アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第39話

 パチリッと火花が跳ねる焚き火を囲う四人。ジュージューと非常に食欲を刺激する音が響く。

 

「で、どうしましょうか?」

 

 と、盾をなんとか使える状態に戻せないかと四苦八苦しながら呟かれた一言に。もそもそと、洞窟の奥にあった水辺で釣ってきた魚をシンプルに塩焼きにしただけそれの三本目に手を伸ばしながらハスミは、視線を向けた。

 

「どうしよう、とは?」

「え、いえどう狩ろうかなと思いまして」

「最初は私が突っ込んで撹乱と攻撃、それをハスミが援護し、二人はその補助。弱ったらハスミが止めを刺す」

「いや、まぁはい。多分動きとしてはそうなると思うんですけどそれだけじゃ足りないと思うんですよ」

「足りない?」

「アビドスの、というか大体の野生生物にとっての戦いは生きる為にするものであって勝つ事はそのものは目的ではありませんからね」

 

 よいしょよいしょと魚の、サシミウオの火の通り具合を確認しながら言う。

 

「単純な話、あ、負けそうだなって思ったらすぐに逃げられちゃいますから。相手は空が飛べますのでそれを止めるのも大変所じゃすみませんから」

「ふむ、道理だな」

 

 普段相手している不良たちも追い詰められたとなればすぐに逃げ始める。まぁそこらの不良ならば逃げる前に叩きのめせるのだが、流石に竜相手に逃げる前に叩きのめすというのは難しいだろう。そう頷きながら手渡された焼き魚を頬張る。

 

 とても美味しい。下手に手の込んだものよりも美味しく感じて少し不思議に思う程だ。そういえば以前に読んだ本で食事のシチュエーションによって味がかなり変わるとか言ってたようなと思い出す。それを考えると今の状況はキャンプしているようなものなのかと。

 

 しかも友達と…いや待て、友達や後輩と一緒にキャンプ(仮)しながら焚き火囲んで食事するのはある意味というかかなり青春なのでは?

 

 今まで全然経験することの出来なかった青春がここにあるのでは!?

 

 そう思い至るとちょっと嬉しいような落ち着かない様な、妙にそわつくツルギに二人は首を傾げハスミはどこか微笑ましく思いながら言う。

 

「ツルギ」

「な、なんだハスミ?」

「以前聞いたのですが、アビドス砂漠の夜は星空がとても綺麗なのだとか。事が落ち着いたら天体観測でもしてみませんか?」

「あ、確かに良いですね。すっごい綺麗ですから休息にはちょうど良いですし。このドローンも望遠鏡になりますから特別な道具とか必要ないですし」

「…そんな事まで出来るのですかそれ?」

「はい、割と使いますよ? 大型生物探したりする時に」

「あぁ…なる、ほど?」

 

 そういう目的なのかと浮いているドローンを見ながらハスミは呟く。どこで見るかなにか飲み物でもと話し合う三人に、どうにも嬉しくなって笑いそうになり。

 

「ウ、ク、キェエエエエエエエ!」

 

 思わず、吼えた。

 

「わぁビックリした!? どうしたんですか先輩急に」

「あぁ大丈夫ですよ。ただ天体観測が楽しみなだけですから」

「そういえば委員長ってなんでも無い時に急に叫ぶ事ありますよね…そういうことだったんだ」

 

 成程と頷くと今度はむんと気合いを入れ直す。

 

「それでは心置きなく天体観測するために改めてどうやって狩るか、と言うよりかはどう逃がさない様にするか考えましょう」

「あ、それについてなんですけどもしかしたらそこまで深く対策する必要はないかもしれません」

「え、なんで?」

「よくよく考えれば対策自体は簡単な事だったなと」

 

 空を飛ぶからこそですね、と言いながらあるものを取り出して、軽く撫でた。

 

「逃げようとする度に叩き落としちゃえば良いんですよ」

 

 そして見やすいように掲げられたそれは、とても見覚えのある物だった。

 

 

 

 

 

 雲一つ無い砂漠の夜。

 

 無数の星と大きな月が浮かぶ空を、その竜は悠々と舞う。この場所こそ己の領域だと示すように堂々と砂漠特有の寒暖差なぞ気にも留めず翼を羽ばたかせ飛び、鋭い視線を地上へと走らせ、探していた。

 

 目的は先程出会した、幾らか前に新たに縄張りにしたここに作った巣を荒らした生物と恐らく同種だろう四体。あれだけ追い回し追い出したのにもう来たのかと、いや追い回したが仕留めることが出来なかったからまた来たのかと喉を鳴らす。

 

「ルゥウウウウ…」

 

 元々の縄張りをあの『化け物』に追い出され、漸くここと定めた縄張りを荒らされた竜は酷く不機嫌そうに鳴く。また巣を荒らされたら堪ったものではない。今度こそ、ここが誰の縄張りなのかを知らしめなければいけないと改めて視線を走らせているとポンッと、奇妙な音が響き。

 

 竜の視界が光で塗り潰された。

 

「ギュラァアアア!?」

 

 唐突な出来事。目が潰され方向感覚が失われ、空から落ちた竜はガゴンッと地面に衝突した。痛みと、苛立ちを感じながら頭を振る。体の土を振り落としながら起き上がり回復した視界で辺りを見渡し。

 

 

 ズドンッ! と、眼前に何かが着弾した。

 

 

 竜の墜落に比べれば小さい、しかし十分に大量と言える土煙から歩み出るは…剣先ツルギ。

 

「…あの高さ、体勢で地面に衝突したというのにほぼ無傷か。呆れた強度だな」

 

 まぁ自分も同じようなものだがと言いながらくるくると調子を確かめるように武器を回し、銃口を突き付ける。それが意味することを、竜は理解し大きく身を震わせ刃の鱗を研ぎ澄ますように擦り合わせ…咆哮を轟かせる。

 

「ギュルルゥアアアアアアアアアッ!」

「ぎひぇアアアっ!」

 

 答え、負けぬほどの力強い叫びと共に、彼女は突撃する。

 

 

 正義実現委員会と竜との生存競争が…狩りが始まる。

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