アビドス砂漠で狩りに生きる。   作:春山乃都

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第59話

「いやぁー、書類仕事が終わりませんねぇ!」

「まぁ結構な頻度で抜け出してますからね室長。そりゃ終わりませんよ」

 

 連邦生徒会では日常と化した連なる書類の山。連邦生徒会防衛室の執務室で抜け出さないように椅子に縛り付けられている不知火カヤはぶつくさと文句を言いながらペンを走らせ判子を押す。

 

「前から思っていたのですが今時全部手書きに判子ってどうなんですか?」

「仕方ないじゃないですか。安全性を考えたらこうする他ないのですから。数少ない電子機器も大半が生徒会長がいないと動かないオーパーツですし。まぁ幾つかは先生が『シッテムの箱』で動かしてくれてますけど全部頼む訳にも行きませんからね。それも非正規の手段であることに変わりませんし」

「…あの、室長。今さらですけど私たち生徒会長以上にオーパーツに頼り過ぎでは?」

「それこそ仕方のない事ですよ。何年か前までは半端な物を持ち込めば乗っ取られて悪用されるからオーパーツ以外は使い物にならない状態だったのですよ?」

「え、なんですかそれ。こわ」

「嘗ての惨状を知る人が減ったのは良いことなのかどうなのか。まぁ、正直今も影響が無くなったとは言えませんからオーパーツから変える訳に行きませんし。本当に厄介ですよ『ゲヘナの』っと電話ですね。ちょっと失礼しますね」

 

 スッゴい気になる所で切られたと若干口を尖らせる部下にまぁまぁと宥めながらスマホ画面を確認し、微か眉を動かしてから電話に出る。それはもう大きな声で。

 

 

「はいもしもし! なにかご用ですか『ユキノ』さん!」

 

 

 防衛室に、緊張が走る。それを理解しながらどこにでもある友人の会話を続ける。

 

「はい、はい! 休暇を堪能しているようで何よりです! そうだ、山海経での料理はどうでした? 噂通りの美味でしたかね? 私もまだ食べたことないのですよね。はい、成程。特に『肉まん』が美味しかったと。あまりに素晴らしかったから『お土産』として『あるだけ購入』したのですね。楽しみですね! しかしそこまで美味しかったとなるとそれを作った『料理人』が気になりますね。もし良ければ『呼びたい』ですし…成程、料理人には『会えなかった』と。それは残念です…ほぉ、料理人の『友達』が『新作』の為に『新しい食材』を取りに行ってる? 成程成程。それも『食べて』来ますか?…確かにそろそろ『休暇』が終わりますからね。分かりました、お気をつけて!」

 

 それではと、通話を切る。それから変わらず笑みを浮かべながら。

 

「ユキノさん達が帰ってきたら『肉まんパーテイ』ですので、手早く仕事を終わらせましょう。あぁ、そうだ。ついでに『新作』も気になるのでアビドス在中の防衛室職員やアビドス高校の友人に『食材収集の手伝い』をするように伝えてください」

「っ! 分かりましたっ!」

 

 慌ただしく動き始める防衛室。さてと、カヤは椅子に座り直し。

 

「…何事もないと良いのですがねぇ」

 

 呟きながら窓から外を見ながらミヤコたちの身を案じるのだった。

 

 

 

 

 そして、心配されているミヤコたちはといえば。

 

 

 

「…ありませんね」

「あぁ、そうだな」

「卵ってこんなに無いものだったか?」

【いやそんな筈はないと思うけど。依頼として受理されてる時点で草食動物が増えすぎてる訳だし】

「ということは単純に運が悪いだけ?」

 

 普通に卵探しをしていた。大型生物が侵入することの出来ない狭い空間。そこに作られた草食動物の巣を覗き込み時折手で探ったりもするが、それらしいものは見当たらない。

 

「卵の大きさを考えれば見逃すことはまず無いでしょうから…本当に運が悪いだけなのかもしれませんね」

「どうする? 他の場所を探してみるか?」

「そう、ですね。もうしばらく探して無ければ次に向かうという事にしましょう。それで良いですか?」

「あぁ、それで大丈夫だ」

「それでは引き続き卵の捜索を」

 

 言って、再び視線を幾つかある巣の内の一つに向ける。詳しく調べて見ても暫く前に孵化したのだろう卵の殻が見られるだけ。やはり運…というよりかはタイミングが悪かったと言うべきか。

 

「ん? お、これは…あった、あったぞ!」

 

 これは素直に場所を変えるべきかと考えているとサキが声をあげる。こっちだと手招きをする彼女の元に駆け足で向かえば、少々分かりにくい場所ではあるがデンッと大きな卵が鎮座していた。

 

「こちらRABBIT1、確認をお願いします」

【RABBIT3、りょうかーい。ちょっと待ってねー…うん、間違いなく目当ての草食動物の卵だよ】

「良かった。それじゃあ持ち上げますので運搬用シートをお願いします。RABBIT2は周辺の警戒を」

「分かった」

「RABBIT2、了解した」

 

 軽く駆けながら離れていくサキを横目に、よいしょと巨大な卵を持ち上げる。正しく抱える程の卵に一瞬態勢を崩しかけるがなんとか堪えて、サオリが広げてくれたシートの上にそっと移し、素早く丁寧に卵を包む。そしてシートの端に付いている金具を狩猟用補助ドローンに取り付ける。

 

 しっかりと固定されていることを確認してからドローンを動かす。唸り声の様な音を響かせゆっくりとドローンは浮かび、卵が地面から離れた。

 

「大丈夫、そうですね」

「あぁ、すごい音がしたから少しきもが冷えた」

「えぇ、本当に」

 

 とはいえ、これで後は無事に卵を安全地帯まで運ぶだけ。まぁそれが一番危険且つ大変な作業なのだが。

 

「RABBIT2、外の様子はどうですか?」

「ついさっきまでそこにクルルヤックが居たがもう何処かに走っていたから大丈夫だ」

「そうですか。RABBIT4、周辺の安全確認をお願いします」

【あ、えっと。こちらRABBIT4、今はちょっと、動かない方が】

「なにか問題が?」

【うん】

 

 

 

【今そっちに『アンジャナフ』が向かってるから】

「…はい?」

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