アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第41話

 ゲストハウスの一室。アビドスを訪れた正義実現委員会所属の生徒用に貸し出されているそこで、一週間ぶりにアビドスを訪れ浦和ハナコを探していたヒフミが見たのは黒い絨毯だった。

 

 いや違った床に倒れた羽川ハスミだった。副委員長である筈の彼女が複数の委員会所属の生徒を背に乗せた状態で絨毯のように床に倒れていた。

 

「えっと…これは一体?」

「気にするな」

 

 そう言うのはソファーに座りながら書類に目を通しているツルギ。

 

 曰く、せめて一つだけと約束してパフェを食べたにも関わらず黙ってその日の深夜にアイスの乗っているパンケーキを4皿食べた事への罰として後輩を乗せた状態で腕立て伏せをした結果だとか。

 

 思わず何をしているのだろうこの人はと視線を向けると、ツルギは書類から視線を外しヒフミを見た。

 

「それで、なにか用か?」

「あ、はい。えっと、新しく分かった事があったんですけどちょっと相談したくてハナコちゃんを探してるんですが見つからなくて、知りませんか?」

「彼女なら『セルレギオス』について話をしにアビドス高校に出向いている」

「え、セルレギオスですか?」

 

 珍しい名前が出てきたなと思うヒフミ。たしかアビドス砂漠でもかなり奥地でのみ姿が確認されていて、はっきり言って分かっていることが殆ど無い大半の人は存在も知らないだろう大型生物だった筈。ヒフミが知っているのだって良くミレニアムの生徒と一緒にトリニティの先輩がもっと調べたい知りたいとゾンビの様に呻いていたからと言うだけだ。

 

 ちなみに、セルレギオスについての知識量は先輩とヒフミは大体同じ位だったりする。そうなるくらい分かっている事が少ない生物だ。

 

 それについての話というと、ついに先輩が新発見でもしたのかなと考え。

 

「どんな事が分かったのか知ってますか?」

「例のトリニティに侵入してきた大型生物がそのセルレギオスだった」

「成程…って、え、そうだったんですか?」

 

 これまた珍しいとヒフミは思う。数少ない分かっていることの一つが非常に縄張り意識が高いという事。だからか基本的に砂漠の奥地から出てくる事の無い生物だ。自然公園の端っこまで行っても姿を見る事が今まで無かった事を考えれば本当に珍しい。まぁ存在が確認されて一年かそこらだ。そういうこともあるだろう。

 

 そう、考えるヒフミにツルギは真剣な表情で言う。

 

「三体」

「え?」

 

 

「私たちが狩猟に成功した個体以外に自然公園付近で確認されたセルレギオスの数だ」

 

 

 はい? と呆けた様な声を溢すヒフミ。驚き見開かれた目で見たツルギは変わらず真剣そのものだった。

 

「…あの、被害は」

「確認されている範囲では無いとの事だ。三体の内の二体は生存競争に負け、残りの一体もアビドス生が狩猟済みだ」

 

 良かったと息を吐く。それから難しい表情を浮かべる。

 

「やはり、問題があるか」

「えっと、多分。一体だけなら偶々そういう事もあるかもですけど、流石に…分からないことが多い生物ですから断言出来ませんけど」

「皆、そう言っていたな」

 

 道理だと頷き、だがと言いながらペンを置く。

 

「私たちはなにか問題が、それもトリニティを…いや下手すればキヴォトスを大きく揺るがすようななにかが起こっていると思っている。現にティーパーティーから私たちは暫くの間アビドスで活動する様にと連絡があった」

「そうですか…え、そうなんですか?!」

「あぁ、それも『セイア』様直々にな」

 

 ティーパーティーの『百合園セイア』。長い歴史を誇るトリニティの中でも特異な…未来予知を可能とすると言われている生徒。そんな彼女がトリニティの最上位戦力である剣先ツルギをアビドス自治区に在中させようとしていると言うのは。

 

「確かに、それは…何かあると思えますね。でもその、大丈夫なんですか? 色々と」

「問題ない。後輩たちは私たちが居ない程度で揺らぐほど軟弱ではない」

 

 寧ろ、良い訓練になるだろうとも言った。

 

「所でだ。新たな情報とはなんだ?」

「あ、それはですね。ブラックマーケットで取引されてた密漁品についてで」

「あぁ、たしかバサルモスだったか?」

「はい、友達と協力して大半はなんとか回収出来たんですけど一番見つけたかった素材である毒袋だけが見つからなくて探していたんですけど、それが既に取引が済んでいてある自治区に持ち込まれてるらしい事が分かったのでどうしようかとハナコちゃんと相談したくて」

「それで探していた訳か」

 

 成程と頷き、どこか呆れた様子でヒフミを見た。

 

「取り合えず、何故ブラックマーケットについてそこまで詳しいのかは詮索しないでおいてやる」

「……あ、それは、そのー」

「だが、もう少し自重するように。分かったな?」

「…はい。暫くはペロロ様グッズが見つかった時以外は控えます」

「いや、そもそも…あぁー、まぁそれで良い」

 

 あまりにさらっと口にされた言葉に拘束して説教すべきかとも考えたが、どうにも現在ジャギィフェイクなるマスクを身に付け躍り狂っている知り合いと被ってしまう。そして瞬間ツルギは理解する。あ、こいつも何を言おうが物理的に叩きのめそうが関係ないと突き進むタイプかとため息を吐く。

 

「…それで、どこに持ち込まれた?」

「あ、はい。えっと間違いなければですけど」

 

 

 

 

「『山海経』だそうです」

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