アビドス自治区で受ける事の出来る依頼の中で生徒たちの間で人気な依頼が四つある。
一つ目が自治区の清掃である。なんて事はない、砂祭りや日頃の砂漠からの風に乗って降り積もる砂を掃除すると言うだけのものだが、内容が内容だけに何時だろうと受けることが出来、ちょっとした暇潰しついでの金稼ぎとして結構な生徒が受けている、あと住人からよくお裾分けが貰えたりする。
二つ目に自然公園での鉱石採掘。単純に報酬が良い。作業自体は簡単で、量が多ければ報酬に色が着く。自然公園での作業ゆえに危険は付きまとうが、それを承知で行動できる生徒にとってはもっとも手軽に出来る依頼だろう。
三つ目にクンチュウの間引き。これは…人気とは少し違うが特定の生徒たちが血眼になってこなしている依頼だ。主に乗り物を好んで利用している生徒とか。なお報酬自体もクンチュウの素材の汎用性の高さからかなり良い。
そして四つ目が、今現在ハスミやツルギたち正義実現委員会の生徒たちがこなしている…自然公園内のデルクスやガレオスの狩猟である。
アビドス自然公園の砂漠区域。ジエン・モーランの出現によって海の様に深くなってしまった砂漠の中、地形の問題なのか今となっては珍しい、人が足を踏み入れても底へと呑み込まれる事の無い場所。そこを悠々と泳ぐデルクスが一匹。
「ガァ…」
群れからはぐれたのだろうその個体はしかしそんなことを気にした様子もなく。時折、獲物を探すように砂から顔を覗かせ辺りを見渡し、直後にその眼球を弾丸が貫き吹き飛ばされる。一回、二回と砂の上を跳ね僅かに体を震わせてから動きを止める。
少しの間を置いて、デルクスの死体に近づいてくるのは正義実現委員会の四人。うちの一人が慣れた様子で死んでいるかを確認してから手早く解体し素材を剥ぎ取り始めた。それを見ながらハスミは流れる汗を拭い一言。
「…ツルギ」
「…なんだ?」
「砂漠はダイエットをする様な場所ではありませんね。普通に死にかねない」
「今更過ぎないか?」
本日何度目かも分からない呆れを溢すツルギに水分補給をしながらハスミは言う。
「えぇ、本当に今更ですね。こうやって実際に砂漠に出るのは始めてですが…砂漠の危険性を本当の意味で実感しましたよ。持ってきていたダイエットに良いというサウナスーツを着なくて良かった」
「そうだな、もしそれをしていたら全力で後頭部を殴打して正気を取り戻させる必要があっただろうな」
そうする必要が無くて本当に良かったよと溢すツルギに申し訳なくなりながら借りている狩猟ドローンに水筒を突っ込み武器を持ち直して、何気なく手を動かし開いて閉じてを幾度か繰り返す。
「? どうかしたか?」
「…いえ、なにかあったと言うわけではない…筈。良く分からないけれど、妙な違和感があると言いますか」
「何時もと違う狩猟用の武装を使っているからか?」
「かもしれませんね」
首を傾げながらもツルギの言葉に頷くハスミ。実際、普段使っている愛用のそれとは違う狩猟用のものを使っているのだ、違和感があって当然だと。ただ、それだけではないような何とも表現に困る感覚が拭えずにいた。
「ハスミ先輩、ツルギ先輩、剥ぎ取り終わりましたー!」
と、二人の元にそう言いながらパタパタと盾を背負った生徒と、剥ぎ取られたデルクスの素材を抱えた生徒が走り寄ってくる。
「あぁ、ありがとうございます。毎回任せてしまって申し訳ありませんね」
「いえいえ適材適所って奴ですので」
「あたしたちは委員長たちみたいにさっと狩れませんからねー」
「いや、お前たちの動きはたいしたものだった。盾の扱いは堅実で、狙いも迷いがなかった。周囲への警戒や解体も相当手慣れて見えていた…最近、随分と動きが良くなったとは思っていたが、成程ここでの狩猟経験が理由だったか」
「えへへ、えっと…そうなんです。休日とかに来るんですよアビドス。トリニティでは出来ない経験が一杯なんですよここ」
ねーっと言い合う二人。それからよいしょとドローンに素材を詰め込んでいく。
「ふぅ、えっとこれで確かー…」
「7匹目だな」
「そうでしたそうでした。あと3匹でとりあえずの依頼された数の狩猟が終わりますね」
「…思っていたのですが、こんなに狩っても問題ないのですか?」
「大丈夫ですよ。基本的に他の地域から流れてきて数が増えすぎたからこその依頼ですから。寧ろ狩らないと大変な事になっちゃいますよ」
「そういう、物なのですね。難しいですね」
「本当にそうですよねーっと、ここに居るのは不味いかもしれませんから移動しましょうか」
「そうなのか?」
ツルギの問いにはいと返す。
「デルクスって基本的に数匹の群れというかグループで行動してるんです。なのでこの個体みたいに単独で行動するのはなにかしらの異変があったと見た方が良いと思うんです」
「成程…例の件と関係あると思うか?」
「それは、流石に…ハナコちゃんみたいに頭が良かったらこれだけでも推測位は出来るでしょうが」
「いえ、構いません。異変が起こっていると分かっただけでも十分でしょう。ツルギ、これまで以上に警戒して行きましょう。確か、トリニティで確認されたのは空を飛んでいた筈ですからもしかしたら既に移動しているかもしれませんが」
「あぁ、そうだな」
そう、答えてからおもむろにハスミを見るツルギ。
「? どうかしましたか?」
「いや…」
と、短く言ってから小さく呟いた。
「話、ちゃんと聞いていたんだな」
「私を何だと思っているのですか!?」
「砂漠でダイエットしようとしていた馬鹿」
モンハンと違って遠距離戦が基本なキヴォトスでは魚竜類は良い稼ぎになると思うの。素材の価値凄いし。