【開始と同時に、するりっと集団を抜けて前に出るのはジェットストリーム君。すさまじい加速力ですね】
【はい! なにせあの形状はっとこれは!?】
【ジェ、ジェットストリーム君が光輝き始めました!】
言葉の通り、先頭に立つジェットストリーム君の流線型ボディに光が放つ。やがて光は線となって走り集い、浮かび上がるのはアバンギャルドなデザインの独特な顔。当然の様に変形し姿を表す翼。そして、浮かぶ顔の瞳が光を放ちエンジン点火。
ジェットストリーム君、飛翔!
圧倒的加速で他を引き離し!
そのまま岩に激突し大爆発した!
【えぇえええええええええ!? いや、え、立て続けに色々起きすぎて理解が追い付きません! 一体なにが!?】
【考えるに、加速し過ぎて制御不能に成ったのでしょうね!】
【な、成程。では、あの大爆発は?】
【それは単純な事です! 自爆用に搭載されていた火薬に引火したのでしょう!】
【成程理解できました! 次回からの出禁を検討させていただきます】
【なぜ!?】
立ち上る黒煙と岩に綺麗にめり込んで壁画の様に成ってしまっているミレニアム生を横目に、知ってたと言わんばかりに誰も気にする事無く岩山を避けて進んでいく砂上船たち。
現在の先頭は、トリニティ。
【通過すべき四つのチェックポイントの一つ目に最初に到達したのはトリニティのロイヤルティー! なんですが伺える表情が浮かない様子ですね】
【もしかしたら序盤は先頭に立つつもりは無かったのもか知れませんね。常に最高速で先頭を進み続けられれば確かに勝利することが出来ますがそう上手く行かないのがレースというもの。ロイヤルティーは素晴らしいスペックを誇ってはいますが他砂上船と隔絶しているという程ではありません。なにか切っ掛けがあれば入れ替わりが起こることを考えれば今の段階では中程から後方辺りで様子見がしたかったのかも知れませんね!】
そんな事を言っている間にも砂上船は進み、ある地域に突入する。
【先頭のロイヤルティーが『埋没市街』に突入! 砂に飲み込まれたこの場所はあちこちから建築物が頭を覗かせており、それ故に独特の砂の流れが発生している事が特徴です】
【下手な操舵を行えば建物への衝突は避けられません。速度で流れを断つか、技術で乗りこなすのか、はたまた耐久任せにごり押すのか! 選手たちはどの様な選択をするのか!】
先頭に続くように少し遅れて次々と埋没市街に突入していく砂上船たち。しかし砂の流れに苦戦する生徒もちらほらと見える。特にトリニティはどこか窮屈そうで、大きく順位を落としていく。
そして変わるように先頭に立ったのは市街をスルスルと淀み無く進んでいくゲヘナの砂虎号。
【先頭は現在、ゲヘナの砂虎号。圧倒的な安定性を持って速度を落とすこと無く進み後方に大きく差を付けて埋没市街の中心にある第2チェックポイントを通過!】
【船の性能もそうですが、操舵手の技術も見事の一言に付きますね。強者の試合は退屈ですらあると言われますが、正しくといった所でしょうか。ですが、最高速度の遅さを考えればまだまだ分かりません。ここで手にした優位をおぉっと!?】
【トリニティのロイヤルティーが建造物に激突し停止! 更にはその衝撃で象徴とも言える三つ旗のうち一つが落ち風に飛ばされてしまいました、船自体は問題なさそうですがこれは…その、大丈夫なのでしょうか?】
【正直私にも分かりません…おや? あれは?】
【誰かに連絡しているようですね】
疑問の声が響く中、スマホ片手にしばらく会話していたかと思えば笑みを浮かべながら大きく頷いたトリニティ生。それから船の体勢を整えたかと思えばいそいそと残った二つの旗を下ろす。どうすべきか確認していたのだろうかと思っていると、一枚の大きな旗が掲げられた。
そこに描かれていたのは…ペロロである。
【え、な、なんと、あれはペロロです! 新たに掲げられた旗にはモモフレンズのキャラクターであるペロロが描かれてって速ぁ!? ロイヤルティーが凄まじい速度で爆走を始めました!】
【いえ、それだけではありません! なんという操舵技術! 今までは居眠りしながら操舵していたのかと思うほどのキレ!】
【い、一体なにが起こっているのでしょうか】
極一部なにか共感するように深く頷く生徒たち以外を置き去りに砂の流れも建物も障害になり得ないと時折どうやっているのか砂上でドリフトまで決めながらすごい勢いで加速、加速、加速。前へ前へと向かうロイヤルティーは先行く砂上船たちを次々と追い抜いて行く。
衝突した結果生まれた差など踏み潰すと言わんばかりに第2チェックポイントに向けて突き進む。
【す、凄い! 凄いのですが、表現に困ります!】
【あ、見てください、操舵しながらキレッキレのモモフレ体操を踊っていますよ!】
【こ、これがモモフレンズの力だとでも言うのでしょうか!?】
言ってからアヤネは思う。多分違うと。
同時刻、レースの裏で一つの狩猟が始まろうとしていた。
「ヘェーイ!」
『アッアッオーウ!』