はっは、だな! 始めて来た客は大体そんな反応してくれて嬉しいぜ。まぁ、ここの生態系は完全に独立したそれだからな、見たこともねぇものが並ぶから当然っちゃ当然だけどな」

 

 だが、並べてるのはどれも新鮮で旨いぜと猫住人は自慢げに言う。特に『サシミウオ』なる魚が自分で不味く調理でもしない限りどうあっても旨いと進められた。最近、漁獲量が減少しているからと鮮魚がお高く中々食べられなかったので非常に心引かれる、が流石に魚を持ち歩きながら案内される訳にもいかないのでまた後でと言うことになった。

 

 その後、様々な店をシロコに紹介されながら進む先生。やがて商店街を抜けて、暫く進んだ場所に辿り着いたそこは『牧場』だった。

 

 それも普通の牧場とは違う、竜の、である。

 

「ここが『かいざー牧場』。アビドスの意外な人気スポット」

 

 なんでもアビドス砂漠新生態系の『アプケロス』という草食生物、いや竜の養殖に成功し現在のアビドス自治区の食肉生産を一手に担う無くてはならない場所なのだとか。

 

「ん、凄く美味しい。こんがり焼いたお肉は一度は食べるべき」

「私としてはそれ以外の調理法も勧めたいがね」

 

 と、シロコの言葉に続けるように誰かの声。誰だと視線を向ければつなぎ姿のロボット住人が一人。

 

「ん、理事おじ、おはよう」

「元、だ。何時も言っているだろう、後時間的にもうこんにちはだろう…それでそちらの人物は」

「シャーレの先生。アビドスを案内中」

「シャーレの…あぁ、今もっとも過労死に近いと噂の」

「ん、その先生」

 

 どんな噂だと先生は思った。しかし正直否定も出来ないので黙るのだった。

 

「先生、この人は理事おじ。この牧場の管理者」

「だから元をつけろ、今の私は理事ではない」

 

 その言葉にどう言うことかと疑問に思うが、これ聞いて良いことなのかと思う。と、何を考えているのか察せられてしまったのか元・理事だという彼は肩を竦めて語る。

 

「シャーレの先生は『カイザーコーポレーション』を知っているか?」

 

 頷く。かなり規模が大きいし、良くシャーレの手伝いをしに来てくれる生徒が気を付けろと良く言っている。

 

「詳しく話せば長くなるから省くが…要点を言えばアビドスでの事業の失敗の責任を全て被せられてクビになった、というだけのよくある話だ」

 

 やれやれと軽く首を振る元理事。あまりよくあって欲しくない理由だなと思いながらそれじゃあこの牧場の名前は。

 

「ん? あぁ、いやこの牧場の名はカイザーとは関係ない、読み方が同じというだけだ。ただまぁ…ちょっとした意趣返しのつもりではあるがな」

 

 くつくつとどう見ても悪い大人な雰囲気を醸しながら暗い笑みを浮かべる元理事に、シロコはちょっとひいた。

 

「と、今となっては関係の無い企業の話なぞどうでも言い。少し相談があってな」

「ん? それで私の所に?」

「あぁ、といってもそう大事になるような事ではなくただの依頼の話なのだが」

 

 

「あぁー! 理事ー! 助けてください理事ー! 理事ー!?」

 

 

 叫び声が響き、三人は反射的に声のした方へと視線を向けると。

 

「グォー!」

「あぁ待って待って轢かれる、轢かれちゃう!? 理事ー助けてー!?」

 

 牧場の職員なのだろうロボット住人がアプケロスとはまた違う種の竜に追いかけ回されていた。

 

「なんで『リノプロス』が。とにかく、助ける」

「あぁいや良い。何時もの事だし、下手に攻撃すると他のリノプロスだけでなくアプケロスたちも興奮して手に負えんからな…しかし本当に、何時も元とつけろと言っているだろうに」

 

 そう言う元理事のため息と職員が吹っ飛ばされるのはほぼ同時だった。手慣れた様子で連絡を取り吹き飛ばされた職員の回収を命じてから改めてため息。

 

「アプケロスの養殖がある程度だが安定して行えるようになったのでな、新たに奴らの養殖を始めて見たのだが、気性が荒い…というよりかは単純にそう言う生態なのか。近づくだけで追いかけ回されてしまってな。難儀しているのだ」

「ん、アプケロスより面倒」

「とはいえだ、一度育て始めたからには途中で投げ出すわけにもいかんのでな。とりあえずの単純な対処法として突撃されても問題無いように装備を整えようという話になってな」

「盾?」

「あぁ盾だ」

 

 しかしと腕を組み指でコンコンと腕を叩く元理事。

 

「試行錯誤の段階なので余り稀少素材を使うわけにもいかなくてな、技術やコストの問題もある」

「そう言うことなら『クンチュウ』の素材が一番」

「うむ。そうなのだが、どうにも需要が在りすぎるのか必要数が手に入らなくてな。この際だ、正式に依頼を出してお前たちに集めて貰えればと、思ってな」

「ん! 任せてすぐに…あ」

 

 ぐっとサムズアップして見せたシロコはしかし先生を見て少し申し訳なさそうな表情を浮かべる。それに、先生自身は気にしなくて良いと、そう言おうとして元理事が口にする。

 

「ふむ、存外。良いタイミングだったかもしれんな」

「ん?」

「今お前はアビドスを案内しているのだろう? ならばここアビドスのもっとも重要なあれを紹介して見せる機会になる筈だ」

「! ん! 確かに、流石理事おじ」

「だから元だ」

 

 アビドスのもっとも重要なこと、生徒からある程度聞いていた事を思い出しそれはもしやと思っているとシロコは笑みを浮かべながら言う。

 

 

「ん、先生にアビドスの『狩り』を見せてあげる」

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