アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第35話

 デルクスの狩猟を終え、砂漠から離れ岩場に向かった四人。本格的に調査を開始して分かったのが、意外と痕跡が多いという事だった。

 

「あ、ここにもありましたよ」

「またか、これで何ヵ所目だ?」

「5か所目ですね」

 

 言いながら慎重に大きな岩に突き刺さっている物を引っこ抜き日にかざして見る。光が反射して金の様に輝くそれは例の刃の如き鱗。怪我をしないように慎重に仕舞いながら考える。

 

「うーん、ここまで多いと縄張りを主張するためにばらまかれてる可能性がありますね」

「縄張り、マーキングですか」

「ということはトリニティに現れたのもそれが原因か?」

「いえ、それはかもしれない位だと思います。流石にここが縄張りの端の方だったとしても被害のあった場所まで距離がありすぎますし。何よりそれならゲヘナにも被害が出てないとおかしいですから」

「…ゲヘナでは被害が出ていないと?」

「えぇはい。友達の風紀委員の子からの情報なのでまぁ間違いないかと」

「…ゲヘナの友達ですか」

「ハスミ」

「分かっていますよツルギ…ですがなにか問題に巻き込まれていたりしたら」

「? いえ、そういったことはありませんよ? 一緒に犯罪者を追っかけた事はありますけど、それもどちらかといえば手伝って貰った感じでしたし。あ、あとゲヘナの美味しいスイーツを貰ったこともありますよ」

「そうですか、なら良いのですが…あとスイーツについて」

「…ハスミ」

「は、気にしていませんので聞かなかったことにしてください」

「あ、はい」

 

 割としっかりツルギに睨まれそう口にするハスミ。少し前から思っていたがイメージよりも大分愉快な人なのかもしれないと彼女は思う、あと委員長はイメージよりも怖くないけど苦労してるんだろうなとも。そんなことを考えながらドローンからタブレットを取りだし情報を打ち込んでいく。

 

「えっと今居るのはここで…自然公園の三割くらい見て回れましたね」

「まだ三割なのですね」

「いやまだ、ではないだろう」

「ですね、広さを考えるともう三割も見て回れたと言うべきです。ほとんど休憩なしで動き回ってますから早いのは当たり前ではありますけど」

「はい! そろそろ休憩した方が良いと思います!」

 

 盾を揺らしビシッと手を挙げながらの提案にツルギは頷く。

 

「そうだな。小まめな水分補給はしているが環境が環境だ。普段以上に疲労が溜まっているのを感じる…気の休まる場所での休息が必要だろう」

「えぇ、流石の私も空腹を感じていましたし」

「………」

「…違いますからね?」

 

 言いながらも何故か視線をそらすハスミ。別に責めているつもりはツルギにはなかった。砂漠で活動して食事をするなと言うのは遠回しの殺人である。ただ流石のという言葉に何を言っているんだとちょっと思っただけである。

 

 

 

 それから凡そ二時間ほどしっかり休んだ一行。途中非常時用にと持ち歩いていたキャラメルの箱を見つけたハスミが掴んで離さずじっと見つめたまま動かなくなるなんて事があったが、気にする様な事ではない。

 

 そんなこんなで疲れは取れたと調査を再開しようとした…のだが、思うように行かない様で。

 

「ガロロロロ…」

 

 身を隠す四人の視線の先、唸る様に鳴きながら辺りを見渡しノシノシと歩いているのは蛙と鮫を合体させた様な不思議な見た目をした大型生物、『ザボアザギル』。

 

「…あれは、例の」

「えぇあれが例の奴です。化け鮫横丁の名前の由来となった生き物で」

 

 言いながらスッと懐から取り出されたのはハスミザギルという名のぬいぐるみ。

 

「これのデザイン元の一つです」

「色々と気になる所はありますがとりあえず何故それを持っているのですか?」

「? かわいいからですけど」

「そ、そうですか…しかし」

 

 改めて未だに同じ様な場所をうろうろしているザボアザギルを見る。

 

「移動しようとしませんね、なにかを探している様にも見えますが」

「そうですね。あんまり1ヵ所に留まってるイメージは無かったんですが…いえそんなに詳しい訳ではないから実はそういうものだったとかもありますけど」

「少なくともすぐに動く様子はないな…どうするか」

「狩りますか?」

「いいや、それは危険だろう。例の鱗を持つ生物が空を飛べるのだから戦闘中に乱入される可能性がある」

「ならザボアザギルを避けて。えっと回り道をする場合は」

 

「いえ、ここは狩りましょう」

 

 いつの間にか取り出していた双眼鏡で観察しながら彼女はそう溢す。

 

「ここで放置すると危険だと思います。何処かに誘導して狩猟すべきだと思います」

「ふむ…そう、思う理由は?」

「手負いだからです」

 

 言われたツルギは手渡された双眼鏡を使って自分も観察してみる。遠目には分かりにくかったが、どうにも傷が見られた。それも。

 

「あれは…切り傷か」

「はい、恐らくは…自然公園で以前からザボアザギルが生息していることは確認されていましたが、もっと奥地での事でした。それがこんな所に居るのは傷を見るに例の生物と縄張り争いをした結果、ここまで追いやられたからだと思うんです」

「ではなにかを探している様に見えるのは」

「例の生物の事を警戒しているのか、もしくはそのまま探しているのかもしれません」

「…乱入してくる可能性があるのはザボアザギルもか」

「はい、それに手負いの生き物はとても凶暴で、どんな行動を取るのか分かりません。唯でさえ標的の情報が少ないですから。不確定要素はできるだけ減らしておいた方が良いと思うんです」

 

 そう、まっすぐツルギの事を見る彼女の言葉にツルギは少し考える仕草をして…静かに頷いた。

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